あの後、仁絵と夜須斗は寄るところがあるから、と途中で惣一たちと別れた。
惣一とつばめは不満そうだったが、
仁絵の雰囲気から何かを察した洲矢がどうにか宥め賺してくれたおかげで何とかなった。

二人で連れ立って歩きながら、仁絵が惣一たちに「明日する」と言った一連の説明を聞いて、夜須斗は眉間に皺を寄せた。

「…確かに筋は通ってるし、いかにもありそうなことだけどさ。
ほんとだとしたらめちゃくちゃ気分悪いんだけど。」

「多少物証は出てきたけど、誰がやったって証明する証拠はねぇし、ほとんど俺の想像だ。
けど、マジだとしたら一刻も早くあいつに話聞くべきだな。
何でだか知らねぇけど、あの様子じゃ隠そうとしてるしよ。」

「そこ疑問なんだけど、何で話さないわけ? フツーに被害者じゃん。」

「さぁな。だからそれを含めて・・・あれ、まだ帰ってねーじゃん。」

議論しながら歩いていた二人は、目的の人物の姿を捉えた。
それは、帰路に着く途中の歩夢である。
歩夢と話をしたい、という仁絵に、夜須斗が歩夢の自宅まで案内していたのだ。
しかし、何故か学校を先に出た歩夢が家に着く前に追いついた。

「どっか寄り道したのかな。俺たちよりだいぶ先に学校出てたのに・・・って、あれ? 
そっち家じゃないけど・・・」

前を行く歩夢が、歩夢の家のあるはずの方向と別の道を曲がっていった。

「そっちは細い路地しか・・・」

夜須斗が不思議そうにそう呟いたのを聞いて、仁絵が「まさか・・・っ」と息をのんだ。

「ちょ、ちょっと仁絵!?」

そして歩夢が進んだであろう道を突然走り出した。それを見て驚いた様子で夜須斗もその後を追う。

そして、突き当たりの角を曲がった先で、二人が目にした光景は・・・

「ケホッコホッ」

「ヘヘッ・・・逃げねぇで毎回ちゃんと殴られに来るあたり根性ある奴だとは思うけど、
所詮優等生のお坊ちゃんだなー」

ドゴッ

「うっ・・・」

「ケケッ おい、顔は殴んなよー? 
体操服着て隠れねぇところはすんなって言われてんだからよぉ」

「わーってるよ、次は背中いくぜぇ!」

「ひゃー、鬼畜だねぇ、背中ってつい先週痛めつけたばっかりだろぉ?」

歩夢が、見ず知らずの不良二人に殴られ、蹴られているところだった。
それを認識した瞬間、仁絵が駆け出す。

「てめぇら何してるっ・・・!」

「あぁ?・・・・・うぁぁっ」

ダンッ

「お、おい! やめろぉぉ!!」

不良たちが意識を向けるよりも早く、
仁絵は歩夢の背中を蹴りつけようとしていた方の不良に飛びかかって歩夢から引き離し、
腕を背中側にねじり上げてそのまま馬乗りになった。

「えっ・・・なっ・・・! 待って仁えっ・・・「黙って。」

「っ・・・」

仁絵に気づいた歩夢が声を上げるも、仁絵の後から追ってきた夜須斗に制止される。

「っ・・・てぇぇっ 離せぇっ どけぇっ」

「お、お前っ・・・女王っ・・・」

「ク・・・女王っ!?」

痛みと屈辱に暴れる不良をよそに、仁絵の正体に気づいたもう一人が怯えて後ずさる。
そしてその不良の言葉を聞いて、押さえつけられている不良も途端に青ざめる。

そんな二人を見て、仁絵は低い声で言った。

「安心しろよ。別に俺がてめーらボコすつもりはねーから。
俺の聞きたいことにてめーらがちゃんと答えればな。」

「ってててっ な、なんだよぉっ・・・」

「ボコすつもりはない」なんて言いながら、腕をねじり上げる力は徐々に増していっていて、痛みに不良は悲鳴を上げる。
が、仁絵は全く気にもせず続けた。

「てめーらがさっきまで一丁前に偉そうにボコしてた奴・・・
普通に考えててめーらみてぇな奴らと接点があるような奴じゃねぇ。
カツアゲに狙うカモでも、ケンカ吹っ掛けるタマでもねーだろ?」

