人造人間クエスター(1974) | つぶやキネマ

つぶやキネマ

大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

人造人間クエスター(1974)

 

 アメリカのパサディナにあるプロジェクト・クエスター研究所では世界中から優秀な科学者を集めてアンドロイド"クエスター"を開発するプロジェクトが極秘に進められていた。しかし、開発の発案者で設計の中心人物だったエミール・ヴァスロヴィック博士(リュー・エアーズ)が最終段階で突然失踪、アンドロイドは完成目前だったがヴァスロヴィック博士自身が開発したクエスターを覚醒させるために必要なプログラムは暗号化されていて、暗号解読作業中にテープに記録されていたプログラムの半分が破壊されてしまったのだ。研究所の開発責任者ジェフリー・ダーロ博士(ジョン・ヴァーノン)は、アンドロイド開発の後を引き継いだヴァスロヴィック博士の助手で若き天才科学者ジェリー・ロビンソン博士(マイク・ファレル)に、大学から提供されたプログラムでクエスターを覚醒させるように指示、ヴァスロヴィック博士のプログラムでないと危険だと警告するジェリーの反対を押し切ってプログラミングが開始されるがクエスターは反応しなかった。さらに、ヴァスロヴィック博士のプログラムの残っていた部分だけでプログラミングを試みるが、"クエスター"は身体を痙攣させただけで覚醒に失敗してしまう。落胆した科学者たちが退出し研究室が無人となった途端クエスターが覚醒、自ら外見を人間そっくりに改造するとヴァスロヴィック・アーカイブへ侵入し情報収集を開始する。ダーロ博士はジェリーの言動に不信感を持ち身辺調査を開始、科学者たちはプロジェクトが失敗したと考えクエスターの解体を決定、失踪後に死んだという噂のヴァスロヴィック博士についても何か知っているのではと考えたダーロ博士はジェリーを自宅に監禁する。クエスターはジェリーの部屋を訪れて見張りを倒した後、自分にはヴァスロヴィック博士から課せられた使命があり、創造主であるヴァスロヴィック博士を捜索するための協力を要請、ジェリーはクエスターの言葉や行動には懐疑的だったが行動を共にする事。ふたりはアーカイブでクエスターが入手した情報を頼りにロンドンに向かうが、ジェリーとクエスターが逃亡した事を知ったダーロ博士は軍の幹部や科学者たちを召集し捜索を開始、ヒースロー空港の税関で拘束されたふたりは監禁された部屋のドアを破壊して脱出し追跡を逃れると、ヴァスロヴィック博士の協力者で国際スパイではないかという噂のある謎の貴婦人ヘレナ・アレキサンドラ・トリンブル(ダナ・ウィンター)の邸宅を訪れ協力を要請する。歓待を受け翌朝目覚めたジェリーはヘレナに邸宅の地下室に案内されるが、そこにはヴァスロヴィック博士の情報センターでレーザー・テレメタリー装置を使って世界中から情報収集を始めているクエスターの姿があった。ジェリーはヴァスロヴィック博士がスパイ活動や戦争のための兵器としてクエスターを開発したのではという疑念からダーロ博士に所在地を連絡してしまう。クエスターは情報収集を終えると伝言を残して邸宅を出るが、追ってきたジェリーにヴァスロヴィック博士は"船"に関係した場所に居る事と、プログラムされた日時までにヴァスロヴィック博士が発見できないと、クエスターの体内の原子炉に組み込まれた時限式起爆装置が作動して核爆発を起こしてしまう事を告げる...というお話。TVシリーズ「スター・トレック/宇宙大作戦(1966~1969)」のクリエイターのジーン・ロッデンベリーがシリーズ化を狙って製作したTVムービーなのだが、一部のSci-Fi映画ファンにカルト的人気がある作品であります。ジェリーとクエスターの逃亡劇シリーズを構想していたロッデンベリーに対して、クエスター単独でのシリーズ展開を主張するスタジオ側と意見が合わずに対立し結局シリーズ化には至らなかったようだ(注1)。最初はアンドロイド開発について、中盤は逃走劇、そしてアーサー・C・クラークの傑作Sci-Fi小説「幼年期の終わり」のような壮大なラストが待っているミステリアスなストーリーはなかなか面白く、ラストに登場する洞窟内のイメージは素敵だったが、研究室等のセットが1974年製作にしてはチープで、特に外科の手術台のような装置に横たわるゴム人形のような"クエスター"には落胆以外の何者でもなかった。リチャード・A・コーラ監督の演出やカメラワーク、編集等は研究室の場面以外ではそれなりにサスペンスを盛り上げているが平凡な部分も多く、セットのチープさと同様に製作費の問題からかなり制限されていた事がうかがえる(注2)。タイトルの前にミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画「アダムの創造」が一瞬だけ映り、アンドロイドに命を吹き込む創造主の話である事が暗示されるので、ハリウッドでは定番の聖書関連の引用が出て来るのは予想できたし、ヴァスロヴィック・アーカイブで情報をインプットしていたクエスターと秘書アリソン・サンプル(エレン・ウェストン)との会話に「水上の運搬具」という言葉が出てきた時点で、「水上の運搬具」は「ノアの方舟」でヴァスロヴィック博士はアララト山に居る事がわかってしまったため、中盤のダラダラ続くお笑いスパイ活劇のような逃走劇には少しイライラさせられたのだよ。特に、ジェリーとクエスターが逃げ込んだロンドンのホテルのカジノで、クエスターが超能力(?)を使ってクラップス(サイコロ賭博)で大もうけしたり、ジェリーがヘレナに魅了されメロメロになるあたりは、もう少し何とかして欲しかった(注3)。研究室や逃走劇部分のグダグダ感を除けばストーリー自体や脚本は悪くないのだが、洞窟が発見されてからラストまでが駆け足になってしまっていて、ダーロ博士が突然改心したかのように自己犠牲の行動に出るあたりは完全に描写不足。ジェリーとクエスターがその後どうなったかという作品の結末的な場面もほとんど描かれないままエンド・マークが出るのも残念な所...この辺りがシリーズ化を想定していた名残ですな。2010年頃からリメイクの企画が進められているようだが、CG使いまくりのSci-Fiアクション映画に変身していそうで恐い...どうなる事やら。

