その夜は忘れない | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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レンタルビデオ鑑賞日誌



(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

その夜は忘れない [DVD]/若尾文子,田宮二郎,川崎敬三
¥4,725
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内容:名匠・吉村公三郎監督の代表作をDVD化。戦後17年目の広島を舞台に、原爆被害の取材に訪れた新聞記者と被爆し心身共に蝕まれていたバーのマダムの出会いと恋を描く。当時絶頂期の若尾文子が主演を務めるほか、田宮二郎、江波杏子らが共演。 (Amazonより)


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はい!なんちゃらツリーやらイルミネーションやらには目もくれず(←)今日も粛々と

お届けいたします若尾文子様 特集、本日は1962年製作「その夜は忘れない」をば!

監督は先日の「婚期」 に続いて吉村公三郎でございます<(_ _)>





週刊ジャーナルの記者、加宮は、戦後十七年の原爆記念特集号取材のため広島へ出張した。しかし、原爆の傷痕は、今や原爆資材館の陳列ケースの中にしかない。一夜、加宮は親友の菊田に誘われてバー「オータム」へ行き、美貌のマダム秋子を紹介された。彼女の顔には何か憂いがあった。翌日、加宮は六本指の赤ん坊取材の途中秋子に逢った。話が取材のことになった途端、何故か秋子の態度は、よそよそしくなり足早に去った・・・(goo映画より)




・・・はい、原爆投下から17年の月日を経た広島で、その取材に訪れた男と原爆によって

運命を狂わされた女との恋を描いた作品です。



週刊誌の記者加宮(田宮二郎)は、終戦から17年を経た今原爆の影響がどのように

残っているのかを探るために広島にやってきた。早速当地のTV局で働く旧友の菊田

(川崎敬三)再会した加宮はバー「オータム」に誘われ、そこで出会ったバーのママ

早島秋子(若尾文子)どこか憂いを含んだ美しさに心惹かれる。

 翌日から取材を始めた加宮だったが、しかし日々復興を続ける広島において、原爆の爪痕と

呼べるものはもはや資料館の中にしか無かった。顔にやけどを負った若い娘は青春を謳歌し、

6本指の子を生んだという女の行方も杳として知れない。半ば諦め気味に原爆被害を

調査する機関ABCCに赴いた田宮は、そこで思いがけず秋子と遭遇する…というお話。



復興とともに風化していく原爆の記憶。まるで何事も無かったかのように人生を謳歌する

人々の中で、しかし確かに、原爆は一人の女の心と体に決して消す事の出来ない

深い深い爪痕を残していた…。

・・・哀しく切ないお話です。原爆によって女としての幸せを奪われ、諦めとともに心を閉ざして

生きてきた女を若尾さんが、事実を知っても女を愛し心を開かせようとする男を田宮さんが

それぞれ演じております。内容としてはまぁ『社会派のメロドラマ』なのですが、しかし

若尾さんの愛と現実の間で激しく揺れ動く演技と美しさが素晴らしい!!

本作と同年には「雁の寺」「しとやかな獣」 に出演するなど、当時絶頂期にあった

大女優・若尾文子の比類なき美しさと演技力を存分に堪能する事が出来ますよ。

ジャケット写真も素敵~♪(〃∇〃)



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また自らの愛で凍りついた秋子の心を溶かそうと真正面から向き合う男、加宮を演じた

田宮さんも素晴らしかったですねぇ。今まであまり田宮さんのメロドラマは観た事

無かったんだけど、元々二枚目だけに何の違和感もありませんでしたよ。






総評。

恋愛と社会問題を結びつけながら、甘すぎず重すぎずまた説教臭くも無い

良作に仕上げた吉村監督の手腕も光る本作。戦争も遠い昔になった今、広島平和公園の

追悼碑に刻まれた一文が胸に響きます。


「やすらかにねむってください あやまちは繰り返しませぬから」


以上、オススメです。