そして仁絵は一気に殺気を強めて尋ねた。

「どーしてあいつをヤッてた。理由を答えろ。」

仁絵の発する痛いほどの殺気に、
拘束されている不良は愚か、されていない不良もその場にへたり込み、二人して「ヒッ」と声にならない悲鳴をあげた。
しかし、仁絵の問いには答えなかった。

「と、特に理由はねーよっ 気分だ、気分!」

不良がそう答えた次の瞬間

バキッ

「ぎゃぁぁぁぁぁっ」

鈍い音が響いた。
仁絵が不良のねじり上げていた方の肩の関節を外したのである。

「言ったろ? 『ちゃんと答えればボコさねぇ』ってよぉ。
・・・次、『ちゃんと』答えろよ? したらはめ直してやる。
けど今から3カウント以内に答えなかったら・・・今度はこの腕折るからな。」

「ひっ・・・」

「仁絵、待って・・・っ「委員長は今は黙ってる。」

「夜須斗っ・・・」

仁絵のやり方に歩夢が物申そうとするが、夜須斗に遮られてしまった。

「3・・・2・・・」

仁絵のカウントの声と共に、仁絵が不良の腕を握る力を更に徐々に強めていく。
そして不良はいよいよ耐えられない恐怖を感じたか、

「1・・・」

「金!! 金渡されて頼まれたからぁぁぁ!!」

そう絶叫した。

「!!!」

「へぇ? 誰にだよ。」

不良の絶叫を聞いて、仁絵はニヤリと笑うと、少し腕を拘束する力を弱めて続けて聞く。

「し、知らねぇ、名前は知らねぇっ・・・ただ金をっ・・・そいつの写真と通学路と金渡されてっ・・・
学校がある平日、毎日通学路のどこかであいつをボコせって依頼されたんだよっ」

「っ・・・」
「うわ、何それサイアク・・・」

聞いていた夜須斗があからさまに顔をしかめ、歩夢はうつむく。

「へぇ・・・で、そいつの特徴は?」

「め、メガネ掛けてて黒髪でっ・・・偉そうなそいつ自身もお坊ちゃん風でっ・・・」

「他に言われたことは?」

「っ・・・金はずむから、た、頼まれたことは言うなって、
あと、パッと見ボコしたこと分かんねーように服で隠れるとこなら何したっていいって」

バキッ

「ひぃぃぃぃぃっ」

不良のその言葉を聞いて、仁絵は外した関節をはめ直して不良の上から退いた。

「・・・夜須斗、ちゃんと録ったな?」

仁絵が夜須斗にそう尋ねると、夜須斗はニヤッと笑って携帯をかざした。

「あぁ、バッチリ。」

携帯画面には、録音機能が動いている表示が映っている。

「あぁ、それと・・・」

夜須斗は、解放されたが痛みに悶絶して動けずにいる不良の元に歩み寄り、
録音機能を動かしたまま携帯を操作し、一枚の画像を不良に見せた。

「さっきあんたが言ってた特徴当てはまる奴で心当たりのあるのが一人いるんだよね。
それってこいつ?・・・うちの学校の1組の学級委員長なんだけど。」

「!」
「・・・」

その言葉を夜須斗が放った瞬間、あからさまに歩夢の肩がビクッと跳ねた。
そして、画像を見せられた不良も秒速で頷く。

「あぁ! こいつっ、こいつだ!!」

「ふーん、そっか。ありがと。」

夜須斗はその答えを聞くと、携帯を操作して録音を終了した。
そして、もう完全に戦意を喪失している不良二人に仁絵がとどめの一言。

「で。俺らこいつともうちょっと話したいから・・・てめーらとっとと視界から消えろ。
次こいつに手ぇ出したら、マジで病院送りにするから。」

「し、しねぇよ!」
「もう関わらねぇからっ」

その物騒な一言と相反する、美しすぎて凄惨とも言える仁絵の笑みを目にした二人は、そう叫んで逃げるように路地を出て行った。
二人がその場を離れたのを確認すると、仁絵は「さて、と」と、俯いている歩夢に目を向ける。

