いつもお世話様です!
高次脳機能障害・認知症・発達障害のための集団メンタルリハビリテーション「オレンジクラブD」第106-107回の内容をまとめてお届けいたします(内容的にはマインドフルネス訓練のための基礎知識repriseです)。
今回は注意機能・注意障害のお話その②です。
注意障害に対する、覚醒(体調)と感情による自然代償の話です。
まずはまとめスライドです。
(復習用なのではじめて読む方は本文を読んだあとで見て下さいね)
ADHDや注意障害の当事者は周囲から、「好きなことしかやろうとしない・怒りっぽい」と思われていることが多いのですが、これは感情による自然代償の姿であることが多いです。
今回の解説を読むと、なぜこういったことが起こるのかわかると思います。
なお前回のお話の続編なので、前回の注意の話①を見ていない方はそちらを先にごらんください。
↓
https://ameblo.jp/u-mri/entry-12326012950.html
1). 覚醒による代償(体調による代償)
注意の強度の問題は、照明に例えると光の強さが弱いパターンと前回講義でお話しました。
具体的には、注意力を使うようなこと(頭を使うこと)をするとすぐ疲れてしまうのが特徴。
注意強度は、別名、注意の覚醒度や覚度などと言われます(注意強度低下は, decreased alertnessと呼ばれる)。
これは目が覚めている度合(覚醒度)と直結する能力です。目が覚めているほど注意強度は強くなり、眠くなるほど注意強度は下がります。
よって、
注意強度低下の対策は、疲れて眠くなってしまったら(本人はそう言わないので"眠そう"になってしまったら)、休む。
これが一番の対策です。
むしろ、これ以外にない。
いざ疲れてしまったらほかの手段で回復させることは難しいです。
前回のお話でも話した「何でも一つずつやる」は疲れにくくする対策でもあります。
後述の如く「好きなことをやる」「やりたいことをやる」などでは覚醒をupさせられるのですが、
好きなことや、やりたいことをやっているのに、それでも眠そうなときはもう休むしかありません(自我消耗状態という)。
休憩の目安として、よく覚えておきましょう。
当事者が自分から疲れたということは少ないので周りが様子を見てタイミングを見計らいましょう。
無理して一気にやるよりも、こまめに休憩して少しずつ作業していったほうが、結果的に多くの量の作業が出来ます。
そのほか、睡眠不足を避けるなども、重要な対応です。
注意の強度覚醒度を上げる対策として、俗に「気合を入れる」というものがありますが、これが有効かどうかはケースバイケースです。
「気合を入れる」のが有効な場合は、好きなことに集中しようとするときだけです。
嫌いなことに集中しようとする場合、気合を入れるのは逆効果です。
次項で説明します。
2). 感情による代償(興味と怒り)
覚醒度(体調)以外で、注意の強度に強い影響を与える要素は、「感情」です。
特に、興味と怒りです。
ADHDや注意障害の当事者は周囲から、「好きなことしかやろうとしない・怒りっぽい」と思われていることが多いのですが、これは感情による自然代償の姿であることが多いです。
…それもそのはず。
☆好きなことをやる
☆怒りながらやる
この二つのやりかたは注意強度(特に集中力)をupさせることが出来るからです
ではまずは、興味による代償から説明します。
興味がある刺激に対しては注意強度がupします。
ここで言う「興味がある」とは「好き」という意味ではなく、「好き」「嫌い」両方が含まれることに気を付けてください。
「嫌い」な刺激に対しても注意強度はupします。
いずれも、注意強度がupするのですが、結果としてあがる項目が違います。
☆好きなことをやることであがる注意は「集中力」・・・で、
☆嫌いなことをやることであがる注意は「警戒心」・・・です。
嫌いな気持ちを高めて注意力を高めると、余計にやりたくなくなります(集中できなくなる)。
よって、嫌いなことに集中しようとする場合に「気合をいれる」のは逆効果です。「気合を入れる」のが有効な場合は、好きなことに集中しようとするときだけです。
嫌いな作業をやらなければいけない時は、気合をいれず、自分の警戒心を解こうとする対策をするのが重要です。
具体的には、嫌いな作業の目標のハードルを下げることが大事。
例えば、宿題が嫌いなら、「1分だけ机に向かおう」とか「1Pだけやろう」…などと思って作業をはじめるのが○です。気合をいれて一気に宿題を終わらそうとして、余計に出来なくなった経験は誰にでもあるでしょう?
