Ultimate ONE ~episode sleng~【愛と悲しみを食らうもの】前編

 

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原作 : キャラクターデザイン 神酒 とのと
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~これは、メディシティーとの戦争を企てた一人の戦士の物語である~

 

時代は少しさかのぼるナイトシティー、ここは昼に睡眠を取り夜に活動をする “夜人(やじん)” の街である。

 

夜人の特徴としては、夜行性の人間であり健康的な身体を保つためには人間の生き血が必要な人種である。

時に “バンパイア” と呼ばれることもあるが、コウモリに魔力をかけ進化した生物という説が今のところ強い。

魔力により誕生した生物のため、特殊な能力を扱うことができる者も多いのが特徴である。

 

以前の夜人は生き血のみで生活をしており、人の血液だと栄養素的に大量の血液が必要であったため、多くの人の命を奪った人種でもある。

しかし、他の人種も力を付け夜人に対する対策も行われていたため人の血液が思うように接種できなくなったが、生命力が強い種族だったことが幸いして他の人間のように、人の生き血以外でもある程度は栄養素が賄えるように進化した。

 

夜人に必要な生き血とは死後3日以内の人の血液であることが判明し、人から血液を提供してもらう場合に3日以内であれば夜人に必要な栄養素が得られるため、献血をして食事を提供する人も最近では増えている。

 

不死身とされている夜人だが、心臓が唯一の弱点でありその心臓を維持するために人の血が必要であることが今までの研究から明らかにされている。

心臓が人の血を必要となる状況では極度の飢餓状態となり、出産の苦しみよりも耐え難いものと言われている。

 

ここナイトシティーの現在の王は “ヴラド” という名前である。

武道には長けていたが、愛妻家であり頭が上がらない。

彼が最も大切なものもまた妻であり、出生率も低い夜人だがそんな彼らにも子供ができた。

 

その赤子の名を “スレン” と名付け、なんでも伝説の巨人の名前であり、その名の通り偉大な人間となるように付けられた名前である。

 

スレンの母「スレン、あなたは将来素晴らしい王になるわ!こんな小さなころから能力が使えるのですから。」

 

ヴラド「息子の能力は “風” か…コウモリにふさわしい。使い方はいくらでもある能力だな」

 

スレンの母「最初にこの子を抱いた時に突風が吹いてびっくりしたけど、それがこの子の能力だったのね。」

 

ヴラド「我が愛しき妻セレネよ…このような立派な息子を産んでくれて感謝しかないぞ。」

 

セレネ「あら、そんなにかしこまっちゃって、あなたらしくないわよ?」

 

ヴラド「そうか?今日は特別な日…だからだろうか。」

 

セレネ「あなたとの結婚記念日でしたね。」

 

ヴラド「覚えていてくれたのか?」

 

セレネ「あなた…それは女性が言う言葉じゃなくて?」

 

ヴラド「ははは!違いない。今日は宴だ!街も祭りにしよう!」

 

 

~スレンはすくすくと育ち、その優しい性格から友達も多いようであった~

 

友達A「今日は満月だな!スレン。例の場所で月を見に行こうぜ!」

 

スレン「そうだったな。今日は雲もないし良い月光欲ができそうだ。」

 

友達A「王の息子でありながら、俺のような人間にもおまえは変わらず接してくれて、ありがとう。いい奴だな、おまえ。」

 

スレン「何を言っている。おまえはたまたま俺と性格の合う人間だっただけの話だ。王族にもクズはいるしな。」

 

友達A「おまえは、いい王になると俺は思う!王になっても俺のことを粗末にするなよ!」

 

スレン「ああ、当然だ。」

 

友達A「じゃ、また会おうな!」

 

夜人は意外にも昼から朝まで活動する。

 

夜人は基本夜行性ではあるが、文明が栄えたナイトシティーでは 24 時間営業の業者も存在する。

人が活発に活動する時間帯が深夜、という以外は他の人種とさほど生活は変わらない。

 

また、ナイトシティーのバーは早朝から開店する店が多いことでも有名である。

 

~友達と別れ帰宅したスレン~

 

スレン「ただいま。」

 

~人の気配がしない~

 

スレン「ん?今日はみんな外出しているのか?静かだな。」

 

~スレンの自宅であるビルを歩き回り人を探すスレン、すると誰かが近づいてきた~

 

使用人A「あ!ぼっちゃん!王妃様が倒れました。今は王と一緒に治療室にいます。」

 

スレン「倒れた?無事なのか?」

 

使用人A「はい。今のところ命には別状がありません。しかし、しばらく安静が必要かと。」

 

スレン「わかった。俺も行く。あと、ぼっちゃんはよせ!スレンで良い。」

 

使用人A「はっ!申し訳ございませんでした。スレン様。」

 

~治療室のある階に行くスレン。そこには王妃を心配で集まっている人達がいた~

 

皆「スレン様!」

 

スレン「父も一緒なのだな?医者はいるのか?」

 

使用人B「はい!今、王妃は医者に診てもらっています。王も付き添いをしております。」

 

~治療室に入るスレン~

 

ヴラド「スレンか。セレネは今眠っているぞ。」

 

スレン「で、容態は?」

 

医者「ヴラド様…そしてスレン様、お二人にはお話がございます。」

 

ヴラド「なんだ?言うがよい。」

 

医者「セレネ様は… ”夜光痘(やこうとう)” にかかっております。」

 

ヴラド「なに!本当か!」

 

医者「ええ。夜人特有の不治の病であり、このままだとセレネ様はもって1カ月。」

 

ヴラド「そ、そんな…。」

 

スレン「治す方法はないのか?」

 

医者「残念ながら…今の夜人の医療では…。」

 

ヴラド「くそっ!なんてことだ!せっかく子供も産めたというのに。」

 

 

~その後ヴラドはセレネから離れることなく看病をしており、食事も喉が通らず衰弱していた~

 

ヴラド「セレネ…お前のいない世の中など考えられぬ…お前と一緒に私も…」

 

