君の匂いを

どの消臭剤ならかき消せるだろう

君の味を

どの香辛料が吹き飛ばしてくれるだろう

君の言葉を

どんな映画なら忘れさせてくれるだろう

君のプレゼントを

どこに捨てればリサイクルされず塵にもならず

僕の眼の中に戻ってこないだろう


君の気配がしなさそうな

大通りに出て

君の笑い声が聞こえなさそうな

レストランに入り

君の影が届かないような

裏道をくぐり

ひたすら歩き

君のいないほうへ

遠くへ


君の夢を

どの枕なら見せないでくれる

君の温もりを

どんなプールなら冷ましてくれる

僕はどれくらい

君から離れていけるだろう

川のせせらぎに導かれ

現れた光に

僕は導かれ


ほのかな点滅を

頬に受けた

この夜に足りないものを

全て埋めてくれた


もうろうとした悲しみが

美しく浮かび上がる

かたくなな涙を溶かす

満天の蛍


そこにいれば

受け取れる光

どんな心にも

ほとんどの星は

僕らには光の粒にしか見えない

星からすれば

僕らなど存在すら見えないけど


通り過ぎた雨に

磨かれた星空を

原っぱの上で見上げる

あんなに小さい星だから

見えなくても見つめ合える


街の光では代えられない

あの寂しさは

懐かしさそのもの

羽ばたいていく過去を

引き止めることは

できるだろうか


空の上にいる

あなたを

地上に連れ戻せたら


過去を今のように

抱きしめられる未来が

訪れるだろうか


乗り越えることなどできない

あの日々と

共に過ごしていく


壁のような過去が

今へと続く道に思える

その日まで

名前の知らない人と

隣り合って

何故だか分からず声をかけられる


名前も知らない人と

話が合って

お酒を飲み交わしたりする


名前も知らない人に

おごられて

「ごちそうさま」と手を振って


名前の知らない人と

気分よく別れる

名前を知り合わないままに


そんな一日に

名前がついた

僕は望まない旅をする

望まれない旅人

なけなしのお金で

命をつなぐ


ただ今日を

さまよい歩く日々

住み慣れた場所を

失ってからは


信号待ちで

止まった景色

急に過去が

追いついてくる


懐かしさに

呼び止められても

僕には明日がある


青になった信号

声を振り切る勢いで

駆け渡る横断歩道

激しい日照りの前の

ほんわかとした太陽

夏の小休憩


今のうちにと

いじり始めた庭の片隅に

涼やかな朝顔


朝の清らかさを

受け取って咲かす

日々違う花つきで


のんびりしてると太陽が

半袖の肌に打ちつけてくる

ああいつもの夏だ

役者は演じる

他人になりきるために

自分を解放する


出したことのない大声を出し

普段使わない筋肉を使い

表現しようとしているのは

他人なのか自分なのか


演じることでしか

出せない自分がいる

自分の中の他人を求めて

他人の中の自分に気づく

一日限りのあなたになら

全て話せると思った


一日限りのあなたになら

本当の私になれると思った


早く過ぎてほしいと思った

一日なのに

今はどうなのかよく分からない


もうすぐ

朝焼けの街を

私は一人

歩いていかなければならない


駅の手前

車を降りて

始めて感じられた

孤独

行く人や帰る人

踊る人に見つめる人

激しく人は行き乱れ

それすら神に捧げる

見世物のようで


暑気を振り払う熱気

お囃子が夜を彩る

夏のたび産声を上げ

祭りは呼吸する


ヨーヨーとかき氷で

両手を埋めた子どもが

親の肩の上で見つめる

いつか自分が

担ぐかもしれない神輿を