フリービーとビーン/大乱戦(1974) | つぶやキネマ

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"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
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フリービーとビーン/大乱戦(1974)

 

 サンフランシスコ市警の刑事フリービー(ジェームズ・カーン)とビーン(アラン・アーキン)は、犯罪組織の大物でナンバー賭博のボスのレッド・マイヤーズ(ジャック・クラスチェン)を14ヶ月間追い続けていたが、マイヤーズの自宅のゴミ屑の中から犯罪の手がかりとなるメモを発見、手始めにメモを頼りにサン・モリッツ・ホテルの9号室に住むハリー・モトレイという男を訪ねるが不在だった。聞き込みを続けたふたりはスナック・スタンドの店主の証言からモトレイの相棒でクレーン作業員をしているホワイティ(ポール・コスロ)という男がいる事を突き止め、モトレイの居場所を聞き出そうとするがモトレイは街を出て行方は解らないという話を聞かされる。犯人逮捕のためには市民を巻き込み街を破壊する事も辞さないふたりは、たびたび騒ぎを起こす事で有名だったが、フリービーは将来は麻薬捜査課に移って3年後には引退して従兄弟とアパート経営を、家庭があり堅実な考え方のビーンは警部補になる事を夢見ていた。ふたりは再びホワイティの自宅を訪れモトレイの居場所を聞き出そうとする。頑に口を閉ざすホワイティに対し部屋にいたガールフレンド(キャサリン・ウィット)をフリービーがレイプすると強迫、ホワイティからデトロイトの組織がマイヤーズを消そうと殺し屋を差し向けた事を聞き出す。ふたりはマイヤーズを殺し屋から守るために猥褻罪をでっち上げて逮捕してしまうが、ふたりの上司であるローゼン警部補(マイク・ケリン)から地方検事(アレックス・ロッコ)に逮捕の説明するように指示され、ふたりはマイヤーズの不法逮捕を非難する地方検事に探し出したメモを見せ事件や殺し屋の件を話して何とか説得するが、マイヤーズは保釈金を払って拘置所を出てしまう。ふたりは釈放されたマイヤーズを守るために尾行を開始するが、マイヤーズが入った理髪店の前に車を止めたキャデラックのセールスマン(チャック・ベイル)を暗殺者と勘違いして格闘になり大騒ぎ、尾行の途中で怪しい車を発見し追跡するが車内で言い争いがエスカレートしてふたりの車は高速道路から飛び出し老夫妻が住むアパートの3階の部屋へ突っ込んでしまう。追跡した車の持ち主はミシガン・フィル(ロバート・ハリス)という殺し屋だという事が解り、ふたりはボーリング場で見つけたフィルを射殺、再び訪れたモトレイの部屋でバスタブに浸かっていたゲイの男(クリストファー・モーレイ)から、恋人のモトレイと彼がマイヤーズのパートナーだった事を聞き出す。そして歯科医に行ったマイヤーズを暗殺者グループが襲撃、待合室で待機していたふたりは治療室に飛び込んでマイヤーズを守り、洗濯屋の車で逃亡した暗殺者を追跡して逮捕する。いつの間にか犯罪者マイヤーズを命がけで守るというおかしな事態になっているフリービーとビーンだったが、守るべきマイヤーズがマイアミへの逃亡を計画している事を知る...というお話。所謂「型破り刑事」とか「はみ出し刑事」の映画は1970年代前半ぐらいから量産されアクション映画の定番化していたのだが、本作の刑事コンビのメチャクチャさには吃驚、冒頭の容疑者のゴミ屑を集めてあさるフリービーとビーンの姿は、セルジオ・レオーネ監督作「夕陽のギャングたち(1971)」のオープニングの"ロッド・スタイガーの立ち小便シーン"と同じくらい衝撃だった...それ以前は汚い物はなるべく撮らないのがメジャー映画のルールだったんだよね。フリービーとビーンは終始怒鳴り散らし銃を乱射して車を爆走させて街を破壊しまくるという、これまでの刑事物からも「はみ出してる」作品であります(注1)。フリービーを演じるジェームズ・カーンは、「ゴッドファーザー(1972)」で演じたソニーがそのまんま刑事になった感じで、演技が上手いタイプではないのにも関わらず一番得意な役柄を演じているからか自然で、ホントにこんな奴いるよね的な雰囲気がナカナカ良いのだ。一方ビーンを演じるアラン・アーキンは、「アメリカ上陸作戦(1966)」「愛すれど心さびしく(1968)」「ブルージーンズ・ジャーニー(1974)」等で演じた善良でちょっととぼけた男の感じとは180度違うエキセントリックな役で、奥さんのコンスエロ(ヴァレリー・ハーパー)が浮気をしているんじゃないかと心配する、捜査中の過激さとは真逆の根暗な部分も上手く演じていて、演技の幅広さに吃驚した記憶があります。最初は普通の刑事物のように聞き込み捜査なんかをしているんだが、カティサークを満載したトラックを追跡するあたりから激しいアクションの連続で、市民が巻き込まれるのもおかまいなしの過激な捜査と暴走が続くので、肝心のナンバー賭博のボスのマイヤーズに関するメイン・ストーリーは途中でどうでもよくなってしまう(注2)。そんな展開の影響で、クライマックスへなだれ込むあたりは唐突で不自然な感じが拭えないし、最後はフリービーひとりで闘う事になるのも、ラストの"オチ"を描きたかったからとしか思えないよね。結局その場にいた御婦人方の協力でなんとかフリービーが勝利するのだが、ここは強敵をふたりで闘って倒した方がスッキリしたと思いますね。マイヤーズのメモの真相も急遽考えた言い訳のような感じで、ローゼン警部補とマイヤーズの妻(ロレッタ・スウィット)の関係については描写も伏線も何も無いのはダメだよな。

