すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

小説家志望です。


バキ道、九条の大罪の感想を毎週書いてます。


基本的に読み終えた書籍についてはすべて書評のかたちで記事をあげていっています。


ちなみに、読む速度は非常に遅いです。


その他、気になる小説やマンガ、映画など、いろいろ考察しています。


あと、宝塚歌劇が好きです。







原則リンクフリーですが、コメントなどを通して一言ありますとうれしいです。







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安いものだと100円くらいで読めます。携帯料金に加えて支払うこともできます。無料で読めるものもあり。いちどのぞいてみてください!週1~2本ペースで更新中。


漫画家批評①福満しげゆき


漫画家批評②押切蓮介


漫画家批評③真鍋昌平


漫画家批評④板垣恵介


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・『店長がバカすぎて』早見和真


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・『近代立憲主義と他者』江藤祥平


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【2019】


・『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ


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・『言語接触』嶋田珠巳ほか


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【2018】


・『田舎教師』田山花袋


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・『戦後的思考』加藤典洋


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バキ感想最新・バキ道


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ウシジマ感想最新(最終章ウシジマくん)



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※週刊連載の感想は発売日翌日以降の更新です(現在、特に更新期限は定めずにやっていますので、ご了承ください)。




記事の内容によってはネタバレをしています。ご注意ください。


(闇金ウシジマくん、範馬刃牙は、主に本誌連載の感想を掲載しています)


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第61話/猪追



驚愕の勇次郎スゲー回、3回目である…!

3回はいままでなかったようにおもう。スゲーな。


体長2.3メートル、310キロ、えーとこれは、イノシシ?イノシシでいいのかな。それが山のなか進んでいる。とても空腹なようで、複数の一文字の漢字が入り乱れるたまに見られる表現で、イノシシの現在のあたまのなかが描かれている。ほぼ食べること、わずかに牝のことという感じだ。


そこに、前方からひとがやってくる。イノシシはまずそれを敵として認識したようだ。これくらいでかいと年も相当とっているから、いろいろ経験があるのだろう。

それでまあ、その人物が勇次郎だというはなしだ。


前回同様勇次郎のからだは汚れている。熊退治でしばらく山にこもっていたものと思われるが、もちろん、じしんの欲求を満たす目的もある。こんなでかいイノシシを勇次郎がほうっておくわけがないのだった。


相手が何者なのかを理解するなりイノシシは猪突急旋回、勇次郎すれすれで江戸走りのひとみたいにあざやかなUターンである。距離的にUターンしなかったらぶつかってそうだが、勇次郎は動いていない。逃げるのがわかっていたみたいだ。


危険を感じて猛スピードで逃げるイノシシを、速い走り方なのか、悪路であるためか、わからないが、ちょっとカッコ悪い動きで勇次郎が追う。


誰かがこのときのことをストライダム大佐に話している。なんか久しぶりの登場な気がするが、ポール・ヘイマン的な立ち位置のひとで、ファイトをするわけではないから思い出しにくいし、わからない。ひょっとしたらせっかくの勇次郎スゲー回なのに勇次郎のマネージャーみたいな彼が出てないことを板垣先生が思い出して3回目に至ったのかもしれない。


ストライダムが正しくこのはなしのなにがスゲーなのかを解説する。トラックではない、でこぼこの獣道、それでもイノシシのスピードは時速4,50キロになるだろう、でもそれじゃ彼に追いつかれると。勇次郎は砂浜やぬかるみでも9秒切るから。9秒って、100メートル走のことだとおもうが、ともかくここで勇次郎の走る速さが数字で表現される。かつて水泳などで似た表現はあったが、どちらにしてもこれはかなり珍しい。身長体重すら勇次郎はかなりあいまいだ。絶対的強さをもつキャラクターであるぶん、イメージ面でも展開上の制約面でも、計測されないままでいるほうがなにかとよいのである。とはいえ、ぬかるみで9秒じゃ結局どのくらいの速さかよくわからないが、まあストライダムは100メートルとはいってないからな。1キロかもしれん。


