2019年度富士総合火力演習(90TK射撃)
2019年度富士総合火力演習における
戦車等射撃の第3段!
最後の射撃展示は90式戦車(90TK)だ。
最後に、90式戦車の射撃をご覧いただきます
この90式戦車は第3世代の戦車で強力な威力の120mm砲及び、強靭な複合装甲を備えた重量級の車体を大出力のエンジンで軽快に起動させる優れた戦車です
射撃統制装置、及び砲安定機能の能力向上
並びに、自動装填装置の装備により行進射撃を含む
機動間の連続した射撃が可能です
本日は、横行行進射撃、及び行進射撃などを行います
左手、及び、右手をご覧ください
《左右稜線に進入する90TK2班》
「小隊長、こちら2班、射撃支援態勢完了」
「2班は1班の前進を援護する」
(小隊長に射撃支援態勢完了を報告する第2班長)
「こちら、小隊長、了解」
「1班、前進用意、前へ」
「3、5の台装甲車」
「2班、対榴、撃て、止まれ」
《右稜線に陣取り稜線射撃による前進支援を行う2班の90TK》
《2班の援護射撃で前進する小隊長が直接指揮する90TK1班》
「C(チャーリー)、D(デルタ)の台、戦車、徹甲」
「1班、正面射、撃て」
(前進中に敵戦車を発見した小隊長は正面射による行進射撃を命ずる)
《チャーリ―の台、デルタの台、それぞれに徹甲行進車を行う90TK1班》
命中、撃ち方、待て
(前進中に敵戦車を発見した小隊長は正面射による行進射撃を命ずる)
「1班、左へ」
「目標変換、4の台装甲車」
「弾種変更、対榴」
「1班、行進射、撃て!」
(4の台に装甲車を発見したため弾種を対戦車榴弾に変更)
《対戦車榴弾の行進射(今年度が初披露)を行う90TK2班(下の画像は私撮影)》
「命中、撃ち方、待て」(止め)
「1班、止まれ」
《停止した1班。何故止まったのかの不明だが対戦車障害の脳内補完を行おう》
「1班、後退用意、後へ」
「1班、右へ、止まれ」
「前進用意、前へ」
「4の台、装甲車」
「4車、射撃する」
「砲手、対榴、撃て、止まれ」
《4の台に敵装甲車を発見した4車は対戦車榴弾により速やかな援護射撃を行う》
《2班の援護下に離脱する1班》
以上で、前段演習を終了します
【解説】
前段演習における戦車等射撃展示は以上だ。
90式戦車の射撃展示は状況をあまり説明していない。
基本的には相互支援の躍進要領の一例である。
90式戦車の使用砲弾は10式戦車と同じ演習弾と対戦車榴弾である。そのためか、支援射撃は同様であるが、行進射撃で弾種変更射撃を実施している。
先回までも弾種変更射撃を90式戦車の射撃特徴として展示してきたが、先回までの対戦車榴弾(HEAT-MP)射撃は躍進射撃だった。
躍進射撃は停止直前もしくは直後に後射する要領である。
これは、国内における戦車砲の行進射撃が禁止されていたためである。
平成12年度(2000年)に演習弾の登場で国内における戦車砲の行進射撃が可能となったが、対戦車榴弾の行進射撃は米国ヤキマ演習場のみでの射撃であった。
実は今回、実射を見ていたときは気付かなかった。
動画を見ていて、「弾種変更、対榴、1班、行進射」の号令を聞いたとき驚いた。
「たいりゅうのこうしんしゃしてるじゃん」
すぐさま、昨年の動画を見たら躍進射だったので今年度からかと気づいた。
今年度の総火演の目玉は実はこれだった!
と言う話である。
2019年度富士総合火力演習(10TK射撃)
2019年度富士総合火力演習における
戦車等射撃の第2段!
