「悩みのるつぼ」朝日新聞 be 2024.2.3.
相談:「人に優しく」に疑問を感じる
相談者:女性 30代
回答:「優しく」をストしてみては
回答者:文筆業 清田隆之さん
相談内容:
「人に優しくすると自分に
返ってくる」とよく言われる。
私も信念を持ってそうしてきた。
娘や息子にも、そう言い聞かせ
育てている。
最近、いろいろ疑問に思う
ことが起き、違うような気が
してきた。
私は周囲の人から
「優しい」ではなく、
「都合がいい」
「気を遣わなくていい」
「怒らない」と思われている
気がする。
私に対して勝手な言動を
する人が多く、ストレスが
たまる。「優しくした分は
いつ返ってくるの?」と
思うようになった。
子どもたちはとても思いやりの
ある良い子に育ったので、
まちがった教えではないと
思う。
でも子どもたちも損をする
ようなことが度々起きたり、
わがままを言われたり。
人に優しくと、つねに
考えることで無理をしている
のではと心配になる。
みんな結局「自分が一番」。
その方がうまくいくの
かもしれない。
自分が損をしてでも、
人を幸せにするべきでは
ないのかも……と
思うようになった。
でも今さら、この性格を
変えるのも難しい。
どうしたらいいか。
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回答:
相手から感謝されたり、
労いや気遣いが感じられたり
アフターフォローをして
もらえたりすれば、
おそらくモヤモヤは
残らないはず。
また丁寧な依頼とか、
役立てそうな実感とかいう
要素が少しでもあれば、
モチベーションが萎える
こともないかもしれない。
周囲から、そういう諸々が
感じられず、虚しさや
やるせなさが募っている。
それが相談者さんの現在地
ではないかと思う。
雑に扱われたり、
やって当たり前と
思われたりするのは、
”搾取”。自分の存在を
否定されることとも同義。
まして、子どもたちにも
教えてきたことの影響が
出ている…。
そのストレスは計り知れず、
疑問や違和感が無視できない
レベルに達していても
無理はない。
<今さらこの性格を
変えるのも難しい>と
あるが、信念にまで
揺らぎが生じている以上、
意識や認識ではなく、
具体的な行動を変化させる
必要があるかもしれない。
その一案として勧めたいのが
「優しくするのをやめる」
というアクション。
相談者さんが提起したのは
いわゆる”利他”を巡る問題。
政治学者の中島岳志さんは
著書『思いがけず利他』で
<利他とは、「とっさに」
「ふいに」「つい」
「思いがけず」行ったことが
他者に受け取られ、利他と
認識された時に起動する>と
ある。
前項をしようという思い
でなく、まして返礼を期待
してでもない、自分が
自ずから動いた結果としての
優しさ――ー。
娘や息子が思いやりの
ある子に育っているなどは
まさにその結果。
時に立ち止まりつつ、
こういった本なども
参考にしながら、
相談者さんも
”利他道”を進んでほしい。
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相談者さんは、優しい人
なのでしょう。
子どもたちも優しく、
思いやりがおありなんですね。
まさに理想通りに
育ったのです。
残念ながら、周りは、
いい人ばかりでは
ありません。
それで、雑に扱われたり、
甘く見られたり、
都合のいい人になって
しまい苦しいのですね。
「みんな結局『自分が一番』。
その方がうまくいくのかも
しれません。
自分が損をしてでも人を
幸せにするべきでは
ないかも…と思うように
なった」とあります。
「自分が一番」は
よくなくて
「自己犠牲がいい」と
思っているように
聞こえます。
他者優先ばかりでは、
しんどくなります。
自分というものが
しっかりとあって、
他者優先ができるのでは、
ないでしょうか?
そうでないと他人や
家族に振り回されて
しまいます。
「人に優しくすると
自分に返ってくる」
そんな期待はやめましょう。
ボランティアする人は、
そんなことを思わないのでは
ないかと思います。
私も子育て中、
「人に優しく、
心の痛みのわかる人に」
と思っていました。
その後、相談者さんの
子どもたちが直面した
ような出来事が
ありました。
それで、激しく後悔。
「まず自分を一番
大切にすることを
教えるべきだった」と。
他者優先ばかりで、
自分を大切にできないのは、
違いますね。
相談者さん、
自分を守るために、
しっかりと境界線を
引いてくださいね。
「返ってくること」を
期待して、
人に優しくする、
返ってこないときは
損したと思う?
それは、損得勘定で
動いているということ?
損した気分になるなら、
止めましょう。
無理は禁物です。
「いい人」のつもりでも、
「いい人じゃない」と
誰かに否定されたら、
傷つく。
そういう人を
たくさん見てきました。
性格を変えるのではなく、
行動を変えていきましょう。