糖尿病の前段階と診断された人々が食事と運動によって糖尿病の発症を4年間遅らせるだけで、死亡や糖尿病関連の健康合併症の長期リスクを軽減できることが、中国医学科学院・北京協和医学院の研究で明らかになり、2024年7月の「PLOS Medicine」に研究成果が紹介されました。

 

2型糖尿病は死亡や障害のリスクを高め、世界中で大きな経済的負担となっています。しかし、健康的な食事や運動量の増加などのライフスタイルの変化によって、前糖尿病と診断された人の糖尿病発症リスクを遅らせたり軽減することができます。

 

研究では、1986年から中国の大青市で実施された6年間の試験に参加した540人の糖尿病予備群を対象に、30年以上にわたって追跡調査を行いました。参加者は、健康的な食事、運動量の増加、またはその両方を含む生活習慣介入群に分けられました。

 

その結果、最初の診断後に少なくとも4年間糖尿病を発症しなかった人々は、早期に発症した人々に比べて死亡リスクと心血管イベントのリスクが大幅に低いことがわかりました。この保護効果は、4年間以上糖尿病ではない状態を維持した場合にのみ観察されました。

 

【出典】 Xin Qian, Jinping Wang, Qiuhong Gong, Yali An, Xinxing Feng, Siyao He, Xiaoping Chen, Wenjuan Wang, Lihong Zhang, Yuanchi Hui, Xiuwei Zhai, Bo Zhang, Yanyan Chen, Guangwei Li. Non-diabetes status after diagnosis of impaired glucose tolerance and risk of long-term death and vascular complications: A post hoc analysis of the Da Qing Diabetes Prevention Outcome Study. PLOS Medicine, 2024; 21 (7): e1004419 DOI: 10.1371/journal.pmed.1004419

 

 
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の新しい研究によると、若年成人期(20代)に炎症レベルが高いと、中年期(40代)で認知機能が低下する可能性があることが明らかになり、2024年7月の「Neurology」に研究成果が発表されました。
 
この研究は、成人初期の炎症と中年期の認知機能の低下を関連付けた最初の研究のひとつです。研究者は、アルツハイマー病やその他の認知症につながる脳のへんかは、発症に数十年かかることがわかっています。成人初期の健康と生活習慣が、中年期の認知能力にどんな影響を与えるのかについて分析したいという目的で今回の研究を行ったそうです。
 
研究は18歳から30歳までの2364人の成人を対象に18年間にわたって炎症マーカーのひとつであるCRPの検査を4回実施しました。認知テストはCRP測定から5年後に行われ、その時点で参加者のほとんどが40代、50代でした。
 
分析の結果、炎症レベルが低い人のうち、脳機能の処理速度と記憶テストの成績が悪かったのは、わずかに10%だったのに対して、中程度の炎症レベルで認知機能が低い人は20%程度でした。これ以外にも、認知機能の悪さと、炎症レベルの高さと身体活動不足(運動不足)、BMIの高さ、喫煙との関連も指摘されました。
 
研究グループは、炎症は認知機能を悪化させる要因になっている可能性があり、成人初期からの炎症レベルの高さが、中年以降の認知機能の低下に影響している可能性を指摘しています。

 

【出典】 Amber L. Bahorik, Tina D. Hoang, David R. Jacobs, Deborah A. Levine, Kristine Yaffe. Association of Changes in C-Reactive Protein Level Trajectories Through Early Adulthood With Cognitive Function at Midlife. Neurology, 2024; 103 (2) DOI: 10.1212/WNL.0000000000209526

フィンランドのトゥルク大学の研究で、30分間の運動が乳がん患者の血液中の白血球の割合を増加させて、がんの増殖を抑制する働きを高める可能性があることがわかり、2024年6月の『Frontiers in Immunology』誌に研究成果が掲載されました。

 

白血球は免疫システムの一部であり、がん細胞や細菌、ウイルスと戦いますが、すべての白血球ががん細胞を破壊するわけではありません。がん細胞を破壊する主要な白血球は細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞であり、がんの増殖を促進する白血球には制御性T細胞や骨髄由来抑制細胞があります。

 

研究には、乳がんと診断されたばかりで治療を開始していない20人の患者が参加しました。患者は自転車エルゴメーターを30分間こぎ、その前後に血液サンプルが採取されました。分析の結果、運動中にがんを破壊する細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞の数が増加し、がんを促進する制御性T細胞と骨髄由来抑制細胞の数は変化しないことがわかりました。

 

さらに、ナチュラルキラー細胞の割合が増加し、骨髄由来抑制細胞の割合が減少することも確認されました。しかし、これらの変化が腫瘍領域の白血球数の変化に繋がるかどうかはまだ不明です。運動後1時間でほぼすべての白血球タイプの数が安静時の値に戻ることもわかりましたが、白血球がどこに行くのかは現時点では不明です。

 

研究者らは、乳がんの種類によって白血球の運動反応が異なるかどうかも調査しました。腫瘍が大きいほどナチュラルキラー細胞の増加数が少なく、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体陽性のがんでは細胞傷害性T細胞の増加数が少ないことがわかりました。

 

この研究結果は、すべてのがん患者にとって運動は有益であり、今回の研究はこの考えを裏付けていると研究者は評価しています。

 

【出典】Tiia Koivula, Salla Lempiäinen, Joona Neuvonen, Jooa Norha, Maija Hollmén, Carl Johan Sundberg, Helene Rundqvist, Heikki Minn, Petteri Rinne, Ilkka Heinonen. The effect of exercise and disease status on mobilization of anti-tumo さらに、ナチュラルキラー細胞の割合が増加し、骨髄由来抑制細胞の割合が減少することも確認されました。しかし、これらの変化が腫瘍領域の白血球数の変化に繋がるかどうかはまだ不明です。運動後1時間でほぼすべての白血球タイプの数が安静時の値に戻ることもわかりましたが、白血球がどこに行くのかは現時点では不明です。 rigenic and pro-tumorigenic immune cells in women with breast cancer. Frontiers in Immunology, 2024; 15 DOI: 10.3389/fimmu.2024.1394420