~治療室のドアフォンが鳴る~

 

ヴラド「何事だ!今は誰とも会いたくはない。去れ。」

 

使用人C「それが…メディシティーという街から一人の医者が訪れておりまして、セレネ様の様子も診させてほしいと。」

 

ヴラド「なに!しかし、メディシティーなど聞いたことがない街の名だ。怪しい奴ではないのか?い、いや…今はどんなことにでも可能性があるのなら…。」

 

使用人C「いかがなさいましょうか?」

 

ヴラド「通せ。」

 

使用人C「かしこまりました。」

 

~しばらくすると、またドアフォンが鳴った~

 

ヴラド「ヴラドだ。」

 

医者「ひひひ…私はメディシティーから来た医者でございます。」

 

ヴラド≪怪しい奴ではないか!い、いやそんなことを言っている場合ではない!≫

 

ヴラド「今カギを開ける。入れ。」

 

ガチャ

 

~部屋に入ってきたのは白衣を着てやせこけた一人の男であった~

 

医者「で、例の患者さんはどこに?ひひひ」

 

ヴラド「セレネだ。ついてこい。」

 

~ヴラドは疑いながらもその医者をセレネのもとへ連れていく~

 

セレネ「うう…」

 

医者「これは…かなり苦しんでおられますね。」

 

ヴラド「セレネは夜光痘にかかっている。治せるのか?治せないのか?」

 

医者「ふむ…私たちの病とは勝手が違うようですね。少し調べさせていただきたいのですが、私の街の技術を他の者に見せるわけにはいきません。2日、お時間をいただくことは可能でしょうか。」

 

ヴラド「それはつまり、私が2日間この部屋から出ろということか。」

 

医者「無理にとは…言いませんが。」

 

ヴラド「くっ…わかった。」

 

医者「では早速始めたいと思いますので、この方…セレネ様と二人きりにさせてはいただけませんでしょうか。」

 

ヴラド「もう、私はおまえに頼るしかないのだ。2日後に来る」

 

~というとヴラドは部屋を出て行った~

 

 

スレン「父上、母を怪しい医者と二人きりにして大丈夫なのか?」

 

ヴラド「私も気に入らない。しかし、こうするしかないのだ。」

 

スレン「手ぶらの医者が2日で何ができるというのだ。」

 

ヴラド「スレンよ…おまえの言いたいことも分かる。だが、今は待つしかないのだ。」

 

 

~そうして2日間がたった~

 

~ヴラドは治療室のドアフォンを鳴らす~

 

医者「ヴラド様ですか。お待ちしておりました。セレネ様は容態が安定しております。」

 

ヴラド「なんだと!」

 

~慌てて部屋に入るヴラド~

 

ヴラド「セレネ!」

 

セレネ「うう…ヴ…ヴラド。」

 

ヴラド「おお!セレネ!意識が戻ったか!」

 

医者「ヴラド様、まだ治療が終わったわけではございません。あまり騒がぬように。」

 

ヴラド「す。すまぬ。」

 

医者「夜光痘を完治させるには3日後にもう一度薬を投与する必要がございます。それまでは副作用もあり安静が必要でございます。」

 

ヴラド「では、3日後に薬を投与すれば治るのだな?」

 

医者「はい。しかし…」

 

ヴラド「しかし?なんだ、申せ。」

 

医者「…私がここに来たのは我が街で広まっている流行り病を治すための “あるもの” を探しに来たのでございます。」

 

ヴラド「あるもの?私にできることならば何でもする。かまわん、申せ。」

 

医者「その流行り病を治すため必要な物…それはXOマイナス型の血液を持つ夜人の心臓でございます。」

 

ヴラド「夜人の心臓だと?心臓は夜人の弱点、それを差し出すということは一人の命を交換条件にするつもりか?」

 

医者「いえ。いただいた心臓は生きていなければ意味がありません。なので、心臓を停止させることはございません。」

 

ヴラド「し、しかし…それに、XOマイナスの血液を持つものは100年に一度現れるかどうか。果たして現在にいるのだろうか。」

 

医者「夜人一人一人の血液を調べるのは途方もありませんし、現実的じゃありません。しかし、王であるあなたであれば街人の血液の情報を持っているのでは?と思いましてね。」

 

ヴラド「確かに、街人は血液の情報を役所に提出している。分かった、調べてみよう。」

 

医者「ひひひ…私は後5日間この街に滞在しております。良い知らせをお待ちしておりますよ。では、また。」

 

~部屋を後にする医者~

 

ヴラド「セレネ…大丈夫か?」

 

セレネ「あなた…ええ…でも…」

 

ヴラド「おお!セレネよ!そなたと会話をしたのも久しぶりだ。」

 

セレネ「ヴラド…私のために夜人の心臓を差し出すなんてお止めください。」

 

ヴラド「き、聞こえていたか。いや、俺は必ずおまえを助ける!」

 

セレネ「XOマイナスの血液を持つ人は今は存在しないのよ。あきらめて。」

 

ヴラド「何故おまえが分かる!何か隠しているのではないか?い、いや…今は安静にすることが大事だ、やめよう。」

 

セレネ「例え不死身の夜人であっても、弱点である心臓が他人の手にあれば不安なものよ。やめてください。」

 

ヴラド「セレネよ…お前は心配するな。今はゆっくりと休むんだ。」

 

セレネ「しかし…」

 

~ヴラドは街中の夜人の血液を調べ尽くした…そしてただ一人、XOマイナスの血液を持つものを見つけたのである~

 

スレン「父上が私と食事がしたいなど、珍しいこともあるものだな。何か特別な日か?」

 

ヴラド「おまえの好きなウォーターラビットの肉が手に入ったのでな。一流の調理人に背肉の煮込みを作らせたのだ。」

 

スレン「確かに俺の好物ではあるが、この時期に手に入るのは珍しいな。」

 

ヴラド「ウォーターラビットの中には、回遊せずに一か所に留まる根ラビットというものがいるそうだ。肉に脂がのっていて上質らしいぞ。」

 

