おはようございます晴れ

日程アンケートご協力ありがとうございましたビックリマーク

結果当日朝の告知になってしまいました…すみませんあせる

 

「ようやくメガネ教師中学生編完結したので振り返りながらツイキャスします」
放送予定日時:7月21日 水曜日 21:30頃~(2時間程度予定)

主な放送内容:メガネ教師各話振り返り・フリートーク(マシュマロに来た質問等)

URL : http://twitcasting.tv/tsubameshirase
閲覧パスワード:spa

 

日程調査、結構票割れてしまったこともあり、

今回はバックナンバー残します。

また今回、キャスを配信する場所の問題でパソコンを運べないため、

タブレットからの配信になります。

いつもと音質等違うかもしれませんがご了承くださいあせる

 

そして、質問は匿名メッセージサービス「マシュマロ」で受付中です音譜

個人情報に関わることを除いて(笑)

基本全てにお答えしようと思ってますので、

よろしければ下記からご質問くださいニコニコ

キャス中リアルタイムでも大丈夫ですビックリマーク

https://marshmallow-qa.com/tsubameshirase

 

マシュマロがうまく使えない場合は、ブログのコメントでもOKです。

(白瀬が承認しなければ公開されないのでご安心くださいー)

それでは、ご都合つく方、是非流し聴きしてやってください(笑)

コメント・マシュマロ等で参加していただけると更に喜びますほっこり

こんばんはニコニコ 白瀬です。。

 

さてさて、間が空いてしまいましたが、ようやくメガネ教師、

完全に中学生パート終了しました~~~~!!!!

 

最後は、以前からリクエストも多かった風丘/仁絵の家庭スパでしたウインク

シンプルイズザベストで、定番の理由と軽めなスパ。

普段こんな感じでお仕置きされてるよー、って感じで、

思った以上に短編になってしまいましたが…汗

お楽しみいただけましたでしょうかはてなマーク

 

新しい要素としては玄関でのスパと道具としてスリッパの登場。

玄関スパは嫌だろうな~~と想像しながら書いてました。

ドア一枚で外、って空間は私だったら絶対に嫌←

スリッパは、かつてスパ小説の書き手として道具の痛みは知っておきたい!!

家庭的な道具は一通りセルフスパ(形状的に難しいものは太もも)で試した際、←黒歴史

音が大きいわりに痛くない、という印象だったので

羞恥系道具として使わせてみました。

 

次回からはいよいよ高校編。

ご都合主義設定により(笑)、メンツも設定もほぼほぼ変わりませんがあせる

少し新要素があるので、最初はスパ無しでその紹介の予定。

サラッといきたいので早めに上げたい…

 

そして、これも前回の後書きでやりたいなー、といいつつお流れになっていた

ツイキャスですが、この4連休に開催予定ですビックリマーク

内容としては、白瀬の近況と、中学生編の振り返り。

一応1話1話振り返っていきたいと思います。

 

現在日程アンケート中です。

久々過ぎてどれくらい一人で喋り続けられるか分からないのですが、

とりあえず21時くらいからの予定。翌日がカレンダー上休みの、

7/21~7/24のいずれかで開催予定です。

Twitterに投げたのですが、締め切り設定を間違えてしまったので←

明日朝再度固定ツイであげておきます。現在回答分も有効とします。

Twitterで回答できない、という方はこのブログのコメントでも大丈夫です音譜

一応今回はアーカイブも残す予定ですが、

よろしければ当日参加して白瀬に話しかけて助けて下さると嬉しいです笑

当日回答専用のマシュマロ設置しますので、

日程決まったらそれも告知しますね。

 

ではでは、次回記事もご覧くださいニコ

おやすみなさいー夜の街

高校進学を控えた春休み。


仁絵のイライラのきっかけは、昨夜寝る前、夜更けにかかってきた執事からの電話だった。

風丘の家に居候するようになった原因の父とはすっかり疎遠になり、

全くと言っていいほど連絡はとっていないが、
執事からはちょくちょく(頼んでもいないのに)連絡が入り、

義母や弟のことなど家の様子を教えてくれていた。
仁絵としても、ずっと気を遣ってくれていたのに結果的にこんな状況に巻き込んでしまった義母には申し訳なく思っているし、
何も悪くない弟はあまり触れあいは多くはないが、それでも仁絵のことを兄として慕ってくれているのだ。
二人の様子は気にならないと言えば嘘になり、

父に出くわさないタイミングを見計らってたまに実家に顔を出したりもしていた。

そんな現状だから、父の話題は禁句。

それは執事と仁絵の間では当然の共通認識のはずだった。
なのにだ。

昨夜執事が電話してきた用件は、

久々に父を交えた食事の場を設けるから顔を出さないか、という全く気乗りしない誘いだった。
しかも難色を示せばすぐに引き下がる執事が、今回はしつこいほどに食い下がってきた。
思えばこんな夜更けにいきなり電話してきたことからも、

父に何かしらの指示を受けていることが透けて見えて、
久方ぶりに口汚い言葉を吐いて苛立ちのまま電話を切った。
 

 

 