速さだけではない。当然のように素手で仕留めるだろうとストライダムはいう。餌だから。

またイノシシはすごい死に方をしている。手足はバキボキに折れ、からだは雑巾みうにしぼられており、腹部と頭部にでかい穴がある。ただ、逆に、勇次郎も一撃で仕留めるというわけにはいかなかったのだなとも感じられる。


亡骸に「いただきます」の一礼し、勇次郎は、むしり取った足をじかに食べる。食べるのは片足だけらしい。7キロほどのその肉を30分で食べ、「ごちそうさま」の一礼して勇次郎は去っていくのだった。



つづく



勇次郎、生で食って大丈夫なのか…。武蔵だってピクルの勧める生肉はあとで焼いて食うって言ってたぞ。


ファイト以外の勇次郎描写って「よくある」のだけど、このタイミングであることになにか意味はあるだろうか。

物語の流れ(文脈)という点以外でいえば、前回みたように、熊退治にかんしては勇次郎の社会貢献的な要素が感じられた。

まず最初、最近定番になっている、自分以外がメスであるというアレが描かれた。げんに最強であり、自他ともに認めるその絶対性を証明するには、彼は逆説的に他者を必要とした。誰よりも強いためには、誰も彼より強くないことを示すほかない。これが彼のなかの野性と反応し合ってあのような人格になった。しかし刃牙との親子喧嘩を経て勇次郎はそこから解放されたはずである。事実最強であるため、そのホルモン量から自分以外がメスにみえるという状況にちがいはない。ただ、それをいちいち示してまわる必要はないし、ふつうの男性が恋してもすべて変態行動には出ないのと同様、目に入るなり性欲のままにふるまうことを回避しようとするような社会性も、同時に身についたはずである。それがあの、老婆への親切が示すところだ。

そして熊退治は、明らかに昨今の熊騒動から導かれた状況である。つまりこれは社会貢献である。やはり、野性はそのままのはずだ。しかし少なくとも見かけ上の動機は異なる。勇次郎の暴力衝動はそのままに、そこから相手を蹂躙することで得られる証明を除いたものが、熊退治だったと考えられるのである。


ではイノシシについてはなにが描かれたか。勇次郎の汚れ方からして、しばらくの間彼は野宿をしているものと思われる。目的は最初から最後まで熊退治だったのかもしれない。それはわからないが、この間、どうやって生活していたのかということが、ここでは描かれているのかもしれない。

そしてポイントはやはりいただきますとごちそうさまの一礼だ。これらは、仕草に意味が宿る記号的な儀礼であるから、思考法としては言語運用に近く、きわめて人間的な行動だ。たんに食べ物への感謝を示している場面で、意外な一面を示すだけではない。ここには「人間」がいるのである。そこが、野性に突き動かされて暴力から食事に至りながらも、これまでとはわずかに変わっているところなのだろう。ここにはたしかに社会性がある。性欲はそのままにしながら誰彼構わずすることはもうなく、そればかりか老婆に親切にする、暴力衝動を満たしつつも表向きは社会貢献的にクマを退治する、そして、空腹のまま必要以上にイノシシを叩きのめしながら人間的儀礼を欠かさない。異様な道のりではあるが、ともかくも勇次郎は「人間」の道を歩みつつあるのである。









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第137審/三つの裁判③




嵐山がのらを取り調べているところ。のらのフルネーム、特に漢字は忘れがちだが、野村乃羅である。かわいい響きの名前だよね。

嵐山は、のらを告発した曽我部はぜんぶ吐いたといっておどかす。だから黙秘をやめろというはなしだが、曽我部もまたカンモクを続けているので、これはうそだ。そして偶然だが、これは前回、ヤクザの出雲が百井らを詰めていたときと同じやりかただ。