 

●スタッフ
監督:リチャード・A・コーラ    
製作総指揮・原案・脚本:ジーン・ロッデンベリー
製作:ホウイー・ホーウィッツ
脚本:ジーン・L・クーン    
撮影:マイケル・マーガリーズ    
音楽:ギル・メレ

 

●キャスト
ロバート・フォックスワース、マイク・ファレル、
ジョン・ヴァーノン、ダナ・ウィンター、
リュー・エアーズ、ジェームズ繁田、
ロバート・ダグラス、エレン・ウェストン、
メイジェル・バレット、ウォルター・コーニッグ

 

◎注1; NHKで初放映された時はあまり話題にならなかったように記憶しているし、再放送されるたびに観たのだが低予算のTVムービーという印象は変わらなかった。「スター・ウォーズ(1977)」が公開され大ヒットとなった頃、続々発売されたSci-Fi映画関連の書籍や雑誌、MOOK(死語?)等で、これまた続々登場し当時「スター・ウォーズ評論家」と揶揄された批評家たちが関連作品の1本としてSci-Fi映画の隠れた傑作と例に挙げる事が増え、特に石上三登志は本作について熱心に書いていたと記憶している。1980年頃までは地方局で再放送されたりしていたようだが、その後はビデオ発売もされず観るのが困難な作品になっていて、ラストで壮大な真実が明かされる意外性やDVD時代になっても長らくソフト化されなかった事で過剰に神格化されてしまった作品であります。ジーン・ロッデンベリーは唯一の成功作品「スター・トレック」のシリーズが終了した後、新シリーズの立ち上げに奔走していて、その中で具体化した企画を元にパイロット版として製作したのが本作であります。彼の原案・脚本を元にジーン・L・クーンが加筆修正を加えたようだが、ジェリーとクエスターが哲学的な会話を繰り返し友情を深めて行くあたりは、「スター・トレック」のカーク船長とスポックの関係そのままなのがロッデンベリーらしくて笑ってしまう。企画段階ではレナード・ニモイがクエスターを演じる予定だったようだが、実際にオファーしたかどうかはともかく、スポックを演じた事で俳優としてのイメージが固まってしまったのを嘆いていたていたレナード・ニモイがOKしたとはとても思えない。シリーズはどうやって進めるつもりだったのかは解らないが、本作で最大の謎が明かされてしまった以上、本作中盤に展開された逃亡劇のような感じになったであろう事は想像できる。逃亡中に触れ合った人々の影響で徐々に人間性や感情を身につけて行くという、「逃亡者(1963~1967)」のSci-Fi版みたいな展開なったのではないかなぁ。本作のシリーズ化は頓挫してしまったが、「スター・トレック」劇場版シリーズの好調を受けて、本作の挫折を乗り越えたジーン・ロッデンベリーの製作総指揮で1987年にスタートする「新スタートレック(1987~1994)」で、ブレント・スパイナーが演じたアンドロイドのデータ少佐は、本作でロバート・フォックスワースが造り上げたクエスターのキャラクターをそのまま受け継いでいて、エモーショナル・チップをめぐるデータ少佐の葛藤やトラブルと、人間性や感情を持つ事に憧れるクエスターとの類似性は笑えるので「新スタートレック」のファンは必見です。
◎注2; チープなセットや開発中のクエスターのトホホな造形等は、センスの欠片も無い事から製作費の問題だけではなさそうであります。特に、覚醒したクエスターが"型押し"して顔を作り似たような手順で頭髪を飢える場面は無駄と思えるほど丁寧で念入りに描写されていて、もう少し違う表現方法があっただろうとツッコミを入れたくなる...ジェリー・アンダーソン製作のTVシリーズ「謎の円盤UFO(1970~1971)」あたりと比較してもかなり見劣りがするし、「2001年宇宙の旅(1968)」「決死圏SOS宇宙船(1969)」「アンドロメダ...(1971)」「サイレント・ランニング(1972)」等が公開された後ではギャグとしか思えないのだよ。低予算に加えてSci-Fi的な発想やデザイン・センスが欠落していては、演出や編集で説得力を持たせるのは難しかったんだろうね。監督のリチャード・A・コーラはTVシリーズ専門の監督で、劇場映画は日本未公開の「Zig Zag(1970)」(TV放映で観たような記憶が...)、87分署シリーズの映画化「複数犯罪(1972)」、キャサリン・ヘップバーン主演の「ゆかいな風船旅行(1977)」や、TVシリーズを再編集した劇場公開版「宇宙空母ギャラクティカ(1978)」ぐらいしかありません。監督したTVシリーズも単発で参加した作品ばかりなので、同じ事を続けるタイプでは無さそうです。本作では職人監督らしい手堅い演出やカメラワークが何ヶ所か観られますが、クエスターが人間をあっさり倒してしまうあたりや、イギリス軍兵士がクエスターの強さに圧倒されて発砲を禁じられていたにもかかわらず思わず発砲してしまう等の武骨なスピード感はナカナカ良かったし、「複数犯罪」のようなアクション映画の監督の方が向いていたのかも。