ざわついた心のまま無理矢理眠り、翌朝。

起きてメールを開けば、なおも説得してくる執事の長文メール。
誤魔化すことを観念したのか、

父が仁絵を少しは家に連れ戻すように指示してきたことを明かし、食事の席を設けさせたのだという旨の内容だった。
もう1年以上ろくに顔も見ていない。
このままフェードアウトされることを危惧しているのだろうか。
勘当まがいのことを言っておきながら何を今更。
どうせ何か説教でもしようという魂胆だろうと思えば、
メールの後半は、まだ高校進学が決まったばかりというのに、留学だの大学進学だのの話題で埋め尽くされていた。
大方、素行がかなり落ち着き、まともに普通に高校進学した仁絵を見て欲目が出てきたのだろう。
弟はまだ小さく、どう成長するか分からない。
頭の回転や学習能力が人より多少良いことだけは昔から父にも認められていた。
しかし、だからこそ分かりやすすぎる変わり身に余計苛立ちが募った。

メールを削除し、執事の電話番号を一旦着信拒否にして、身支度を整えたら携帯と財布を持って部屋を出る。

苛立ちが収まるまで出掛けよう。
リビングも通らず、2階の自室からそのまま家を出ようとした時だった。

「こーら。仁絵君。どこ行くの。」

足音を聞いて気付いたのか、玄関からリビングへと続くドアが開き、風丘に呼び止められた。

「…ちょっと出掛けてくる。」

さしたることない会話だが、呼び止められた声に少し咎めるようなニュアンスを感じ取って、
少しふてくされた様な受け答えになってしまう。

「朝ご飯は?」

「いらねぇ。腹減ってないし、気分じゃない。」

「ふーん? 珍しいね。朝からイライラして。何かあった?」

あからさまに態度に出した自分も自分だが、ズバリ触れられるとよけい頑なになってしまう。

それがいくら穏やかな口調でもだ。

「…朝飯1日食わねぇだけだろ、別にいいじゃん、ほっとけよ…。」

視線をそらしたままボソリと言うと、風丘はふぅ、と息をついて口を開いた。

「苛ついてることは話してくれれば聞くし、嫌なら無理にとは言わない。…でも。」

風丘は腰に手を当てると、お説教モードに入った。

「朝ご飯は完食はしなくても食べるって約束でしょう。

それから、朝の挨拶も出掛ける挨拶もしないで出て行こうとしたでしょ。」

基本的に口うるさくはない風丘だが、

一緒に住まう上である程度、ルールとまでは言わずとも風丘のいう「約束」が存在していた。
その中の2つが、「朝食は少しでも口をつける」、

「起きたとき・出掛けるとき・帰ってきたとき・寝るときは相手に声をかける」というもの。
普段は意識せずとも出来るような内容だから気にしてはいなかったが、
こうして指摘されるとあまりにも子どもっぽい。
それを小さい子にお説教するように指摘され、仁絵は

「チッ…」

思わず舌打ちをしてしまった。
風丘は何も言わないが、その瞬間眉をピクリと動かした。
しかし、仁絵は波立った感情のせいか、その反応を見逃したばかりか、

イライラが収まらず、履いていたスリッパを蹴り飛ばした。
スリッパは、玄関ドアに激突して落ちた。

バンッ

「…っ」

良い生地が使われているなかなかしっかりしたスリッパは、ドアにぶつかった瞬間割と大きな音を立てた。
その音に少しは冷静になったが、まだ心はすっきりしない。

「仁絵君。」

そんな時、ワントーン低くなった風丘の声に呼ばれ、流石に良くない状況に気付いた。
振り返れば、険しい目をして、先ほどから変わらず腰に手を当て仁王立ちしている風丘の姿。

「拾いなさい。」

スリッパを指で指し示される。
しかし、駄々っ子が叱られるようなシチュエーションに、素直に動けない。
動いた方が絶対に良いはずなのはこれまでの経験で文字通り痛いほど分かっているのに、いざこの状況になるとダメだった。

「…あ、そう。分かりました。じゃあ仕方ないね。」

風丘は仁絵の脇をすり抜けざまに、仁絵の手首を掴むと、そのままドアの前に落ちているスリッパを拾った。
そして靴を脱いで上がる場所に敷かれているラグの上にあぐらをかくと、

掴んでいた仁絵の手首を引いて、そこに横たわらせてしまった。

「やっ…おい、こんなとこでっ」

「スリッパ素直に拾ってたらリビングだったのにねー。残念でした。」

そんな後出しずるい。

仁絵は抵抗するも、あっさり押さえ込まれ、ズボンも下着も下ろされてしまった。

「やめろよっ…ここはやだっ…」

「嫌だからお仕置きなんでしょ。

さて、朝ご飯抜こうとしたこと10回、挨拶しなかったこと10回、物に当たったこと30回。
しーっかり反省しようねー」

叱られる内容も叱り方もとことん子ども扱いで、仁絵が羞恥に顔を染めた時だった。

パァァァンッ

「!?!?」

平手の比ではない豪快な音に、仁絵は驚きで絶句した。
振り返ると、風丘の手に握られていたのは先ほど自分が蹴り飛ばしたスリッパだった。
痛みは平手とそう大差ないが、困るのはその音だ。

