今はなき「ならまち文庫」で
19年前に買った古本、手放します。
（※行き先が決まってますが紹介しておきます）
名著です。
『絵本とは何か』
松居直
（日本エディタースクール出版部）
もとは昭和48年に出されたもの。
著者の 松居直さんが、
つい先日 他界され─。
ショック...
かつては 福音館書店の社長さんで
会長となり 最後は 相談役だった方。
思ったより高齢になっておられたことも 驚き。
本当に良質な絵本と児童文学を見極める目，
審美眼を持たれた方で
きっと すばらしい児童書づくりに
全力を尽くされた生涯だったんじゃないだろうか。
20代の私が、すごく好きだった名文。
↓
『私は ファンタジーを抜きにして
子どもの文学も、また子どもの読書も
語りえないとおもう。
ファンタジーの世界こそ、
自分が自分であることを確かめることのできる世界である。』
『現代のように
個人が何ものかにすぐ埋没してしまい、
しかも埋没してしまっている自分に気づかないで、あるいは気づいていて、
むやみとアリジゴクのように
他の人々をもひきずり込もうと動きまわる中で、
ファンタジーの世界は貴重な体験をさせてくれる。
この世界は、手をつないでははいれないが、
この世界を体験した人々は、
精神の深い共感をたがいに持つことがある。
『ホビットの冒険』の作者トールキンの著作が世界的に多くの
自由な若者の心をひきつけるのは、
ファンタジーが
それにかかわりあうひとりひとりの人間の精神に、美しさと気高さと、そして、
たのしさを与えるからではないだろうか。
ただしこうした力を持ちうるのは、
まさに第一級のファンタジーの作品のみである。
最近日本の子どもの本の世界にあふれている
ファンタジーマガイは、残念ながら
ほとんどがこの点では失格といわざるをえない。』
『本は 楽しいもの。
これだけが 子どもを 本の世界へ導く力なのだ。
読書がおもしろければ、
子どもはおとなにたのまれなくても
すすめられなくても、指導されなくても
本を読む。
ところが氾濫している子どもの本の中には、
ほんとうにおもしろい本が少ない。
そして おとなは、何がおもしろい子どもの本なのかを 知らない。』
松居直『絵本とは何か』より
...ちょっと手厳しい書き方に
ドキッとさせられるけど、
読んでいて心地よい。
去年の母の他界後 私は
価値観、意欲、気質など、
内面の変化がとても大きい。
そうでなくても
３年ほど前から 私の関心は
ファンタジーの世界からは遠ざかっていたけれど
なつかしいもの，なつかしい本を身近に集めてゆっくり回想したい気もしている。
この本を久々にひらくと
またファンタジーの世界に
ちょっと心が呼び戻されるのを感じる。
『ファンタジーの世界こそ、
自分が自分であることを確かめることのできる世界である。』
という言葉に、
若い頃の私は 深く深く感激したけれど、
もしかすると 今の私は
〝現実の世界で〞
自分が自分であることを
確かめたいのかもしれない。
それが可能だと思うようになったのかもしれない。
いずれにしても、
松居直さんのご逝去をきっかけに、
私の内面にまた少し
さざ波が起きたのかもしれない。
味わいのある本。長い間、ありがとう。
新たな持ち主さんのもとへ旅して下さい。
https://ameblo.jp/tsukiakarinokomichi/entry-12773387744.html
ハーブティーとかもあります。
投稿いろいろ見て下さいね。
https://ameblo.jp/tsukiakarinokomichi/entry-12773890980.html
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