 

●スタッフ
製作・脚本・監督:リチャード・ラッシュ    
製作総指揮:フロイド・マトラックス    
脚本:ロバート・カウフマン    
撮影:ラズロ・コヴァックス    
音楽:ドミニク・フロンティア、ボビー・ハート、
ダニー・ジャンセン
主題歌:ボビー・ハート    

 

●キャスト
アラン・アーキン、ジェームズ・カーン、
ジャック・クラスチェン、ロレッタ・スウィット、
マイク・ケリン、ポール・コスロ、アレックス・ロッコ、
リンダ・マーシュ、ヴァレリー・ハーパー、
クリストファー・モーレイ、キャサリン・ウィット、
チャック・ベイル、ロバート・ハリス、
モンティ・スティックルズ

 

◎注1; 昔の映画や小説の刑事物の主人公といえば、犯人に対する執念から上司の命令に逆らうタイプが多かったが、法を無視してまで捜査する型破りなタイプは珍しく、そっち方面は主に私立探偵が受け持っていた。そういう流れが変わったのは、ドン・シーゲル監督リチャード・ウィドマーク主演の「刑事マディガン(1967)」あたりからで、アクション映画にも関わらずアカデミー賞の作品・監督・脚色・編集・主演男優の5部門を受賞したウィリアム・フリードキン監督作「フレンチ・コネクション(1971)」でジーン・ハックマンが演じた"ポパイ"ジミー・ドイル刑事は、それ以降の刑事物の概念を変えてしまった。その流れを決定的にしたのはドン・シーゲル監督クリント・イーストウッド主演の「ダーティーハリー(1971)」で、このコンビは「マンハッタン無宿(1968)」も製作している事から「型破り刑事」「はみ出し刑事」のホントの生みの親はドン・シーゲル監督と言えるかも...ハリー・キャラハンは一匹狼だったけど"ポパイ"には相棒"クラウディ"がいたのでフリービーとビーンの元祖は「フレンチ・コネクション」の方かな。しかし、本作のフリービーとビーンのように、ふたりともエキセントリックで常に怒鳴り合い、市民を巻き込み銃を撃ちまくり街を破壊しまくるというのは前代未聞で、コメディ・タッチが強いという点も合わせて刑事物の流れをさらに変えてしまったと言えますね...そういう意味では、「リーサル・ウェポン(1987)」「バッド・ボーイズ(1995)」「ラッシュアワー(1998)」あたりが直系ですな。
◎注2; 監督のリチャード・ラッシュは、暴走族を描く青春ものを連発した後に製作・監督した「…YOU…(1970)」で注目され、若手監督として期待されていたがとにかく寡作で、本作の後も「スタントマン(1980)」と脚本のみの「エア★アメリカ(1990)」を挟んで「薔薇の素顔(1994)」があるぐらい。どの作品もヒネリが効いていてなかなか面白かったのでもっと撮って欲しかったのだが監督業は止めてしまったようだ。アラン・アーキンはフォーク歌手から舞台俳優という変わった経歴で、そして「アメリカ上陸作戦(1966)」で劇場映画デビューし、いきなりアカデミー主演男優賞の候補になった。人の良いソヴィエト水兵が素晴らしかったが、「暗くなるまで待って(1967)」では真逆の役柄で、オードリー・ヘプバーンを追いつめる冷血な麻薬売人はホントに恐かった。ピーター・セラーズの後を引き継いだ「クルーゾー警部(1968)」はイマイチだったが、再びアカデミー賞の候補になった「愛すれど心さびしく(1968)」や「キャッチ22(1970)」「ブルージーンズ・ジャーニー(1974)」等ではキャラクターを活かした演技が素敵でした。本作では過激な性格な反面、妻の浮気を心配するという小心者のビーンを上手く演じていて笑わせてくれますが、フリービーの暴走運転が日常化しているのか車内に白バイ警官用のヘルメットを常備しているのが素晴らしい...フェアに闘おうと言うテキサスの巨漢の男(モンティ・スティックルズ)を隠し持った警棒でいきなり殴り倒す場面は拍手喝采です。ピーター・フォーク共演の「あきれたあきれた大作戦(1979)」は、本作に近いドタバタな雰囲気が楽しめます。それ以降も膨大な出演作がありますが「リトル・ミス・サンシャイン(2006)」ではアカデミー助演男優賞を受賞してます。フリービーを演じたジェームズ・カーンは、一番得意とするキャラクターなのでのびのびと演じてますが、恋人バーバラ(リンダ・マーシュ)とのシーンもなかなか良い雰囲気です...と言うか彼の演技の引き出しはこの2パターンぐらいなんだよね。