「・・・いつからだよ。」

「・・・お願い、さっきの録音、出さないで・・・出来れば消してほしい。」

「それは出来ないに決まってるでしょ。数少ない証拠が消える。」

「っ・・・どうして証拠が必要なの?」

「あぁ? 証拠がねーとあの1組の委員長告発できねぇだろ?」

「・・・」

歩夢はしばし黙り込んだ後、静かに言った。

「・・・ごめん、告発は、しないで欲しいんだ。黙ってて欲しい。特に・・・風丘先生には言わないで。」

「「はぁ?」」

「何言ってんの。さっきの仁絵の質問・・・『いつから』って答えてないけど、どうせ新入生歓迎会終わったくらいからでしょ。
もう1週間以上経ってる。
そこからほぼ毎日殴られて、こんな紙入れられるような精神的嫌がらせされて、『告発しないで』ってどういう神経?」

夜須斗は、仁絵が拾った罵詈雑言の書かれた紙切れをかざして歩夢に詰め寄る。
歩夢は、「あっ・・・」と、しまった、と言うように顔をしかめた。

「・・・今日の体育館シューズの忘れ物だって、そうだろ? ・・・これ、ゴミ箱にあった。自然にこうはならねぇだろ。」

「う・・・」

仁絵がポケットから出して歩夢に見せたのは、不自然な切られ方をした体育館シューズの靴紐だった。
それを見せられた歩夢は一瞬言葉に詰まる。

「・・・わざわざゴミ箱漁ったの?」

「・・・教室で、委員長がゴミ箱の前に立ってたのが気になったんだよ。それでなくても最近委員長の様子変だと思ってたしな。
で、この靴紐見つけて、下駄箱でこの紙切れ見た時、まさかと思った。
話聞こうと思って委員長の家夜須斗に案内してもらってたら、路地に入ってく委員長を見た・・・ってのがここまでの流れ。」

仁絵の説明に、歩夢がふぅっと息を吐いて薄く笑う。

「普段から感じてたけど・・・仁絵、本当に人をよく見てるよね。それに・・・意外と世話焼き。」

「・・・お節介って言やーいいだろ。俺だって自覚してる。けど、これは明らかに一人で黙ってるレベル超えてんだろ。
明らかに『いじめ』だぜ? これ。」

「・・・」

再び黙り込んでしまう歩夢に、夜須斗がため息混じりに言う。

「・・・言うのは癪だけど、こういうの、少なくとも他の教師たちよりは風丘は相談しやすいでしょ。
うまく立ち回ってくれるだろうし。
証拠もいくつかあるし、それと当人の証言を合わせれば・・・」

しかし夜須斗の言葉は、途中で歩夢に「ダメだよ」と遮られた。

「・・・言いたくない・・・言えないよ。
言えば、風丘先生に迷惑が掛かる。それに、村山先生にも。」

村山とは、1組の担任の女教師の名前だった。年齢的にも中堅どころで、地味目のおとなしい教員だ。
風丘や仁科や水池(←実はドジっ子で有名、学年最年少)といった個性の強い教師に隠れてあまり目立たない。

「「はぁ?」」

「大丈夫。俺が特にリアクションしなければ、いつか飽きられると思うし。
今のところ、そんなにひどいことされてないし。」

「さっきの見たのと、仁絵の話聞いたのだけでも『そんなひどいことされてない』なんてとても思えないんだけど?」

夜須斗の言葉を、歩夢は目を閉じて聞いていたが、やがてゆっくり目を開けると、静かに言った。

「…ごめんね、でも、いいんだよ。だから…お願いね。」

言いながら歩夢は路地を出る方向へ歩き出す。そして、二人に向けて穏やかに言った。

「ありがとう。」

歩夢の立ち去る姿を見つめながら、夜須斗は仁絵に尋ねた。

「…どーすんの。」

「…とりあえず風丘には言わないでおくか。」

「には?」

「約束したろ? それより…その後のこと考えるぞ。」

「…あぁ、そういうこと。」

夜須斗が納得したように頷き、二人も路地を後にしたのだった。





翌日。昼休みの放課後、屋上では…

「「はぁぁぁぁぁっ!?」」
「ひどい…」

昨日の夜須斗が仁絵から聞かされた内容の顛末と、昨日の一部始終を聞かされた惣一・つばめ・洲矢の三人は一斉に声を上げた。
惣一・つばめは一瞬にしてキレて、洲矢は自分の理解の追いつかない仕打ちに泣きそうな顔をしている。