のらは娘に会えないことがいちばん悲しい。黙秘はつらそうだ。


のら担当の亀岡が九条に連絡をとる。大麻部屋の道具類は髭鼠が片付けており、ヤクザも警察もいちども目にしていない。考えてみれば奇妙な状況だ。とにかく証拠はないので起訴までいかない、のらも曽我部もカンモクパイの方向だよねという確認である。九条もそのつもりでいるようではある。



殺した百井をそのまま重機で穴に埋め、出雲らは縛り上げた求馬を車につむ。出雲は麻雀やってるときに百井を連れて出かけていたが、そのメンツは出雲を待ちながらまだ麻雀続けてるらしい。出雲はその電話の相手に宇治にかわるようにいう。出雲が宇治の番号を知らないということはないはずなので、待たせている弟ぶんのほうが宇治より上なので、その顔を立てた感じだろう。



めんどくさいからみかたをしながら出雲は、百井の仮想通貨を抜くことができるかと宇治に訊ねる。宇治の得意分野だからだ。スマホがあるということなのでかんたんだ。宇治ははなしを受けてからなにかを考え、どこかに去ってしまう。


出雲はまだのらは追わないという。警察がマークしてるだろうから…ということだが、じゃあいずれわかるとしても、ほんとにのらが逮捕されたことは知らないのだな。肝心の百井は殺してしまったし、「のら」という情報だけで彼女を見つけるのは難しそうだが、いまは百井のスマホがある。


話しているのは鍛冶屋だろうか。なんで百井を殺して求馬を生かしたのかと。百井のほうが使えそうだったのに。当然の疑問だろう。出雲は、百井は裏切るからだと応える。たしかに、じっさいのらを売ってしまったわけだし…と、やはり鍛冶屋が常識的な反応をみせるが、それだけではない。奴はSだと。サディストということかと思ったがそんなわけはない。

嵐山が百井と連絡がとれなくなったと話している。S、つまりスパイ、タレコミ屋だったのだ。

嵐山は百井のことはどうでもいいがおかげでのらまでたどりつけたと言っている。…よくわからないな。百井は、のらと会う前から売人で、嵐山とはその時代からの関係なのか?



亀岡がのらと面会。九条に確認したことを踏まえ、曽我部は黙秘するだろうからのらもそうしようとする。曽我部はぜんぶ話したとする嵐山の脅しはやはりただの揺さぶりだ。娘が心配なのらにはよく効く揺さぶりである。だが娘の梨沙は薬師前の働きで父親側が預かっている。今後親権とかとられてしまうだろうけど、とりあえずいまは黙秘だ。



ブラサンの散歩をしている九条に久々の壬生から連絡が。壬生もまずブラサンの様子を聞いているのがなんか和む。壬生も犬が好きだもんな。わがままに育って、たいそう元気なワンコである。

連絡は、宇治から聞いた内容を伝えるものだ。詳細はわからない。だが九条はそれを受けて方針を変える。曽我部に面会し、のらのことを含め、すべてはなすように指示するのだった。



つづく



チンコロしたのはふつうに百井だったか。

嵐山との関係性がどのようなものか、これだけではわからないわけだが、嵐山は百井のことを知っていたわけなので、いつでものらにたどりつけたんじゃないかという感じがしてしまうが、百井は百井で成功するためにはのらが必要だし、嵐山は嵐山で小物だから百井本人には用事がなく適当に泳がせて大物捕まえたほうがいいし、たがいに微妙な落とし所を探って利用し合ってた感じなのかな。

そして百井的には警察より厄介なヤクザが介入してきて、少なくともこの農場は潮時だと感じられたのかもしれない。で、見逃してもらうかわりに百井はヤクザとのらを売る。その際、じっさい現場にいるものが必要でもあり、そのために曽我部は育成されたのだろう。幼馴染もかんたんに売るし

百井、思ったよりぜんぜんクソやろうだったな…



九条は壬生からなにを聞いたのだろう。宇治は百井のスマホから仮想通貨を抜くと聞かされただけだ。百井が連行されていったことも知っているだろう。そのタイミングで、いかにもひと仕事終わりましたみたいな出雲が百井のスマホを手中にしているとなり、彼が死んだことを宇治は悟ったのかもしれない。しかしそれがどうして曽我部へのあの指示になるのか?