10式戦車(10TK)射撃だ。
《蛇行射撃:D(デルタ)の台に一直線に飛んで行く徹甲弾(演習弾)》
【解説】
基本的にはMCV(16式機動戦闘車)と変わらないと言っていいだろう。
10TK登場時(2012年度)に披露されたのは小隊ネットワークを駆使した射撃方法を披露したわけだが、見た目に分かりにくかったのか、その後はスラローム射撃(蛇行射撃)と風変わりな射撃を披露するに至っている。
射撃の流れはMCV小隊と同様に2個班に分けた10TK小隊の攻撃前進要領だ
①1班の射撃援護下での2班の前進
・装甲車に対する1班の対戦車榴弾使用の正面射撃
・前進間に出現した戦車に対する徹甲弾(演習弾)を使用した2班の蛇行による集中射撃
②1班の射撃支援下での2班の離脱
・装甲車に対する1班の対戦車榴弾使用の正面射撃
・離脱前進間に出現した戦車に対する徹甲弾(演習弾)を使用した2班の背面行進射撃
MCV射撃とは異なり、敵装甲車には対戦車榴弾、敵戦車には徹甲弾(演習弾)の使い分けをしている
【使用砲弾】
10式戦車及び90式戦車は実弾演習において
2種類の砲弾を使用する
1つが戦車等の重装甲目標用の徹甲弾
1つが装甲目標及び榴弾的運用ができる多目的弾
徹甲弾は限られた射場でしか射撃できないため通常の射撃訓練においては必要距離までは徹甲弾と同じ弾道を持つ演習弾が使用される。その運用と形状から「演習徹甲弾」ともよばれる。
《手前が120mm戦車砲用演習弾(TP-T)、奥は10式装弾筒付翼安定徹甲弾》
■00式120mm戦車砲用演習弾
全長:950mm
重量:約18㎏
初速:1676m/s
飛距離:5000m以内
《JM12A1対戦車榴弾(HEAT-MP-T、黒い筒は収納容器(ファイバーケース)》
■M12A1対戦車榴弾
全長:981mm
重量:約23.3㎏
初速:1140m/s
次に、10式戦車の射撃をご覧にいただきます
10式戦車は第4世代の戦車で90式戦車をさらに発展させ
火力、機動力、防護力を向上させながら
運用が容易なように軽量、コンパクト化されています
また、ネットワークシステムを搭載し
戦闘に必要な情報を戦車相互に共有し
射撃の統制などを瞬時に行うことが出来ます
本日は、蛇行射撃及び離脱行進射撃などを行います
【10TK射撃その1:停止射撃及び蛇行射撃】
~1班の援護射撃下における2班の蛇行射撃~
《稜線後方で射撃準備態勢をとる1班》
《稜線に進出し警戒態勢をとる1班》
「こちら小隊長、1班射撃支援体制完了、2班の前進を援護する」
(2班への前進指示)
「こちら2班了解」
《1班の援護下で前進する2班、後方では1班が射撃位置へ移動している》
1班の援護のもと、2班が引き続き前進を開始し
蛇行射撃を実施します
目標はD(デルタ)の台です
《2班の前進援護のため稜線射撃を行う1班》
「3、4の台、装甲車、1班、対榴、撃て」
(1班長兼務の小隊長は1班に対し対戦車榴弾を使用した稜線射撃を指示、目標は3の台及び4の台に現れた敵装甲車)
「命中、撃ち方、待て」
(各々の目標に命中、撃破を確認した)
「D(デルタ)の台、戦車、徹甲、2班、集中」
「左へ、撃て」
《Dの台に現れた1両の敵戦車に対し徹甲弾を使用した班集中射撃を指示、「左へ」の号令で2班は左に旋回、「撃て」の号令で同じ目標に2両同時に射撃を行う。》
「同一目標、右へ、撃て」
《目標に命中しなかった、もしくは命中したが効果の確認ができなかった場合、同一目標に対し第2射を放つ》
「命中、撃ち方、待て」
(敵戦車の撃破の確認し射撃の停止)
【10TK射撃その2:停止射撃及び(離脱)行進射撃】
~1班の援護射撃下における2班の離脱行進射撃~
「前方、障害、2班、止まれ」
「小隊長、こちら2班」
「前方に障害を確認、別経路で前進する」
「こちら、小隊長、了解」
《対戦車障害を避け、退避行動に移る2班》
「A(アルファ)、C(チャーリー)の台、戦車、徹甲」