「な、何だよこの音っ…」

「素材かな。ふふっ、玄関ホールで音響くし、いかにも叩かれてます、って感じでよく反省できるでしょ。」

「やだ、こんなの、聞こえるっ…」

風丘の家は大きいとはいえ、玄関ドアを出たらすぐそこは道だ。
ドア一枚隔ててもこの音の大きさでは通行人に聞こえかねない。

「別にお仕置きされてるとこ見られてるわけじゃないからいいでしょう。
いいから素直に受けて反省する!」

「やだぁっ、ほんと無理っ…」

先ほどの口の悪い仁絵はどこへやら、泣き虫モードが見え隠れしだした仁絵は、

やだやだ、と風丘のあぐらの上から逃げようと、腕を前に伸ばす。
が、そんな抵抗が許されるはずがなかった。

パァァンッ パァァンッ パァァンッ

「あぁっ! いった! ぅぁっ!!」

暴れる仁絵に、風丘が呆れて言った。

「いい加減にしなさい。次膝から逃げようとしたらそこの窓開けるよ?」

「なっ…やだやめてっ…」

風丘が顎をしゃくって指したのは仁絵の視線の先にある窓だった。
開ければお隣の家は見えるし、

窓を開けられてしまえば音どころか打たれた時の悲鳴や泣き声も、風丘の自分を叱る声も筒抜けだ。

家の前の通りを歩く人にも、窓を通ってドアから漏れ聞こえる音なんかよりよっぽど聞こえてしまうだろう。
まだ朝の9時過ぎ。大体の人は家にいる時間だし、

風丘の家に仁絵が居候していることも付き合いのあるご近所さんには大方知られている。
万が一こんなお仕置きをされていることがバレればもう外を歩けない。
仁絵は顔面蒼白になって、振り返って風丘にやめて、お願いと訴える。

「だったらしっかりお仕置き受ける?」

パァァンッ パァァンッ パァァンッ

「あぅっ…いっ…いたぁっ!」

「お返事は?」

パァァァンッ パァァァンッ

「あぁっ…受ける、受けますっ!」

パァァンッ パァァァァンッ

「いたっ…いたぁぁっ」

「はい、じゃあここから50回。」

「なっ…ぅ…うぅ~~~~」

もう朝ご飯の分くらいは叩かれ終わっているのに。
抗議したいが、次反抗すれば本当に窓を開けられるかもしれないと思うと、何も言えない。
仁絵は唇を噛むと、余計なことは言うまいと顔の前に持ってきた腕に口元を埋めた。
 

 

 

 

 

…パァァンッ パァァンッ

「んぐっ…うぅっ…」

袖口を口元に押さえつけ、声を押し殺す。
二人きりのお仕置きではすぐにギャンギャン泣きがちな仁絵だが、今はそういうわけにはいかない。
必死で耐える。が、痛みはいくら平手と大差ないとはいえ、平手で50発だって十分痛いのだ。
そこはスリッパだって道具。痛みが蓄積されれば、もう限界は近い。

「あと5回。」

やっと終わる。実際は大した時間ではなかったろうが、仁絵にとって果てしなく長く感じた時間だった。
しかし、最後まで風丘は意地悪だった。

パァァァンッ

「いっ…たぁぁっ!」

しまった。
不意打ちの足の付け根への痛い1発。

あと5発で終わると油断していたこともあって、仁絵は突然の痛みに思わず口元の手を離して叫んでしまった。
そして、再度塞ぐ間もなく連打が降り注ぐ。

パァンッ パァァンッ パァァンッ パァァァンッ

「やぁっ…いっ…いたぁっ…あぁぁぁっ」

「はい、50発。最後に、約束守らなくてごめんなさいは?」

「ぅ…」

最後まで子ども扱い。仁絵がたじろぐと、風丘は容赦なく羞恥を煽ってきた。

「もっとお尻ペンペン欲しいの?」

「だ、誰が! っ…ごめ…ごめんなさい…」

パァァァンッ

「うぁぁっ」

「『約束守らなくて、ごめんなさい』。」

「ぅ~~~~~ 約束守らなくてごめんなさい!!!」

「はい、よくできました。…っうわっ」

風丘に頭を撫でられて、解放されるや否や仁絵は風丘の膝から飛び退き、服をあげた。
一刻も早くこの空間から立ち去りたい。
仁絵がリビングに向かって駆け出すと、風丘は笑いながら後を追った。

「はいはい、じゃあリビングでお尻冷やしますか。」

勢いよく服を直した仁絵に、痛いだろうに…と風丘は苦笑するのだった。
 

 

 

 

 