証拠はない、だから20日黙っていれば起訴されず出てこれる。それをやめるからには、この状況が変わってしまったということになる。それは、証拠が出てくるということを意味するのかもしれないし、「悪くなるのを避ける」のではない、なにかよい方向への戦略を九条が思いついたということかもしれない。

たとえば、いま嵐山は百井をどうでもよいと考えている。だが曽我部が嵐山の予想を超えて、なにもかも話したら、百井も当然そこに現れることになる。グレーな関係だった百井を探さなければならなくなったとき、嵐山はどういうことになるだろう。また探すということになったとか、なんらかの方法で百井のスマホの位置情報などというはなしになったとき、出雲はどうするだろう。弁護士は法的に弱い立場にあるものの権利を守るものだが、とりわけ壬生がからむとき、九条は攻めを行うこともある。最初からいい感情を持っていない嵐山や、京極の件で九条を疑っている出雲は、九条にとってめんどうな相手だ。こういう攻め手を選ぶ可能性も否定はできない。


ただ、そんなことのために曽我部をつかうのかなともおもう。ふつうに考えるとやはり百井が死んだらしいこと、またそのスマホを出雲が持っていることなどが引き起こす、曽我部にとってまずい状況を回避するためではないかと考えられる。金を抜いたあと、出雲が嵐山にスマホを渡すとか、そんなことだろうか。


ひとつ気になるのは、タイトルが「三つの裁判」であるということだ。裁判じたいまだないが、井出はともかくとして、とりあえず逮捕されているのはふたり、のらと曽我部だけだ。つまりもうひとり逮捕者が出る。

すでにのらと曽我部は相互依存的な、囚人のジレンマ的状況にある。現実には代理人である九条と亀岡がやりとりをしているのでパレート最適を達成できそうだが、これが崩れる可能性を九条は読み取ったのかもしれない。そこで先手を打ったのかも。


ただこれは、どうあっても亀岡との関係悪化は避けられない。黙秘になると、確言まではいかなくともくちにしたあとなのだから。逆に九条を信用した亀岡はのらに損をとらせることになってしまう。それでいいと九条は考えそうだが、第三の要素の事次第によっては、これが天下三分の計的な、新たな均衡状態を呼ばないとも限らない。要するに、まだなにもわからないのであった…



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第60話/猛獣注意



勇次郎すげー回が続く…。最近2話連続のことが多い気がするな。


猟師・寒川鉄三が語る…。勇次郎回にこの手の属性やワイルド系のひとが登場すると、冒険家ジョー・ウィリアムの悲劇が思い起こされ(前回のおばあちゃんも一瞬緊張しました)、考察サイト管理人としては一気に緊張モードになるが、幸い寒川はただの目撃者である。


なにを見たかというと、まず異様なクマの遺骸だ。それもふつうの状況ではない。頭や手足はねじまがり、脳はぐずぐずに崩れていたという。とにかくふつうの死に方ではない。もちろん射殺されたものではないし、熊どうしの喧嘩でもこんなことにはならない。寒川はすでにこのような死体を3体見ているという。


これらの死体発見がしばらく続いた数日後、という感じだろうか。基本的に単独で生きていく羆が、集団で、相手を囲むように狩りをしている現場を、ハンターたちは目撃する。この現場に寒川はいないようだ。


もちろん相手は勇次郎である。クマは6頭に見えるが、なんか増えたり減ったりしててよくわからない。まあ、要するにたくさん、「一対多」だ。少し前に独歩が行ったものとは次元の異なる危険性だ。

勇次郎はなぜか少しからだが汚れている。しばらく山に滞在し、3頭と戦ってそのクマを寒川がみて、いまいよいよクマ集団と雌雄を決しようとしていると、こんな流れだろう。


次々と葬られていくクマたち。もともとこうして集まっているのは、寒川が見た3頭のことがあってのはずだが、彼らも相手の強さをいま初めて目の当たりにして、改めて、みんなでかからなければ負けると感じたようだ。勇次郎は向かいくる彼らを容赦なく破壊していく。これ、蹴りで首切ってないか?


