安倍元首相の暗殺後、憲法改正へのムードが高まりました。とは言いつつも、TVや新聞で憲法改正についての議論や考察などはまったく報道されていません。

憲法改正は国民にとって重要である事なのに、主流メディアはそのことを殆ど取り上げず、TVや新聞では連日、コロナ騒動と統一教会と川上氏の報道が目に付きます。

現在の憲法は「平和憲法」というプロパガンダにより、これこそが平和維持に必要であるかのように言われて来ましたが、ウクライナ問題や台湾有事と尖閣諸島危機などから、自国の防衛のためには、改憲が必要ではないかという議論が必要ではないか。と言うことが言われ始めていました。
 

日本国憲法は大東亜戦争後、GHQによる統治下で創られた憲法であり、当時の大日本帝国憲法に定められた改憲の手順を踏んでいるとは言い難く、また、皇統について新たな解釈を用い、皇統2600年による国体をも変えられているため、改憲ではなく創り直す必要があると考えられます。

大日本帝国憲法より抜粋
将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ
(将来この憲法のある条文を改定する必要が出たときは、朕および朕の子孫はそれを発議し、これを議会に交付し、議会はこの憲法に定められた要件にしたがってこれを議決するほか、朕の子孫および臣民は決してこれをむやみに変えてはならない。)


しかし、創憲には国民の国史や皇統に関する理解が必要であること。長期にわたる議論が必要であること。などから、短期に簡単に出来ることでは無い事も事実です。

そして、現在の国際情勢を鑑みた時、現在の憲法(日本国憲法)では、主権国家としての体を維持できないと思われるため、その点については、早急に改憲スべきと思いますが、現在の政府、岸田政権や改憲を支持する野党(特に維新)の動向を見れば、このタイミングで改憲することはリスクが大き過ぎると感じています。

 

*岸田政権は新自由主義路線を更に推し進めます。

*「身を切る改革」は日本を滅ぼす

 

与党・自民党から出された草案は、国体を更に破壊すると伴に、国民におかしな負担を強いることにも繋がる歪んだ憲法案であると言わざるを得ません。

憲法改正は、自民党草案などのような、小手先だけのモノではなく、日本の国史・皇統・国体に基づいたモノに、一から創り直すことが必要だと思うので、現在の国際情勢を踏まえての事であれば、創憲の議論は継続させ、緊急避難的な改憲ということもアリかもしれません。

その場合の改憲案は、自民党案だけではなく、各政党が案を出し合い、どこをどこまで変えるのかを含め、議論されるべきであり、現在の自民党草案に賛成する、反対するという単純な話ではありません。ゼロ・百ということで有ってはイケナイと思います。

時間的な事を考慮すれば、自民党草案を叩き台として議論することが現実的なのかもしれません。そこで、今回は自民党の改憲草案について書いてみます。

 

改憲するに当たり、差し当たって必要なことは「国まもり」国防についてだと思いますので、今回もし改憲がされるのであれば、その部分だけで良いと思います。

 

※国防に関しては憲法を改憲しても、日米地位協定日米安全保障条約も見直さなければ、片手落ちになってしまいます。

 

具体的には第9条になると思います。

日本国憲法では以下のように定められています。

現行憲法(以降青文字)
第二章 戦争の放棄
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
削除

問題となるのは第九条の2で、「国の交戦権は、これを認めない」ということだと思います。交戦権を認めない。軍隊を保持しない。これでは国を守れませんし、主権国家として、国防の為に軍隊を持つことは当然ですから、これを削除するだけで良いと思えます。
 

次に、その他の改正箇所について見てみます。

特に気になったところだけを抜き出して書きました。

草案の前文にこのような記述があります。
「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。」

「我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。」

「経済活動を通じて国を成長させる」なぜこの様なことが書かれるのか。憲法に経済活動を書き入れる。国是とする意図はなんなのか。違和感しか感じません。
自助・共助、SDGs、経済成長=マネー主義。これは新自由主義的思想の現れとしか思えません

 

第三章 国民の権利及び義務
(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない


なぜ自由の権利の為に国民に義務を課す必要があるのでしょうか?
自由というのは人として生まれながらにある権利であり、責任が伴うことはあっても、義務を負うことは無いハズです。