スレン「なるほど…これがその根ラビットさんか。」

 

ヴラド「さぁ、遠慮せず食え!」

 

~ウォーターラビットの背肉煮込みを食べるスレン~

 

スレン「ふん。確かに脂が乗っていて上質な肉だな…だが、調味料がいつもと違う…薬臭いぞ。」

 

ヴラド「おまえは味覚が敏感だな?口に合わなかったか?」

 

スレン「いや…美味いことは美味い。」

 

ヴラド「ふむ。安心したぞ。」

 

 

 

~いつの間にかスレンは寝ていた。目が覚めると固く冷たい床で寝ていることに気が付く~

 

スレン「ん…こ…ここは…」

 

使用人「ぼっちゃん。お目覚めですか?」

 

スレン「ここは…牢屋?なぜ俺がここにいる!」

 

使用人「ここから、あと五日間出さぬよう王に言われております。」

 

スレン「何故だ!早くここから出せ!ん?何か…おかしいぞ?」

 

~自分の身体をあちこち触るスレン~

 

スレン「し、心臓が…無い!何をしたのだ!」

 

使用人「わ、私にもわかりません。ただ、王にここから出すな…とだけ。」

 

スレン「父上は何を…ここは夜人専用の牢獄だから出ることもできん。」

 

使用人「5日間…お待ちください。」

 

スレン「くそっ!」

 

~治療室~

 

ヴラド「だいぶ良くなったようだな。もう少しで外にも出られるぞ。」

 

セレネ「ええ。しかし…あなた…本当に心臓をあの方に渡したのですか?」

 

ヴラド「ああ、おまえに隠していてもいずれ分かることだ。」

 

セレネ「私は知っていたのよ。あの子がXOマイナスの血液を持っていることを。あなたは実の息子の心臓を…」

 

ヴラド「すまぬ。セレネよ。私も苦しかったのだ…しかし、おまえを失いたくはなかった。」

 

セレネ「スレンは無事なの?なぜ会わせてくれないの?」

 

ヴラド「医者はスレンに心臓を取り返されることを恐れていた。そのため、居場所を分からなくするため、1週間監禁をしている。」

 

セレネ「な、なんてひどいことを!それでもあなたは父親なの?」

 

ヴラド「私だって辛い、しかし、おまえを失うことの方が辛いのだ。それはスレンも分かってくれるはずだ。」

 

セレネ「いいわ。今すぐあの子に会わせて!」

 

ヴラド「それは出来ん。もう少し待つのだ。」

 

セレネ「こんなことなら、私なんて死んでもよかったのに…」

 

 

 

~そして、スレンが牢屋から出る時が来た~

 

使用人「ぼっちゃん、王から監禁を解くように言われました。」

 

ガチャ

 

スレン「…当たり前だ。父上はどこにいる。」

 

使用人「今は王室にいるかと思います。」

 

スレン≪なぜ、俺の心臓を奪った。≫

 

 

~スレンは真相を聞くため王室へ向かった~

 

 

ドーーーンという音と共に王室のドアが開かれる

 

ヴラド「おお!スレン!」

 

セレネ「スレン!」

 

~というと真っ先にスレンを抱きしめるセレネであった~

 

セレネ「ごめんなさい!スレン。」

 

スレン「母さん…病気は?大丈夫なのか?」

 

ヴラド「スレン…話がある。他でもないおまえを監禁した事についてだ。」

 

~そしてヴラドは監禁した理由とスレンの心臓を取り出したいきさつを話した~

 

 

スレン「何故俺に言わなかった?断ってもするつもりだったからだろう?」

 

セレネ「あなたにこんなひどいことをするくらいなら、私は死んでもよかった。」

 

スレン「母さん…」

 

ヴラド「許せスレンよ。私にはおまえに選択肢を与える余裕がなかったのだ。」

 

スレン「心臓のある場所は分かっているのか?」

 

ヴラド「いや…その医者はメディシティーの人間…という事しかわかってはいない。」

 

スレン「なるほど…だが、母さんが治ったのなら心臓を取り戻してもよいわけだな。」

 

ヴラド「スレン…おまえまさか?」

 

スレン「いずれにしても、親に裏切られた以上この街にいるつもりはない。」

 

セレネ「スレン…」

 

ヴラド「私におまえを止める資格などない。それだけのことをしてしまったのだから。」

 

スレン「父上…母さんを頼む。」

 

~涙するセレネを後に王室を出て自分の心臓を探す旅に出るスレンであった~

 

数か月間、スレンはメディシティーの手掛かりがないか、辺りの街や集落にいって探していた

 

スレン「遠くから煙が上がっているな…集落でもあるのだろうか?行ってみるか。」

 

~スレンは集落に向かっていると、急にとてつもない苦しみに包まれた~

 

スレン「ぐっ…ぐおおおおおおおお!な、なんなんだ…この…苦しみは。…血…血だ。ぐああああ!」

 

~しばらく地面に転がりもだえ苦しんでいたが、何も言わず立ち上がり集落へ向かうスレン~

 

~とある小さな集落~

 

女「た、助けて!」

 

バサッ

 

女「ぎゃっ!」

 

~剣で斬り殺される女性~

 

男A「くそー!なんだこの集落は!食料もろくにありゃしないぜ。」

 

男B「収穫はなかったが、俺たちの顔を見られた。皆殺しにしてしまおうぜ。」

 

男A「ああ、ここの村は30人程度、しかもろくな武器も持ってない。俺たちだけで何とかなりそうだぜ。」

 

村の子供「ぱ、パパ!お、起きて!」

 

~死んだ男を起こそうとする子供~

 

男B「おい、ぼうや。お父さんがいなくなって寂しいよなぁ?心配するな!俺が合わせてやるぜ!ひひひ。」

 

~子供に剣を振り上げる男B~

 

男B「ぐあぇ!」

 

男A「どうした?」

 

~声がする方を見る男A~

 