ハンターたちはとにかくクマたちが集団で、しかも人間を狩ろうとしていたことにたまげているようだが、そんなレベルのはなしではない。クマは全滅。勇次郎は無傷で去っていくのだった。



つづく



この2,3年報道されるようになっている熊騒動を受けてのものか。

前回はおばあちゃんを助ける勇次郎のジェントルが描かれたわけだが、今回は一転して凶暴な勇次郎だ。でも、前にもこういう描き方はあったような気がする。いつかは思い出せないが。「優しい勇次郎」のあとに、それをみてほっこりする我々を殴りつけるように荒々しい勇次郎が描かれるのだ。


そしてまた、この流れは作中の物語のうちにもときどき見られるものだ。いますぐ出てくるのは宿禰編で、光成に「優しいのぉ」みたいなことをいわれた勇次郎が、青筋立てて「犯すぞ爺」をやった回である。






勇次郎にとって他者とはすべて異性である、というおはなしから、こういう発言が出てきたわけだが、これは彼が絶対的強者であることを示すためにはどうしても他者を必要とする、という逆説でもあった。ひとことでいえば、自身の雄度を示すために他人にはメスでいてもらわなければならない、というはなしである。かつての勇次郎にはたしかにこのような暴力性があった。しかし、親子喧嘩を経て彼は、引き続き最強者ではあったとしても、絶対者であることからは解放された。だから、彼はもう「雄」を証明するために「雌」を必要としはしない。いま彼がこのような言動に出るのは、それまでの思考習慣がもたらす弾み、宿禰のときにかんしていえば照れ隠しによるものと考えられる。


絶対者であることから解放された彼はもう「暴力魔人」であろうとしなくていい。「誰よりも強い」ことを証明するために「自分より強いものはいない」を示してまわる必要はもうない。ただ暫定的最強者であればよい。おばあちゃんに優しくするなら、すればよい。「優しい勇次郎」、けっこうなことである。しかしそうならない。勇次郎じしんが、うっかりジェントルにふるまってしまったあとに照れ隠しでブチギレるならまだわかる。それは、別に珍しくもない、よくある態度と感情だろう。しかし今回のように作品がそれを行うとなるとはなしは違ってくる。他者を蹂躙することで確保される勇次郎の自我というものがまだある、少なくとも展開上それを予感しないわけにはいかないということになるからである。


ただ、ここまで書いておいてなにだが、今回の勇次郎の暴力描写は、そうはいってもやはり以前とは異なるのかなとは感じる。相手がクマだからである。周知のとおり、この何年かの日本は、冬を除いて年中クマによる作物や人身の被害に見舞われている。正直ぼくは今回のクマをかわいそうに感じたし、勇次郎にじゃっかん怒りを感じたが、ともかく、事実としてクマ被害がある。特に去年の被害は素人目にも放っておけるものではなかった。今回の勇次郎描写は明らかにそれを踏まえている、要するに社会貢献的要素を含んでいるのである。あんな残虐な殺し方があるか、とはおもうし、そういう言説は現実世界では有効かつ必要なものだが、ここでのおはなしは勇次郎の行動の評価にかんするものである。これは、以前のような、「優しいのぉ」からの「犯すぞ爺ぃ」と同じ形状で「おばあちゃんに優しい勇次郎」と「暴力的な勇次郎」を描きながら、その「暴力」の内実は、「犯す」ことで絶対性を確保しようとしていたときのものとはちがうのである。たしかに、「優しい勇次郎」もいいが、優しいだけではな…という気持ちもいち読者としてはある。そういうイケメンしぐさは花山に任せておけばよいと。