◎注3; カジノに逃げ込んだクエスターがクラップスで次々"ゾロ目"を出して稼ぐ場面は、クエスターの能力を披露するエピソードとしては疑問が残るし無駄に長いのも困ったモノなのだ。この場面やジェリーがヘレナに惹かれる場面は、ファミリー向けのTVシリーズのセンスそのままで、壮大な結末が待っている作品としては明らかに異質な感じ。主演のロバート・フォックスワースとマイク・ファレルの存在感がイマイチなのも困りモノで、悪役であるジョン・ヴァーノンに完全に喰われているし、特別ゲスト扱いのダナ・ウィンターとの共演場面では格の違いを見せつけられてしまいます。TV俳優だったロバート・フォックスワースは、本作の後「マタクンベの黄金(1976)」「エアポート'77/バミューダからの脱出(1977)」「オーメン2/ダミアン(1978)」「プロフェシー/恐怖の予言(1979)」等の劇場映画にも進出、近年は「トランスフォーマー・シリーズ(2007~2014)」でオートボットの軍医ラチェットの声を演じています。マイク・ファレルは「卑怯者の勲章(1964)」「卒業(1967)」「殺人者はライフルを持っている!(1968)」等に出演した後TV界に進出、「インターン(1970~1971)」でサム・マーシュ医師を演じて人気俳優となった後はTV界で活躍、長寿シリーズとなった「M*A*S*H(1975~1983)」ではB・J・ハニカット大尉を演じています。顔が恐い事からクセの強い悪役が多いジョン・ヴァーノンは、「殺しの分け前/ポイント・ブランク(1967)」「トパーズ(1969)」「ダーティハリー(1971)」「突破口!(1973)」「ドラブル(1974)」「ブラニガン(1975)」等で活躍、「アニマル・ハウス(1978)」では怖い顔とのギャップで笑わせてくれました。本作では手抜きとしか思えない脚本の影響で悪役ポジションなのにラストで改心(?)してしまうという変な役でお気の毒。ドイツ出身の女優さんダナ・ウィンターは、「真紅の盗賊(1952)」「ボディ・スナッチャー/恐怖の街(1956)」「ビスマルク号を撃沈せよ!(1959)」「秘密殺人計画書(1963)」「大空港(1970)」等でクールな魅力全開でしたが、本作撮影当時は43歳だったけど相変わらず素敵です...ジェリーに起こされて寝起きで出てくる時のスッピン風がたまりません。ハワイ生まれの日系人俳優ジェームズ繁田が"中国人"科学者チェン博士を演じているのだが、世界から選ばれた有能な科学者にまったく見えないのが笑えます。「クリムゾン・キモノ(1959)」「フラワー・ドラム・ソング(1961)」「ザ・ヤクザ(1974)」、日本海軍の南雲忠一中将を演じた「ミッドウェイ(1976)」等の出演作がありますが、近作では「ダイ・ハード(1988)」のナカトミ商事の高木社長や北野武監督の「BROTHER(2000)」の会計士・杉本がなかなか良かったです。女性科学者ブラッドリー博士を演じたメイジェル・バレットは、「スター・トレック/宇宙大作戦」でクリスティーン・チャペル医師を演じていて、シリーズ出演がきっかけでジーン・ロッデンベリーと結婚、理由は忘れましたが明治神宮で結婚式をしています。同じく「スター・トレック/宇宙大作戦」でナビゲーターのパヴェル・チェコフ少尉を演じていたウォルター・コーニッグがダーロ博士の助手で出演してますが"変装"していて誰だか解りません。

 

 

★Facebook「Teruhiko Saitoh」

https://www.facebook.com/#!/teruhiko.saitoh.3

 

★「ぐら・こん」ホームページ

https://gracom.web.fc2.com

★「ぐら・こん」掲示板

https://gracom.bbs.fc2.com