男A「い…いない?どこにいったんだ?」

 

~男Bの声がした方をよく見ると近くの木から血がしたたり落ちている~

 

男A「血?」

 

~見上げる男A~

 

男A「ひ、ひいいいいい!ば、バケモノ!人を…食ってやがる。」

 

~そこには男Bの血をすすっているスレンの姿があった~

 

男A「こいつ、人間じゃねぇ。魔獣なのか?」

 

~一目散に逃げようとする男A~

 

男Bを投げ捨て男Aに飛び掛かるスレン

 

男A「ぎゃああーーー!」

 

~スレンに首をもがれ、血をすすられた~

 

スレン「た、足りない…苦しい。」

 

~盗賊たちが殺されたのを見て寄ってくる村人たち~

 

村人A「あ、あれは魔獣なのか?」

 

村人B「危険よ!今のうちに逃げましょう!」

 

村人A「俺たちを助けてくれたんじゃないのか?」

 

~そういうとスレンの方に近づく村人A~

 

村人A「き、君は…何者なんだい?」

 

スレン「スレン…」

 

村人A「おおお!しゃ、喋ったぞ!」

 

村人B「ひ、人なの?」

 

村人A「君は…私たちを助けてくれたのかい?」

 

スレン「いや…。」

 

村人A「えっ?」

 

~辺りは静まり返った~

 

~血をすすっていた死体を捨てるスレン~

 

スレン「俺はどうしようもなく腹がすいている。悪いがおまえたちにも餌になってもらうぞ。」

 

村人A「ぎゃああああああーー!」

 

 

 

~スレンがいたナイトシティーはファンタジー地方にある。また街同士が頻繁に戦争を行っていた~

 

ルー「敵が潜伏してたと聞いたが、どうしたんだ!このあり様は?」

 

~兵士たちのキャンプ地であろう場所にたくさんの死体が転がっていた~

 

ヌァザ「生存者はいるか?」

 

 

ルー「い、いえ…死に方も何かおかしい。」

 

ヌァザ「ケト…解るか?」

 

~ディアン・ケト、ファンタシアの医術士で戦士の治療や神聖魔法を使い戦のサポートをしている人物である~

 

~死体を調べるケト~

 

ケト「死後1日…というところでしょうか。剣や槍のような武器で殺されたみたいでないようです。」

 

ヌァザ「では、魔獣の仕業なのか?」

 

ケト「そうとも言い切れないですが、血液の量がどうもおかしい。何かに血を吸われたかのようです。」

 

ヌァザ「吸血コウモリのようにか?この辺に該当する魔獣は?」

 

ケト「ファンタジー地方に血を吸う魔獣はいません。考えられるのは…」

 

ヌァザ「夜人か…しかしあそこが他の街を襲うなど考えにくいが。」

 

ケト「それに戦争であれば剣を使わず、全て血を吸っているのはおかしいですね。」

 

ヌァザ「ルー…調査をお願いできるか?」

 

ルー「分かりました!」

 

ヌァザ「わたしはこの辺りを調べてから国へ戻る。おまえたちは先へ帰りファンタシアの様子を見にいくのだ。」

 

ルー「まだ、この辺にこれをやったヤツが潜んでいるかもしれませんよ?」

 

ヌァザ「ああ、分かっている。だから残るのだ。」

 

ルー「やれやれ、まったくうちの王は。」

 

ケト「ヌァザ様であれば大丈夫でしょう。それよりも国の様子が心配です。」

 

ルー「くれぐれも、一人で敵国を滅ぼした…なんてことはしないでくださいね!あなたは一応王なんですから!」

 

ヌァザ「ははは!口うるさい姑みたいだな。ルーよ。分かっている。建前というものがあるのだろう?」

 

ルー「そうですよ!だから用が済んだらさっさと国へ戻ってくださいね。」

 

ヌァザ「御意。」

 

ケト「ふふふ。王の座はルーに任せてヌァザ様は自由を手に入れる日も近そうですね。」

 

ヌァザ「早くそうなるとよいがな。」

 

ルー「本気で言っているんですか!」

 

ケト「ルー殿、では私たちは行きましょう。」

 

~馬に乗り、国へ戻るルーとケト~

 

 

ヌァザ「さて…うるさい外野はいなくなったぞ。」

 

~鞘から剣を抜くヌァザ~

 

ヌァザ「さぁ…いつでも来い。」

 

~しばらく静寂した後、ヌァザにめがけて何かが飛んできた~

 

ブンブンブンブン

 

ヌァザ「剣?待て、柄を握っている腕も一緒だと?死体から奪い取ったものか?」

 

キーン

 

~飛んできた剣を払うヌァザ~

 

すると柄を握っていた腕が再生し人となる

 

スレン「うりゃぁぁぁぁーー!」

 

ザンッ

 

胴体を真っ二つにされるスレン、しかしかまわず斬りつけてくる

 

ヌァザ「面白い!」

 

スレンの斬撃を交わし剣を平行にしフラーの部分でスレンを殴り飛ばした

 

~スレンの上半身は飛ばされながら再生する~

 

スレン≪くっ、動じない…戦いなれている。≫

 

スレン「かまいたち。」

 

すると鋭利な突風がヌァザを襲う

 

ヌァザ「ほう…風か。」

 

~ヌァザは剣を地面に突き刺した~

 

ヌァザ「ソードウェーブ」

 

突き刺したヌァザの剣から風を打ち消し壮絶なる勢いで剣の波動が広がっていく

 

ドーーーーン

 

スレン「ぐっ…ぐは!」

 

スレンの身体はバラバラになった

 

 

ヌァザ「もう終わりか?」

 

ブンブンブンブン

 

今度はヌァザ目掛けて5本の剣が飛んでくる

 

その一つからスレンの身体が再生した

 

スレン「まだだ!」

 

ヌァザを目掛けて飛んでくる4本の剣と、その上から斬りつけようとするスレン

 

スレン「かまいたち!」

 

鋭利な突風も加わり四方からヌァザを襲う

 

