第一話 終わりの終わり
「ねえ。君。君だよ。君っ!」
彼女は唐突に僕の後ろから現れ、そして、僕の腕を力いっぱいに引いた。
「君さ、月嶋昂蔵――ツキシマコウゾウ――でしょ。」
彼女は、意味ありげに微笑んだ。
「は?」
今になって、思い返してみると。僕が、彼女に初めて発した言葉はコレだっただろう。
「だよね!だよね!?だよね?」
僕が明確な答えを返さないので、彼女は急に自信がなくなったらしく、最後は疑問形になっていた。
「そうだけど。なに?」
「やっぱり!私、籐宮咲――トウグウショウ――に頼まれて来たんだけど。」
「咲に!?」
「そう、咲に。あ、ちなみに、私はミアって呼んでね。」
「咲は?アイツ、ドコ行ったんだ?」
「まあまあ。急がないで。咲が今、動けないから、私が代理で来たんだよ。」
「動けない!?どういうことだ?」
すると、彼女はスッと目を細め、
「そんなに大声出すと目立つし、怪しまれるよ。」
心底、うんざりとした顔で言った。
「知りたいんなら。ココに来て。」
彼女は一通の封筒を差し出した。
真っ白な無地の封筒。
僕が、封筒に目を落とした瞬間。彼女は踵を返した。
「あ。」
「読めばわかるよ。じゃあ。また。」
そう言って。彼女は、ちょうど、ホームに入ってきた電車に乗った。
これが、僕の終わりの終わりだったんだ。
彼女は唐突に僕の後ろから現れ、そして、僕の腕を力いっぱいに引いた。
「君さ、月嶋昂蔵――ツキシマコウゾウ――でしょ。」
彼女は、意味ありげに微笑んだ。
「は?」
今になって、思い返してみると。僕が、彼女に初めて発した言葉はコレだっただろう。
「だよね!だよね!?だよね?」
僕が明確な答えを返さないので、彼女は急に自信がなくなったらしく、最後は疑問形になっていた。
「そうだけど。なに?」
「やっぱり!私、籐宮咲――トウグウショウ――に頼まれて来たんだけど。」
「咲に!?」
「そう、咲に。あ、ちなみに、私はミアって呼んでね。」
「咲は?アイツ、ドコ行ったんだ?」
「まあまあ。急がないで。咲が今、動けないから、私が代理で来たんだよ。」
「動けない!?どういうことだ?」
すると、彼女はスッと目を細め、
「そんなに大声出すと目立つし、怪しまれるよ。」
心底、うんざりとした顔で言った。
「知りたいんなら。ココに来て。」
彼女は一通の封筒を差し出した。
真っ白な無地の封筒。
僕が、封筒に目を落とした瞬間。彼女は踵を返した。
「あ。」
「読めばわかるよ。じゃあ。また。」
そう言って。彼女は、ちょうど、ホームに入ってきた電車に乗った。
これが、僕の終わりの終わりだったんだ。
sacrifice 15
彼の。
“声”が聞こえます。
耳の中で。
脳の中で。
何かが。
何かに。
ぶつかって。
弾けたように。
瞬くように。
眸も。
眩む。
破壊力。
彼は......。
かれは......。
カレハ......。
“声”が聞こえます。
耳の中で。
脳の中で。
何かが。
何かに。
ぶつかって。
弾けたように。
瞬くように。
眸も。
眩む。
破壊力。
彼は......。
かれは......。
カレハ......。
sacrifice 15
彼の。
“声”が聞こえます。
耳の中で。
脳の中で。
何かが。
何かに。
ぶつかって。
弾けたように。
瞬くように。
眸も。
眩む。
破壊力。
彼は......。
かれは......。
カレハ......。
“声”が聞こえます。
耳の中で。
脳の中で。
何かが。
何かに。
ぶつかって。
弾けたように。
瞬くように。
眸も。
眩む。
破壊力。
彼は......。
かれは......。
カレハ......。
sacrifice 14
明るい。
明るい。
部屋の中。
眠りの中。
ふわふわふわと。
漂いながら。
近くで。
ホントに。
ホントに。
私の傍で。
何かが。
“音”
を発しています。
ゆっくり。
ゆっくり。
起き上がると。
眸を大きく見開いた。
彼の顔が。
私の眸に映っています。
明るい。
部屋の中。
眠りの中。
ふわふわふわと。
漂いながら。
近くで。
ホントに。
ホントに。
私の傍で。
何かが。
“音”
を発しています。
ゆっくり。
ゆっくり。
起き上がると。
眸を大きく見開いた。
彼の顔が。
私の眸に映っています。
intermission +
「...ちゃん。」
「...くん。」
「いっしょに帰ろうよ。」
「うん。いいよ。」
「今日の、算数むずかしかったよね。」
「うん。むずかしかったよ。でも、理科の実験おもしろかったよね。」
「ああ。アルコールランプ!」
「...ちゃん。マッチ擦るのこわがってたじゃん。」
「もう。だって、マッチ ってあんまり使ったことないんだもん。」
ははは。
「次の班も、いっしょになるといいね。」
「そうだね。」
「あ。もう、着いちゃったね。」
「ああ。」
「じゃあね、...くん。」
