一疋の青猫 -35ページ目

私の初体験~ヤクルトの甘酸っぱい記憶~(完結篇)


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実のところ 私は幼い頃

「ヤクルト」 を飲んだ記憶があまり無いのです

もちろん 嫌いだった訳ではなくて

親 特に母親が好まなかったからでした

ただ 本当にそうだったのか 例えば経済的なものだったのか

今ではそんな推測もできますが 当時はとにかく

「 歯が悪くなるから 」

「 牛乳を飲みなさい 」

なんて言われるばかり ねだってみても 一蹴されていたように思います

*

そんな記憶が おぼろげにも残っている頃の話

そう 私が 小学校に上がったばかりの頃は 母も昼間は勤めに出ていて

夕方 学校から帰ると ひとつ違いの妹と毎日 家の中で留守番をしていました

当時住んでいたのは 父親の会社の社宅で 古い日本式家屋の一軒家でした

玄関は格子の入った引き戸で 間口が広く カラカラと軽い音

父親や母親がその音を響かせると 玄関まで走って迎えに出たものでした

格子の下半分は擦りガラス 上半分には透明なガラスが入っていて

夏の日 雷が鳴り始めると 格子の透明なガラスの隙間から 走る稲妻を眺めていました

また ある学校の帰り道 捨てられた猫を見つけて 抱っこしたら どこまでも着いてきて

お父さんに叱られると思った私は 妹の手を引っ張って走って帰りました

それでも猫は家までついてきて 擦りガラスの向こうに影を映して 繰り返し鳴きました

猫の鳴き声と 迫る父親の帰宅時間 「お兄ちゃん、どうする?」 と妹の声

大きな引き戸の玄関には なぜか 切ないような記憶が多いのです





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そんな ある夏の日のことでした

勢いよく 玄関の引き戸が開いて 同じように勢いのいい声が響きました

休日で家にいた母親に付いて 私と妹も玄関に出ました

そこには 短髪で汗を掻いて 肩から大きなバッグを提げた 見知らぬおじさん

玄関内も割と広めで 数人が立ち話ししても支障のないような広さでした

その男の人は 挨拶もそこそこに

「 よかったら コレ どうぞ ! 」

と言って 造り付けの下駄箱の上に バッグから取り出した物を無造作に置きました

その棚の上にあったのは 冷えて水滴をまとった 「ヤクルト」が三本

「 ボク 好きだよね? 飲みたいよね? 」

と 私に飲んでもいいよと しきりに勧めます 私がそっと手を伸ばしかけた時

「 結構です うちは要りませんから 」

と 母の声 そして 眼で私をたしなめます

それでも簡単には男の人も引き下がらずに

「 お隣りさんも契約していただいたのですよ 」 等々・・・

母も母で それを受け入れることは無く 私にいつも言うように

「 歯が悪くなるから 」 「 牛乳を取っているから 」 等々・・・

私は母親の後ろに半分隠れて そのスカートを掴みながらも

どうしても 棚の上の「ヤクルト」が気になって仕方が無く

温度差に水滴が大きくなって 小さな水たまりが広がって行くのを じっと眺めていました

それに気付いてか また 男の人は

「 でも ボク やっぱり飲みたいよね 」 「コレは契約とは関係無いから 」

と 私の手に「ヤクルト」を持たせようとしました

「 本当に結構ですから ! 持って帰ってください ! 」

母の語気に その場の空気が変わったのは 幼い私にもなんとなくわかりました

男の人の顔からも それまでの笑顔が消えていました

「 わかりましたよ 」 と呟くように言うと 申し込み書類などを片付けた 次の瞬間・・・

棚の上にあった 「ヤクルト」 を無言のままに飲み始めました

しかも 一本目を飲み干して

私の顔を見ながら 二本目を飲み干して

そして とうとう 三本目も一気に飲み干してしまったのです

男の人は 空いた容器も そのままに残して 黙って玄関を出て行きました

カラカラ と 音を響かせながら・・・

*

その後 母親となにか話をしたのかどうかは覚えていません

それでも私は まだ飲みたくて仕方が無くて

もうどうしようも無いのに なんだか悔しいような残念なような気持で

掴んだままの 母親のスカートを揺すっていたのを憶えています

こんな時 物わかりのいい妹は もう部屋に戻ってテレビを見ていました

いつまでも グズグズ言っているのが いつでも私でした


アタマや理屈で考えれば 明白な答えも なかなか認められずにいつまでも無い物ねだり

これは オトナになって ストローでヤクルトを飲むようになっても変わらない

私と言う人間の どうしようもないところなんだなあ と 思っています


その日以来 しばらくは 「ヤクルト」 を貰ったりしても

飲んではいけないような気がして 母親の顔を見たり いらないと言って強がってみたり(笑)



あの 小さな容器の中には


乳酸菌とともに そんな 甘酸っぱい記憶も含んでいる


「ヤクルト」 なのでありました


*

*

*


おしまい





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三日にわたり 四方山ヤクルト話(笑)にお付き合いいただき ありがとうございました

ヤクルト三部作(笑) ここに完結です








「 Yesterday Once More 」  Carpenters

* Every Sha-la-la-la Every Wo-o-wo-o Still Yakult・・・














正しいヤクルトの飲み方(後篇)


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今回は ブログ400回記念(笑)として前後篇 特別編成にてお送りします

( 前篇はこちら )


極細ストローの登場によって 私のヤクルト論の正当性は認められたものの

手放しで喜ぶほど 事態は単純なものでは無かった 一例を挙げるならば

5本パックには付いているストローが 10本パックには付いていないといった

整合性に欠けた 不可解な事実の存在である

これは メーカーであるヤクルト内部にも 挙党一致とはいかない民主党のような

内部抗争 主導権争い 「反ストロー派」による 何らかの動きがあるのではないか? 

