昨日から、早稲田大の発行誌「e-style book」が話題になっていますね。
私も、早稲田のHPにお伺いして、羽生結弦インタビューの全文を拝読させていただきました。
↓こちらの【e-style book閲覧】ボタンから閲覧可能です。(専用のアプリをダウンロードする必要があります)
写真が2ページ、インタビュー記事は3ページ。羽生くん部分は、全5ページですが、そのインタビュー内容の濃い事!(他の方々は1人1ページです)
卒論をご指導くださった西村教授の問いかけに対して、羽生くんの回答がびっしり詰め込まれ、さながら"ミニ講演会"の様相を呈しています。
今更ながら、羽生くんの頭脳明晰さ、発想の柔軟さ、言語能力の高さ、目標遂行能力の高さetc.…ただただ目をみはるばかりです。
今回のインタビューのメインテーマは、「集中力」でした。
中でも、この言葉は、アスリート全員にとっての金言となり得ると思います。↓
「人間は、直感的に逃げる事を考える生物だと思うので、逆に逃げられない状況になると本能的に深い集中状態に入れるものと考えています」
「学ぶのであれば、集中して自分のものに、自分の血肉にしたいという気持ちでした。」(羽生結弦)
羽生くんにとってのeスクールでの学びは、単なる「学習」では決してあり得ず、まさに「学修」(学び身につける)であったのだなぁと、深く頷かされました。
羽生くんは早稲田大学eスクールで学べたことの感謝を述べていらっしゃいましたが、
私が思うに、
早稲田大学の方こそ、「よくぞ早稲田で学んでくださった!ありがとう!」と言いたいところなのではないでしょうか。
他の学生に対する「在るべき姿」として、羽生くんの学びの姿勢&言葉が紹介されたに違いないと考えます。
改めて、羽生くん、早稲田大学ご卒業、おめでとうございます!㊗️🎉
追記です。
在校生からの素敵なツイートも上がっていました。↓
早稲田大学人間科学部eスクールのe-Style bookが公開。
— しのぴー@🇻🇳ベトナム中部(ダナン・フエ・ホイアン) (@6261shinopi) 2021年8月2日
「本気で学びたい人に来てほしい学びの場」と羽生結弦先輩のインタビューは圧巻。
今年からの1年生ですが自分も頑張ります!環境・福祉・情報を軸に学際的に人間について学びます。ご興味ある方お気軽にご質問ください!https://t.co/nr2r1qkleZ pic.twitter.com/0YW2qAsKjk
さて、早稲田のインタビュー記事を読んで、思いだした記事があります。
平昌五輪のすぐ後、2013年3月に、岡本純子氏が「東洋経済」に寄稿された、「羽生結弦は『異次元のコミュ力』を持っている」という文章を紹介させていただきたいです。
なお、岡本純子氏は、企業のエグゼクティブのスピーチ・コーチであり、プロのコミュニケーション・ストラテジスト(会話能力を戦略的に活用することを提唱する専門家)でいらっしゃいます。
羽生結弦は「異次元のコミュ力」を持っている
「しゃべりながら、思考を整理する」
著者:岡本純子
【驚異のメンタルの礎になった羽生選手の言葉力、表現力とは?】
(中略)
震災や、ケガ、プレッシャーを乗り越えて、成し遂げた偉業というストーリー性や肉体的・精神的強さ以外に、彼を異次元の存在にしているのが、その卓越したコミュニケーション能力だろう。驚異のメンタルの礎になった羽生選手の言葉力、表現力の裏側に迫ってみたい。
(中略)
【羽生選手が大切にしている「自分との対話」】
羽生選手の場合、この「自分との対話」を非常に大切にしている、というより、むしろ、「大好き」なのかもしれない。彼はこう語っている。
「もともと僕は考えることが好きで、まあ考えることというよりも、しゃべることが好きなほうが強いんですかね。自分が考えて何か疑問に思ったことについて追求し、そして教えてもらって、さらにしゃべりながら自分が覚えていく。そういったことがもとから性格上ありました。なので、その考えていることを口に出す。いわゆる考えることを表現する。(中略)それがスケートに生かされている」