「マジでふざけんな、あのヤロー…」

「ほんっっとサイテー、ねぇ、今からでもここに引きずり出して…」

「ちょっと待て。」

怒りにまかせてヒートアップする二人に、仁絵が声を掛ける。
止めるのかと思いきや、次に夜須斗が発した言葉は違った。

「やるなら、今日の放課後にしよう。今日なら…」





「…何か用か?」

「ちょっと、屋上まで付き合ってくんない?
心当たりあるでしょ? 1組いいんちょーさん?」

放課後。
下校しようとする高藤の前に、帰りの会終わりから速攻で下駄箱に向かって待ち伏せていた夜須斗が立ち塞がった。
夜須斗に腕を捕まれた高藤は、ため息をつきながら、屋上の方へ歩き出した。



「…何の用だ。」

屋上について、開口一番高藤が発したのは先ほどと同じ台詞。
その視線の先には、今度は仁絵と惣一がいた。

「まぁ、ゆっくり話そうぜ。今日は職員会議だしな。」

夜須斗が今日の放課後決行を勧めたのは、今日の放課後職員会議が予定されていて、すぐに介入される可能性が低いからだった。
いずれ教師陣に知れ渡るべきことだが、こちらだって言ってやりたいことやってやりたいことはある、と。

「…僕にはお前たちとゆっくり話すことなんてないが?」

「っ!」

ダンッ

「ぐっ…」

冷たく言い放たれた高藤の言葉に、
すぐに昼休みの怒りが復活した惣一が、高藤の襟首を掴んで引き倒すと、そのまま高藤の体に馬乗りになった。

「ざっけんなよてめぇマジで…委員長虐めやがって…」

「宮倉を僕が? 何のことだ、言いがかりも甚だしいな。」

「しらばっくれんな! 学校かんけーねー不良金で雇って委員長殴らせたり、
ひでぇこと書いたメモ下駄箱に入れたり!」

「フン…何一つ知らないな。」

「てめっ…」

「それより早く退け。これは明らかに暴力行為だぞ。」

「てめぇぇっ…!」

高藤の言葉に、ついに惣一が拳を振り上げたが、その腕は高藤に振り下ろされることはなかった。
いつの間にか近づいていた仁絵が、惣一の腕を掴んだのだ。

「…顔は殴んな。」

「仁絵っ…こいつっ…」

不満そうな惣一の視線を受けて、仁絵は惣一の腕を引っ張り惣一を高藤の上から退かすと、ニヤリと笑って言った。

「あぁ、顔は、な。」

グッ

「うっ…何の真似だっ…。」

そして立ち上がりかけていた高藤の横にしゃがむと、片膝を高藤の腹に押しつけ圧迫した。
苦しさと痛みに顔をしかめる高藤に、仁絵は言い放った。

「何だよ、てめー言っただろ? 
俺の得意技は暴力だって。お言葉通りその特技を披露してるだけだけど?」

「っ…ふざけるなっ…!」

「それに…『服で隠れるとこなら何したっていい』んだろ?」

「!!」

仁絵はそう言ったかと思うと、膝で押さえているすぐ横の脇腹に軽く一度拳を当てると、思い切り振り上げた。
高藤が仁絵の言葉に目を見開いて、焦りの色が分かりやすく出たが今更身動きはとれない。
拳が勢いよく振り下ろされようとする。が、しかし…

「何やってるの!!!」

それも、間一髪、のタイミングで飛び込んできた人物の声によって阻止された。

「委員長! 何してんだよ! 何で邪魔してっ…」

惣一が声を上げると、歩夢はそれ以上の声で言い返した。

「惣一たちこそ何してるの! 
高藤君と夜須斗が歩いてるの見たって聞いたから来てみれば、
三階の階段で突然つばめが出てきて変なこと言って引き留めてくるし、こんな寄って集ってっ…」

「やっぱきつかったか…」
「ごめん、夜須斗…」

歩夢が万が一屋上に来そうになった時の足止め役として近くにつばめを配置していたのだが、
さすがに無理だったようだった。
そして歩夢の言葉を聞いて、惣一も黙っていられない。