「...ちゃん、よっていかない?」
「えっ!いいの?」
「うん。いまから遊ぼうよ。」
「う~ん。いいよ。」
「おもしろかったね。」
「うん。またきてよ。」
「うん。またあそぼうね。ばいばい。」
「またあした。」
たったったっ。
ガスッ。
ドサッ。
「...くん。」
「いっしょに帰ろうよ。」
「うん。いいよ。」
「今日の、算数むずかしかったよね。」
「うん。むずかしかったよ。でも、理科の実験おもしろかったよね。」
「ああ。アルコールランプ!」
「...ちゃん。マッチ擦るのこわがってたじゃん。」
「もう。だって、マッチ ってあんまり使ったことないんだもん。」
ははは。
「次の班も、いっしょになるといいね。」
「そうだね。」
「あ。もう、着いちゃったね。」
「ああ。」
「じゃあね、...くん。」
「...ちゃん、よっていかない?」
「えっ!いいの?」
「うん。いまから遊ぼうよ。」
「う~ん。いいよ。」
「おもしろかったね。」
「うん。またきてよ。」
「うん。またあそぼうね。ばいばい。」
「またあした。」
たったったっ。
ガスッ。
ドサッ。
sacrifice 13
あなたといて安心しても。
瞼の奥で。
ちらつく不安。
それは。
不鮮明ながら。
いくら涙を流しても。
ぬぐいされないものでした。
いくら涙を流しても。
消え去ることは。
ありません。
ただただ泣いているときに。
あなたが撫でる。
わたしの頭。
わたしの髪。
わたしの頬。
とても。
冷たい。
冷たい。
あなたの手。
瞼の奥で。
ちらつく不安。
それは。
不鮮明ながら。
いくら涙を流しても。
ぬぐいされないものでした。
いくら涙を流しても。
消え去ることは。
ありません。
ただただ泣いているときに。
あなたが撫でる。
わたしの頭。
わたしの髪。
わたしの頬。
とても。
冷たい。
冷たい。
あなたの手。
sacrifice 12
最近私は自分の変化に驚きました。
気がつけば、あなたに話してほしいと思っています。
「ねぇ。あなたの名前はなんていうの?」
哀しそうな眸をします。
名前を知りたいことも、ありますが。
ほんとはあなたと話したい。
二人で会話をしてみたい。
あなたとわたし。
部屋の中での。
距離は近いけど。
ほんとは遠い。
遠いのでしょう。
気がつけば、あなたに話してほしいと思っています。
「ねぇ。あなたの名前はなんていうの?」
哀しそうな眸をします。
名前を知りたいことも、ありますが。
ほんとはあなたと話したい。
二人で会話をしてみたい。
あなたとわたし。
部屋の中での。
距離は近いけど。
ほんとは遠い。
遠いのでしょう。
sacrifice 11
彼はとても静かです。
一言だって。
話しません。
それは。
まるで。
語ることをやめたため。
語る言葉を棄てたため。
語れる言葉がなくなって。
しまったように見えました。
彼の眸の底には。
何かがある。
ようでした。
棄てた言葉は。
戻りません。
そこに残っているものは。
いったいナニだったのでしょう。
一言だって。
話しません。
それは。
まるで。
語ることをやめたため。
語る言葉を棄てたため。
語れる言葉がなくなって。
しまったように見えました。
彼の眸の底には。
何かがある。
ようでした。
棄てた言葉は。
戻りません。
そこに残っているものは。
いったいナニだったのでしょう。
sacrifice 10
彼の肌は甘いです。
彼の爪も甘いです。
彼の指も甘いです。
彼の手には。
無数の痕が。
私の残した無数の痕が。
二人の佇むこの部屋は。
灯りもないのに。
明るくて。
彼の傍で眠るたび。
気持ちが。
落ち着いて。
以前のような。
暮らしでは。
なくなりだしたようでした。
彼の爪も甘いです。
彼の指も甘いです。
彼の手には。
無数の痕が。
私の残した無数の痕が。
二人の佇むこの部屋は。
灯りもないのに。
明るくて。
彼の傍で眠るたび。
気持ちが。
落ち着いて。
以前のような。
暮らしでは。
なくなりだしたようでした。
sacrifice 09
深く。
浅い。
ゆらゆらとした眠りから。
覚めてみたら。
そこはやっぱり。
あ の部屋です。
白い白い。
あの部屋です。
心なしか青年は。
以前よりも。
私の近くに来ています。
彼の服の色もデザインも。
以前と変わりありません。
私の目覚めに。
気がついたのか。
彼は、額を撫でました。
優しく。
やさしく。
撫でました。
私の額を。
撫でました。
浅い。
ゆらゆらとした眠りから。
覚めてみたら。
そこはやっぱり。
あ の部屋です。
白い白い。
あの部屋です。
心なしか青年は。
以前よりも。
私の近くに来ています。
彼の服の色もデザインも。
以前と変わりありません。
私の目覚めに。
気がついたのか。
彼は、額を撫でました。
優しく。
やさしく。
撫でました。
私の額を。
撫でました。