「流石にこれくらいのお仕置きじゃもうあんまり泣き虫甘えん坊にはならないね。」

リビングのソファに横たわってお尻を冷やす仁絵にからかい混じりの口調で風丘が投げかけると、
いや、しっかり痛いし…と、仁絵は恨めしげな視線を投げる。

「そりゃあお仕置きだからねぇ」

「俺もう来月から高校生なんだけど。」

「仁絵君は仁絵君でしょ。」

「…高校生になってもこれは」「もちろん続行」

「学校でも」「わざわざ聞く?」

間髪入れずの即答に、仁絵は肩をすくめる。

「あいつらガッカリするだろうな…。」

「今まで以上にビシバシいくからねー 仁絵君も多少のお仕置きじゃこたえなくなってきてるみたいだし?」

「自分の馬鹿力もうちょい自覚しろよ。」

「はーい、もう一回お膝おいで。」

仁絵が憎まれ口を叩くや否や、
風丘は仁絵の寝転んでいるソファーの斜め前のスツールに座ると、仁絵の腕をグイッと引いて自分の膝の上に移す。

「ほら! 事実じゃん!!」

あまりの華麗な早業に全く抵抗出来なかった仁絵がまた噛みつくが、風丘はどこ吹く風。

「そろそろその口の悪さも直してく? 今『口悪くてごめんなさい』って言えたら許してあげる。」

「誰が!」

バチィィィンッ

「いってぇぇっ」

腕を引かれたはずみでタオルが床に落ち、あらわになったお尻に1発お見舞いされ、仁絵は盛大に悲鳴を上げた。
最後の連打を除き、先ほどまで我慢していた分勢いよく響き渡った悲鳴に、風丘はクスクスと笑う。

「…まぁ、今日のところはこれで勘弁してあげる。」

「はーっ…」

タオルを元に戻され、仁絵は安堵したように息をついた。

ようやく、今日のお仕置きは終わりを告げそうだ。

「さ、仁絵君朝ご飯は?」

「是非食べさせていただきます…」

「よろしい。ちょっと待っててねー」

「風丘。」

スツールから立ち上がり、キッチンに消えようとする風丘の背中に声をかけた。

「んー?」

「…おはよ。」

「フフッ、おはよー。」
 

白瀬です。。

大変遅くなりましたがあせる後書きです。。

 

まずは。

今回のトリ、仁絵編。

仁絵と男の子の絡み、難しかったけど楽しかったですほっこり

ショタっ子に好かれる仁絵、可愛いラブラブ

ショタっ子のスパは初めてだったので

拝読している作品の方を参考にさせていただきました(感謝)。

久々の霧山カーは霧山にしては甘め(?)で、物足りなさもあったかもしれませんが、

今回はキャラの交流を描くのが第一目的だったので

ある程度は目標達成出来たかな、と。

 

そしてそして。

中学編完結なんとか(無理矢理だけど)しましたよ~~~ビックリマークビックリマーク

 

足かけ15年(笑)(←笑えない)。

亀ペースすぎるし年に1本とかの時期もあったので

実際は15年といっても…という感じですが汗

でもまさかここまで続けられて何とか中学3年間分書けたことは

三日坊主・口先だけのダメ人間な白瀬からしたら本当に奇跡だと思います。

見捨てずに読み続けてくださった皆様のおかげです。

本当に感謝してもしきれませんえーん

記念して久々にツイキャスしようかなと思ってるのですが、

職場が繁忙期に突入してしまって平日は帰宅して

ちょこっと趣味に触れてエネルギーチャージして

そのまま寝落ちるという日々を過ごしているので…。

3月どこかの週末でできたらいいな、っていう願望←

そんなこんなで高校編のスタートも本当に新学期時期になるかな、くらいです。

なるべく早めに動きたいですが、いつものごとく気長に待って頂けるとありがたいですあせる

 

さて、そして前記事で話題に出していたオタクアカウントですが、一応できましたビックリマーク

稼働率は分かりませんが、とりあえず使ってみます。

スパのことは一切呟かないので、

アカウント名ここに載せて検索で引っかかっちゃうと…なので、

白瀬のTwitterアカウントにあとでこっそり投げときます。

 

ではでは!

毎度毎度深夜に失礼いたしましたダウン

翌日。

今日は土曜日だから朝から一日コース。
ボランティア最終日だが、ここへ来て仁絵は落ち着かずソワソワしていた。
原因はもちろん昨日のあおいの一件。
告げ口の趣味はないと言ったものの、いざ始まってそのページになったときのことを思うと朝から胃が痛い。

今日の読み聞かせは霧山が昼の運動の時間の前、仁絵が夕方のお迎え時間前だ。
最後の挨拶もあるから、と園側がこの時間にしてくれていた。
もういっそのこと早く始まって欲しい、こんなことになるならペンを探しに何て行かなきゃ良かった、と

見当違いの後悔をしながら、仁絵はチラチラと時計を見ながらどこか上の空で

朝イチ子どもたちのリクエストに応えながら童謡の伴奏を弾いていた。
 

 

 

「はい、皆さん。それでは午前中の読み聞かせの時間ですから読み聞かせルームに移動してくださいねー」

時間になり、霧山が教室にやってきた。
何やら園の先生と話があるから、と仁絵を残して朝から外していたのだ。

読み聞かせルームに移動しながら、ちらっとあおいを横目で見ると、さして気にしない風で堂々と友達と歩いている。
ある意味大物だな…と、自分だけヒヤヒヤしてることが少し馬鹿らしく思いながら、

