冬の三重奏


真鯛のポワレ グリーンピースソースを味わいながら小野ユキは給仕のお姉さんのことが気になっていた。なぜ蔵人の顔面一人芝居にあれほど怯えていたのか。

「たいぴす」という言葉は何かのメッセージではないだろうかと思い始めていた。


『ねぇ、あのお姉さんなんであんなに怯えていたのかしら❓️』



『さぁ僕はお姉さんに全然気づかなかった

謝っとかないといけませんね』


しばらくすると件のお姉さんがデザートを運んできた。 


『本日のデザート、冬の三重奏でございます。青い薔薇、藍色のバタフライピー、紫のブルーベリー…』

お姉さんは口上の途中で涙を零しながらうつむいてしまった。



『どうしました❓️

また怖がらせてしまったかな

ごめんなさいね』

蔵人は真剣に謝った。



『ごめんなさい

違うんです。びっくりしたんです』

お姉さんは頭を振りながら言った。



『何がそんなにあなたを驚かせたの

よかったら聞かせてくれない』

小野ユキはハンカチを差し出して優しく慈しむように言った。



『ありがとうございます。』

お姉さんは涙を拭いて


『もしかしてあなたは

源蔵人さんではありませんか❓️』

蔵人に訊いた。


『そうですがよくご存知ですね

お若いのに』



『いいえ昨日までは知りませんでした

昨夜、父の遺品の映画のビデオを観ていたらあなたが出ていたんです

一人だけ出ていた日本人だったのでちょっと気になっていたんです

最初にお見かけした時はどこかで見たことある人程度に思っていたんですが

いろんな表情をされているのを見て昨夜の映画の人だとわかりました

そしたら心臓がドキドキしてきて

あんなことになってしまったんです

すみませんでした』



『そうだったのねぇ

それはびっくりしたわねぇ

そんなに取り乱すと言っては失礼だけど何か深い事情がありそうね

もう少し詳しく教えてくださる❓️』



『はい、でも』



『そうね、ここではちょっとね

あなた、ここのお勤め何時まで❓️』



『今日はランチタイムが終わるまでですから、あと2時間くらいです。』



『わかったわ、外で待ってるわ』



『はい、ありがとうございます』


お姉さんはにこやかに退室していった。デザートの説明の続きを聞かせてくれよと蔵人は言いたかった。


『あの娘のお父さんあんたのファンだったのかなぁ』


『どうかなぁ

それよりあの涙が気になります

人前であんなに…』


『それはあんたのせいよ』


『え、なんですか❓️それ』


『あんたといるとね…

何でも話したくなっちゃうのよ

話したくないことまでね…』


『そうなんですか❓️』


『秘密をわざわざ苦労して盗まなくても勝手に喋ってくれる

あの映画であんたが演じたスパイ以上に

優秀なスパイね

映画にしたらつまんないだろうけどね』


『そりゃつまらん映画だ

あっ、そういえばあのオファーしてきたプロデューサーたちも口には出さなかったけど丸出しだったなぁ態度が』



『丸出し❓️態度が❓️』


『もうちょっと隠してたら断らなかったかも知れないのに

魂胆丸見えでしたから』



『断ってよかったのか、悪かったのか

そんなことよりこの綺麗なデザート

いただきましょうよ』


(青と藍と紫、虹の終わりの色ね)

デザート冬の三重奏を眺めながら小野ユキは心の中で呟いた。


つづく


 




 



 

 



 

 


 

 











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