私は派遣会社の借上寮に住んでいる。

壁が薄く、隣人の話し声が

プライベートが分かるほどの音量で

聞こえてくる。

右隣には女性が住んでいて

電話の声がとても大きな人だ。

反対側のお隣さんは

同じ派遣会社の男性スタッフが住んでいて

その人の同僚が尋ねてきては

下ネタや会社の愚痴なんかを

嫌でも聞こえてくる環境だ。

彼女と愛し合っている様子も聞こえてくる。

それらが不快で限界にきていた。

あー、ここから出ていきたい。

けど、賃貸物件の初期費用が捻出できない。

だから今すぐは無理だ。

そんな時はたいてい

他人のせいと、

自分責めで思考がループしていた。


なぜ隣に男性スタッフを住まわせるのか?

なぜ私はコツコツと貯金をしてこなかったのだろう。


そしてだんだん死にたくなってくる。

左脳が私を責めて追い詰めて来る。

そんなに私を追い詰めるなら

いっそ私を殺せと願ってみた。

すると、帰宅時に道の角を曲がったところで

車と鉢合わせになり、

危うく轢かれそうになった。

けれど、その時の私は「死にたくない!」

と強く願っていたし、衝突を避けようと

必死に動いていた。

左脳はホメオスタシスを担っていると

聞いた事がある。

とするならば、

左脳が思考で己を追い詰めるのは

役割の範疇を超えているではないか。

私は左脳に命令した。

お前は本来の役割に戻れ!

私を責めて追い詰めるのは

お前の役割ではない。

追い詰めてくる割には、いざとなったら

「生きたい」と思ってんじゃん。あんた。

でもね。

この肉体をいつも維持してくれてありがとうね。

とも伝えてみた。


それから思考が静かになった。

全く無くなったわけではないけど、

どうにもならない状況の中で

そこからの脱出方法が見つからなくなると

思考は自分で自分を殺しにいくんだと

このサイクルに気がついた。


つづく


その2


その3