もう何も触れないで

僕だって開けたことのない過去なんだ

 

もう何も聞かないで

これ以上嘘つきになりたくない

 

軽い話のやり取りを

突然重くしたりしないで

思わず心まで

こわばってしまう

一秒に怯え
一秒に甘え
一秒に見とれて

時が幾つもの春風を
盗んでいったとしても

一秒を走り
一秒を暮らし
一秒を重ねて

時が凛々しい花びらを
儚くさせてしまっても

一秒で笑い
一秒で泣き
一秒で忘れて
独りの時に
言葉は
なくていい

解きようのない
問いかけが
頭を巡るだけ

心は
静かになりたくて
でも止まない
ざわめき

眠れなくて
起きれなくて
もう関わりたくもない
思い出に侵される
誰かが
電信柱の影から
見張っているんじゃないのか
そんな不安

誰かが
遠く遥かな天から
見守ってくださっているのではないか
そんな安心

見えない目に
疎まれ
弾かれ
育まれて
見えない目を
いつか見返してやろうか
友達と居るときの君
家族といるときの君
僕が見ている君は
ほんの一部分かもしれない

違う君が見てみたい
そう思って僕は
いつもと違う僕になる

この体は
言葉は
いろんな君を知りたくて
変わろうとする
この足は
大地に
甘えている

どんな僕も
地球は
受け止める

座るベンチの
見つからない
雑踏で

立ちながら
感じる
光の抱擁
自分の顔に
未だ馴染めず

自分の心に
微妙な違和感

俺って
こんなだっけ
いつも思っている

他人にさえ
求めてしまう
本当の自分
か細い祖母の手から
注がれた濃い目のカルピスの味と
ぶらさがるように過ごした
緩やかな夏の日の一切れと

僕は生きていくだろう
もう与えられることのない愛からも
何かをもらい続けて

時々思い出したように
コップに注がれるカルピスと氷水は
あの時の配分を再現できない
写真は
一瞬をそっくり写す
たったの一枚で

瞬間を
瞬間にしておくのが
もったいないと
レンズに収めた光景

こんなにたくさんの
今に囲まれて
今から動けない
常に待ち構えている
飽きっぽい自分にも
打たれ弱い自分にも
次の日がやって来る

移り気な季節の上に立ち
だんだんと僕も変わり
訪れてくる時間と
すれ違うようにして
明日へ歩いていく

記憶から離れていくもの
記憶に飛び込んでくるもの
全てを入り混じらせながら
昨日に僕をちりばめていく