今回は香水をご紹介。
ニナリッチと云えば、やはりフランスの名香L'Air du Temps(レールデュタン)。
「時の流れ」という意味を持つこの香水は、第二次世界大戦終戦後の1948年に発売されました。
現在でも人気のある香水の一つですよね
香りだけでなく、香水瓶自体にもファンが大勢います。
英国のバラと謳われた、故ダイアナ元妃も愛用されたお一人だったとか
大抵の香水が150種類以上もの香りをブレンドされて調香される中、レールデュタンは僅か30種類にて調香された香水。
南仏グラースには直接被害がなかったとはいえ、戦時中にフランス国土の半分以上が占領・戦禍に遭ったために、戦後僅か三年でこれ程の名香が出来たことに驚きです。
グラースはイタリアとの国境に近い位置にあり、当時のイタリアとは敵国の関係にありましたから、当時の花き農家・香水産業関係者の方々は大変な努力を重ねてグラースの地を守ったのだと思うのです。
レールデュタン 1948年に発売
栓:一羽鳩 1/2 oz(15ml)
(画像の一羽鳩つき香水瓶は1954年に発売)
ボトルネック部分の支えはセルロイドもしくはプラスチック。
レールデュタンと云えば、「二羽鳩の栓が付いたラリックの香水瓶」という認識がありますが、1948年発売当時は一羽鳩のみでした。← 詳細はレールデュタン2記事を参照
この鳩は平和の象徴であり、平和への願いが込められているのだそうです。
アール・ヌーヴォー、アール・デコ両期に活躍した宝飾デザイナーでありガラス工芸作家でもあったルネ・ラリックは、1945年の終戦直前に死去しています
レールデュタンの香水瓶をデザインしたのは息子のマルク・ラリックという記述もちらほら見かけますが。
実際には、香水瓶のクリスタルボトル(ボディ)本体をデザインしたのはジョアン・レバルであり、マルク・ラリックはボディに見合うマットな風合いの鳩を王冠(栓)に仕立てたのだとか(情報ベース:大分香りの博物館、および、産業技術史資料情報センター)
また、ボトル底部に「NINA RICCI」「LALIQUE」とエッチング或いは印字されていますが、香水瓶を製造したのは1922年にルネ・ラリックが立ち上げたラリック社なので、ルネ・ラリック本人と混同なさらないように
栓:二羽鳩 1 oz(29ml)
(画像の二羽鳩付き香水瓶は1951年発売)
箱の中で香水瓶が割れたり欠けることの無いよう、
ボトルネック部分は金属(多分極太の針金)でホールドされています。
二羽鳩の栓になったのは1951年からだそうで、ここからは推測ですが、戦後徐々に物資が流通し、ガラスの材料も安定供給されるようになったので、より商品価値を高めて高級感を出すために二羽鳩になったのではないかと。
箱から取り出して並べてみました
いずれもヤフオクで入手したものですが、
両方とも未開栓で、香水の種類はパルファムです
二つ並べた状態でよく見ていただくとお分かりになるかと思いますが、二羽鳩の栓って元々の一羽鳩にもう一羽を追加したデザインなんですよね
二羽鳩の栓は結構重さがあるのに、バランスが保たれています(中の香水が空になったら分かりませんが。。。^^;)
鳩はどちらもフロストガラスであり、一羽鳩の製造・販売がいつまで続いたのかは不明ですが、入手元の業者さん(それぞれ別のところから入手)の話だと、恐らく1970年代の製造のようです。
二羽鳩の翼越しに香水の色が透けて見えますが、一羽鳩二羽鳩とも翼や尾羽の先が透けるようにデザインされています
香水瓶が収められている箱はフランスの伝統工芸であるカルトナージュで作られています。
今回入手出来た二羽鳩は表面が布張りされている紙箱に、一羽鳩は紙箱に入っているのですが、箱に容量や種類の表示がないのです
それもその筈、ヤフオクなどで見比べてみると、パルファムの入った箱は更に包装紙で包まれていて、その包装紙に容量や種類の印字がされていたのです
箱だけだと、余程の目利きでないと香水の容量の判断が付きにくいかもしれません。
二羽鳩の付いたパルファム香水瓶に限っていうと、1 oz(29ml)、1/2 oz(15ml)、1/4 oz(7.5ml)の三サイズが販売されたようです。
一羽鳩は、香水の容量が三サイズあるのかどうか不明なので、ご存じの方がおいででしたら教えていただきたいです~
現在ヤフオクに出品されているレールデュタンの中で、ある業者さんが三サイズの香水瓶4本をまとめて出品されています。
栓を含まない状態で、一番大きいサイズのボトルが高さ約6.5㎝、真ん中のサイズが高さ約6㎝、小さいサイズが高さ約5㎝と記載されています。
(二羽鳩が三サイズ各1本と、一羽鳩1本の計4本なので、かなりお買い得かと)
玉響の持つ一羽鳩のボトルサイズは高さ約6㎝でしたので、他に出品されている箱の形状と見比べても、恐らく1/2 ozで間違いなかろうと思われます。
一羽鳩の包装紙表面。
一羽鳩が描かれ、香水名とニナリッチの社名が。
時代の変遷により、香水の種類が表面の場合と
裏面に表示されている場合があります。
一羽鳩の包装紙の裏面。
香水の種類と容量が印字されています。
なお、
「FLACON “COLOMBE” CRISTAL LALIQUE」
と表示されていれば、一羽鳩のパルファム香水瓶のことです
こちらは二羽鳩の包装紙表面。
香水の種類と容量が印字されています。
二羽鳩の包装紙裏面。
「FLACON AUX DEUX COLOMBES CRISTAL LALIQUE」
と記載の場合は二羽鳩のパルファム香水瓶です。
(包装紙の画像のみお借りしています)
。。。レールデュタンはあまりの人気ゆえか、パルファムだけでも様々な形状のボトルが販売されているので、調べるのが結構大変だったりしました
調べるのは楽しいので良いんですが (笑)
でも、今回ご紹介したフロストガラスの鳩の栓が付いた香水瓶は、既に生産されておりません。
入手希望の場合は今はまだ比較的入手しやすいので、オークションやフリマなどを覗いてみては如何でしょう。
レールデュタンを入手するまで玉響も知りませんでしたが、日本では数年ほど販売中止になり、2014年より販売再開になったようですが、現在日本に輸入されてきているのはオーデパルファム、オーデトワレで、パルファムは無いようですね
(免税店にならパルファムがあるのかもしれませんが。。。)
多分オンブルローズと同じで、原料の一部が入手できなくなったのだろうと思われます。
また、2014年より販売の香水ボトルについている鳩がリニューアルにより、クリアガラスやプラスチックになったのは些か残念な気も。。。
玉響はルネ・ラリックの作品を見るのも大好きで、何度か英国旅行した際には大英博物館で作品を見たり。
20年ほど前に母や母方祖母と国内旅行した際には、たまたま宿泊した熱海のホテル近くの土産店に併設された、ルネ・ラリック美術館で様々な香水瓶を見る機会に恵まれました
でも、香水瓶などの私設美術館は近年次々に閉館し、現在は大分県別府市にある「大分香りの博物館」まで行かなければ現物を見ることが出来ないようですね
千歳から大分までの直行便がないし、見に行きたくとも今の玉響には別府は遠すぎるなぁ。。。
次からは、エスティローダーのパウダーコンパクトをご紹介しますね。