「はぁっ!? この人間以下の最低ヤローが委員長虐めてたんだろっ 
何でんなかばうようなこと言うんだよ!!」

惣一の言葉に、歩夢はハァッとため息をついて言った。

「夜須斗や仁絵から言われたんだね。…違うよ、俺は高藤君に虐められてなんかない。」

歩夢がこの言葉を発した瞬間、人知れず高藤がニヤリと笑った。

「委員長!」

「だからっ…」

歩夢がツカツカと高藤の腹に膝を押さえつけている仁絵に歩み寄り、腕を掴む。
そんな歩夢に対して、高藤が言った。

「だからこれは…新堂たちの俺に対する集団暴力行為の現場、ということになるな? 宮倉。」

「!!!」
「なぁっ!?」
「はぁっ!?」
「チッ…」
「てめぇ…」

高藤の言葉に、歩夢が目を見開き、惣一とつばめはあからさまに声を上げ、
夜須斗は舌打ちをし、仁絵は高藤を今にも殺しそうな目で睨んだ。
が、高藤は全く怯まずむしろ薄い笑みをたたえて歩夢を見る。

「分かってるな? 宮倉。
5組委員長として、5組の奴が起こした問題を報告する義務がお前にはあるだろう。」

「俺…は…」

「ちゃんと報告しろ。新堂以下4名が僕に対して集団で暴力を与えた、と。
風丘だけでなく…生徒指導担当の、地田や金橋にもだ。」

「っ…」

「なんでそんなっ…」

何も言えなくなる歩夢の代わりに、つばめが声を上げる。だがそれは無視され、
辛そうに目を伏せ、でも何も言わない歩夢に、高藤は追い打ちをかけるように続けた。

「報告、だ。いいな?」

「なんでっ…」

歩夢の態度に、惣一が納得いかない、とまた叫んだ。

「何でこんな奴の言いなりになんだよっ!! 委員長こいつから虐められてっ…」

「だからっ…俺は虐められてなんかっ…」

再びのこの問答を聞いた仁絵が、低い声で呟いた。

「…いい加減にしろよ…!!」

「うわっ…ちょっと仁絵!」

仁絵は高藤の上から退いたと思うと、自分の腕を掴んでいた歩夢の胸倉を掴み返し、引きずっていった。

ガシャンッ

「うぅっ」

そして、歩夢の体をフェンスに押しつける。
フェンスが背中に触れ、歩夢が痛みに呻くが、仁絵は構わずに、
歩夢がボタンを留めずに着ている学ランの、下に着ているYシャツの合わせに手を掛ける。
そして次の瞬間…

ブチブチブチブチッ

「「「「「!!!!」」」」」」

勢い任せにYシャツのボタンを引きちぎった。

「ちょっと何してっ…」

あまりのことに一瞬呆気にとられた歩夢が慌てて前を閉めようとするが、遅かった。

「…この痣なんだよ。」

「これはっ…」

露わになった歩夢の上半身には、腹や肋骨の辺り等何カ所も青痣が出来ていた。
口ごもる歩夢に仁絵がたたみかける。

「殴られたんだろ。あのヤローに金で買われた差し金に!
お前はあいつに虐められて…」

「違う!!!」

仁絵の言葉を遮った歩夢の声は、一際強く、拒絶の色を濃くしていた。

「委員長!」

「もう何度もうるさいよ! 言ったよね、俺はっ…」

拳をぎゅっと握り、歩夢は悲痛な程に強く訴えるように言った。

「俺は虐められてなんかっ…」



「…これはどういう騒ぎかな?」

歩夢の言葉を奪ったのは、
今このタイミングで現れることは誰も望んでいなかったであろうが、だが確かに救世主となる人物だった。

 

下校のため、風丘に挨拶をして教室を出た歩夢は、下駄箱にいた。

部活終了時刻・最終下校間際の中途半端なこの時間は、
部活動場所に生徒はいてもそれ以外の場所に人気は少なく、
下駄箱もひっそりとしている。

そこで、歩夢はフゥと一つ息をつくと、自分の下駄箱を開けた。
すると・・・

バサッ

「っ・・・はぁ・・・またか・・・」

開けた瞬間、大量のメモサイズの紙が歩夢に向かって雪崩落ちてきた。
それを見て歩夢はため息をつき、落ちた内の一枚を拾い上げる。
その紙には赤いマジックで大きく「死ね」の文字。
もう一枚拾い上げると、今度は「消えろ」とやはり大きな赤い文字。
歩夢の下駄箱の中を埋め尽くしていた紙には、
一枚一枚、このような罵詈雑言の数々が殴り書きされていた。

「全く・・・困ったねぇ」


歩夢はため息をつきつつ、その場にしゃがみ込むと、下に散らばった紙を全て集めてサブバッグに突っ込み、

次に下駄箱の中に残った紙を掴んでそれもサブバッグに入れた。
そして最後に自分の靴を出し、その中にも突っ込まれている紙を抜き出して、靴を履いてようやく帰路に着くのだった。