これは より考察を深めていかねばならぬと思い 向かったネットには 更なる衝撃の事実が!


まず 検索窓に 「 ヤクルト ストロー 」とスペースで区切って入力していくと・・・

最近の検索エンジンは 予想される検索キーワード候補を勝手に並べてくれる

そんな仕組みになっているのだが 入力した 「ストロー」 に続いて

「ヤクルト ストロー いらない」

などと言う 検索キーワードが上位に表示されているでは無いか!


戸惑いと怒りと悲しみに震える指先で マウスをクリック!


その検索結果を見るに 時代はまだまだ 私には追いついていない・・・どころか 

まるで焼野原であった 未だ燻ぶり 立ち上る煙を前に 私は膝をついた

この国に まだ 民主ストロー主義は根付いていないのだ・・・


そんな惨憺たる検索結果の中のひとつ

ネット上で質問をすると誰かが答えてくれるというサイトがありますね

そこに 以下の質問があった



Q: 5本パックのヤクルトについているストロー、皆さんはどうしていますか?
私はストローを使わず毎日飲むので沢山貯まってしまっています。
捨てるのももったいない気がしてなにかいい使い道がないかなと思っています。





このような質問が為されること自体 嘆かわしいことではあるのだが

この質問に対して寄せられたいくつかの回答に 我が国の置かれた惨状を見ていきたい




A1: 残念ながらそのまま使わずに捨てています。


「残念」 と言いたいのは私です 是非とも使ってください!




A2: 素直に捨てています。


「素直」 と言うのならば 素直に使って欲しい!




A3: 貯まったのは、捨てています。


貯まったならください!




A4: 子供が工作で使ってますよ。


ヤクルトを飲んでから(使ってから)工作に使うのが良いでしょう




A5: アルミをはぐって直接飲むのでストローは使いません。


まさに ヤクルト飲みのヤクルト知らずです 本当の味を知って欲しい!




A6: 使い道がないので捨てています。 明日、知り合いのヤクルトおばさんにストローをなくすように言おうと思います。


もう、ほんとに。やめて~!!




A7: たまにストロー5本いっぺんに1本のヤクルトに差して飲んでみます。 やらないときは捨てています。


この罰当たりモノめ!!



( このQ&A元ページへのリンク )

*



と いった具合に 極細ストローでいただく「ヤクルト」の素晴らしさを

ご存じ無い方々が まだ少なくない現状に驚きを隠せません

我が国は いまだ 「ヤクルト後進国」 と言える現状なのかもしれません

私は 荒廃したこの土壌に 新しい「ヤクルト飲み」の芽を育てていきたいと思います

「ヤクルトとストローのやさしい関係」 について 微力ながら訴えていく所存です


まさか このブログをご覧の皆様にそのような方はいらっしゃらないかと思いますが

もし 万が一 ご経験が無いようでしたら ぜひ 一度 ストローをお試し下さい

新たなる カゼイシロタ株と 素晴らしき乳酸菌の世界が きっと広がることでしょう



おしまい^^




と 思いきや


次こそいよいよ ヤクルト三部作 「完結・番外篇」 です(笑)



( 「 私の初体験~ヤクルトの甘酸っぱい記憶~ 」 へと続く・・・ )





正しいヤクルトの飲み方(前篇)


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近年 スーパーなどで売られている 「ヤクルト」 5本入りパックには

「極細」 のストローが添付されているのをご存知でしょうか?

初めてこの 「極細ストロー付ヤクルト」 に出会った時

私が 幼い頃から抱いていた持論が ようやくメーカー側にも認められたことを実感し

とうとう 時代が私に追いついたと 胸が熱くなりました


私が幼い頃 まだ天使のようで 通りすがりのおねえさんが 「フフフ」 とか言いながら

あたまを撫でていったあの頃・・・

私はヤクルトを飲む際 爪の先などで なるべく小さな穴を開けて飲んでいました

当時は 65ミリリットルと内容量の極めて少ないヤクルトだけに

それで沢山飲んだ気になる 単に 幼くも貧しき工夫だったのかも知れません

ところが・・・

それから数年 ヤクルトのお蔭もあってか スクスクと育った私

誰だって 大人にはなりたくない けれど 子供のままではいられない

男っぷりも上がって いつまでも ヤクルトをチュウチュウしている訳にもいかない

そんな訳で 威勢よく アルミ箔のフタをひっぺがして ぐいっと 一気に飲んでみると!

「何かが違う」 のです

味の濃さと言うか 飲み干した後の 妙に軽いあの容器の空っぽ感とか 達成感とか

とにかく 私が飲み慣れてきた あの味とは明らかに違いました

そこで試しに フタを閉じて 少しずつチュウチュウしてみると やっぱり懐かしい あの味が!

この時 私は確信しました 「ヤクルト一気に飲むべからず!」 と

それでも 夢見る頃を過ぎた私が 今更 小さな穴でチュウチュウすることは認められず


それからというもの

後戻りの許されない 大人への階段を上りながら

時代もバブル景気に膨らんで いつしか少年の心はどこかへ置き忘れ

「ヤクルト」からも遠く離れて 小さな容器と言えば徹夜明けの 「ユンケル」へと

大きく移ろいゆく時代の 荒波に翻弄されては もがき続けた私でした


そして今

世紀をまたぎ 更に 年月を経て

それぞれ 人に言えぬ苦労も 努力も 失敗もあったのでしょう

再び ここに 奇跡の再会を果たした

「極細ストロー」 と 「ヤクルト」 と 「私」


感慨深いものを 感じております



*



と 物思いに耽っていたところ

私の時代認識こそ 大きく誤っていたのかと言う事態が発生!




( 後編に続く・・・ )