十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
 

(人としての尊重等)
第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。


現行憲法(以降青文字)では、
十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

「個人」から「人」という表現に変わっています「個人」は個性を持つ「個」であるのに対し、「人」はその他大勢含め「人」であり、動物としての「人」であるとすると、この表現には違和感があります。


(信教の自由)
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない


③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

範囲の定義が出来るのか?宗教と政治の関係は曖昧であってはならないと思う。


(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 

「公共の福祉に反しない限り」が削除された。
憲法学者によると、職業選択の自由には、営業の自由も含まれるため、グローバリズム的な営業戦略を容認し、独占禁止法との整合性が取れなくなる可能性がある。とのことです。(憲法改正の真実 集英社新書 P.149)
 

(家族、婚姻等に関する基本原則)
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。新設


貧困化が進み、低賃金が固定化されつつある状況に於いて、この条文の意味するところを考えると、非常に違和感があります。

もし、食うや食わずになったら、家族、親戚でなんとかしなさい。国は面倒見ませんと言われているようです。

(環境保全の責務)
第二十五条の二 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。新設


前文、第十二条、第十三条、第二十四条、第二十五条から思うことは、国民への自助・共助努力を憲法に条文化することで強要しているということ。

憲法は権力を持つ者に制限を与え規制することで、国民の権利を守るモノであるとするならば、この様な条文は不要というより、憲法になじまないと思います。
 


(拷問及び残虐な刑罰の禁止)
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。


第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

表現が弱くなった。


第七章 財政
(財政の基本原則)
第八十三条
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。新設


こんなことを憲法に入れる危険性を考えて欲しい。憲法で積極財政に足枷を付けるなど論外だと思う

(予算)
第八十六条
2 内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。新設
3 内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。新設
4 毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。新設


これも憲法に入れる必要性を感じない。法律で良い事だと思う。
 

第八章 地方自治
(地方自治の本旨)
第九十二条 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。新設
2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。新設


第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

(地方自治体の財政及び国の財政措置)
第九十六条 地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。新設


ここでも、住民に義務と負担を負わせています地方自治体も共同体であり、国の一部であるのですから、これもおかしな話だと思います。

財源も基本的には自治体任せにしてしまう。ここでも自助・共助が謳われている小さな国家を目指しているようですが、これも日本の国体には合わないと思います
 

第九章 緊急事態 新設
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。



第九十八条により、総理大臣の判断で緊急事態宣言が出される。宣言が出されてから百日を超えた場合は議会の承認を得る(第九十八条の3)とあるが、与党が過半数を超えている場合などは、いつまでも継続出来ることになりかねない

第九十九条により、立法・行政・司法の三権分立が崩され、地方自治と人権保護が失われる。これは独裁状態になることを意味します

そして、この草案には、その様な事態に対する対策がありません
例えば、緊急事態宣言が出された場合は、裁判所などが政府を監視し、行き過ぎが有った場合はそれを制御出来る仕組みが必要であると思います
 

十章 改正
第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。


九章 改正
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。


改憲に必要な議員の賛成数を2/3から過半数に減らしています。憲法をどのように捉えるかにもよると思いますが、最高法規だとしても、簡単に変えられる様なモノでは無い方が良いと思います。憲法とは何か?どの様な位置付けなのかについては、別途書こうと思っています。
 

第十一章 最高法規
(憲法尊重擁護義務)
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。


第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
削除

憲法は権力者を律するモノであり、国民が尊重しなければならないというのはおかしい。
また、現行第九十七条が削除されている意味を考えなければならないと思います

憲法とは何か。日本の国体に合った憲法とはどの様なモノであるべきかは、今回は触れません。この議論は簡単には終わらないと思いますし、簡単に終わらせて良いモノでも無いと考えています。だから時間が必要ですし、国民の意識が最も重要だと思いますから。

そこで、今回は叩き台としての自民党草案について、気になる所を書き出してみましたが、ここだけ見ても、この草案は危険な要素を含んでいることが分かると思います。

国民に自助・共助を義務付け、負担を強いる政府は緊急事態条項の元、独裁体制を作る事が可能になる。こんなおかしな憲法が有るはずが無いと思います。

もし、このまま草案通りに改憲されてしまったら、国民主権は脅かされる事になるでしょう。憲法までもが新自由主義者の意向に沿ったモノになどなってはならないと強く思います。

 

 

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