白井智之さんの「名探偵のはらわた」を読みました
白井さんの持ち味はグロい設定と緻密な論理構成にあるわけで、タイトルで「はらわた」ときたら、これはもう!
と思っていたら、主人公の探偵助手の名前が原田亘(はらだわたる)であるという設定にまずズッコケさせられました
内容的には、津山30人殺し、阿部定事件、帝銀事件、青酸コーラ事件などの超有名犯罪をモデルにした7つの大犯罪の犯人たちが地獄から現世に蘇り、自らの猟奇的犯罪を繰り返そうとするというもので、なかなか斬新です
そのような世界観を作るための導入である第1話「神咒寺事件」は、人当たりの良い仏師が仏像を彫っていた真の理由にゾクゾクさせられましたし、伏線がとても巧く組んであるために、間違ったはずの推理が非常に魅力的でした
また、大正から昭和初期に活躍したという名探偵の「半脳の天才」こと古城が登場するラストには、グググッと引き込まれましたね
それにしても、シベリアで砲弾をくらって脳が欠けたという「半脳の天才」とは・・・
思わず、「鶴見中尉」のモデルをネットで検索してしまいました
第2話「八重定事件」と第3話「農薬コーラ事件」を経て、最終の第4話「津ヶ山事件」もすごくよかったです
蘇ってきた人鬼は現世で生きた人間に乗り移るため、発見したら他に乗り移る前にぶっ殺すしかないという設定から、当然最後はあの人が鬼になるだろうと思って読み進めるわけですが、そこを逆手に取ってくるところや、主人公が幼少期に出くわした深刻なトラブルを伏線として回収してくるところはさすがでした
スマホの伏線や津ヶ山事件の犯人の遺書を利用した推理も読みごたえ十分でしたし、古城を死に追いやろうとする動機をめぐる考察は大爆笑もので最高でした
最後の締め方も、ちょっと「イド」のラストみたいでよかったです
昨年のマイベスト1位は白井さんの作品だったのですが、今年も本作が上位に食い込むことはすでに確実です
↓本作の表紙も遠田さんですね(でも、これは作中の誰???)