2019年度富士総合火力演習(MCV射撃)
令和元年度(2019年度)の富士総合火力演習(前段演習)における戦車等(16MCV、10TK、90TK)の射撃要領の解説だ
昨年末に準備していたものだが、再編集してみた。
砲弾以外の画像はYOUTUBEに上げられた以下のもののキャプチャである。
令和元年度富士総合火力演習(前段演習)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=235&v=Wp-zSPv30q8&feature=emb_logo
ナレーションを青文字
射撃号令を赤文字で表してみた。
まずは16式機動戦闘車(MCV)の射撃だ
《ナレータ》
次に、戦車等火力である
16式機動戦闘車、通称MCV
10式戦車及び90式戦車の
射撃をご覧いただきます。
はじめに、MCVの射撃をご覧いただきます。
MCVは空輸性、路上機動性に優れている戦闘車両です
火力は105mm砲を有し
連装銃及び重機関銃を搭載できます
また、10式戦車と同等の射撃統制装置を備え
高い命中精度を有し
合せてネットワークシステムを搭載し
戦闘に必要な情報をリアルタイムに共用出来ます
本日は横行行進射撃及び蛇行射撃などを行います
左手をご覧ください
小隊内の1班の2両が広場左に進入してきました
それでは射撃をご覧いただきます
目標はA(アルファー)からE(エコー)の台です
大きな音がしますご注意ください
【MCV射撃その1:停止射撃と行進射撃】
~1班の援護射撃と2班の横行行進射撃~
「2班、こちら1班、
1班は、2班の前進を援護する!」
(小隊長から小隊陸曹に対する前進指示)
「こちら2班了解!、前へ!」
(小隊陸曹の前進指示の確認と2班僚車への前進命令)
《あらかじめ示された射撃陣地に前進(躍進)するMCV2班》
「A(アルファー)、C(チャーリー)の台、装甲車
1班、徹甲、撃て」
(1班長兼務の小隊長が1班へ支援射撃指示)
(地形を利用した車体防護状態で援護のための停止射撃を行う1班のMCV)
「命中、撃ち方、待て」
《1班の援護下で敵を警戒しつつ前進するMCV2班》
「E(エコー)の台、装甲車
徹甲、2班、撃て」
(2班長である小隊陸曹による班への射撃指示)
(躍進間に横行行進射撃を行うMCV2班)
「小隊長、こちら2班」
「E(エコー)の台、装甲車、撃破
2班は右稜線へ陣地侵入する」
(1班長を兼務する小隊長への報告)
「こちら小隊長、了解」
【MCV射撃その2:停止射撃と蛇行射撃】
~2班の援護射撃と1班の蛇行射撃~
《稜線の陣地に進入する2班のMCV》
「小隊長、こちら2班、射撃支援態勢完了」
「2班は1班の前進を援護する」
《射撃陣地で射撃支援準備態勢をとる2班のMCV》
「こちら小隊長了解」
《前進を開始するMCV1班》
1班の前進を2班が射撃支援します
目標はC(チャーリー)、D(デルタ)の台です
2班の射撃支援のもと、
1班が引き続き三段山へ向け前進を開始します
この際、敵の射撃を避けるため
蛇行しつつ敵に対し射撃します
蛇行射撃の目標はA(アルファー)の台
及びE(エコー)の台です
(支援射撃は停止射撃なので距離1600mのCの台及び1500mのDの台、蛇行射撃は行進射撃なので1400mのA・Eの台を射撃する)
「C、Dの台装甲車、MCV陣地侵入、
徹甲、2班、正面射、撃て」
(敵発見に伴い射撃位置まで前進し射撃する。正面射は各車が対面する目標を射撃)
《陣地内射撃位置において支援射撃を実施する2班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
「E(エコー)の台、装甲車、徹甲
1班、左へ、撃て」
(前進中に敵を発見したため旋回行進射撃を指示)
《蛇行射撃(左急旋回行進射撃)を行う1班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
「目標変換、A(アルファー)の台、徹甲、
1班、右へ、撃て」
《蛇行射撃(右急旋回行進射撃)を行う1班のMCV》
「命中、撃ち方、待て」
【MCV射撃その3:発煙弾投射と停止射撃】
~1班の発煙弾発射と2班の援護射撃~
「1班、左へ」
「前方障害、1班、止まれ
発煙、発射」
《前進経路に地雷原を発見したため急停止し発煙弾を発射する》
「1班、退避する」
《煙幕に隠れ退避行動に移る1班》
1班は、地雷原を確認したため
発射発煙弾を発射し離脱します
2班が射撃支援します
目標はB(ブラボー)、D(デルタ)の台です
「2班は、1班の離脱を援護する」
「B(ブラボー)、D(デルタ)の台、装甲車
徹甲、2班、正面射、撃て」
《2班による援護射撃》
「命中、撃ち方、止め(やめ)」
《1班に続き離脱する2班》
続いて2班が離脱し
MCV小隊はおおきく迂回して
前進を継続します
【解説】(あくまでも推定だ)
■MCV(16式機動戦闘車)小隊
MCV小隊の射撃要領は、戦闘偵察大隊による威力偵察要領の一例といえよう。
4両から成るMCV小隊は小隊長と僚車による1班と小隊陸曹と僚車による2班に編成分けされ、交互支援を行う各国共通のセオリー通りの前進要領だ。
■敵
敵は、装甲車を有する偵察・警戒部隊である。
■任務
MCVの前進により判明する敵の細部状況を報告すると共に戦闘による敵の偵察・警戒部隊の減衰を図り、我の主力の行動を容易にさせる。
【Q&A】(あくまでも推定だ)
Q:なぜ、装甲車に徹甲弾を撃つの?
A:射場規則だ。
停弾堤に設置されていないAからEの台の的は演習弾(訓練用徹甲弾)しか射撃できない。(と記憶)
他には演習弾(徹甲弾も)の方が対戦車榴弾よりも軽く短く、爆薬も入っていないので走行間の装填が安全だという側面もあるだろう。
《105mmTP-T(下)、120mmTP-T(上)が短く見えるがほぼ同じ長さ(1m弱)》
00式105mm演習弾(TP-T)
全長:940mm
重量:約17kg
初速:1556m/s
91式多目的対戦車榴弾(HEAT-MP-T)
全長:990mm
重量:約21kg
初速:1150m/s
Q:弱点の側面をさらすのはなぜ?バカじゃないの?
A:しかたないぢゃないか、かあさん。
遮蔽地から遮蔽地に前進するためには止むを得ず側面を晒すこともあるだろう。側面を晒すのが嫌だから前進しなければ任務は達成できない。そこで、脅威を最小限にするための援護射撃であり、行進射撃だ。
Q:目標まで何メートルあるの?
A:射場中心からの射距離は概ね以下の通りだ
A(アルファー)の台:1400m
B(ブラボー)の台:1400m
C(チャーリー)の台:1600m
D(デルタ)の台:1500m
E(エコー)の台:1400m
す、すごいな。
AからEという台の目標しか射撃しないので戦車射撃よりも距離が近いのだろう。と思っていた。特に行進射撃は・・・
だって、装輪車だもの。
1000~1200m位の予想が、ぐーぐるさんのまっぷで距離計ったら行進射撃の的は5の台(約1400m)と同じ距離だ・・・・
MCV侮るべからず・・だな
次回10式戦車の射撃