よって、嫌いなことをやろうとするときは、むしろ注意強度を下げる対策が重要になります。いったん作業をはじめることさえ出来れば警戒心が低下するのでそのまま作業を続けられることが多いです。一気に終わらせることは出来ないかもしれませんが、断続的に作業したほうがよいことは、前項の覚醒度による代償の項でも述べたとおりです。
しかしそれでも、どうしても、嫌いなことを一気に終わらせなくてはならない時もあるでしょう。そういった時によくみられる自然代償のパターンが「怒る」ことです。
②怒り代償
怒っていなければ、「嫌いなことは避ける傾向」が多いのですが…
怒っているときは、「嫌いなこと」を積極的に排除しようとします。
換言すれば、嫌いなことに攻撃性を向ける。そうすることで、嫌いなことに集中できるようになります。いわば「怒り代償」と呼ぶべきようなものですが。
上のイラストのように怒っている犬を想像するとわかりやすいかもしれません。視線は怒りをもって対象に全集中します。それを邪魔しようものなら、攻撃されてしまいます。
このように、怒っているときは、怒りの対象に対して全集中します。欠点は、怒っていることによる弊害はもちろんですが、排除最優先のスピード重視なのでミスが増えることも問題です。
怒りによる代償が出てしまった場合に、落ち着くために重要なことは、怒りの対象から離れること。もう一つは頭部冷却です。頭を冷やす…という言い回しがありますが、怒って集中力を高めているときは、頭部の温度があがっていることが多いです。温度や湿度が高い時に出やすくなるので、頭部の温度をあげないことが大事です。
そのほかの予防手段としては、
・時間に余裕を持つ(焦りと怒り代償は親和性が高い)
・何が何でもやらなければいけないような状況に追い込まない ・・・などがあります。
「興味代償」に頼っていると、好きなことは集中して一気にできるけれども、嫌いなことには集中出来ない(場合による避ける)ことにつながります。そして「怒り代償」に頼って、嫌いなことを片づけようとする自然代償が強いと・・・?
周りからは、好きなことしかやろうとせず怒りっぽい人に見える・・・と。
感情による注意力の代償は大きな効果があるのですが、やりかたを間違えると社会性を失ってしまいます。よって、その性質をよく知っておくべきです。
特に怒り代償について知らない人が見ると、「脱抑制だー」「感情の障害だー」などとみなされることもしばしば。
その怒りの目的は、注意を代償するためのものなのか?そうでないのか?
怒り代償なら、怒らなくても集中できる方向へ環境調整をするなり、あるいは注意機能を訓練するなりが正しい支援です。
怒っている目的が”注意力を補うため”であれば、「注意機能を支援」して下さい。これを、感情の問題として捉えてしまうと問題の本質を見間違えます。
ちなみに、問題行動の「目的」によって対応を変える支援(ポジティブな行動支援)の解説はこちらから。
↓
https://ameblo.jp/u-mri/entry-12228346353.html
(問題行動の「目的」に注目した支援の話)
感情による代償をまとめると(冒頭イラスト参照)
☆好きなことは気合を入れて集中して一気に片づけられるので推奨。
☆嫌いなことは気合を入れずに目標のハードルを下げて少しずつ片づけるほうがbetter(嫌いなことに無理に気合をいれると余計にできない)(何が何でも一気に片づけようとすると怒ってしまう)
と。
冒頭のまとめイラストもご参照ください!
ご参考までに!
次回は注意の話③
自分自身に向けた注意(メタ注意)の話!
↓
https://ameblo.jp/u-mri/entry-12182140137.html
興味ある方はこちらもご参照ください。
↓
注意欠如多動性障害・注意欠陥多動症(ADD/ADHD)と高次脳機能障害後の注意障害に関しての研究報告へのリンク
http://ameblo.jp/u-mri/entry-12169327699.html
↓注意機能、注意障害の話については、こちらの単行本サンプルもご参照ください。
(注意機能・注意障害の話が全部読めます[やや医療従事者向け,一般のかたも頑張れば読めます])
https://ameblo.jp/u-mri/entry-12212729341.html
(オレンジクラブ・羅心版の効果を詳しく知りたい方はこちらへ)
半年間の羅心版セッションに参加することで、前頭葉/辺縁系などの内側領域で循環代謝改善が得られ、社会的行動・活力が改善することがわかっています。
↓
三輪書店「高次脳機能障害ファシリテーター養成講座」 より転載
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P.S.1.
今回のブログの記事は、当研究所の単行本「高次脳機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援養成講座」に掲載されています!
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ありがとうございます!
P.S.2.
前シリーズ連載
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(H28年5/23-数時間だけでしたがw)
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