「メディアの方にインタビューしてもらって、自分の思考を整理させていただく時間とか、インタビューをしてもらうことによって覚える言葉だったり、そういうものもあった」と話しているが、長年の競技生活の中での無数のインタビューに対し、真摯に取り組むうちに、あらゆる問いに対する答えを、きっちりと言語化し、準備するマインドが出来上がったのかもしれない。
「発明ノート」というノートに、ひらめきや学び、思いをしたためるという習慣も、そうした力を積み上げる役割を果たしたと考えられる。
(中略)
羽生選手は頭の中で、つねに何らかの問いを反芻し、思考し、言葉にする動作をつねに続け、その力を磨いてきた。こうした「セルフトーク」が強靭なメンタルに結び付いたとしても不思議はない。
(中略)
【羽生選手の話にはいつも「文脈」がある】
2つ目の「ゴール設定力」についても、「自己との対話」の中で、「明確な目標」を導き出したと推察されるが、羽生選手のすごみは「ゴールのその先」を見る力があることだ。ただ単に「金メダルを取る」というゴールを目指していたのではなく、その先の「子どもたちに夢を与える」「日本人として誇りに思ってもらう」「震災の被災者に元気になってもらう」といった金メダル後の「景色」を頭に描いていた節がある。
(中略)
ある意味、金メダルはもっと高みにあるゴールを達成するための「手段」でしかなかったのではないだろうか。自分の言動が第三者にどういう影響を及ぼすのかを理解し、彼らの視点で物事を俯瞰する力を持っているからこそ、彼の話にはいつも「文脈」がある。
【羽生選手は、アスリートを超えた表現者】
3つ目のイメージ力はまさに、こうしたストーリーを創造する「想像力」でもあるわけだが、自分の目指す演技を可視化し、頭の中で描き出す力。「想像と一致させようとすると跳べる」と語っているが、思考の言語化を繰り返すことで、イメージがより鮮明に浮かびやすくなる。競技中の自分だけでなく、ファンや家族などをビジュアル化することで、大いに自らを奮い立たせてきたのだろう。
(中略)
最後の「感情コントロール力」だが、これについては「期待される感覚が好き。それはプレッシャーじゃなくて快感」「主人公になりたいタイプ」と語っているように、緊張やプレッシャーを興奮に変えることができるタイプのようだ。
心を落ち着かせるとき、アドレナリンをポンプ注入するように興奮を呼び起こすときなど、まるで温度調節器のように、感情をコントロールすることが求められるわけだが、こうした制御力と表裏一体にあるのが驚異的な「憑依力」だ。
(中略)
「バレエやミュージカルのように、芸術とは、あきらかに、正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力がないと、芸術として成り立たない」「スケーターって、『アーティスト』であり『アスリート』でもある。どっちの魂も捨てちゃダメなんだと思っています」と語るように、技術と芸術の双方を究めようとする姿勢は、単なるアスリートを超えたまさに表現者でもあり、「演じ切る」「演じ分ける」力を持つ数少ない希代のパフォーマーといえる。
そもそも、羽生選手のコミュ力の高さは、コミュニケーションにとって最も重要な「価値を読み取る力」、つまり、相手にとってどういった情報が価値を持っているのか、ということを瞬時にくみ取る「共感力」が極めて高いということに基づいている。
「これを言ったら、メディアが、国民が、ファンが喜ぶだろう」というツボを怖いほどに理解している。相手が聞きたいだろうと思うことをつねに届ける力、何が見出しになるかを予見する力、ユーモア、掛け合いをこなす瞬発力。どこをとっても、圧倒的な超越感を醸し出すコミュ力なのである。
一部抜粋は以上です。
岡本氏は言葉のプロとして、「羽生結弦」を実に論理的に理性的に分析してくださっています。
私も全文同意です!
是非、皆さまも、↓にお伺いして、全文をご覧になってください。お勧めです。