ついこの前まで
よちよちでしか歩けなかった男の子が
スーツ姿で堂々と

ついさっきまで
だあだあとしか言わなかった女の子が
着物姿でおしゃべり

偶然や必然によってたかって育てられた
最初は小さくか弱い命
今立派に歳月を抱いて
人生の一片を共に過ごした人との
久しぶりの再会を喜びあっている

道端で逢うたびに
「大きくなったわねえ」と言う
近所の人の気持ちが分かる
今日は本当にそうとしか言いようがない
二十年も生きてきた君には
考えることがないから
昔の出来事を思い出すはめになる
振り返りたくない後悔ばかり
浮かんできて困る

過去はきっちり分別して
捨ててきたはずだった
水やコーヒーやたばこの煙
いろんなものに気分を託して

耽ろうとした空想も
どこか現実めいていて
乾燥しきった街に
僕の色は滲まない
泣けると評判の映画を観た後で
お笑いの番組に熱中し
ワイドショーのコメンテーターの怒りに便乗してから
可愛らしい子犬のCMを見て安らいだ気持ちになる

感情をこんなに吐き出しても物足りない
番組が終わればまたすっきりとしない表情に戻る
僕は優秀な視聴者
青空の下ではしゃいで
遊んでいる子どもがいる
子どもが何も訴えなくても
私たちはそこから何かを感じ取る

公園のベンチに座り
黙っている老人がいる
老人が何も語らなくても
私たちはそこから何かを感じ取る

過ごしてきた年月が
その存在を意味深にする
命というメッセージが
私の瞳で輝きを放つ
面白いことを
話しているわけでもないのに
あなたといると楽しい

笑える冗談を
飛ばしあったりするわけでもないのに
僕は笑みを隠せない

少しひんやりとした晴れの日
大げさな奇跡はここにはないけど
ささやかに幸せはほころぶ
脳みそにシワが増えていく感覚
どうしてだろう
始めは小さな悩みだったはず

頭に言葉が渦巻いている
同じ言葉が繰り返される
でも何一つ自分の言葉じゃない

世界のひずみに
心は滑り落ち
自分で作った
迷路に迷ってる
悲しみは
閉ざされた部屋で
うろうろする

怒りは
壁を打ち壊すまで
何度もぶつかる

君は
僕を試す
容赦ない鏡

今も僕は
向き合えず
独りきり
歩いていこう
想いの分だけ踏みしめて
過去の悔いへと逢いに行く

歩いていこう
道行く人との偶然の関わり
思い出を話したことも思い出

幼く広がる青い草原
遠くを包む険しい山々
壮大な景色は
ゆったりとした時間を持っている
見慣れたはずの太陽に
みんなが集まる

2004年はじめての
太陽を見届けるために

はじめての風
はじめての雲

何もかもが移り変わっていくから
毎日ははじめて

今日という日は戻せないけど
また今日はやって来る
はじめての姿で
部屋の押入れを整理して
破れた障子の張替えをして
正月分の食糧を買って
そばに天ぷらのせてすすって
おまけに今年は雪まで降って

除夜の鐘がなる前から
人々はカウントダウンを始めている
別々に過ごした時間が
新しい年へと向かって
ゆっくりと重なっていく

今年を振り返る歌とともに
今年を象徴する言葉とともに
生まれたての温もりに抱かれるように
僕らは古い時間を懐かしみながら
新しい時間へ帰っていく