~そうするとヌァザは剣をスレンの方に突き立てる~

 

ヌァザ「ロック」

 

そうすると飛んできた剣、突風、スレンの動きが全て止まった

 

ドサッ

 

~剣やスレンがそのまま地面に落ちる~

 

ヌァザ「なかなか強いではないか。おまえなら一つの街も滅ぼせそうだ。」

 

スレン「く、くそ…身体が…動かない。」

 

それはスレンが初めて出会った、”ケタ違い” の人間であった

 

ヌァザ「ソードロックの範囲内にいた人間は一カ月間、動くことはできない。」

 

スレン「ふっ…だが、俺を…殺すことは出来んぞ。」

 

ヌァザ「それは困ったもんだな。」

 

スレン「ぐあああああああーーーー!」

 

ヌァザ「おまえ…苦しんでいるのか?」

 

スレン「血…。血を…。」

 

ヌァザ「いずれにしても、不死身のおまえを殺せぬ以上、このままにしておくのは危険だ。ケトに解決法がないか聞いてみるか。」

 

スレン「ぐああああ!」

 

 

~スレンを自国であるファンタシアへ連れ行くヌァザであった~

 

 

~ファンタシア~

 

 

 

兵士「王がお帰りだぞ!」

 

ルー「ヌァザ様!ファンタシアに今のところ以上はありませんでした。」

 

ヌァザ「そうか、ご苦労であった。」

 

ルー「で、その大きな布袋は何でしょうか?」

 

ヌァザ「ふむ。その話は後でしよう。」

 

ルー「まさか!敵国の長の首を取ったとか言わないでしょうね?」

 

ヌァザ「心配するな。ルーよ、一応生きてはいるわ。」

 

ルー「マジですかーー!」

 

ヌァザ「ははは、案ずるな。キャンプを襲った夜人を捕まえてきただけだ。」

 

ルー「ふぅ。ヌァザ様は国同士の戦いには向いていないので冷や汗をかきますよ。個人的な喧嘩じゃないんですからね?」

 

ヌァザ「勝てばよい。」

 

ルー「だから、それじゃダメなんですって!」

 

ケト「心配するなルーよ。ヌァザ様はちゃんと考えておられる方だ。」

 

ルー「なら、いいけど。」

 

ヌァザ「ルーこそ、おまえほどの強さを持ちながらその力を戦で使わないのはもったいなくはないか?」

 

ルー「敵国であろうと、焼け野原にしてしまえば、その辺の魔獣と一緒でしょう。」

 

ヌァザ「ははは!確かにな。」

 

ケト「で、その袋の中身はどうするおつもりで?」

 

ヌァザ「それが、こいつを倒すことができんのでな。ケトに相談をしたくて連れてきた。」

 

ケト「ほう。夜人は心臓を貫けば倒せるはずですが。」

 

ヌァザ「私も心臓部位を切断したのだが、こいつにはそれがないようなのだ。」

 

ケト「心臓を他の場所に置いてきた…ということですか?」

 

ヌァザ「分からん。分からんが、凄く苦しんでいるようだ。」

 

ルー「そんな危険な奴を、我が国の王は国へ持ち込むのか。」

 

ヌァザ「放置もできんだろう?」

 

ケト「では、その中身を見せていただきたいのですが。」

 

ヌァザ「処刑台まで連れて行こう。」

 

ルー「あそこは、人が自由に行き来できる場所ですよ?良いのですか?」

 

ヌァザ「ここにいるのはファンタシアの民だ。来たければ来るがいいだろう。」

 

ルー「我が王にして、我が街人あり…ですか。そりゃファンタジー地方最強って言われますよね。」

 

~ヌァザたちは処刑台へ行く~

 

ドサッ

 

~処刑台の台の上に袋を広げるヌァザ~

 

スレン「ぐあああああああーーーー!」

 

~街の人々が集まってきた~

 

街人A「こ、これは…まるで悪魔の子のようじゃ。」

 

街人B「ヌァザ様はこれから悪魔退治をお見せするのか?」

 

ヌァザ「これがその夜人だ。理性を使うことなく私を襲ってきた。」

 

ケト「なるほど。これは飢餓状態にある夜人ですね。」

 

ヌァザ「飢餓状態?キャンプ場の人間をこいつは全て食らったはずだが。」

 

ケト「夜人が飢餓状態になる条件は、急所である心臓の回復が必要な時です。」

 

ヌァザ「人の血を摂取すれば、心臓は回復する…ということか。」

 

ケト「この夜人には心臓がない。そして飢餓状態にあるということは。」

 

ヌァザ「心臓が病にかかっている…」

 

ケト「その可能性は高そうです。」

 

ヌァザ「こいつにはソードロックをかけている。一カ月間は動けない。」

 

ケト「この調子だと、血を摂取せずに3日たてば死に至るかと。」

 

ヌァザ「では、このまま放置していればこいつは。」

 

ケト「おそらく…」

 

ヌァザ「ソードロックをかけてあるが、万が一のこともある。」

 

ケト「飢餓状態の夜人は例えどんな穏やかな性格でも、理性を失い人を躊躇なく襲います。」

 

ヌァザ「では施錠を。」

 

ケト「夜人はニンニクの紐で縛ると良いと聞いたことがあります。」

 

ヌァザ「本当か?」

 

ケト「本当かどうかは、私にも…」

 

ヌァザ「では、ニンニクの紐で縛るとしよう」

 

ルー「ニンニクの紐って、どうやって作るんですか?」

 

ヌァザ「さあな。」

 

 

~ヌァザたちはスレンを紐で縛り、身体にニンニクをぶら下げていた~

 

4日後

 

スレン「う…う…」

 

街人C「こいつ…まだ生きてるぜ。」

 

街人D「おい、おまえ、ナイフ持ってたよな?」

 

街人C「まさか!刺すのか?」

 

街人D「ああ、これだけ弱っているんだ。ナイフを刺せばきっと死ぬぜ。」

 

