幹線における輸送量を増加させるために開発された貨車が本型式である。···(中略)··· この車両の最大の特徴は三軸(六輪)の足回りである。これは、なるべく簡便な車体で少しでも積載量を増やすために採られた構造だ。
──『皇国鉄道車両解説(第二版)』より抜粋

 

 

こんにちは、ぬぬつきです。今回は新たに製作した無蓋車のご紹介です。

 


○製作のきっかけ
 さて、2018年に制作し、今年の春に改良した二軸無蓋車は、僕の中でも傑作と言える鉄道作品であります。今後も大切に遊んでいきます。
 しかし、いつまでも既存の作品を見つめていわけにもいかないので、更に一回り大きい、兄貴分的な無蓋車を作ろうとなりました。それが本作です。

 二軸車かボギー車か迷った結果、間をとって(?)三軸車としました。実在したトキ900という三軸無蓋車を手本としています。

 


○構造
・概形


 全長が約20凸、幅はいつもどおり7凸、そして側板は5凸高…と、全体として大きめに作ってあります。既にある二軸車との違いを明確に出せていると思います。

 


・上回り

 手軽に作れそうだったので、アオリ戸は上半分が開閉する仕組みにしてみました。全開するようにするといろいろ調整が難しいので。
 側面は1x3タイルをたくさん並べることでそれっぽく。

 

 妻面では1x6プレートを補強材として使用。見た目だけじゃなく実際に強度を出すのに役立っています。

 


・車輪

 車輪は三軸です。現実のトキ900や、他のレゴ三軸無蓋車と同様に、中央の一軸は左右に横動する作りとしています。
 純正カーブなら問題なく通過できます。

 


・ブレーキその他
 床下の装置は個人的にこだわりたい箇所です。側ブレーキと床下。床下についてはもうちょっと改良の余地ありですね。
 また、アオリ戸の開閉箇所を上半分にした結果、車体下方向にロープ掛けを設置することができました。

上写真:ロープ掛けにロープ(紐)を掛けた様子

 

○その他

 一部の写真に写っていましたが、2両つくりました。ただし、2両目はパーツ不足で不完全であったため、すぐに解体しています。


 

以下は架空鉄道における本車輌の設定です。

 

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皇鉄 乙ト300型 無蓋貨車

 

(車両基地にて)

 

 

◆概要

 乙ト300型は皇国国有鉄道(皇鉄)が保有する無蓋貨車。

 

 


◆開発前史

(完成後、試運転される1号車)

 

 鉄道の発展に伴い、皇鉄の輸送量は日に日に増大して行ったが、線路と車両に限りがあるため、限界が近づいてくる。特に、幹線・亜幹線における輸送能力は早い段階でぎりぎりになっていた。当時の皇鉄では、路線の新設を優先し、改良が後回しにされていたのである(建主改従)。そのため、幹線も一部を除いて単線のままであり、輸送効率が上がらない一因となっていた。特に貨物輸送ではこの問題が顕著であった。旅客運送であれば、気動客車の量産などで多少はましだったのである。
 以上のような問題を解消すべく、大規模な複線化工事や電化などが計画されたが、同時に、一両あたりの積載量を増加させるという手法も検討された。新しい車両を導入することで、路線の改良より安価で迅速に輸送力を強化できる。具体的には、既存の二軸無蓋車の倍の容積を持ち、石炭輸送車としても使用できる新しい貨車が必要であると言われた。

 同じ頃、輸送力の不足は軍部でも俎上に上っていた。
 「武力事件」以降、帝国と連邦の軍事的な緊張が高まるにつれ、局外に立つ皇国でも有事に向けた想定がなされるようになった。これは物資の鉄道輸送についても同様であった。しかし、ここでも平時の体制では有事の物資輸送に適さないという見方をしていた。兵部省の調査会は、既存車両の積載定数を増やす「臨時増積」で、ある程度の輸送力確保は可能とした一方、まんいち総力戦となれば、不充分であると結論づけた。最終的に、調査会は「無蓋貨車(甲種・乙種※)ヲ新造スル必要性」を説く報告書を提出した。

 以上のように鉄道庁・兵部省(軍隊)の双方から要請された、いわば富国強兵のための新型貨車が本型式「乙ト300型」である。

 

※貨車の重量区分

甲種…大型ボギー車 ないし 8ポッチ幅車両

乙種…中型ボギー車 ないし 三軸車(本形式)

丙種…二軸車 ないし 6ポッチ幅車両



◆開発

 新型の無蓋車を製造するにあたり、従来どおり二軸車として製造単価を下げるか、あるいはボギー車として輸送量を増加させるかで議論になった。つまり、量産性と能力のどちらを取るか、という問題である。結果として、双方の長所を掛け持つ、三軸車として開発されることになった。三軸車は、二軸車と同様に単純な足回りをしている一方で、車輪が多いぶん一両あたりの積載量は多いという利点があった。
 上回りについては、既存の車両を参考にすることで合理化を図るものとした。また、カバーを掛けることで、代用有蓋車としても使用できることが要求された。そうすることで、空荷状態の回送列車を活かし様々な物資を運べるようになると期待されたのである。



◆構造

(木材を積載した状態。長物車ほど長さは取れない一方で、縦に積める量は多い。)

 

 

(既存の車両(黒色)と比べると、一回り大きいのがわかる。)

 

 

イ)上回り
 輸送量拡充を目指した本型式は、積載量の増加が図られている。それまでの標準型(丙と200型)に対して床面が2凸延長され、高さについても2凸伸びている。容積は単純計算で18x5x4=90立方凸と、それまでの倍になる。
 アオリ戸は前後で二分割されている。これが開閉するのは上半分のみであるため、運搬する資材の種類によっては積み下ろしに手間がかかるという。

ロ)下回り
 前述の通り、三軸車両となっている。中央の一軸については、曲線に対応して横動する構造になっている。また、走り装置は高速走行に耐えうるものとなっている。

 


◆運用

(軍の基地から出てくる貨物列車)

 

 既に量産が始まっており、幹線を中心に貨物列車で使用されている。主に石炭を運んでいる(皇鉄には石炭車が無い)が、それ以外の木材や砂利・鉱石なども扱っている。当分は、二軸車とともに主力型式として運用される予定である。
 製造段階では戦乱も視野にいれていた本型式であるが、現時点では、実戦目的で使用されたことはない。ただし、陸軍の特別大演習では、本車両を含む多数の鉄道車両を以て国土の南から北へ部隊や物資を輸送する訓練が行われた。現場部隊の評価は、アオリ戸の形状にやや難があるとしつつも、積載量に余裕があり使用に適するというものであった。
 このほか、一部の車両は陸海軍の基地への配給列車にも充当されている。

 

 

 

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 今回はミリタリーも絡めた設定にしてみました。

 

おわり