センター現代文の選択肢は確かにややこしく作られています。
しかし、出題者は一つの選択肢が絶対に正解であるようにしなければ、非難を受けることになるため、受験生が混同するよう選択肢を作成しながら、唯一の答えを作ります。
受験生に要求する選択肢の特徴は限られています。だから逆に受験生は、出題者の立場に立って、問題を吟味し、解いていくほうが効率的でしょう。
ここでは、センター現代文過去問から抽出した問題の特徴を、法則としてすべてまとめていきます。問題例として平成17年度本試験あたりを使いますので、手元にあれば効果的です。
選択肢を選ぶための、道具として使ってください。
【評論編】
1、傍線部が対比されているものの説明ならば、選択肢に、もう一つの対比されているものが誤文で入ることがよくある。
「Aについての説明として適当なものを選びなさい」系の問題にかなりの確率で使われる法則。選択肢の中に「B」について説明している誤文を入れ込む典型的なひっかけですね。
平成17年度本試験問2では、「カメラのレンズ」の説明を求める問題なのに対し、選択肢1番には「人間の目」の説明が含まれています。
平成16年度本試験問2では「軽やかな聴衆」の説明に対して、選択肢3と4には「真面目な聴衆」の説明が含まれています。
この手の出題への対策は、きちんと文章を読む中で、頭の中に対比の構図を描くことです。そうすれば、誤った選択肢はすぐに消すことができるでしょう。
2、価値判断の入った選択肢には要注意。
評論文は、基本的に客観的な立場から論じられているのがほとんどです。だから、主観の入った選択肢があった場合、十分に注意しなければなりません。
平成17年度本試験問6は顕著な例です。1、「必要としている」、2「歓迎している」、3「高く評価している」など、本文で行われていない価値評価を誤った選択肢に入れています。ちなみに、このように、選択肢の文章の最後が、消去法に効果を発揮することはよくあります。
3、「どういうことか」などの問題は言い換え問題。分割し、部分ごとに比較する。
このことは記述式の問題ではよく言われるのですが、センター試験の選択式の問題にも通用します。
平成17年度本試験問5は、「『見せる』ことよりも、われわれの無用、無償の眼差しによって『見られる映像を試みることにあった』」という文が「どういうことか」聞いています。まずはこの文を分割しましょう。1「見せることよりも」、2「われわれの無用、無償の眼差しによって」、3「『見られる』映像を試みること」の3要素に分かれますね。
選択肢を見てみましょう。この三つで区分したとおり1「~ではなく」、2「~によって」、3「~こと」と、三つの要素を選択肢が含んでいることが見えてきます。分割した後は要素ごとの比較。1や2の部分では相違はないので、3で選択肢を切るのです。
平成15年度本試験問2はわかりやすい例ですね。「それが分化したこと」とは「なにがどうなることか」ですから、1「~が」、2「~こと」で、二つに分割。そして一つずつ、選択肢を比較していけば問題がスマートに見えてくる。
4、傍線部を拡大せよ。
傍線部の引かれた部分ばかりに着目して、前後関係をおろそかにしてしまうのはもっともよくありません。自分で傍線部を拡大する癖をつけるくらいに、前後に注意しましょう。
平成17年度本試験問3の傍線部を拡大してみましょう。前部分を見ると「それを見るという行為に立つならば」とありますね。次に後ろ部分。「おびただしい眼差しに支えられて~気づくのである」とあります。
選択肢を見てみましょう。前部分の前提「それを見るという行為に立つならば」を2と5が満たしていないのです。そして後ろ部分の記述によって、1と4を消すことができます。分析範囲は伸ばす。このことがどれほど大切か認識してください。
平成15年度本試験問5では、傍線部の前に「断ち切り、」とあります。この「連用形+、」は因果関係を表すことを押さえておかなければなりません。だから、この問題を解くには前部分を踏まえなければなりません。しかも、その部分には「これに対して」という指示語が含まれています(以下参照)。
5、傍線部中、または拡大内に置いて指示語がある場合、明らかにするべし。
先ほどの問題で「それを見るという行為に立つならば」とありましたが、「それ」の指示語の内容を明らかにしなければいけないということです。
平成16年度本試験問4の「ここ」、平成15年度本試験問2の「それ」、平成15年度本試験問4の「そのような」など、指示語が傍線内に含まれる、あるいは前後にある場合は明らかにしなければ、問題を明瞭に解くことは絶対に出来ないのです。
6、内容合致問題の基準。
問6によく出題される内容合致問題は、消去法を強力にするために、誤文の特徴を確認しておきましょう。
・因果不適当