「2班、正面射、撃て」
(離脱中に発見した敵に対し射撃を指示)
《砲塔を後ろに向けたままの背面行進射撃(離脱行進射)を行う》
「命中、撃ち方、止め」
(撃破判定により射撃の終了を指示)
「3、5の台、装甲車」
「1班、対榴、撃て」
《3の台と5の台に現れた敵装甲車に対し対戦車榴弾の援護射撃をする1班》
「命中、撃ち方、止め」
「後へ」
(撃破を確認、移動するために射撃任務の終了を1班に指示)
《離脱する2班と、続行すべく稜線下に降りてきた1班》
10式戦車の射撃は以上である。
90式戦車に続く
2019年度富士総合火力演習(MCV射撃)
令和元年度(2019年度)の富士総合火力演習(前段演習)における戦車等(16MCV、10TK、90TK)の射撃要領の解説だ
昨年末に準備していたものだが、再編集してみた。
砲弾以外の画像はYOUTUBEに上げられた以下のもののキャプチャである。
令和元年度富士総合火力演習(前段演習)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=235&v=Wp-zSPv30q8&feature=emb_logo
ナレーションを青文字
射撃号令を赤文字で表してみた。
まずは16式機動戦闘車(MCV)の射撃だ
《ナレータ》
次に、戦車等火力である
16式機動戦闘車、通称MCV
10式戦車及び90式戦車の
射撃をご覧いただきます。
はじめに、MCVの射撃をご覧いただきます。
MCVは空輸性、路上機動性に優れている戦闘車両です
火力は105mm砲を有し
連装銃及び重機関銃を搭載できます
また、10式戦車と同等の射撃統制装置を備え
高い命中精度を有し
合せてネットワークシステムを搭載し
戦闘に必要な情報をリアルタイムに共用出来ます
本日は横行行進射撃及び蛇行射撃などを行います
左手をご覧ください
小隊内の1班の2両が広場左に進入してきました
それでは射撃をご覧いただきます
目標はA(アルファー)からE(エコー)の台です
大きな音がしますご注意ください
【MCV射撃その1:停止射撃と行進射撃】
~1班の援護射撃と2班の横行行進射撃~
「2班、こちら1班、
1班は、2班の前進を援護する!」
(小隊長から小隊陸曹に対する前進指示)
「こちら2班了解!、前へ!」
(小隊陸曹の前進指示の確認と2班僚車への前進命令)
《あらかじめ示された射撃陣地に前進(躍進)するMCV2班》
「A(アルファー)、C(チャーリー)の台、装甲車
1班、徹甲、撃て」
(1班長兼務の小隊長が1班へ支援射撃指示)
(地形を利用した車体防護状態で援護のための停止射撃を行う1班のMCV)
「命中、撃ち方、待て」
《1班の援護下で敵を警戒しつつ前進するMCV2班》
「E(エコー)の台、装甲車
徹甲、2班、撃て」
(2班長である小隊陸曹による班への射撃指示)
(躍進間に横行行進射撃を行うMCV2班)
「小隊長、こちら2班」
「E(エコー)の台、装甲車、撃破
2班は右稜線へ陣地侵入する」
(1班長を兼務する小隊長への報告)
「こちら小隊長、了解」
【MCV射撃その2:停止射撃と蛇行射撃】
~2班の援護射撃と1班の蛇行射撃~
《稜線の陣地に進入する2班のMCV》
「小隊長、こちら2班、射撃支援態勢完了」
「2班は1班の前進を援護する」
《射撃陣地で射撃支援準備態勢をとる2班のMCV》
「こちら小隊長了解」
《前進を開始するMCV1班》
1班の前進を2班が射撃支援します
目標はC(チャーリー)、D(デルタ)の台です
2班の射撃支援のもと、
1班が引き続き三段山へ向け前進を開始します
この際、敵の射撃を避けるため
蛇行しつつ敵に対し射撃します
蛇行射撃の目標はA(アルファー)の台
及びE(エコー)の台です
(支援射撃は停止射撃なので距離1600mのCの台及び1500mのDの台、蛇行射撃は行進射撃なので1400mのA・Eの台を射撃する)