 

米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究によると、細胞のメッセンジャーRNA(mRNA)とZAKと呼ばれる重要なタンパク質が、紫外線ダメージに対する細胞の初期反応を促し、細胞の生死に決定的な役割を果たしていることを発見し、2024年6月の「Cell」誌に研究成果が掲載されました。

 

紫外線がDNAにダメージを与えることは、以前から知られていますが、mRNAにもダメージを与えることは今回の研究で初めて明らかになりました。

 

さらにこの研究では、RNAは細胞へのストレス対処方法を支持する「第一応答者」として機能していることも明らかになりました。

 

RNAは細胞に対して「ここに大きな損傷がありますよ。何か対策を講じてください」と伝える役割を担っており、ZAKは、リポゾームの衝突を感知して細胞の損傷を特定するプロセスで重要な役割を担っていることも明らかになりました。リポゾームは紫外線ダメージを受けたRNAに沿って移動し、損傷したメッセージを解読できないために衝突が発生します。この衝突によって、ZAKが活性化されて、細胞の運命を決定する一連のイベントが引き起こされます。

 

今回の研究成果について研究グループは、紫外線に遭遇した際に、細胞が生死を決定する仕組みを理解することで、皮膚がんやその他のがんの根本原因を解明するのに役立つ可能性があると評価しています。

 

【出典】

Niladri K. Sinha, Connor McKenney, Zhong Y. Yeow, Jeffrey J. Li, Ki Hong Nam, Tomer M. Yaron-Barir, Jared L. Johnson, Emily M. Huntsman, Lewis C. Cantley, Alban Ordureau, Sergi Regot, Rachel Green. The ribotoxic stress response drives UV-mediated cell death. Cell, 2024; DOI: 10.1016/j.cell.2024.05.018

 

 

昨日は七夕でしたので、寸松庵色紙・古今和歌集抄本を臨書しました。巻四 秋上 紀友則 天の川 浅瀬白波 たどりつつ 渡り果てぬに 明けぞしにける(美しい天の川の浅瀬や白波ばかりをたどっていたら渡り切る前にもう夜が明けてしまった…)



 

米国ボストン医療センターの研究によると、教育や社会経済的機会が豊富な地域で育つ乳児は、脳の活動や認知機能の発達が向上することがわかり、2024年6月の「Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics」に研究成果が発表されました。

 

この研究は、65人の乳幼児を対象に地域の機会が乳児の脳活動と認知発達に及ぼす影響について調査しました。その結果、地域とのコミュニケーションが多い地域に住む乳幼児は、生後6か月で脳機能が高く、生後12か月では認知能力が向上することが明らかになりました。

 

特に教育機会が多い地域では、乳児の脳波(EEG)の中周波数から高周波数帯域でのEEGパワーが高く、これがのちの言語及び認知スコアの向上と関連していることが示されています。研究者は、教育機会が多い地域では、子どもたちが認知刺激を受ける活動に参加しやすいために、脳機能の発達を促進するためのリソースにアクセスしやすいことも発見しました。

 

この研究成果は、地域の教育機会や社会活動が乳児の発達に重要であり、質の高い教育へのアクセスが神経発達を促進する可能性を示唆しています。

 

【出典】 Mei Elansary, Wendy S. Wei, Lara J. Pierce, Dana C. McCoy, Charles A. Nelson. Association of Neighborhood Opportunity with Infant Brain Activity and Cognitive Development. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 2024; 45 (3): e217 DOI: 10.1097/DBP.0000000000001249

美味しいお酒を飲んで記憶が薄い中でホテルに戻り、朝目覚めるとルームキーがどこにもない!2時間探しまくってタイムアップでフロントで弁償代金5,000円を払う。よりによって小洒落たレトロなキーなので高い!!!「あ~口惜し~!」と帰京の新幹線に乗ったら、携帯電話が鳴り「お客様、ルームキーは鍵穴に刺さったままでした!返金しますので…」と言われたが、時すでに遅し。次の上洛時の楽しみとしよう。





食物繊維が健康に与える影響は個人差があることが米国コーネル大学の研究で明らかになり、2024年6月の「Gut Microbes」で発表されました。

 

この研究は59人の参加者を対象に7週間にわたって3種類の食事療法をテストし、コーネル大学女性学長協議会と国立衛生研究所の支援を受けて行われました。 この研究は、難消化性デンプンに注目し、パン、シリアル、青バナナ、全粒粉パスタ、玄米、ジャガイモなどに含まれるこの食物繊維が腸内細菌に与える影響を調査しました。研究者たちは、2種類の難消化性デンプンに対する腸内細菌の反応を特定し、人によってその効果が異なることを発見しました。ある人には有益でも、他の人にはほとんど効果がない場合もあります。この違いは、腸内微生物叢の多様性と構成に関係しているようです。 

 

長年にわたり食物繊維の摂取が推奨されてきましたが、推奨量を守っている人はわずか10%未満です。そのため、個々のデータを収集し、最も効果的な食物繊維を提案する方が良いとされています。

 

【出典】 Sri Lakshmi Sravani Devarakonda, Dorothy K. Superdock, Jennifer Ren, Lynn M. Johnson, Aura (Alex) P. Loinard-González, Angela C. Poole. Gut microbial features and dietary fiber intake predict gut microbiota response to resistant starch supplementation. Gut Microbes, 2024; 16 (1) DOI: 10.1080/19490976.2024.2367301