仁絵はやはり心配が隠せず、歩きながら子どもたちのお喋りに生返事するのだった。



読み聞かせルームに着いて、いつものように子どもたちが霧山を囲むように座る。
そして霧山が昨日予告した本を取り出して読み始める…のがいつもの流れだったのだが。

「さて、皆さんごめんなさい、昨日予告したご本なんですけど、

先生読む練習しようと思って持って帰ったら、お家に忘れちゃったんです。」

「…え?」

子どもたちは霧山せんせーも忘れ物するんだねー、などと無邪気に笑ったが、仁絵は思わずポカンと口を開けてしまった。
そんなはずはない。霧山は読み聞かせに選ぶ本は完璧に下読みして、吟味した上で決めていることを

この数日間で仁絵は十分分かっている。
予告までした本を前日に今更持って帰って下読みするなんて考えられない。
だからこそ、あおいのあの落書きは当日始まるまで見つからないだろうと気が気でなかったのだ。

だが、ということは…。仁絵がまたちらっとあおいを見ると、焦るどころか悔しそうに霧山を睨んでいる。
仁絵はせめてもの救いの手のつもりで、そんな顔をしたらバレるぞ、と心の中で忠告した。…全く届かなかったのだが。



予定の本を変えて、つつがなく読み聞かせの時間は終わった。
本の感想を言い合う子どもたちに囲まれながら読み聞かせルームを出て行く霧山の後ろ姿を目で追いながら、

仁絵はどうしたものかと思案していた。
霧山があの本の惨状を知っていて急遽本を変更したのは目に見えている。だが、どこまで突き止めているかは分からない。
事実を今からでも伝えに行くべきか…仁絵が葛藤していると、突然ドンと腰の辺りに衝撃が走った。

「った、…あおい…」

振り返ると、衝撃の正体は体当たりしてきたあおいだった。
明らかにお怒りの表情だ。

「ひとえにーちゃんの嘘つきっ」

「…は?」

「言わないって、やくそくしたのにぃっ」

 

拗ねた顔でさっきの霧山に向けたのと同じように自分をにらみつけてくる。

だがこれはとんだ濡れ衣だ。

「…俺は言ってねぇよ。」

 

仁絵が否定するも、あおいは聞く耳を持たない。

「うそうそうそうそ! だってひとえにーちゃんしか知らないじゃんっ」

ヒートアップしたあおいは無我夢中で叫んでいる。

「ひとえにーちゃんの裏切りものぉっ バカバカバカぁっ」

「あ゛あ゛?」

「ひっ…」

(ヤベっ…)

言いたい放題に言われ、本当に言ってない仁絵からしたら些か心外だった。
無意識にガンを飛ばしてしまったようで、固まったあおいを見て我に返る。
仁絵の表情が元に戻ると、あおいもまた調子を取り戻す。

「ひとえにーちゃん嫌いーっ もう一緒に遊んであげないっ」

「いや、おい、ちょっ…」

遊んでもらっていたのか俺は、とあおいの認識に少々驚いて間が空いてしまった。
その瞬間あおいは上履きを片方脱いで仁絵に投げつけてきた。
避け損ねて肩に当たる。園児の力とはいえ思いっきり投げているから多少は痛い。
とにかくこれ以上暴れられてはかなわない。

仁絵が取り押さえようともう片方の上履きも脱ごうとしているあおいに駆け寄ろうとした時だった。

「あぁ、ちょうどいい。2人とも揃ってますね。」

「…げ。」

いつの間にか戻ってきた霧山が読み聞かせルームの出入口に立っていた。

「お話があるので一緒に来てください。」

「…分かった。」

 

その瞬間全てを悟った仁絵が、重い口を開いて返事をしたのとは裏腹に、あおいは仁絵に目もくれず駆け出した。

「…ぼく、お外に運動行ってくる!」

仁絵があおいに近づくのをやめた隙に、あおいは霧山の横をすり抜けて出て行こうとした。

しかし、そうは問屋が卸さない。

「私がお話ししたいのは『あおいくんと』仁絵くんですよ。」

霧山にあっさり捕まり、あおいは抱き上げられてしまった。

「さぁ、行きましょう。」

仁絵は重い足取りで2人の後を追いながら、

この期に及んでやだー、はなしてー、と暴れたい放題のあおいに、命知らずも大概にしろ…と、呆れるしかなかった。
 

 

 

 

 

(いや、なんでこんないかにもなところで…)

連れて来られたのは遊戯室の隣の室内遊具などが仕舞われている倉庫。
電気をつけても薄暗く、狭く、雰囲気だけで小さな子なら怖がりそうな部屋だ。
部屋に入った瞬間、あおいも少し表情がこわばったような気がした。

「さて、あおいくん。」

霧山はスポンジ製の低い子供用跳び箱に腰掛けると、あおいの片方の手を握って自分の前に立たせた。
仁絵は何も指示を受けなかったので、とりあえずドア付近に立って様子を見る。

「このご本に見覚えはありますか?」

そうして霧山が後ろ手で取りだしたのは、本当は今日読み聞かせするはずだった、霧山曰く「家に忘れてきた」はずの本。

「…せんせーお家に忘れてきたって言ってたじゃん。うそつき。」

あおいはぷいと横を向いて拗ねたように言い捨てる。
しかし、霧山は全く怯まずに続けた。

「えぇ、それについては先生が嘘つきですね。でも…」

霧山は握ったあおいの手を離すと、ページをめくって落書きされた例のページを見せつけた。

「これじゃあこのご本もう読めないでしょう?