歩夢が最近、自分の部活がない日にも遅くまで残っているのは、この嫌がらせのためだった。

皆と同じ時間に下校すれば、
下校のため外履きに履き替える他の生徒の目の前で、この嫌がらせの紙をぶちまけることになる。
それを避けるためだった。

「毎日毎日よく続くねぇ・・・」

帰宅後、自分の部屋で椅子に座って再び紙をしげしげと眺めながら、歩夢の口から自然とそんな言葉が漏れた。

初めてこの紙が入れられたのは、新入生歓迎会の終わった日の放課後だった。
その日は歩夢は学級委員として後片付けのため期せずして遅くまで残ったため、
紙の雪崩はたまたま誰にも見られずに済んだ。
その次の週の月曜日、警戒した歩夢が今度は意図的に朝早く学校に行き、夕方遅くまで残ったところ、
朝は何事もなかったが放課後は再び紙が雪崩落ちてきた。
以来毎日放課後、この紙が入れられているのである。



・・・だがしかし、こんなものはほんの序の口に過ぎなかった。

歩夢は新入生歓迎会以来、様々な嫌がらせを受けていたのである。



新入生歓迎会が終わって最初のクラス委員会議。

各委員長はその日までに、新入生歓迎会の準備から本番に至るまでの各クラスの過程と反省をレポートにまとめ、
引き継ぎ資料として提出することになっていた。

「それでは、各クラスの反省を、レポートを元に発表していこうと思います。
では、まず…」

今週の司会の佐橋が進行しようとするところで、歩夢が手を挙げた。

「あー…ごめん、皆。俺、今日レポート忘れちゃって。」

申し訳なさそうに眉を八の字にして言う歩夢に、木坂が目を丸くする。

「えっ!? めっずらしいな、歩夢が忘れ物するなんて。」

「うん・・・家の机の上に置いてきちゃって…」

そんな歩夢に、刺々しい言葉を向けたのは、いつぞやと同じく高藤だった。

「今日のクラス委員会議の議事は新入生歓迎会のみだ。
その反省レポートを忘れるなど・・・何しに来たんだ。」

「ちょっと、何もそこまで言わなくてもさー」

高藤の冷たい睨みと物言いに、原田が口を尖らせる。
歩夢はごめんね・・・と更にしゅんとして言う。

「とりあえず、反省は口頭で言って、
レポートは明日自分で皆に手渡しして、1部はファイリングしておくから・・・」

「分かりました。それなら、そうしてください。高藤君も、それでいいでしょう?」

「・・・フン」

佐橋に宥められて高藤が引き下がり、ようやくクラス委員会議が開始されたのだった。



クラス委員会議が終わり、歩夢は木坂と原田と一緒に下駄箱に向かって歩いていた。

あたりはだいぶ暗くなってきている。

「今日のこと、あんまり落ち込むなよー、誰だって忘れ物くらいあるって!」

まだどことなく元気なさげな歩夢の肩をポンッと叩いて、木坂が励ましの言葉をかける。
原田も、そうそう、と同調する。

「気にしない気にしない!」

そう言って、バシバシと歩夢の背中を叩く。

「いたぁっ」

「あっ・・・ごめんごめんっ」

予想外に歩夢が痛がったので、原田が慌てて歩夢の背中をさする。

「あ、ごめん、反射的に・・・フフッ 木坂も原田もありがとう。」

慌てる原田の様子を見て、歩夢がようやく少し笑顔を見せると、木坂と原田の表情も緩んだ。

「どーいたしまして(笑) ってか歩夢。マジで気にすんなよー、高藤のことも含めてさ。」

「・・・え?」

木坂の言葉を歩夢が聞き返すと、原田が「え?、じゃないよっ」と頬をふくらませて言う。

「他人の俺らが気づくんだから宮倉だってとっくに思ってるでしょ。
最近のあいつ何なの、感じ悪すぎ! 
前から宮倉にあたり強いなって思ってたけど、特に最近異常だよ。
今日だって大したことないのにあんなに突っかかるし、
歓迎会の前々日の準備の時なんて、俺だったらあの場でぶち切れてるよ。」

