垣間見る空

椅子に座り
なにも考えず
シャッターを 切れば いつもの眺め
見上げる窓から
切り取られた空が いつもの空
偽善的で デリカシーに欠け 臆病でいて 傲慢な
外の世界を 遮断して 切り離す 窓
芳しく 美しく やさしく 清らかで 憧れに満ちた
外の世界へと つなぐ 窓
私は 都合よく ブラインドを 開け また 閉めて
その 向こう側を 垣間見る

切り取られた空 わずかな欠片
私は 残されたピースを 想い描いては
唯一解を求める
ジグソーパズルのように
けれども
空は パラドックスとジレンマに 満たされ
盤面を埋めることは 叶わない
いつしか
夕闇に 最後の光 溢れて
今日と明日の 隙間を 垣間見る 夕暮れ

そして
天と地の あわひは 閉じて
夜の領分
もう
眺めているだけは
やめにして・・・
光を 脱ぎ捨てた
あなたの
少し
汗ばんだ 背中に
そっと
触れてみる
「 夜の全裸 」 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
アザミの花~高原の夏の日

高原の夏の日
ひんやりと 目覚める朝
山並みは遠く 朝靄は消えず
低い空に 呼応して 雨になった一日

高原の夏の日は なぜだか淋しい
いつもの暮らしに溢れる
人と物が きしむ音を 聴かないせいだろうか
街の暮らしは 静寂を恐れている

高原の夏の日は 別れの記憶に つながっている
畑の中をゆく 単線 二両編成の列車
白樺の樹皮は 書きかけて棄てた
破れた便箋のように 風に揺れている

それでも 人は 愛するのでしょう
短く 儚い 夏と知っても
アザミの花が 夏の花であると 気付かれることも無く
時に 自分の棘で 傷つき 傷つけながら
光に 向かって その蕾を 開こうとするように
「 口をもて 霧吹くよりも こまかなる 雨に薊の 花はぬれけり 」 ※薊(アザミ)
長塚 節
「 あなたに届くように 」 松任谷由実
※ もう そちらでは夏のようですか また いつか訪ねてもいいですか・・・
紅萌 ~ くれなゐもゆる

車を 端に 寄せて
自動販売機へと 百円玉を投じる
その
刹那
さえ
くれなゐは 見掛けよりも 大胆に
雲を染め 色を増す

使い道も無さそうな 端切れのような 雲でさえ
律儀にも その 色に 染めて
坂道のよう 勢いは 緩むことなく
昼間は あれほど 頑なに
眩い光を 弾き返してみせた 海の面さえ
穏やかに その 色を
受け入れているように 見える
それは
空の 勝利なのか
それとも
海の 寛容なのか

立ちすくむ
我が身すら 染められて
この 手のひらを
眺めて みれば
もう
考える必要は なにも無く
ただ
ただ
感じていればよい
空も 海も
私も
いずれ
程なく
闇へと
溶けてゆくのだから・・・
「 安里屋ユンタ 」 坂本龍一
※ 田草取るなら 十六夜月夜 二人で気兼ねも やれほに 水いらず・・・