しとやかな獣(けだもの) | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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レンタルビデオ鑑賞日誌



(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

しとやかな獣 [DVD]/若尾文子,伊藤雄之助,山岡久乃
¥4,725
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内容:45歳で生涯を終えた日本映画界の鬼才・川島雄三監督が若尾文子を主演に描いた代表作をDVD化。ある団地の一室を舞台に、金のために横領や愛人稼業に励む一家と、彼らに翻弄される周囲の男たちの姿を描く。エロティックな謎の美女役を若尾文子が怪演。(Amazonより)


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はい!今週の若尾文子 さん枠は、1962年製作「しとやかな獣(けだもの)です!

「女は二度生まれる」「雁の寺」 に続く川島雄三 監督作品ですね♪




アパートが立ち並ぶ郊外の団地、前田家はその四階の一角を占めている。前田時造は元海軍中佐、戦後どん底の生活を経験した彼は自分の殻にとじこもり、子供たちを踊らせるあやつり師になった。息子の実には芸能プロの使い込みをやらせ、娘の友子は小説家吉沢の二号である。その友子が別れ話をもって帰って来た。友子を追って現れた吉沢にまだ友子への未練があるとみると、極力恐縮したふりをする時造夫婦だった・・・(goo映画より)





おおおおーーっ!これまた面白れーぞーーーー!!!ヘ(゚∀゚*)ノ




はい、タイトルやジャケット写真から、またぞろ官能的な作品かと思われる方も多いかと

存じますが、実際はさに非ず!とある家族を描いたブラック・コメディですよ。



舞台はエレベーターも付いていないとある質素な公営団地の一室。

元海軍中佐の前田時造とその妻よしのは、間もなくやってくる来客に備えいそいそと

部屋の模様替えを急いでいた。

来客は夫妻の息子・が働く芸能プロの社長・香取と経理担当の三谷幸枝らで、

実の横領が発覚したため行方を捜しているのだった。

しかしじつは家族は皆グルで実が横領した金も家に納めさせており、香取の追及にも

「うちの実がそんな事をするはずがない」としらを切ってやり過ごした。

そこに長女の友子が帰ってくる。友子は小説家・吉沢の“二号さん”なのだが、前田一家の

度重なる金の無心に嫌気がさした吉沢に別れを切り出されたのだ…ってなお話。




「その灰皿は立派すぎるな、便所のアルミので十分だろう」

お父さんも着替えてください、実が使ってた寝巻がみすぼらしくて丁度いいわ」



来客に備え、いかにも生活が苦しく見えるように模様替えをする夫妻。

もうこの導入部からしてお見事ですねー!あっという間に物語に引き込まれちゃいましたよ。


テーマはズバリ、「金と色(欲)

本作は前田一家と彼らを訪れる様々な人々を描いているため、物語全て前田一家の住む

団地内で展開されます。登場人物はちょっと数が多いので一人ひとりの紹介は割愛させて

いただきますが、これが揃いも揃って欲の皮が突っ張ってるんですよねー!ヽ(;´Д`)ノ

金あるいは女のためにいけしゃあしゃあと嘘をつく人々の姿に普通なら辟易させられる

所ですが、そこはかとなく漂うユーモアによって逆に笑いを誘うんですよね。

修羅場寸前の激しいやり取りを交わす二人を映した画面の端っこに盗み聞きする

姉がひょっこり顔をのぞかせてたりして(笑)、カメラの構図や演出も非常に巧い。

また燃えるような茜色に染まった夕焼け空やまるで地獄へとつながるかのような

薄暗く長い階段、あるいは鼓を中心とした能楽のお囃子を用いている点など、

比喩的な表現も細部まで実に手が込んでいてこれぞまさに映画の醍醐味といった印象。

素晴らしい!ヽ(゚◇゚ )ノ



キャストも良かったですねー♪

今回の若尾さんは金欲しさに男を手玉にとっては用が済んだらさっさと捨てる悪女という

まさに十八番とも言える役柄ですが、物語の中心はあくまで前田家の面々なので

出番自体はそれほど多くは有りません。その分印象に残ったのは、前田家の母・よしのを

演じた山岡久乃さん!ヘ(゚∀゚*)ノ  若尾さんが“しとやかな獣”ならば、山岡さんは

歳を重ねてもはや妖怪の域へと達しつつあるかつての獣ってとこでしょうか。(;°皿°)

登場人物みんなしたたかだったけど、その中でも一番はこの人だと思うなぁ。。。(^_^;)

あと出番はちょっとだけなのにインパクト絶大だったのが小沢昭一さん演じる

ミュージシャン、ピノサクね。後で知ったのだけど、あのキャラクターはほとんど

小沢さんのアイディアだったそうで。その遊び心、最高です(笑)




総評。

コレを観ながら森田芳光監督の「家族ゲーム」を思い出したのですが、さっき検索したら

あちこちに同様の事をおっしゃってる方が。なーんだ気付いたのは私だけじゃ

なかったのか、ちょっと残念(^_^;) でも確かにあの作品は本作を意識してる所が

多々あるように思えますね。

まぁとにかくね、ブラック・ホーム・コメディというジャンルがあるとしたらこの作品は

きっとその最高峰に位置する傑作ですわ。

もちろんオススメ!!