★注意!!! 作品の内容に触れています★
複数犯罪(1972)
ボストン警察の87分署に、耳の不自由な男(ユル・ブリ
ンナー)と名乗る人物から5000ドル届けなければクーパー
公園局長(ジャック・パーキンス)を射殺するという脅迫電
話が入るが、バート・クリング刑事(トム・スケリット)や
マイヤー・マイヤー刑事(ジャック・ウェストン)はイタズ
ラ電話だと判断しあまり気にも止めない。スティーブ・キ
ャレラ刑事(バート・レイノルズ)は酔っぱらいに放火する
犯人を追って変装し張り込んでいたが、犯人がふたりの少
年だった事に驚き油断した隙に火を付けられて大やけどを
負ってしまう。痴漢のオトリ捜査のために87分署に配属さ
れた婦人刑事アイリーン・マクヘンリー(ラクェル・ウェル
チ)を刑事たちが好奇の目で眺めていた時、5000ドルを弁
当箱に入れて墓地に置けという2度目の脅迫電話が入り、
刑事たちは偽の弁当箱を置き墓地に張り込んだが、持ち去
ったのはアンソニー・ラ・ブレスカ(ドン・ゴードン)とい
う泥棒で、脅迫犯人とは無関係だった。そして予告通り公
園局長が射殺されてしまう...という、エド・マクベインの
警察小説「87分署シリーズ」の中の「警官(さつ)」を原作
者自らエヴァン・ハンター名義で脚本を書いた映画化作品
であります。映画冒頭から塗装中の署内の様子が描かれる
のだが、仕事中の刑事たちやふたりのペンキ屋の会話がメ
チャメチャ可笑しく、ほとんどコメディのようであります
...馬鹿な会話そのままのノリで脅迫電話にも対応するので、
観ているこちらの方がヒヤヒヤしてしまうのだ。刑事たち
は格好良さとはほど遠いし、捜査もドジばかりで行動もと
にかく貧乏臭いのが変にリアル。一方の脅迫犯の耳の不自
由な男(公開当時は差別用語の名前)は高級そうな家に住み
高そうなスーツに身を包み情婦を侍らせシャンパンを飲ん
でいたりと、どっちの人生が楽しいかみたいなコントラス
トもナカナカ良い(注1)。そんな感じで、全体的には刑事た
ちのわびしい日常が中心で、脅迫事件の展開に対するサス
ペンスや追跡のアクション等はあっさり味なのが少し物足
りない感じ。刑事たちの失態続きで要人ふたりが殺されて
しまうが、ラストで無関係な3つの事件が偶然交差するあた
りはワクワクさせてくれる。エンディングでシリーズ化を
期待させるような描写があるのだが、結局続編は作られな
かった...熱心な映画ファンには好評だったんだけどね。
●スタッフ
監督:リチャード・A・コーラ
製作:ジャック・ファーレン、エドワード・S・フェルドマン
原作:エド・マクベイン
脚本:エヴァン・ハンター
撮影:ジャック・マルクェ
音楽:デイヴ・グルーシン
●キャスト
バート・レイノルズ、ラクエル・ウェルチ、
ユル・ブリンナー、ジャック・ウェストン、
トム・スケリット、ピーター・ボナーズ、
ニール・アダムス、タマラ、スティーヴ・イーナット、
チャーリー・マーティン・スミス、ジャック・パーキンス
◎注1; 刑事たちはみんな良い感じで描写されていて楽し
いのだが、痴漢のおとり捜査をするアイリーン・マクヘ
ンリー刑事を演じたラクェル・ウェルチが最高です。初
登場はコート姿なので地味目なのだが、コートを脱いで
白いセーター姿になった時のインパクトは絶大...あれじ
ゃ痴漢のオトリというより普通の男もオカシクなるよね。
キャレラ刑事の妻テディを演じるニール・アダムスは、
可愛い感じで聾唖の妻役を演じていたがワン・シーンの
みなのが残念...本作撮影中まではスティーヴ・マックィ
ーンの奥さんだったが公開後に離婚している。ユル・ブ
リンナーの情婦ローチェルを演じたタマラは本作後にタ
マラ・ドブソンと改名して「クレオパトラ危機突破 ダイ
ナマイト諜報機関(1973)」「ダイナマイト諜報機関 クレ
オパトラカジノ征服(1975)」等でスターになります。
◎蛇足; 本作は国内ではソフト化された事がなく、最近は
BS・CSでも放映されないのが残念。アメリカではDVDが
発売されています。
PS: 以下のサイトも運営しています、よろしかったらどうぞ。
★ 漫画を中心とした同人サイト
「日刊...かもしれないかわら版」
http://www.geocities.jp/saitohteruhiko/index.html
★伝説の漫画誌「COM」についてのサイト
「ぐら・こん」ホームページ
http://www.geocities.jp/saitohteruhiko/home/gracom/g_home.html
★「ぐら・こん」掲示板
★Facebook「Teruhiko Saitoh」