なんでこのご本がこうなってしまったのか、あおいくん何か知っていますか?」

「…知らない。」

あおいはちらっとページを見ると、また目をそらす。
霧山は繰り返した。

「本当に、あおいくんは何も知りませんか?」

「っ…やっぱりっ…」

霧山の全てを知っているような口ぶりを感じ取ったのか、あおいは癇癪を起こしてしまった。

「やっぱりひとえにーちゃんが言いつけたんだろっ!!」

「だから俺は言ってねぇって…」

この雰囲気で自分に水を向けるのはやめてくれ…と、仁絵は眉をひそめて否定する。
すると、霧山が即座にその疑惑を否定してくれた。

「仁絵くんからは何も聞いてませんよ。」

「じゃあなんでぼくのせいなのっ せんせー見てなかったじゃんっ」

あおいがそれならと霧山に噛みつくと、霧山はさも当然という風にしれっとこんなことを言い出した。

「私は悪い子の心は何でもお見通しなんです。どれだけ悪い子だったか見えるんですよ。」

「そんなのうそだっ」

「嘘じゃありません。あおいくん、昨日と今日いっぱい悪い子だったでしょう。」

「そんなことないっ」

「そうですか? 私に叱られてふてくされて、ご本に落書きしたでしょう。しかもボールペンで。

ボールペンなんてあおいくん持ってないですよね。

使っていいお道具箱にも入ってない。どこから取ってきたんでしょうねぇ。」

「う…」

「それで、悪いことしたのを仁絵くんに見られて、黙ってて、なんて悪いお約束をしましたね。

そして仁絵くんは約束守ってくれたのにすぐに疑って、バカ、なんて汚い言葉を使って上履きを投げて。」

「な、なんでっ…」

(隠れて見てたな…)

落書きはどうしてバレたのか大体想像はつくが、数分前のそのやりとりを見てもいないのにこんな事細かに言い当てられるはずがない。
仁絵からすればのぞき見されていたのだと推測できるが、

あおいはそこまでの考えが及ばないのか全部知られてしまっているショックで固まってしまった。

「だって、だって…」

「それに悪いことしたって分かったときにすぐにごめんなさいも言えない。

困りましたねぇ、今のあおいくんはとっても悪い子で。
悪い子のままじゃあずーっとこのお部屋から出られませんよ?」

「いいもんっ ぼく反省室怖くないもんっ」

(あー、ここ元々そういう部屋なわけね。)

用具の出し入れなんて普段先生たちしかしないだろうから、もっぱらここは悪いことをした子が叱られる部屋なのだろう。
あおいの表情がこわばったのも納得がいく。

「でも私はあおいくんがこのお部屋からずーっと出られないと困ります。

お父さんやお母さんやお友達や先生とずーっと会えなくてあおいくんはいいんですか?」

「それは…やだ…」

 

霧山の言葉に、その状況を想像したのかあおいは分かりやすく意気消沈する。

その様子を見て霧山はすかさず畳み掛けた。

「それじゃあ良い子になりましょう。良い子になったら出られますよ。」

「…うー…わかったぁ…」

 

(おぉ…)

子どもというのは単純なものだ。霧山の誘導も巧みだが、こうもあっさり状況が変わったことに仁絵は感服した。

「何分お座りすればいいの…?」

あおいの問いに、罰は正座か何かか?と仁絵が暢気に構えていると、霧山が突然爆弾を落とした。

「いいえ、あおいくんは今日とっても悪い子でしたから、お座りしているだけでは良い子になれませんよ。」

「えっ…」
「おいおい、まさか…」

あおいの戸惑い様からするとこの部屋で罰と言えば良い子で座って反省する、ということなのだろう。

しかし、霧山が今日はそれではダメだと言っている。
嫌すぎる心当たりが1つ浮かんで、仁絵は外れてくれと念じたが、それはすぐに打ち砕かれた。

「あおいくんの今日のお仕置きはお尻ペンペン10回です。園長先生とお話して決めました。」

「おしりっ…!?」

あおいが元々大きな目をさらに見開いて硬直している。
外れて欲しかった心当たりが的中してしまって仁絵が2人から目を背けようとすると、

仁絵君、と霧山から厳しい声で呼ばれた。

「あおいくんが良い子になるのをちゃんと見なさい。」

「う…」

「返事は?」

 

圧がいつも以上にすごい。

しかもあおいの前で、自分がみっともなく駄々をこねるわけにもいかず、仁絵は項垂れて返事をした。

「はい…。」

「さて、あおいくん。お仕置きです。」

「やぁっ…」

霧山はあっさりあおいを膝の上に乗せると、履いていたズボンとパンツを下ろしてしまった。

「やー、怖いぃぃっ」

「っ…」

居たたまれない。しかし、見ていろと言われた手前目をそらすわけにもいかない。

あおいは初めてのお仕置きへの恐怖で、羞恥心はあまり感じていないようだが、自分があおいの立場になって考えてみればそれでも、だ。
自分が黙っていなければ違う結果になっていたのだろうかと思うと、それが仁絵にとっては辛くてたまらなかった。