ただ、勇次郎の暴力衝動というものは衰えることはないんだろうなというふうにも感じる。彼がその男性ホルモンのせいで圧倒的にオスであることと、「犯すぞ」とおどしたり、じっさいにそうした行動に出ることのあいだに必然性はない。だから、これはたしかに、ホルモン問題がもたらす派生的な、ある目的、つまりをじしんの男性性、「最強であること」を証明したい、という動機から始まっていたことだ。これが失われながらも、今度は社会貢献的なものを、おそらく無意識に動機としながらちからに傾くのである。かたちも、結果も異なるものとはなっても、けっきょくそうなる。やはり彼もまた強いんだ星人、人間を相手にしないだけマシというものかもしれない。











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第136審/三つの裁判②



出雲につかまり、山奥で詰められる百井と求馬。目の前には大穴。おそらく壬生、菅原を埋めるために用意されたあれと思われる。


井出と曽我部が嵐山に捕まったわけだが、それはどう考えても内部からの告発がなければ起こらなかったことなので、出雲は百井を疑っている。百井の立場からすれば、ヤクザに吸われそうになっていたわけだから、ありえるはなしだ。

だが今回は最初から百井の仕事内容についての詰問に変わっている。いつだか、なんでキレてんだかよくわからなかった出雲のあの怒りだ。いま出雲は京極に変わって百井の面倒をみているわけだが、京極に隠れてけっこう手広く稼いでたんだろと。申告漏れがあるんじゃないかというはなしだ。


百井はこれまでのらの名前は出さず、ただ仕入れてさばくディーラーとしてヤクザと関わってきたのだろう。出さないようにしていたというより必要がなかった感じだろうか。曽我部も最近までのらの存在は知らなかった。しかし、聞いているよりずっと稼いでいるらしいとなったらはなしは別で、それを盗聴で知った出雲は怒っていると、こんなところか。


いちおう、百井は仕切っている人間は知らないという。出雲は求馬にも尋ねるが、彼はアレなので、あんまり期待はしてないだろう。げんになにも知らないし。とりあえず大麻や栽培用具を盗んだりはしていない。

吐かせるために尋問してるとおもうか?と、出雲が実にヤクザらしいエクリチュールで続ける。こたえを知っていて確かめてるだけかもしれないぞと。だったら早めに吐いて心証をよくしたほうが賢くないかというはなしだ。素直で正直な人間が好きだとも。


出雲はふたりを対決させるつもりだ。ひとりは生還して海外へ、もうひとりは穴のなか。どっちが生きる価値あるか対決だ。先行百井。求馬が穴の前に立ち、背中を押そうとする百井に命乞いをしろと。アレなのかふざけてるのか、求馬は「命鯉」をからだで表現する。真顔でそれをみている出雲がじわじわくる。

迷いながらも百井の手が伸びる。そこで求馬が謎のラップだかうただかをうたい始める。北海道のニセコで外国人相手にMDMAを法外な値段で売りつけたときのボースティングだ。謎すぎて空気が固まってるっぽいが、おかげで時間が過ぎ選手交代。求馬やるな。


求馬のターン。ふたりとも半べそである。百井はたぶん求馬を信用していないので、いまにも背中を押されそうに感じているにちがいない、あっさりのらの名前を出してしまう。また、のらが2億稼いだことや、運営権を5000万で買う予定だったことも。仮想通貨で2000万程度あったらしいが、百井はそもそも5000万もなかったらしい。

出雲にあおられ、求馬が押してしまいそう。ここで百井もまたある種のリリックをかます。これは出雲をジャッジにしたフリースタイルバトルだ。もううんざりだと。金ばっかりの連中に騙され、裏切られ、あげくじぶんも金しかみてない人間になってしまった。お互い押さなければやり直せる、生き残ろう。もとより幼馴染の百井を求馬は押せなかった。ちなみに、「押さない」と「幼い」は同音異議である。


