宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ) -25ページ目

宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ)

70年代や、あの時代に輝いていたアレやコレや。
クリエイティブディレクターが語る、「思い出のエッセイ」です。

ワル

♪おまえなら どう生きる 閉ざされた明日を・・オレはワル、ワル、ワルがなぜ悪い♪ 写真のレコジャケは、1973年に東映系で公開された映画「非情学園ワル」のテーマ曲。歌っているのは尾藤イサオだけれど、マイナー過ぎて知っている人は少ないだろう。もともと少年マガジンに連載されていたマンガ「ワル」が実写で映画化され、主人公を谷隼人が熱演した。風の噂で、原作者である真樹日佐夫の自伝だと聞いて、恐れおののきながらマンガを読みふけっていた憶えがある。なぜなら、それまで読んだマンガの中でも飛び抜けて残忍な主人公だったからだ。学ランの背中に仕込まれた木刀を、「一体どうやって抜くんだろう?」と思いながらも、なぜかそのニヒリズムに当時は憧れた。高度経済成長が叫ばれ、輝くばかりの未来に浸っていた時代に、あんなにもダーティな存在感。光には必ず影があることを、主人公の氷室洋二は叫んでいたのかもしれない。「不良」と書いてワルと読んだのは、きっとこの頃からだろう。真樹日佐夫と言えば、スポ根マンガの生みの親 梶原一騎の実弟として有名だけれど、私の中ではむしろ「ワル」のモデルとしての存在の方が、今でも大きい。

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五十嵐じゅん

あるバラエティ番組を観ていたら、中村里砂という少女が出演していた。話を聞くと中村雅俊の3女だという。ということは、五十嵐淳子の娘でもあるということだ。中学時代のほんの少し、私は五十嵐淳子に心を奪われた。いやまだ、五十嵐じゅんだった頃。写真のレコジャケは、そんな1972年の貴重な楽曲「愛のシーズン」なのである。歌がうまいか、と聞かれれば即答で否と答えよう。曲がいいのかと聞かれても、首をかしげるに違いない。では何がそこまで・・と問われると「魔性」と言うよりほかはない。天地真理や麻丘めぐみ、浅田美代子など当時のアイドルにはなかった色気のようなほのかな香りを、あの頃の五十嵐じゅんは持っていたのだ。「ベスト30歌謡曲」という人気番組をキンキンこと、愛川欽也が司会を務めていたけれど、そのアシスタント的な役割で五十嵐じゅんは側にいた。その存在感は、中学生だった私に、なぜか禁断の恋を連想させた。中年のオヤジに寄り添うその女性に、行儀悪く言えば不倫の匂いがしたのだろう。実に勝手な思い込みである。いつしか、五十嵐淳子と改名し、私のそんな思い込みは消えていった。けれど、75年の映画「阿寒に果つ」で魅せた妖艶さを私は忘れない。中村里砂を見た一瞬、あの時の香りが、ふと私の横を通り抜けた。

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高田みづえ

ご無沙汰しているうちに季節はどっぷり梅雨へ。湿気まじりの空気を吹き飛ばすような、明るい曲を探していたら、こんな一枚に出会った。写真のレコジャケは、1978年高田みづえの「花しぐれ」。一般的には、デビュー曲の「硝子坂」がメジャーだけれど、私は4枚目のこの曲が好きなのだ。高田みづえは、フジテレビ系の「君こそスターだ!」の出身。同じ番組出身の林寛子や石川ひとみがアイドル性で選ばれたのに対して、完全に歌唱力で勝ち抜いた歌手だった。後のスーパースター山口百恵さえ「スター誕生」に出た頃の歌唱力はイマイチだったのだから、TVのオーディション番組から出た歌手の中で、高田みづえの歌の上手さは群を抜いていた。けれどそれだけに、アイドルにはなれない。歌の上手さも、そのあどけなさがネックにもなっていた。そんな中で、「花しぐれ」は新境地を拓いた。♪雨の街に呼び出されて傘も持たずに飛んで来た 私髪を切りすぎたの、まるで男の子みたいよ♪ 当時ノリに乗っていた作詞家 松本隆の言葉が光る。男の子みたいな印象、どこか報われない女の子、悲し気なアイドル。そんな風情を私は高田みづえに感じていた。♪五月雨、春雨、長雨、 雨にもいろいろあるけど、涙は拭くわ♪ この季節、そんな少女を想うのも、いいかもしれない。

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