注目されるきっかけとなった「不意打ち(1964)」、ハワード・ホークス監督ジョン・ウェイン主演の「エル・ドラド(1966)」、「潜水艦X-1号(1967)」「宇宙大征服(1968)」「雨のなかの女(1969)」「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛(1973)」「ローラーボール(1975)」「キラー・エリート(1975)」等、1960年代後半から大活躍でしたが、存在感は抜群だけど元々演技が特別上手い訳ではないので人気が一段落してからは脇役が中心になってしまいます。追跡を逃れようとして横転したトラックに積まれていたカティサークを2本チョロまかすさりげなさがツボでした。地方検事(名前ぐらい付けろと言いたい)を演じたアレックス・ロッコも「ゴッドファーザー」にマイアミのマフィアの中堅幹部モー・グリーン役で出演していたけど、演技がモー・グリーンとほぼ同じなので、どうしても悪徳検事かマフィアに見えてしまう...「ゴッドファーザー」では共演シーンは無いんだけどね。ちなみにモー・グリーンは日焼けサロンでマッサージ中に眼鏡越しに撃たれちゃうおっさんです。ゲイの男(名前ぐらい付けろと言いたい)を演じたクリストファー・モーレイは女装俳優(?)として活躍した"モノホン"で、フリービーとビーンにモトレイの居場所を聞かれ浸かっているバスタブの股間あたりをチラ見するシーンで笑わせてくれますが、クライマックスでフリービーを追いつめる場面は唖然としてしまいます..本作の悪人はみんな何故かトイレで射殺される。ナンバー賭博のボスのマイヤーズを演じたジャック・クラスチェンは「アパートの鍵貸します(1960)」でアパートの隣の部屋に住む医師ドレイファス先生を演じていたからか最初から悪人に見えないのが難ですが、演技も上手く雰囲気も悪くないのにキャラクターとしてはあまり活かされていないのが残念。「宇宙戦争(1953)」「底抜けふんだりけったり(1953)」「不沈のモリー・ブラウン(1963)」「ボクいかれたヨ!(1965)」等、日本未公開の作品を含めると脇役として膨大な出演作品がありますが、「アパートの鍵貸します」の頃は映画やTV合わせると年間17本も出演してます。「刑事コロンボ/溶ける糸(1972)」のチェスの元チャンピオンのトムリン・デューデク役もなかなか素敵でした。そのマイヤーズのおかかえ運転手(名前ぐらい付けろと言いたい)を演じたジョン・ガーウッドは、登場するたびに印象に残る"小技"を披露してますが、こちらもキャラクターとして活かされていないのが残念。リチャード・ラッシュ監督の"おかかえ俳優"で、「爆走!ヘルズ・エンジェルス(1967)」「七人の無法者(1968)」「スタントマン」にも出演してます。殺し屋と間違えられるキャデラックのセールスマンを演じたチャック・ベイルは本作のスタント・コーディネーターで、車同士の激突やトラックの横転、フリービーがバイクで殺し屋たちを追跡し街を破壊まくる場面は迫力満点ですが、公園で遊ぶ一輪車の少年とウィリー走行でからむ危険なシーンは観るたびにハラハラしてしまいます。そのフリービーのバイク追跡の場面にはバイク・スタントのショーで人気者になるイーヴェル・ニーヴェルがスタントマンとして参加してます...本作の後に彼は本人役で「ビバ・ニーベル(1977)」「バイオニック・ジェミー(1977)」等に出演。フリービーとビーンの車が高速道路から飛び出しビルに突っ込むというのも前代未聞でしたが、その部屋のベッドの老夫婦がそのまま食事を続けるという方が個人的には印象に残ってます。主題歌を歌っているボビー・ハートは、ザ・モンキーズの作曲家チームとして有名なトミー・ボイス&ボビー・ハートというデュオのひとりです。トミー・ボイス&ボビー・ハートとしてもシングルやアルバムを何枚も発表し、ディーン・マーチンの「サイレンサー待伏部隊(1968)」の主題歌も担当しています...本作の翌年にメンバーの脱退でふたりになってしまったザ・モンキーズのデイビー・ジョーンズとミッキー・ドレンツと合流、ドレンツ・ジョーンズ・ボイス&ハートとしてデビューしています。本作は刑事物ブームだったTV界も注目したようで1980年にTVシリーズ化されますが、作品そのものやフリービーを演じたトム・メイソンとビーンを演じたヘクター・エリゾンドが魅力に乏しく、わずか9本で打ち切られています。

 

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