街人C「俺たちが街を救うってな!」

 

街人D「そうさ!」

 

グサ

 

~ナイフで身体を突き刺されたスレン~

 

スレン「ぐ…ぐ…あ…」

 

街人C「ひ、ひええええ!まだ生きてやがる!こいつ、やっぱりバケモンだ!」

 

~1週間後~

 

ケト「街の人間がかなりいたずらをしているようですが、まだかろうじて生きております。」

 

ヌァザ「心臓がまだ動いているということか。」

 

ケト「普通であれば、回復を見せるかそのまま死ぬか…ですが、この状態で生き続けることに不自然さを感じます。」

 

ヌァザ「では、回復をさせておらず。殺しもしていない…という事なのか?」

 

ケト「現状、そう考えることしかできませんが、その意図が分かりません。」

 

ヌァザ「ソードロックが解除されるまでにこの問題を解決できるのだろうか。」

 

ケト「その場合は、もう一度ソードロックを…」

 

ヌァザ「ふむ。」

 

 

~2週間後~

 

スレンはあらゆる街の人から槍や剣、また焼かれたり唾もかけられたりしていたが死ぬことはなかった

 

深夜…処刑台に人の気配はなかったが、誰かが近づいてくる

 

女「グス…う…ぅ…。」

 

~しばらく、遠くからスレンの姿を見て泣いていたようだったが、我慢をしきれなくなったようだ~

 

スレンに駆け寄る女

 

女「可愛そうに…あなたは何故、そんな仕打ちを受けなければいけないの?」

 

~女がそういうと、刺された槍や剣を抜き、また、かけられた汚物を奇麗に拭き取っていた~

 

4週間後

 

ヌァザ「今日で一カ月が経つ…しかし、こいつもすごいものだ。この状態でもまだ生きている。」

 

ケト「半分死んでいるのと同じでございます。飢餓状態を超え、これでは地獄という言葉さえ生ぬるい。」

 

ヌァザ「それにしても、綺麗だ。」

 

ケト「ヌァザ様もお気づきでしたか?この夜人の世話を毎日している街人がいるようです。」

 

ヌァザ「城の者ではないのか?」

 

ケト「いえ。今は身寄りもいない、貧しい生活をしている一人の女性でございます。」

 

ヌァザ「ケト。おまえは知っていて今まで言わなかったのか?」

 

ケト「私も神官ゆえ。」

 

ヌァザ「ふっ。城の者にも見習わせたいものだな。」

 

ケト「では、ヌァザ様。ソードロックを。」

 

ヌァザ「これだけ、弱っていればその必要もないだろう?あと一日待とうではないか。」

 

ケト「何故?今しなければソードロックは解除されます。」

 

ヌァザ「風が吹いたのだ。」

 

ケト「…私はあなたに従うのみですが…」

 

ヌァザ「心配はするな。警戒はしておく。」

 

ケト「分かりました。」

 

 

~そして深夜~

 

~いつものように女がスレンの世話をしに来た~

 

女「今日は誰にもいたずらをされなかったのね?良かった。」

 

~スレンの身体を拭き取る女~

 

女「そうか!今日はヌァザ様のソードロックが解除される日!みんな警戒をしていたのか。」

 

スレン「う…ぅ…」

 

女「可哀想に…もし、神が奇跡をくれるなら、私はあなたを助けたい。」

 

女「夜人は血で復活すると聞いたことがあるわ。でも、私の血くらいではあなたの飢餓を治すことはできないわね。」

 

女「せめて…街人に傷つけられた痛みだけでも消えれば…」

 

~そういうと女は自分の手をナイフで斬った~

 

女「痛っ…せめて、神のご加護を…フルヒル…」

 

女がそうささやくと、血は緑色に光り、スレンの口元に落ちて行った

 

ドーーーーーン!

 

スレン「ぐああああああーーーーー!」

 

女「ど、どうしたの?」

 

~女は逃げるどころか、スレンを心配し彼を優しくさすっていた~

 

スレン「お…俺は…スレン…」

 

女「意識が戻ったの?」

 

スレン「おまえは…誰だ」

 

 

アドレット「わ、私は…アドレットと言います。」

 

スレン「そうか…俺は危険だ…逃げろ…」

 

アドレット「いえ、あなたは先ほど大きな声で叫んでしまった。人が来るかもしれません!逃げるのはあなたです!」

 

~そういうと、紐を解くアドレット~

 

~起き上がるスレン~

 

スレン「なぜ、俺を助けようとする。」

 

アドレット「いいから!人が来る前にあなたは逃げて!」

 

スレン「俺は死の淵で見ていた…俺を助けたことがバレれば、おまえもただでは済まないだろう。」

 

アドレット「なぜ?なぜ逃げてくれないの?」

 

~兵士近づてきた~

 

兵士「はっ!た、大変だ!ヌァザ様!」

 

~兵士が呼ぶとヌァザはすぐに駆け付けた~

 

スレン「くそっ。あいつか…」

 

ヌァザ「久しぶり…と、いうべきかな。」

 

スレン「いや…記憶はある。」

 

ヌァザ「ほう?」

 

~ヌァザはスレンに近づいてくる~

 

ヌァザ「おまえに逃げる時間を与えたつもりだが、なぜ逃げなかった?」

 

スレン「逃げていたら、おまえは俺を斬っただろう?」

 

ヌァザ「それだけか?」

 

スレン「俺は…。」

 

ヌァザ「なんだ?申せ。」

 

スレン「俺は…ここの騎士団に入りたい。」

 

ヌァザ「ははは!私を躊躇なく斬りつけようとしたおまえを騎士団に入れると思ったか?」

 

スレン「俺を…止められるのは…お前しかいない。」

 

~ヌァザはアドレットの方を見る~

 

ヌァザ「こいつを逃がそうとしたのは貴方か?」

 

アドレット「はい!私です!罰なら私が受けます!」

 

ヌァザ「その言葉を深く受け止めよう。」

 

