テレビを見てない私とは

テレビの面白い話ができないから残念と、ある殿方に言われたが、テレビからしか話題を提供出来ないような浅い話しかできない男がクソつまんないと思っているのは私の方です。

クソがっ！ハゲがっ！とひとしきり怒りながら帰路についていたら

横断歩道をウロウロしているお年寄りを発見する。

事故るぞ、危ないぞ、認知症か？警察呼んだ方がいいのか？

と思わず声をかけてしまった。

お家はどこ？ご家族は？とか色々質問して行ったら

リモコンが見当たらなくて買いにいくんだけど

〇〇はどこ？とめっちゃ遠いところのスーパーの場所を訊ねられた。

よくよく話を聞いたら、

どうやらすぐそこのホームセンターに行きたいらしい。

街灯も無いような夜道を雨の中、懐中電灯で足元を照らしながら、

履いてきた長靴が、4年前に亡くなったご主人のもので

歩きにくい上に、暗がりで段差がよく分からなくて

横断歩道をウロウロしていたところに私が声を掛けてしまったようだ。

頭はしっかりしているのは分かったし横断歩道も無事に渡れたので

ここでお別れしてもいいかと思っていた。んだけど

何故だかホームセンターまでお供してしまった。

やりすぎかもとも思った。

お子さんもいらっしゃらなくて、頼れる人もいないらしく、

住宅街といえども両隣は空き家とかで

高齢化現象はそこかしこに有る事を実感した。

周りから見たら、一人暮らしの老人を狙った怪しい人やん私。

けど、ほっとけなかった。

で、ホームセンターでリモコンはどれがいいのか店員さんに聞くと

メーカーが分かるならこっちのリモコン、

どれでも大丈夫なのは多分こっちでと説明してくれた。

ご婦人は、いつも使っているのはこんな感じだったと、

メーカーがわからないと使えないタイプを指差した。

私は心の中で、きっとリモコンは家のどこかにあるはずだから

一緒に探してみて、ついでにメーカーも確認して、

見つからなかったら買いに来ればいいと思い、

それをご婦人に提案した。

家も近所だし、閉店までに間に合わなかったら

使っていないウチのテレビを貸してあげようとまで提案していた。

やりすぎだよね。

それで二人で来た道を戻り、彼女の家までお供をして

二人でリモコンを探して、結局見つからなくて、けど、彼女を再びホームセンターまで歩かせるのが気の毒で、私だけで買いに行って、無事にテレビを見ることができた。

で、軽くお互い自己紹介をして、

実は近所の公園の草むしりをしているよくお見かけするご婦人だった事を知る。

ここまでする必要は無いと心の中では思っているのに

困ったことがあったらと、私の携帯まで教えてしまった。

困ったら頼ってくれたらいい。何ができるかわからないけど。だけど、もしも、依存的に頼られすぎたらどうしようという思いも頭をよぎった。

帰宅して一息ついて謎に泣けてきた。

この涙はなんなんだろうと自分の感情を観察して行くと

人の役に立てた喜びというよりも公園の草むしりを自らやっているような奉仕の精神の彼女が

88歳で独り身でテレビが恋人だから見られないと寂しくて頭がおかしくなると言うほどの孤独感を想像し、パートナーがいたところで死ぬ時は結局一人なんだと気づいたこと。

子供もいなくて、頼れる家族がいないけど、雨風をしのげる持ち家が有り週3回のデイケア通いと、数少ないご近所付き合いがあっても寂しいと感じる孤独感。

ありがたい。幸せだ。と感じられる環境にあっても孤独感は来るのかな。

それらが自分の将来像とリンクして流れ込んできた。

それでも人は生きるしかなくて、

私は死ぬまで充実して生たいと切に願った。

あんな風に孤独に包まれた人生を歩みたく無いけど、

あの孤独感を少しでも軽くしてあげられたらと思う感情と

流石にやりすぎだろう、偽善だろうし、生きてきた時代の価値観が彼女を孤独にさせているのだろうしという思いが入り混じっていた。

冒頭のテレビ男のような、

週末はギャンブルに無駄な時間と金を使っているけど楽しそうな人と、自分の環境を変えるために日々チャレンジしているけど結果に繋がらない私と、孤独感の中にいる老婦人の人生とで

私の感情がぐちゃぐちゃに入り混じった1日だった。

誰かに助けてもらったり、誰かを助けたり

ただの行動に対して、色々な概念に振り回されている

自分と自分の周囲への絶望感が涙の正体だ。

このぐちゃぐちゃな感情を想像もせず拾うこともなく

もっとこう考えたらいいんだよ！と軽々しくアドバイスされるのも私が欲しい行動じゃ無い。

これは私が自分で答えを出して行くことなんだ。

だから望む。

もっとあたたかく優しく信じられる世界が私の周りにありますように。