(7)ミズアオイ科
①コナギ
東南アジア原産の古い時代の帰化植物であり、稲作の渡来に伴って渡来した(史前帰化植物)。除草剤が使用されるようになる以前はイボクサなどとともに代表的な水田雑草の1つであった。現在でも水田の水路などにも見られるが、多くは初期の放棄水田や部分減反した水田などに生育して、群落を形成している。花は8月の終わり頃から咲き始め、10月頃まで。同じ科のホテイアオイに似ているが、コナギは葉柄が太くならない。
姿形は同属のミズアオイを小さくしたようであるが、ミズアオイの方は減少して絶滅が心配される植物となっている。岡山県自然保護センターの栽培例では、ミズアオイはよく虫に食べられるが、コナギの方は虫に食べられている様子がない。このような点が害草と絶滅危惧種の違いかもしれない。
(8)ガマ科
①ヒメガマ
北海道から南西諸島の広い地域、世界では温帯から熱帯に広く分布する多年生の草本。ガマに比べて沿岸域に多く、内陸部には少ない。沿岸平野の放棄水田やため池の湖岸などの沼沢地に生育する。高さは2m程になり、ガマとほとんど変わらないが、葉は細く、幅は1cmを越える程度である。細い葉で立ち上がるためには葉はガマに比べてより強いことが必要であり、堅いのでガマ細工には適していない。和名はガマに比べて葉が細いことに由来する。
花はガマよりも遅く、6月の中頃から花穂を伸ばす。花穂はガマに比べて細長く、雄花群と雌花群が5cm前後離れている点はガマやコガマとの簡単な区別点である。上部に付く雄花群は花が終わると脱落するが、花軸は長く残っており、雄花の不着痕から花穂群が離れていたことは確認できる。
②ガマ
北海道から九州、および世界の温帯北半球から熱帯、オーストラリアなどに広く分布する多年生の草本。沼沢地やため池の湖岸、放棄水田などに広く分布する。大形の抽水(ちゅうすい)植物であり、高さ2m程になる。葉は柔組織が発達して柔らかくしなやかで、駕籠やむしろなどに細工・加工される。ガマの加工品はしっとりと柔らかくて手触りがよい。
地中に柔らかくて通気組織の発達した太い地下茎を発達させ、群落を形成する。初夏に花茎を形成し、上部に雄花群を、それに接して雌花群を付ける。雄花からは大量の花粉が形成され、飛散する。雌花は成熟するとより太く、褐色になるのでまるで祭りで売っているフランクフルトソーセージのようになる。秋になると穂は綿状になって崩れ、風に乗って飛散する。昔はこの綿毛を集めて布団の綿に使用したり、火をおこす際の火口に利用したこともある。稲葉の白兎で有名な蒲の穂綿である。
(9)ヒガンバナ科
①ヒガンバナ
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれる多年草。毎年、ちょうど秋のお彼岸(秋分の日)頃に赤色の花を咲かせるので、印象に残る花です。毎年花は咲かせるが、種子は稔らない。稔らないのは3倍体であるからで、中国には2倍体で種子が稔るヒガンバナがあることから、中国原産の植物であり、古い時代に日本に持ち込まれた史前帰化植物の1つであるとされている。
地下にはチューリップに似た球根があり、球根を増やして増殖する。本来ならば、球根の幅しか分布を拡大できないはずだが、農作業や洪水などによって球根が移動し、耕作地の畦を中心に、道路の法面や河原などに点々と生育が見られる。しかし、花好きの人間が移動させる距離が最も重要だろう。土砂による埋没には大変強く、10cm位の土壌が新たに被さっても、簡単に球根を上方に移動させてしまう。このような能力が、河原での繁茂に結びついているのであろう。モグラ除けにあぜ道に植えるとの話もある。
ヒガンバナの花は花茎の上に通常6個の花が咲く。花弁はリボン状で絡み合っており、雄しべや雌しべも長くて構造がわかりにくい。1つの花は、花弁(花被)は6枚で細長く、縮れている。雄しべは6本、雌しべは1本で、長く飛び出ている。