原因と結果が不適切なこと(AしたからBした、など)。平成17年度問6の1「~事態に対して、-」の前後で因果不適当が見られる。内容合致問題ではないが、同じく問4の1「によって」と、2「まやかしは」前後で因果不適当が見られることを確認してほしい。
・完全不一致
選択肢の中に一つ二つはある本文とま逆の選択肢。しかし本番では意外に引っかかってしまう。平成17年度問6の2と5では小津さんのポリシーが本文と逆。
・反対の意味へのすり替え
1で説明したとおり。
・余計な価値判断
2で説明したとおり。加えて「言い過ぎ」という基準も意識してほしい。平成17年度問2の3で「現実の世界を否定する」など明らかに言いすぎだろ、という選択肢は注意が必要。
・記述なし
本文重視の試験なのに、本文に書いていないことを書く選択肢は多い。記憶力には限度があるが、大まかな論理展開を頭に描いて、問われた時にすぐ必要な部分が見つけられるよう、演習を積むほかない。
7、問題文をきちんと読もう。
問題文には、思いがけない指示が入ることがあります(問題作成者の、難問と指摘された時の言い訳ともいえるが)。本文重視とはいえ、問題文をきちんと読んで、つまらないことで損をしないように。
平成17年度問4の問題文には「どのような結果が生じたか」とあります。つまり、受験生が注目しなければならないのは結果であって、選択肢中の前半分は流す程度でよいのです。時間短縮に役立ちますね。
8、選択肢の中が具体例である具体問題は、抽象(前提)部分を探す。その抽象に合ったものが正解。
平成16年度問3では、ベートーヴェン、モーツァルトなど具体的な作曲家の名前が挙げられた選択肢で構成されています。この場合は、具体例前後にある抽象的に描かれた前提が必須となるのです。
本文では5,6,7段落でこれらの作曲家について語っています。傍線部はそれらの前にあるので、前提は具体例の後に求める必要があります。「サンドイッチ法則」といい、具体例を挟んだ論では、前に選択肢があれば後ろに、後ろに選択肢があれば前に、解答根拠をさがすのがセオリーです。
「神話は~純粋鑑賞の所産である」を前提に、選択肢を見ていけば、消去法を使わずに5が適切であるとわかるでしょう。1や3などは前提が純粋な音楽鑑賞ではなく、肖像画からの印象になっているのです。
9、パラドックス問題について。
「パラドックス」、「矛盾」を軸にした問題では、矛盾する2要素をまずは見つけることから始めなければなりません。平成16年度問4では、この2要素を見つけることで3と5に絞れるでしょう。
しかし、出題者は一つの選択肢が絶対に正解であるようにしなければ、非難を受けることになるため、受験生が混同するよう選択肢を作成しながら、唯一の答えを作ります。
受験生に要求する選択肢の特徴は限られています。だから逆に受験生は、出題者の立場に立って、問題を吟味し、解いていくほうが効率的でしょう。
ここでは、センター現代文過去問から抽出した問題の特徴を、法則としてすべてまとめていきます。問題例として平成17年度本試験あたりを使いますので、手元にあれば効果的です。
選択肢を選ぶための、道具として使ってください。
【評論編】
1、傍線部が対比されているものの説明ならば、選択肢に、もう一つの対比されているものが誤文で入ることがよくある。
「Aについての説明として適当なものを選びなさい」系の問題にかなりの確率で使われる法則。選択肢の中に「B」について説明している誤文を入れ込む典型的なひっかけですね。
平成17年度本試験問2では、「カメラのレンズ」の説明を求める問題なのに対し、選択肢1番には「人間の目」の説明が含まれています。
平成16年度本試験問2では「軽やかな聴衆」の説明に対して、選択肢3と4には「真面目な聴衆」の説明が含まれています。
この手の出題への対策は、きちんと文章を読む中で、頭の中に対比の構図を描くことです。そうすれば、誤った選択肢はすぐに消すことができるでしょう。
2、価値判断の入った選択肢には要注意。
評論文は、基本的に客観的な立場から論じられているのがほとんどです。だから、主観の入った選択肢があった場合、十分に注意しなければなりません。
平成17年度本試験問6は顕著な例です。1、「必要としている」、2「歓迎している」、3「高く評価している」など、本文で行われていない価値評価を誤った選択肢に入れています。ちなみに、このように、選択肢の文章の最後が、消去法に効果を発揮することはよくあります。
3、「どういうことか」などの問題は言い換え問題。分割し、部分ごとに比較する。
このことは記述式の問題ではよく言われるのですが、センター試験の選択式の問題にも通用します。
平成17年度本試験問5は、「『見せる』ことよりも、われわれの無用、無償の眼差しによって『見られる映像を試みることにあった』」という文が「どういうことか」聞いています。まずはこの文を分割しましょう。1「見せることよりも」、2「われわれの無用、無償の眼差しによって」、3「『見られる』映像を試みること」の3要素に分かれますね。
