それは物だった

それは土だった

それは命だった


この世界をさまよう

エネルギーの

なりかけ


空を舞い上がり

人の目に見えぬ姿で

旅をして


開いた窓をくぐり

たどり着いた

なぜか僕の机の上に

言葉は暗示する

僕らの未来を


言葉は暗示をかける

僕らの未来に


言葉が時を変え

時が言葉を変える


気がつけば染み込んでる

言葉が体の中に


明日を生きる人々の

心を侵していく

この体には

悲しみがある

死の素が潜む


この体には

切なさがある

歴史の痛みが宿る


人は過去に

立ち向かう

光を背に

影を傍に


生まれた時に

背負った罪を

誰かに向けた

微笑みで償う

花屋を通り過ぎる時に

目に残る真紅

この季節を焼き付けさせる


暮れ行く年月の

抑え切れない重み

この胸にずしり


寒さに耐えながら

徐々に街は大人びていく

クリスマス色した葉の

クリスマスまでの鮮やかさ

子どもの頃

ちょっと憧れていた風邪に

大人になって

嫌というほど苦しめられて


おかゆを食べさせる

何枚も重ねた布団に寝かしつける

自分で自分を看病する

情けない気持ちになる


天井を見上げるのにも飽きて

体温計の数字もお変わりなく

一日の長さを思い知る

前ほど若くない体を知る

走り書きしてる途中で止めた手を

触れようとしてすぐ引っ込めた手を

別れ際に大きく振った手で

隠してしまった想いを知って


恋をすると誰もが臆病になるから

恋人たちは行事や記念日を欲しがる

世界中の恋人共通のイベントを


イルミネーションの光が浮かぶ

幻想的な街の雰囲気に乗じて

軽く握りしめた手を

少しずつ強めて離さないように

どこに置いて来たのだろう

いつの間に離れてしまったのだろう

地名は忘れても体の芯が

追い求めようとする故郷


記憶は場面をつなげ

たくさんの故郷をつくり出す

拠り所のなく過ごしている

この場所も

懐かしく思える日が来るのかな


泣きじゃくりたい気持ちを

笑いかけたい気持ちを

再開した時の抱擁に込める

ああ欲しかったのは

この温もりだったんだ

晴れの弦楽器

雨の打楽器

風の管楽器

雪の鍵盤

天の声

誰が造った空気だろう

みんな みんな

息苦しそうにしてるのに

それを守ろうとしている


始めはとても

居心地いい場所だと思ってた

いつの間にかドアは

閉め切りになっていた


もう抜け出したいと

みんな みんな

本音では思っているのに

入ってくる酸素を

必死で拒もうとしている

命を噛み締めて

旅人は歩き出す

泣きながら生き

笑いながら死んでいく


どんなお喋りな人の命も

どんな無口な人の命も

流れていくさまは

安らかな歌のよう


見えない心と

残らない記憶

隠された命の

一瞬のほころびを

誰かが見てる