二人だけの時間があれば

他の時間なんていらなかった

二人だけの時間があれば

何もかも忘れていられたのに

誰のものでもない時間の中へ

君は一人で去っていく

デジタル時計で示された

午後11時に帰っていく

大切なものを

自分の目で見つけて

手に取った時の喜び

大事だったものを

最後まで使い切れずに

捨てた時の痛み

そして大人になる時

どうしても捨てきれなかったもの

それが今の僕の全て

植物園から

種を飛ばして

花々は草原へと

動物園から

檻をぶち壊し

虎達はジャングルへと

美術館から

台座を踏み潰し

彫刻達は街中へと

博物館から

ガラスケースを突き破り

化石達は地底へと

あるべき場所を求めて

散らばっていく

命の記憶

ゆらり ゆらり

ゆれる ゆれる

ほたる ほたる

おわる おわる

いのち むねん

まわり まわり

まわる まわる

ほたる ほたる

もえる もえる

いのち むげん

ひかり ひかり

ひかる ひかる

ほたる ほたる

ふれる ふれる

いのち むごん

僕が僕である限り

僕はいつもここにいる

君が君である限り

君はいつもどこにでも行ける

他人が羨ましく見えるのは

僕が僕に飽きているから

僕はどこかへ行きたくて

違う自分を想像する

今日も君と待ち合わせる

明日はいくつもある

でも選べるのはたったの一つ

昨日は一つしかない

だけど見方はいくつもあるね

昨日を見る目が優しければ

明日はもっと自由になれる

何も違わない毎日だからこそ

増していく違和感


日々の戸惑いをまとめて

千切りしていく包丁

積み重ねては引っ張り出す

棚の中の皿の重み

よじれっぱなしの心を

吐き出すこともままならず

後悔は惜しげもなく

空の彼方へ晒される

向かい風に向かい

風のふるさとを目でたどる

空を覚えるということは

全てを忘れるということだ

金だけが全てじゃないと

知るために

金を使い

夢だけが全てじゃないと

知るために

夢を見る

詩だけが全てじゃないと

知るために

詩を書く

愛だけが全てじゃないと

知るために

君を想う

雨に気を取られながら

影ののしかかった地面を歩く

降りそうで降らない

雲がもどかしく

懐かしい親友と話す

それぞれの人生の近況

弾けそうで弾けきれない

笑顔がもどかしく

来るべき雨に備えて

控えめな表通り

それじゃあと言って

最後かもしれないさよならをする