選択肢を見てみましょう。この三つで区分したとおり1「~ではなく」、2「~によって」、3「~こと」と、三つの要素を選択肢が含んでいることが見えてきます。分割した後は要素ごとの比較。1や2の部分では相違はないので、3で選択肢を切るのです。
平成15年度本試験問2はわかりやすい例ですね。「それが分化したこと」とは「なにがどうなることか」ですから、1「~が」、2「~こと」で、二つに分割。そして一つずつ、選択肢を比較していけば問題がスマートに見えてくる。
4、傍線部を拡大せよ。
傍線部の引かれた部分ばかりに着目して、前後関係をおろそかにしてしまうのはもっともよくありません。自分で傍線部を拡大する癖をつけるくらいに、前後に注意しましょう。
平成17年度本試験問3の傍線部を拡大してみましょう。前部分を見ると「それを見るという行為に立つならば」とありますね。次に後ろ部分。「おびただしい眼差しに支えられて~気づくのである」とあります。
選択肢を見てみましょう。前部分の前提「それを見るという行為に立つならば」を2と5が満たしていないのです。そして後ろ部分の記述によって、1と4を消すことができます。分析範囲は伸ばす。このことがどれほど大切か認識してください。
平成15年度本試験問5では、傍線部の前に「断ち切り、」とあります。この「連用形+、」は因果関係を表すことを押さえておかなければなりません。だから、この問題を解くには前部分を踏まえなければなりません。しかも、その部分には「これに対して」という指示語が含まれています(以下参照)。
5、傍線部中、または拡大内に置いて指示語がある場合、明らかにするべし。
先ほどの問題で「それを見るという行為に立つならば」とありましたが、「それ」の指示語の内容を明らかにしなければいけないということです。
平成16年度本試験問4の「ここ」、平成15年度本試験問2の「それ」、平成15年度本試験問4の「そのような」など、指示語が傍線内に含まれる、あるいは前後にある場合は明らかにしなければ、問題を明瞭に解くことは絶対に出来ないのです。
6、内容合致問題の基準。
問6によく出題される内容合致問題は、消去法を強力にするために、誤文の特徴を確認しておきましょう。
・因果不適当
原因と結果が不適切なこと(AしたからBした、など)。平成17年度問6の1「~事態に対して、-」の前後で因果不適当が見られる。内容合致問題ではないが、同じく問4の1「によって」と、2「まやかしは」前後で因果不適当が見られることを確認してほしい。
・完全不一致
選択肢の中に一つ二つはある本文とま逆の選択肢。しかし本番では意外に引っかかってしまう。平成17年度問6の2と5では小津さんのポリシーが本文と逆。
・反対の意味へのすり替え
1で説明したとおり。
・余計な価値判断
2で説明したとおり。加えて「言い過ぎ」という基準も意識してほしい。平成17年度問2の3で「現実の世界を否定する」など明らかに言いすぎだろ、という選択肢は注意が必要。
・記述なし
本文重視の試験なのに、本文に書いていないことを書く選択肢は多い。記憶力には限度があるが、大まかな論理展開を頭に描いて、問われた時にすぐ必要な部分が見つけられるよう、演習を積むほかない。
7、問題文をきちんと読もう。
問題文には、思いがけない指示が入ることがあります(問題作成者の、難問と指摘された時の言い訳ともいえるが)。本文重視とはいえ、問題文をきちんと読んで、つまらないことで損をしないように。
平成17年度問4の問題文には「どのような結果が生じたか」とあります。つまり、受験生が注目しなければならないのは結果であって、選択肢中の前半分は流す程度でよいのです。時間短縮に役立ちますね。
8、選択肢の中が具体例である具体問題は、抽象(前提)部分を探す。その抽象に合ったものが正解。
平成16年度問3では、ベートーヴェン、モーツァルトなど具体的な作曲家の名前が挙げられた選択肢で構成されています。この場合は、具体例前後にある抽象的に描かれた前提が必須となるのです。
本文では5,6,7段落でこれらの作曲家について語っています。傍線部はそれらの前にあるので、前提は具体例の後に求める必要があります。「サンドイッチ法則」といい、具体例を挟んだ論では、前に選択肢があれば後ろに、後ろに選択肢があれば前に、解答根拠をさがすのがセオリーです。
「神話は~純粋鑑賞の所産である」を前提に、選択肢を見ていけば、消去法を使わずに5が適切であるとわかるでしょう。1や3などは前提が純粋な音楽鑑賞ではなく、肖像画からの印象になっているのです。
9、パラドックス問題について。
「パラドックス」、「矛盾」を軸にした問題では、矛盾する2要素をまずは見つけることから始めなければなりません。平成16年度問4では、この2要素を見つけることで3と5に絞れるでしょう。