「C、Dの台装甲車、MCV陣地侵入、
徹甲、2班、正面射、撃て」
(敵発見に伴い射撃位置まで前進し射撃する。正面射は各車が対面する目標を射撃)
《陣地内射撃位置において支援射撃を実施する2班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
「E(エコー)の台、装甲車、徹甲
1班、左へ、撃て」
(前進中に敵を発見したため旋回行進射撃を指示)
《蛇行射撃(左急旋回行進射撃)を行う1班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
「目標変換、A(アルファー)の台、徹甲、
1班、右へ、撃て」
《蛇行射撃(右急旋回行進射撃)を行う1班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
【MCV射撃その3:発煙弾投射と停止射撃】
~1班の発煙弾発射と2班の援護射撃~
「1班、左へ」
「前方障害、1班、止まれ
発煙、発射」
《前進経路に地雷原を発見したため急停止し発煙弾を発射する》
「1班、退避する」
《煙幕に隠れ退避行動に移る1班》
1班は、地雷原を確認したため
発射発煙弾を発射し離脱します
2班が射撃支援します
目標はB(ブラボー)、D(デルタ)の台です
「2班は、1班の離脱を援護する」
「B(ブラボー)、D(デルタ)の台、装甲車
徹甲、2班、正面射、撃て」
《2班による援護射撃》
「命中、撃ち方、止め(やめ)」
《1班に続き離脱する2班》
続いて2班が離脱し
MCV小隊はおおきく迂回して
前進を継続します
【解説】(あくまでも推定だ)
■MCV(16式機動戦闘車)小隊
MCV小隊の射撃要領は、戦闘偵察大隊による威力偵察要領の一例といえよう。
4両から成るMCV小隊は小隊長と僚車による1班と小隊陸曹と僚車による2班に編成分けされ、交互支援を行う各国共通のセオリー通りの前進要領だ。
■敵
敵は、装甲車を有する偵察・警戒部隊である。
■任務
MCVの前進により判明する敵の細部状況を報告すると共に戦闘による敵の偵察・警戒部隊の減衰を図り、我の主力の行動を容易にさせる。
【Q&A】(あくまでも推定だ)
Q:なぜ、装甲車に徹甲弾を撃つの?
A:射場規則だ。
停弾堤に設置されていないAからEの台の的は演習弾(訓練用徹甲弾)しか射撃できない。(と記憶)
他には演習弾(徹甲弾も)の方が対戦車榴弾よりも軽く短く、爆薬も入っていないので走行間の装填が安全だという側面もあるだろう。
《105mmTP-T(下)、120mmTP-T(上)が短く見えるがほぼ同じ長さ(1m弱)》
00式105mm演習弾(TP-T)
全長:940mm
重量:約17kg
初速:1556m/s
91式多目的対戦車榴弾(HEAT-MP-T)
全長:990mm
重量:約21kg
初速:1150m/s
Q:弱点の側面をさらすのはなぜ?バカじゃないの?
A:しかたないぢゃないか、かあさん。
遮蔽地から遮蔽地に前進するためには止むを得ず側面を晒すこともあるだろう。側面を晒すのが嫌だから前進しなければ任務は達成できない。そこで、脅威を最小限にするための援護射撃であり、行進射撃だ。
Q:目標まで何メートルあるの?
A:射場中心からの射距離は概ね以下の通りだ
A(アルファー)の台:1400m
B(ブラボー)の台:1400m
C(チャーリー)の台:1600m
D(デルタ)の台:1500m
E(エコー)の台:1400m
す、すごいな。
AからEという台の目標しか射撃しないので戦車射撃よりも距離が近いのだろう。と思っていた。特に行進射撃は・・・
だって、装輪車だもの。
1000~1200m位の予想が、ぐーぐるさんのまっぷで距離計ったら行進射撃の的は5の台(約1400m)と同じ距離だ・・・・
MCV侮るべからず・・だな
次回10式戦車の射撃