パチィンッ パチィンッ

「!?!? やぁぁぁっ いたいぃぃぃぃっ」

始まった途端、火のついたようにあおいが泣き出した。
ほんのりピンクに色づいているから、手加減されているとはいえ初めてでこの年齢の子にしたら相当な痛みだろう。

「こんなに痛くて怖いお仕置きを受けなきゃ良い子になれないくらい今日のあおいくんは悪い子だったんですよ。
反省できますか?」

パチィンッ パチィンッ

「やぁぁぁんっ できるぅぅぅぅっ」

パチィンッ パチィンッ

「もうしないぃっ ごめんなさぁぁぃっ」

(すげ…)

あっさり自分から「ごめんなさい」。純真無垢な子どもの真っ直ぐさに、仁絵は感動すら覚えた。

そしてこんなに真っ直ぐな子だからこそ、あの時自分が違うアプローチをすれば、あおいを良い方向に導けたかもしれない、

それを試みるべきだったと後悔が募る。

「うん、良い子になってきましたね。あと少し。」

パチィンッ パチィンッ

「いたぃぃっ ごめんなさいぃぃっ」

パチィンッ

「ふぇぇぇぇんっ」

「最後です。」

パチィィンッ

「あぁぁぁぁぁんっ」

「はい、おしまいです。よく頑張りました。」

「ごめんなさい、せんせぇごめんなさぁっ…」

泣きじゃくりながら抱きつくあおいを、霧山がよしよし、とあやす。
なかなかお目にかかれない光景に、仁絵が固まっていると、
あおいが突然身をよじって霧山に抱かれたまま仁絵の方を向いた。

「ひとえにーちゃっ…ごめんねっ…ばかとかきらいとかっ…うそだからっ…」

「あおい…」

仁絵が歩いて近づくと、あおいが手を伸ばしてきた。霧山があおいを離すと、

あおいはお尻を出したままなりふり構わず仁絵に抱きつく。

「ごめんなさっ…ごめんなさいぃ…」

「分かってるよ、大丈夫だから。イライラして言っただけだってことくらい分かってる。」

「でもひとえにーちゃ、ちょっと怒ったぁ…」

 

あおいに痛い所を突かれ、仁絵は気まずく目線が泳ぐ。

あの時は感情をむき出しにするあおいに引っ張られてしまって、今思えば一瞬とはいえ恥ずかしい。

「あー、あれは…俺もあおいと一緒。つい、な。もう怒ってねぇから。んなに泣くなよ。」

 

仁絵があおいの頭を撫でると、あおいは涙でいつも以上にキラキラ光る目を仁絵に向ける。

「ほんとにっ…ほんとに僕のこと怒ってない?」

「もう良い子になったんだろ? ならいいだろ。」

「…うんっ」

ようやく泣き止んで赤い目のままながら笑顔を見せたあおい。
そんなあおいを見て、仁絵は意を決して口を開いた。

「あー、あとあおい。俺も…ごめん。」

仁絵の突然の謝罪に、あおいは目を見開いてきょとんとしている。

「なんでひとえにーちゃんがごめんするの…?」

「あおいと悪い約束しただろ。悪い約束だって俺も分かってたから、そんな約束はダメだって断って、
落書きしたこと霧山…先生に一緒に謝りに行けばよかった。
そうしたら、あおいもこんなに…10回も叩かれなくても済んだと思う。」

「んー…」

何となくは言われてることが分かるのか、あおいは口を結んで聞いている。

「俺のが兄ちゃんなんだから、ちゃんとあおいにどうしたらいいか教えなきゃいけなかった。ごめん。」

 

仁絵の謝罪に、あおいはんー、と考え込んでこう結論づけた。

「…ひとえにーちゃんもちょっぴり悪い子だったってこと?」

「あー、まぁ…そう…かな。」

なんかそういう言い方されると恥ずかしい…と、仁絵が赤面しつつ否定できずにいると、あおいが純粋さでとどめを刺してきた。

「『ごめん』じゃなくて、『ごめんなさい』って言うと良い子になれるって先生が言ってたよー」

「う…」

だからあおいは自分からあんなに素直に言ったのか。良い子になりたい一心で。すばらしい教育の賜だ。

あおいからしたら最高のアドバイスをしてあげているのだろう。こうなってしまったら仁絵ももう後には引けない。

「あおい…あー…うー…」

「ひとえにーちゃん?」

 

よっぽど難しい顔をしているのだろう。あおいが心配そうに顔を覗き込んできて余計言いづらい。

もう、腹を括るしかない。

「ごめん…なさい。」

「フフッ」

その瞬間、耐えられなかったのか霧山が小さく吹き出した。
こんな時に笑うな、と仁絵が言外に睨めば、霧山は失礼、と手を上げて応える。
あおいといえば、これでひとえにーちゃんも良い子だねっと上機嫌だ。
そんなあおいに、霧山は落書きしてしまった本を手渡した。

