市川寛/検事失格 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

ものすごく今さらながら、市川寛さんが8年前に書かれたノンフィクション「検事失格」を読みました

 

市川さんは、超難関だったかつての旧司法試験に若くして合格し、理想に燃えて検事になりますが、あっという間に現場の現実に「矯正」されて、最終的には暴力的な取り調べを行ったということで辞職を余儀なくされます

 

困ったときには都合の良い調書を先に作っておいてから「これはお前の調書ではない。俺の調書だ!署名しろっ!」と言い放てばいいのだと指導する上司、後知恵でネチネチと担当者の失敗を責めたてる「控訴審議」という集団リンチ、法廷外活動と称する裁判官のご機嫌取り、個人のスタンドプレイから生じる捜査の暴走など、さもありなんというエピソードが満載です

 

市川さんが司法試験に合格したのは、今と違って検事のなり手がなかったはずの時代ですが、そのような時期に手を挙げてくれた人間に対するやりがい搾取はホントひどい

 

今では弁護士になっている市川さんのツイッターを拝見すると、とてもバランス感覚のある方だと感じられます

 

本書の内容もとてもバランスがとれた内容で、終始失笑させられた別の元検事の回顧本とは、雲泥の違いでした

 

もっと愚鈍だったり下衆だったりであったならば、違った結果もあったのでしょうか


でも、そういう個人の問題にしてしまうのは、本質的な解決にはつながりませんね

 

市川さんは、先日フィクション「ナリ検」という小説を発表されました

 

今度はできるだけ早いうちに読みたいと思います