選手交代、気持ちを切り替え、やり直すという求馬の背中を、もう幼くはない百井が押す。求馬はバカで、生きる価値があるのは自分だと、冷えた表情で百井はいう。求馬は泣き叫ぶが、終わりではない。百井の後頭部に伸びる出雲の銃。あたまを撃ち抜かれて死んだ百井が求馬の前に落下するのだった。


勾留中の曽我部を九条が訪れている。のらの名前を出せと指示して以来かな。いつも最悪な時に来てもらってすみませんという曽我部に、弁護士は最悪な時にしか呼ばれないから大丈夫と、九条はあっさりいうのだった。



つづく



百井がのらの名前を出してしまった…が、これは、曽我部が警察でくちにして逮捕まで至っていることだし、どうせすぐわかってしまったろう。では出雲はなにを聞こうとしていたのか。だいたい、チンコロの件はいいのか。


出雲がいま知りたいことは3つだ。そもそも、逮捕の前に井出が探しに行った大麻はどこにいったか。嵐山にちくったのは誰なのか。そして百井の仕事の全貌である。大麻の行方は、些細なことといえばそうだが、とりあえず曽我部のいうような真相ではないし、求馬が嘘をついているようにも出雲は感じなかったろう。それも、そののらを探せば済むはなしだ。しかし、こんな情報だけでのらが探し出せるわけもなく、肝心の百井を出雲はみずから殺してしまった。とすると、やはり出雲はすでにのら逮捕を知っていて、彼女がボスだとあたりをつけていたのだろう。

とすると問題はチンコロしたのが誰かという問題だけになるが、今回出雲はそれを追及しているようにはみえない。このあたりが、詰問、尋問などとは言っても、ヤクザがいちおうは真実を求める警察とは異なるぶぶんなんだろう。伏見組には宇治という信用ならない男もいる。誰がチンコロをしたのであれ、いま井出が逮捕されて、百井との件が警察にバレてしまった事実にちがいはない。これは覆らず、復元できない。とすれば、なにはともあれ誰かが死なねばならない。百井が犯人かどうかは、あまり重要ではない。ともかく出雲は、「裏切り者」に制裁を加えなければならない、もっと厳密にいえば、そういう身振りをとらなければならない。かくして生きる価値対決が始まった。あれは、見たまま、たわむれだったのではないか。どっちでもいいのである。大麻の行方はわからないがさらに上がいるならいま考えてもしかたない、そしてその黒幕というのがいま捕まっている野村のらだということの答え合わせはできた。あとは、出雲が「裏切り者」だと判断したものを殺したという見せしめ的事実だけが必要なのである。


じゃあどっちを生かすかということで、出雲が素直で正直な人間が好きだと言っていたのは、たぶん言葉のままなのである。出雲が宇治とそりが合わないのは、宇治がさかしらでしたたかだからだ。要するに、正直者ではないのだ。出雲だってたいがいだが、宇治のようなインテリ感はない。だから、ほんらいヤクザ的資質ともいえる百井の冷徹さを、今回はむしろ制裁の決め手としたのである。それに、いま彼は仮にも「裏切り者は誰か」のジャッジをしているのであるから、目の前で幼馴染を裏切る男を殺すことには理があるのである。


ただ、論理的整合性以前に彼はヤクザだから、求馬が助かるとも限らない。生きてても曽我部をいじめるやつだし、生かすならしっかり教育してほしいが(出雲は、刑務所で曽我部を助ける京極派なわけだから、教育は期待していい)、まあ、わかんないよね。


チンコロした犯人だが、宇治や久我ということになるのかな。そもそも百井の件は出雲と宇治ではなしがついたうえで始まろうとしていたもので、つまり出雲も宇治がこれを知っていることを知っている。だがじかに宇治を詰めることは証拠もなしでは難しい。百井殺害はなにより宇治への牽制になっているはずである。