「あおいくん。それじゃあ、最後にこのご本を園長先生に渡してごめんなさいしてきましょうか。
これは保育園のご本で、園長先生が買ってくれたものですから。」

「うん…園長先生も怒ってる…?」

不安げなあおいの頭を撫でて、霧山は優しく諭した。

「ちゃんとごめんなさいして、良い子になったあおいくんを見せれば大丈夫ですよ。
さぁ、行ってらっしゃい。」

「…うんっ 行ってきますっ」

あおいは決意を込めた目をして、絵本を抱いて倉庫を出て行った。
 

 

 

 

 

「…さて。」

「はぁ…」

あおいが出て行って、残された仁絵。
霧山が口を開き、切り出される内容が何となく分かる仁絵はため息をついた。

「もう良い子になれたようですから、ケジメだけつけましょう。あおいくんと同じ、
『10回』か『全部下ろして膝の上』か、どちらが良いですか?」

「10回。」

 

即答した仁絵に霧山がわざとらしく顔をしかめる。

「可愛げありませんねぇ。何で10回かも言ってないのに。」

「その体勢なら何でだって10発のがいいわ…」

「フフッ、まぁいいでしょう。私の言いたかったことも全部自分で分かっていましたし、
ごめんなさいも言えましたし。手早く終わらせましょうか。
はい、服はそのままでいいですから、ここに手をついて。」

先ほどの絵本同様どこからともなく取り出した1m物差しでさっきまで霧山が座っていた跳び箱を指し示された。

物差しなんてこの倉庫にある意味が分からないし、あおいに使うはずもないから

最初からこれは自分に使うつもりで用意していたのだろう。
 

服もそのままでいいと言ってくれているし、こうなったら早く終わりたい。
仁絵は素直に跳び箱に手をついた。そして物差しがピタピタと当てられる。
しかしその当てられた場所に、嫌な汗が流れた。その時。

ピシィンッピシィンッピシィンッピシィンッピシィンッ
ピシィンッピシィンッピシィンッピシィンッピシィンッ

「~~~~~~っっっっあ゛ぁっ」

「はい、おしまいです。」

「こんのっ…鬼畜っ…」

「おや、そんなこと言う悪い子はもう10回ですか?」

「あー、もうごめんなさいごめんなさい、もういいだろっ」

 

霧山の不穏な言葉に仁絵はやけになってあおい曰く「良い子になれる」言葉を叫んだ。

10回全てお尻の下、足の付け根。しかも右左交互ではなく5回ずつ連続。
容赦ない痛みに泣きはしなかったものの視界が揺れたのはもう不可抗力だ。
跳び箱に突っ伏して痛みが治まるのを待っていると、あぁ、そうだ、と霧山がふと思い出したように言ってきた。

「考査の結果、満点で出しておきましたから。

私は嘘つきになりたくないので、ちゃんと最後の読み聞かせ完璧にこなしてくださいね。」

「はぁっ!?!?」

 

まだ考査は終わってない。最後の読み聞かせはこれからだ。今日のレポートだって書いていない。

意味が分からず仁絵が霧山を見上げると、当の本人はしれっとしている。

「いやー、学校側から最終結果は明日までにって言われてたんですけどね。
園側と調整が済んで、貴方に日程渡してからそれを言われたものですから。

学校側に出してある日程では昨日で終わってることになってます。
実際に縮めてあげようかとも思いましたけど、

思ったより貴方子どもと相性良いですし、楽しそうだったのでまぁいいかと思いまして。
まぁ…まさか最後にこんな一悶着あるのは予想外でしたが、
最終的にはこのおかげで良い経験を積んでくれましたし結果オーライでしたね。」

「なんだよそれ…」

 

よかったよかった、と微笑みながら霧山が未だ跳び箱に突っ伏したままの仁絵の横に座り込む。

「どうでしたか、読み聞かせボランティア。」

 

「まぁ…悪くなかったよ。」
 

霧山の問いに、仁絵は穏やかに答えた。

それを聞いて、霧山は嬉しそうに目を細め頷くと、さて、と立ち上がった。

「ではご飯を食べて、最後の大仕事頑張ってきてください。」

「大仕事…? あぁ…だったらこんな意地悪い叩き方しなきゃ…」

 

仁絵が叩かれたところに手をやると、霧山は一瞬目を丸くして、それから仁絵の言いたいことを理解したのか吹き出した。

「え? あぁ、フフッ、まぁそれもそうでしょうけど…」

「…? なんだよ…?」

「フフ、まぁまぁ、始まれば分かりますよ。」

「…気持ち悪ぃな。」

 

汲み取れない仁絵が首をかしげるが、霧山はそれ以上説明してはくれなかった。

「仁絵君。」

「卒業決定おめでとうございます。」

「…どーも。」
 

サラリと贈られた祝福の言葉に、それは今言うことじゃねーだろと仁絵は照れ隠しで心の中で突っ込むのだった。





霧山が「大仕事」と言ったのは、痛むお尻(というか付け根)を庇いながら読み聞かせをすることではなく、
今日が最後と挨拶した後、全く離してくれない子どもたちを宥め賺すことだったと仁絵が気付くのは、数時間後のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、追加考査の4人も含め、風丘担任の3年D組は希望者全員揃って晴れて高校進学を決める。

ほとんど顔ぶれは変わらないとはいえ、1つの節目を迎え、また新たな生活が幕開けるのだった。

 

《第一部 おわり》