アドレット「では!この方を?」

 

ヌァザ「ああ。貴方が罰を受けるというのならな。」

 

アドレット「はい!どんなことでも!」

 

スレン「アドレット…お、おまえ…」

 

ヌァザ「わかった。」

 

~そういうと剣をスレンに渡す~

 

スレン「これは…」

 

ヌァザ「罰を受けるというのだ。おまえが斬れ。」

 

スレン「アドレットをか?」

 

ヌァザ「他に誰がいる?」

 

スレン「アドレットは…俺を助けた…それはできない。」

 

ヌァザ「なるほど…では。」

 

~ヌァザはもう一本の剣を抜きながらアドレットに近づく~

 

ヌァザ「私が、この女を!」

 

~アドレットに剣を振るヌァザ~

 

キーーーーーン

 

スレンはアドレットを斬ろうとしたヌァザの剣を持っていた剣で止めた

 

ヌァザ「ほう?私の剣を止めるか?」

 

スレン「罰なら…俺が受ける。」

 

ヌァザは剣を鞘に戻した

 

ヌァザ「わかった。騎士団に入ることを許可する。」

 

スレン「本当か?」

 

ヌァザ「そこの者!スレンを私の寝室の隣の部屋へ招待するのだ。」

 

兵士「ヌァザ様!お気は確かですか?」

 

ヌァザ「私の気が確かでなければ、おまえは兵士を辞めるのか?」

 

兵士「わ、わかりました!」

 

~スレンを城へ案内する兵士~

 

兵士「あ、あまり近づくなよ?」

 

スレン「ああ。」

 

ヌァザ「さぁ、他の者もここから去るのだ。」

 

~というと、集まっていた兵士も処刑台からいなくなった~

 

 

~人がいなくなったことを確認するとヌァザはアドレットの方を振り返る~

 

ヌァザ「君は…アドレットと言ったな?」

 

アドレット「は、はい!スレンのこと…感謝いたします!」

 

ヌァザ「いや、感謝をするのはこっちの方だ。」

 

アドレット「えっ?」

 

ヌァザ「私も…あいつが苦しんでいるのを見ていられなかった。」

 

アドレット「ヌァザ様…」

 

ヌァザ「しかし、あいつは理性を失っており人を襲う、王としてはどうすることもできなかったのだ。情けない。」

 

アドレット「…」

 

ヌァザ「だが、君がどうやったかは知らないが今のヤツは理性を持っている。おそらく、普段のアイツがそうなのだろう。」

 

アドレット「私はただ、スレンがこれ以上苦しむのを見ていられず…」

 

ヌァザ「これは、王としてより、私個人としてのお願いなんだが…いや、わがままというべきか。」

 

アドレット「なんでしょうか。」

 

ヌァザ「あいつの…支えになってはくれないだろうか?」

 

アドレット「え?良いのですか!」

 

ヌァザ「もちろんだ、アドレットは奇麗な服を着ているが、両親はいないと聞いている…生活はどうなんだ?」

 

アドレット「知っていたんですか?…この服は母のおさがりで、他に着るものがないのでいつも着ています。腹を満たす食料を得るだけで精一杯なので。」

 

ヌァザ「そうか…では空いている城を与えよう。使用人もつける。」

 

アドレット「しかし…そんなことをしては?」

 

ヌァザ「スレンと親しいとなれば、アドレットは街人から非難を受ける…それは避けたい。だが、王族となれば話は別だ。」

 

アドレット「そこまでしてもらえるなんて…」

 

ヌァザ「君のような人間がそういう生き方をしていたなど…私は王失格だな。」

 

アドレット「そんなことはありません!あなたは、誰よりも立派な王だと思います!」

 

ヌァザ「気を使わせてしまったようだ。すまない。」

 

アドレット「だって、本当ですもの!」

 

ヌァザ「明日使いの者をよこす、今日はゆっくり休むんだ。」

 

アドレット「あ、ありがとうございます。」

 

 

~そうしてスレンはファンタシアの騎士団に入った~

 

~朝~

 

ドーーーン!

 

スレンの部屋のドアが開く

 

ヌァザ「起きろ!」

 

スレン「これから寝るところだぞ?」

 

ヌァザ「剣の訓練は朝だ!遅れるなよ!」

 

スレン「くっ。寝る暇もない。」

 

~スレンは訓練場に向かった~

 

兵士A「おい。例の夜人だぞ?大丈夫なのか?」

 

兵士B「切っても刺しても死なないやつに剣を教えるのか?危険すぎるだろ。」

 

スレン「ふん。」

 

~スレンが訓練場に行くとすでにヌァザが待っていた~

 

ヌァザ「おまえの相手は俺がする。」

 

兵士C「ヌァザ様が直々に…ですか?」

 

ヌァザ「おまえらでは殺されるだけだ。」

 

兵士D「こ、殺される?」

 

ヌァザ「さあ、スレン!俺を殺しに来るのだ。もし殺せたなら、この国を好きしてよい。」

 

スレン「そうか…なら遠慮なくいかせてもらう!」

 

~ヌァザとスレンの戦いが始まり、斬り刻まれながらも再生し、かまわず斬りかかるスレンの姿を見て兵士たちは恐れおののいた~

 

兵士E「ひ、ひえぇ~~!あ、悪魔だ!こんなところにいたら殺されてしまう!」

 

~逃げ出す兵士たちもいた~

 

ルー「あちゃ~。あれは、やりすぎでは?」

 

ヌァザ「かまわん!こんなことくらいで恐れるやつは、戦争でも殺されるだけだ。」

 

ルー「そりゃ、そうですけど。」

 

スレン「くそ!俺は不死身だぞ!なぜ勝てん!」

 

ヌァザ「もう終わりか?」

 

ケト「ヌァザ様…これ以上痛めつけると、また飢餓状態に。」

 

ヌァザ「おまえは不死身であることに過信し過ぎだ。次からは斬られるな。」

 

スレン「これが…俺の戦い方なんだが。」

 

 

