最近、3回目を読み返してみましたが、残念ながら新たな発見はありませんでした。

 

『海辺のカフカ』をネットで検索してみると、「作家・村上春樹の10作目の長編小説で、

ギリシア悲劇と日本の古典文学を下敷きにした小説である」という高尚な解説がありましたが、私の感想はそんなこととは関係なく単なる駄作としか思えませんでした。

 

 

さらにそのサイトには、やや大袈裟だとは思いましたが、「フランツ・カフカの思想的影響のもと、ギリシア悲劇のオイディプス(エディプス)王の物語と、『源氏物語』や『雨月物語』などの日本の古典小説が物語の各所で用いられている」んだそうですが、よくわかりませんでしたね。

 

例えば、ギリシア悲劇のオイディプス王の物語とは、ギリシャ神話の登場人物であるオイディプスが実の父親とは知らずに殺してしまい、実の母親とは知らずに親子婚をしてしまうという物語ですが、作品の中の田村カフカは殺された父親とは、心理的には殺した実感はなく、また物理的には、殺された父の住む中野区とはかけ離れた四国の高松にいたことからアリバイがある。ただ、その日の夜に神社で昏睡し目覚めると身に覚えのない血に塗れていたことに不安を覚えていた。警察は唯一の参考人として彼を探してはいたようだが、カフカが最後に実家に帰ることを決めるわけだがそれも厳しい現実が待ち構えているだろう。

 

 

また、物語の背景は、同作家の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と『ねじまき鳥クロニクル』を融合したものが下地にされており、『ねじまき鳥クロニクル』からの暴力的なテーマや、生々しい残虐なシーンも同様に登場させているということですが、ねじまき鳥ほど人間には残酷シーンはなかったようですね。どちらかというと全体的にはアニメちっくでゲーム感覚的な印象がします。

 

そして、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の手法と同様な世界を異にした二人の主人公によって語られるパラレル(平行)進行がとられています。

 

 

特に、物語の終盤で姿を現した「森の中枢の世界」は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』にある「世界の終り」の街との類似性が指摘されています。

 

メインストーリーは、15歳の少年「僕(田村カフカ)」が、不思議な世界を行き来しながら、心の成長を遂げていくというお話ですが、これはすでに死語ですが、まさしくエログロナンセンス小説の極みですね。特にナンセンスなのは、ジョニー・ウオーカーとかカーネル・サンダースの存在といえるでしょう。

 

 

内容は、昔、母親から捨てられたことがずっと心の傷となっている田村カフカ少年は、15歳の誕生日に父親からかけられた、「お前はいつか自分の手で父親を殺し、母と姉と交わるだろう」という言葉から脱出するために、「カラス」と呼ばれる少年からアドバイスをもらいながら(カフカを世界でいちばんタフな15歳の少年だと励ますが実際は全くタフでは無かったのです)、家出をする。
そして、なぜだか深夜バスに乗って四国を目指すことになります。

 

一方、自ら作詞・作曲した曲がミリオンセラーとなり20歳で上京した佐伯さんは、恋人の死後行方不明となり、その25年後に高松に帰ってきて、図書館の責任者になりました。

カフカ少年が大島さんの尽力で図書館に寝泊まりさせてもらえたのは、亡くなった甲村少年が使っていた部屋でした。
そのうちに、毎晩15歳の佐伯さんの幽霊がその部屋を訪れるようになり、カフカは彼女に恋をするのです。
そしてふたりは夢の中で性的関係を持つなんていう『源氏物語』や『雨月物語』はたまた四谷怪談みたいな怪談話(生き霊?)となりますが、最後に命までは取られませんでした。

カフカはなんとなく現在の佐伯さんが自分の母親なのではないかと思っていましたが、佐伯さんは答えてくれませんでした、あくまでも仮説のままで終わりますが、カフカは母親だと思い込んでおり、父親の予言を実行するかのように自ら進んで彼女と濃厚なセックスをすることになります。また、四国に来る途中で知り合ったさくらさんを姉と想定して、これはこの作家の常套手段である夢でのセックスを強姦に近いスタイルでやり遂げてしまうのです。

 

その後、迷い込んだ四国の森の奥にあった謎の街で、15歳と50歳過ぎの佐伯さんの両方と出会う。年配の佐伯さんから、すぐに街を去るように諭され、後ろ髪を引かれつつその街を後にした。

 

山小屋に戻ったカフカを大島さんの兄が迎えに来てくれ甲村図書館まで送ってくれた。そしてカフカは実家に戻ることを選択した。

 

他方のストーリーの主人公ナカタさんは、幼い頃の事故で脳に障害が残り、読み書きや知的能力が弱い人物です。

そのかわり、ナカタさんは猫と話すことができる特殊能力があり(オオツカさんという猫からは影の濃さが半分くらいしかないといわれたことを気にしていた)、近所の人から猫探しを頼まれながら、その特別ボーナスでたまに大好きなウナギを食べて日々暮らしていました。

そんなある日、猫探し中に出会ったジョニー・ウオーカーという猫殺しの男を、彼からの要求でもあったのですが、猫を助ける代わりに殺害してしまいます。最後まで真偽は定かでないが、どうやらその男はカフカ少年の父親らしいのですが真相は闇です。

ナカタさんは、トラック運転手のホシノさんと出会い、何かに導かれるように高松へ向かいます。途中で、彼はもう一つの特殊能力により空からアジやイワシ、ヒルを降らせている。

 


そしてナカタさんには、「入口の石」を探すという使命があるのでした。
「入り口の石」を探すべく、トラック運転手のホシノさんは、カーネルサンダースと名乗る不思議なおじさんに導かれて探し当てることに成功します。

そして、ナカタさんの指示のもと「入口の石」を開けることに成功します。


その後ナカタさんは、ホシノさんの協力を得ながら高松市内をしらみ潰しに探してようやく甲村図書館へとたどり着きます。
そこで佐伯さんと会い話しをすると、佐伯さんはナカタさんに、自分がこれまで書いて来た自分の記録を焼却して欲しいということをお願いします。
ナカタさんが部屋を出た後、佐伯さんは机に突っ伏すように亡くなっていました。

一方、ナカタさんとホシノさんは、図書館を出た後に佐伯さんの記録を燃やします。
ナカタさんはそのあと、役目を終えたかのように、眠るように亡くなってしまいました。

ナカタさんが死んでしまい、遺されて「入り口の石」を閉じる役目を負ったホシノさんは、その時がくるまで、しばらくナカタさんの亡骸と一緒に過ごします。
やがてホシノさんはナカタさんの能力を受け継いだようで、猫と話せるようになっていました。

そして、トロと名乗る猫から、「邪悪なものが入り口の石を狙いに来る」と告げられます。
実際に、夜中になるとその邪悪なものが死体となった中田さんの口の中から現れました。
それは白くて奇妙な形をしており、なかなか倒すことができませんでしたが、ホシノさんは入り口の石を閉じて、そいつの行場を無くしてなんとか殺し、袋に詰めて焼きましたとさ。

 

なんてね、というわけで色々謎があるけど、そんなことはもうどうでもいいですね。

作家は、自分の作品に必要な要素に「セックスと暴力」はどうしても外せないというようなことを語っていますが、結局それでヒット作品を連発してるというわけですね。