★注意!!! 作品の内容に触れています★
突破口！(1973)
かつて曲芸飛行のパイロットだったチャーリー・ヴァ
ーリック(ウォルター・マッソー)はニューメキシコ州で
農薬散布の仕事をしているが、その裏で田舎の小さな銀
行ばかりを狙い小額を奪う銀行強盗をしていた。チャー
リーは仲間3人と小さな西部の町トレス・クルーセルの銀
行を襲撃するが、パトロールの警官に逃亡用の盗難車が
発見され、銃撃戦の末に仲間のアル・ダッチャーが警備
員に撃たれ妻のネィディーン(ジャクリーン・スコット)が
重傷を負う。追跡をかわすため逃走の途中に死んだネィ
ディーンを車と共に爆破して、トレーラー・キャンプの
隠れ家に戻ったチャーリーとハーマン・サリヴァン(アン
ディ・ロビンソン)は奪った金が75万ドルもあるのを発見
して呆然とするが、ラジオのニュースでは被害額は2000
ドルと報道され、盗んだ金が怪しい隠し金である事が確
実になった。一帯を取り仕切るマフィアのボスで銀行協
会会長でもあるメイナード・ボイル(ジョン・ヴァーノン)
は隠し金が盗まれた報告を受け巨漢の殺し屋モリー(ジョ
ー・ドン・ベイカー)に追跡を依頼、チャーリーは金を返
そうと考えたが組織の金に手を付けたので許してはもらえ
ないだろうと考えメキシコへ高飛びする準備を始める...と
いうお話。悪役俳優からコメディ俳優に転身して成功した
ウォルター・マッソーが、そのキャラクターを活かしたア
クションやサスペンス映画に進出する"突破口！"となった
ハリウッドの超職人監督ドン・シーゲルの傑作であります。
暴力的で人が大勢死ぬ殺伐としたストーリーだしアクショ
ンも激しいのだが、ウォルター・マッソーの軽妙さで全体
的にはコメディ・タッチなのが新鮮で楽しい(注1)。本作の
大きな魅力は、ウォルター・マッソーの飄々とした演技と、
情け容赦のない横柄な態度で相手に迫るジョー・ドン・ベ
イカーの不気味さで、後半は彼が主演といっても良いぐら
いの存在感で画面を支配している。ドン・シーゲルの演出
はいつも通り快調で、特に牛の柵の所でメイナード・ボイ
ルとトレス・クルーセルの銀行の支配人ヤング(ウッドロウ
・パーフレイ)の会話を捉えた哀愁の漂う長回しは、細かい
カット割りの他の場面の演出と良いコントラストになって
いる。映画史上初と思われるクライマックスの複葉機と車
のチェイスは迫力満点だが、何となく"噛み合わない対決"
感も滲み出ていて愉快であります。ヴァーリックが歯科医
院に忍び込んだ時に自分のレントゲン写真をハーマンのと
すり替える事を思いつくのは、ハーマンが殺される前提で
ないとおかしい...偽造パスポート作らせてるし彼を犠牲に
するつもりではなかったと考えるのが普通だよな。
●スタッフ
製作・監督：ドン・シーゲル
製作総指揮：ジェニングス・ラング
原作：ジョン・リーズ
脚本：ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー
撮影：マイケル・Ｃ・バトラー
音楽：ラロ・シフリン
●キャスト
ウォルター・マッソー、ジョン・ヴァーノン、
アンディ・ロビンソン、シェリー・ノース、
フェリシア・ファー、ジョー・ドン・ベイカー、
ノーマン・フェル、ベンソン・フォン、
ウッドロウ・パーフレイ、ウィリアム・シャラート、
ジャクリーン・スコット、マージョリー・ベネット、
ルディ・ディアス
◎注1; ヴァーリックがボイルと連絡を取るために会う秘
書のシビル・フォートは「水兵さんは暇がない(1958)」
「ねえ！キスしてよ(1964)」「コッチおじさん(1971)」
等のフェリシア・ファーが演じていて、円形ベッドでウ
ォルター・マッソーとイチャイチャするのだが、彼女は
親友ジャック・レモンの奥さんなので映画ファンはニヤ
ニヤ。他にも、アンディ・ロビンソンは「ダーティハリ
ー(1971)」と同様に今回も痛めつけられる役だし、パス
ポートを偽造しているジェウェル・エバレット(シェリー
・ノース)のアパートにモリーが鍵をこじ開けて侵入した
時に、エバレットに「クリント・イーストウッド...」と
言わせてみたり、ラストで逃亡しようとするヴァーリッ
クの車のエンジンがかからない等、ドン・シーゲル監督
のイタズラ心が随所に観られる。そんなドン・シーゲル
監督は、モリーが訪れる組織の支部でボスと卓球をやっ
て負けて帰る男を演じてます。
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