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最近読んでるやつで買ってよかったのはだんぜんこれ。





これはやばい。興味あるひとは絶対買ったほうがいい。


「リミナルスペース」とは、クリーピーパスタ(ネット発の創作都市伝説みたいなもの)発祥で、動画やゲームで人気の「バックルーム」を通じて決定的に前景化されたインターネット美学である。もとは建築用語で、廊下や階段など、移動のための構造物を指す。また「リミナリティ」には、人類学的な通過儀礼の過渡段階という意味もある。それらが意味を補いながら転じたものがリミナルスペースである。それを描いた絵や写真、動画に、独特の奇妙な感覚が宿ることを発見したものたちがそのように言語化し、ネットミームとして流行、いまではリミナルスペースを舞台にしたゲーム「8番出口」が二宮和也主演で映画化されるほどだ。ニノだよ。語として知られているとはいいがたくても、感覚じたいは市民権を得たといっていいとおもう。


8番出口の映画じたいは未見だが、あのゲームをどうやって映画にしたのかなというのは多少気になる。リミナルスペースはひとの気配が失せた空間をいうので(あの歩いてるおじさんも、ひとというよりはオブジェに近く、無人空間で会えた人間なのにまったくほっとしない)、いかにも主観ゲーム向けというか、どうしても主演をうつさないわけにはいかない映画とどう馴染むものか、わからないからだ。


リミナルスペースは親しさと拒絶、ノスタルジアと疎外感、知っているはずと感じるがまた同時に無関係とも感じる、非常に奇妙な感覚を呼び起こす。ネットで調べればいっぱい画像が出てくるのでみてほしい。駅のコンコース、またホーム、巨大な地下駐車場、空港、ショッピングモールなど、ふだんひとが大勢行き交う場所からいっさいの気配が失われて無人になったとき、この感覚が現れる。廃墟愛好と似たぶぶんもある。

ぼくじしん、この感覚はよく知っていた。だからバックルームの動画はよく見ていたし、親和性の高いメガロフォビア(巨大物恐怖症)系の動画も年中みてる。不快だが目がはなせない、またなつかしく癒しさえ含みながらどこか不安、こういう感覚のとりこになっていたのだ。だから、これに名前があると知ったときはうれしかった。


リミナルスペースのもっとも原初的な表現はやはり廊下や階段である。これらは、部屋から部屋へ、フロアからフロアへ、ひとが移動するために作られている。いいかえれば、ひとが移動しなければ存在の意味がない。ここからひとが、またその気配のいっさいが除かれたとき、役割を果たさないままそれでも堅固に存在を持続するリミナルスペースが誕生する。やがてこの感覚じたいがもっと幅広いものであることが理解されるにつれ、それ以外の空間表現が行われるようになっていったようだ。


本書はホラー系の動画配信者であるALT236というひとの手になるもので、このひとが何者かはよくわからない。が、リミナルスペースを考えるうえで絶対にはずせない一冊であることはまちがいない。しっかりへネップの『通過儀礼』への言及からはじまり、全体主義系の巨大建築や弐瓶勉、ギーガー、マグリットなどを巡りリミナルスペース誕生経緯を徹底的に、しかも美しい図版付きで解説している。ほんと、絵をみてるだけでため息がでる。



数学系ではデデキントを読んでいるが、苦戦している。





カントールの本が読みたいのだが手頃なものがなく、同時期に体系的に集合論を創始したデデキントを読み始めたわけだが…。ゲーデルとかと比べて難解というはなしではなくて、まずは書き方の問題があるようである。部分集合の記号がさかさまっぽいやつだったりとか…。それもまあ、現代の集合論がしっかり身についていれば問題ないところ、そのあたりもあいまいだから、並行して名著として名高い入門書も読んでる。今年も通勤時間は数学漬けだ!





もっと軽い、ふつうの小説を読みたいなという衝動もあり、話題になっていた『身から出た闇』も読み始めた。ふつうのっていうかホラーだが…。短編集の体裁をとりながらメタ的な仕掛けがあるっぽい。大事に読みたいが、これはたぶん一気読みしてしまうやつだな。






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