~毎日の稽古の成果もあり、スレンは少しずつ剣の腕を上達させていった~

 

~そんなある日スレンは城の周りを歩いていると声が聞こえてきた~

 

男A「ここの城…人が住んでいたかな?」

 

男B「ああ、最近来たヌァザ様の親戚らしい。」

スレン≪あいつに親戚がいたのか…≫

 

男A「ヌァザ様の親戚?初めて聞くな。」

 

男B「なんでも、ヌァザ様の兄の娘らしい。」

 

男A「へ~~!兄なんていたんだ?」

 

男B「確か、アドレットという名の娘さんだったはずだ。」

 

スレン≪アドレットだと!どういうことだ。≫

 

~王室~

 

ルー「ヌァザ様!どうせ噓をつくなら、もう少しましな嘘をついたらどうなんですか?」

 

ヌァザ「なんのことだ?」

 

ルー「とぼけないでくださいよ!空いている城を女性に貸したでしょう?」

 

ヌァザ「あれか、貸してはいない。くれてやったのだ。」

 

ルー「そんなことよりも、兄の娘って!」

 

ヌァザ「いかんか?」

 

ルー「当たり前ですよ!あなたには兄がいないじゃないですか!」

 

ヌァザ「どうせバレないだろう?」

 

ルー「いや、そこがおかしいです!あなたは王なんですから!」

 

ヌァザ「そういうものなのか…俺は嘘が上手くないからな。」

 

ケト「王のそういうところも、信頼されている理由ではございますけどね。」

 

ルー「やれやれ。」

 

ヌァザ「あの城のことは俺が何とかする。おまえたちには迷惑をかけない。」

 

ルー「わかりましたよ。」

 

 

~そして夜…アドレットの城~

 

アドレットは自分の部屋の窓を開け、外の空気を吸っていた

 

アドレット「ふぅ~。気持ちい風。スレン…今頃元気かしら?」

 

アドレット「さて…そろそろロウソクを消して寝ましょう。」

 

~アドレットがロウソクの火を消しに行くと後ろから人の気配がした~

 

アドレット「だ!誰?」

 

~振り返るとそこにはスレンがいた~

 

アドレット「スレン!」

 

スレン「やはり、おまえだったか。外で話を聞いたのでな。」

 

アドレット「あなたに会いたかったの!あれから、お変わりはないでしょうか?」

 

スレン「おまえの血を飲んでから、理性は少し取り戻している。人を襲うことは無くなった。」

 

アドレット「そう…。」

 

スレン「ところで、何故おまえは城にいる。ヌァザの兄の娘なのか?」

 

アドレット「くすっ。」

 

スレン「何がおかしい?」

 

アドレット「それは、ヌァザ様が私を城にかくまうための作り話よ。」

 

スレン「どうりで、何か違和感があったんだ。あまりにも似ていないというか。」

 

アドレット「私は貧乏な暮らしをしていて、このようなところには住める身分ではないのよ。」

 

スレン「そうか?そうは見えないが…お前は城がよく似合う。」

 

アドレット「あら?それは、誉め言葉かしら?」

 

スレン「ああ、おまえは…綺麗だ。」

 

アドレット「ほんと?そんなことを言われたことなんかなかったわよ?」

 

スレン「本当さ。この国の民は目が腐っているんじゃないのか?」

 

アドレット「ふふふ…お上手ね。」

 

スレン「な、何故信じてくれないのだ。」

 

アドレット「あ!そうだ!私の血を。」

 

スレン「い、いや、しかし。」

 

アドレット「いいから!」

 

~アドレットが後ろを向き、自分の手首をナイフで斬り流れた血をグラスに注いだ~

 

アドレット「これを。」

 

スレン「こ、これは?なぜおまえの血は緑色に光っている?」

 

アドレット「あなたが心穏やかでいられるように、おまじないをかけたのよ。」

 

スレン「おまじないだと?それにしても、綺麗な色だ。」

 

~スレンはアドレットが渡したグラスを飲み干す~

 

スレン≪あの時と同じだ…飢餓の苦しみが薄れていく…≫

 

アドレット「スレン…また少し瘦せたわね。あまり無理をしないでください。」

 

スレン「無理…か。」

 

~スレンはアドレットの血を飲んで、理性を抑えることがようやくできる…そういう状態であった~

 

~それから、何日か過ぎ、スレンは時々アドレットに会いに行き、会うたびに二人の絆は深くなっていくのであった~

 

そんなある日、ファンタシアの敵国が近くまで来ている情報が入った

 

ルー「ヌァザ様、この間のキャンプ地からそう遠くない場所に、敵の姿を確認したものがおりました。」

 

ヌァザ「数は?」

 

ルー「1000ほど。」

 

ヌァザ「少ないな。何が狙いだ。」

 

ルー「偵察隊の連絡が途絶えた…からではないでしょうか。」

 

ヌァザ「スレンが皆殺しにしたからな。」

 

ルー「しかし今回は敵将バロールの姿を見たという報告がありました。」

 

ヌァザ「血吸いのバロールか。1000ほどの兵で来るとはずいぶんと舐められたものだな。」

 

ルー「しかし、彼の持っているフラガラッハもさることながら、魔眼は直視するだけで相手の生命を奪うとされております。油断はできません。」

 

ヌァザ「兵が少ない今が奴を落とすチャンスか…城に近づく前にカタを付けたい。」

 

ルー「では?」

 

ヌァザ「今すぐ向かうぞ。」

 

ルー「兵の数は?」

 

ヌァザ「10もいるか?」

 

ルー「またかよ。」

 

ヌァザ「バロールの魔眼…見たものを死に陥れる…か。」

 

ルー「今回は僕の出番ですかね。」

 

ヌァザ「いや、スレンをバロールにぶつける。」

 

ルー「ヤツが指示通り動くでしょうか?」

 

ヌァザ「わからん。だが、面白いものが見られそうだ。」

 

~そしてスレンを連れ、敵陣に向かうヌァザ達であった~