「確かに・・・あの時は特にひどかったな。歩夢や5組に対しての物言い・・・」

原田の意見に、木坂も同調する。原田は、なおも続ける。

「宮倉が優しいから調子乗ってんでしょ。
当人の宮倉から言いづらいんだったら、俺らから先生に言ってやろうかな・・・」

「は、原田! 俺は大丈夫だよ。」

原田の言葉に、歩夢が食い気味に答える。

「え?」

「そんな、確かに高藤君は俺にちょっと厳しいけど、いつものことだし。
俺は気にしてないよ。」

「え? でも・・・」

「だーいーじょーうーぶ。」

ねっ?と笑顔でそう言われ、原田も不満が残るながら頷くしかなかった。

「え、う・・・うん・・・」

そんな会話をしている内に下駄箱に到着する。
木坂と原田が自分のクラスの靴箱に向かおうとする中、歩夢はあ、と声を上げた。

「ごめん、ちょっと教室に取りに戻るのがあるんだ。
遅くなっちゃうし、二人は先に帰ってて。」

「え? 教室すぐそこだろ。物取るくらいなら、待ってるから一緒に・・・」

「ううん、大丈夫。今日はありがとう。じゃあ、また明日ね!」

木坂にそう言われるも、歩夢は断って二人に手を振ると、教室の方へ駆けていった。



「・・・」


それから15分ほどして、もう間もなく最終下校という時刻。
歩夢は下駄箱に戻っていた。その表情はやはり硬く。
微かに震えている手で下駄箱を開ける。すると・・・

バサッ

「っ・・・!!」

今日も変わらず雪崩落ちてくる嫌がらせの紙。違うのは・・・

「(・・・ヤバ。これは結構くる・・・かも。)」

いつもの罵詈雑言が書かれた千切られたような紙の裏を見ると、見覚えのあるタイトルの一部が読める。
それは、歩夢が「家の机の上に置いてきた」、『新入生歓迎会について』のレポートのタイトルの一部だった。



そんなことがあって数日。

歩夢の身にまた事件が起きた。

「(あれ・・・全く・・・次から次へとよくもまぁ・・・)」

昼休みも終わりに差し掛かった頃。
5組は昼休み明けの5時間目が体育館での体育で、
皆着替え終えて更衣室から体育館に移動を始めようとしていた。

「どーした? 委員長ー」

歩夢の困った様子が見えたのか、着替え終えた惣一が歩夢に話しかける。

「あ、うん、ちょっと忘れ物しちゃって。地田先生に言わなくちゃ・・・」

惣一に聞かれて歩夢がそう答えると、つばめが大げさに反応して言う。

「忘れ物!? や、やばいよ委員長があの竹刀の餌食に!!」

「え・・・あ」

つばめに体を揺さぶられ、困ったように笑った歩夢の視界に、件の人物が映った。

「お前は私を何だと思ってる!」

「ぎゃぁぁぁっ 出たぁぁぁぁっ」

不意に声がした方を見れば、更衣室の入り口にいつの間にやら地田が立っていた。
つばめがお化けを見たかのように飛び退いて、歩夢の後ろに隠れる。

「ってか、ここ男子更衣室なんだけど・・・」

つばめの反応に苦笑いしつつ、夜須斗がボソッと文句を言う。

「私は別に関係ないだろう。
もうすぐ5分前だから残ってる奴は早く移動しろと言いに来ただけだ。遅刻の罰周したくないならな。」

『罰周』というのは、外体育なら運動場、中体育なら体育館を走らされるもので、
地田の体育授業に関する罰で竹刀以上に頻繁に登場する罰だ。

「・・・で、宮倉。何を忘れた。」

地田に目を向けられて、歩夢が口を開く。

「あ・・・体育館シューズを。持って帰っていたのを忘れていて。すみません・・・
今日だけ、部活動で使っているダンスシューズを使わせていただけないでしょうか。」

歩夢は、中等部高等部合同のダンス部に所属している。

「ふむ・・・」

地田の前でも怯えずしっかりした態度でいる歩夢はさすが委員長といったところであるが、
やはり少なからず怖さはあるのか地田の様子をおずおずと伺っている。

「・・・いいだろう。ただし、合流する前に罰周10周してからだ。次は気をつけろよ。」

「はい! すみませんっ・・・」

地田にそう言われ、歩夢は大きく返事をして90度頭を下げる。

「・・・さすが委員長。こういう時の正解の態度を分かってるな。」

地田はそう言って、チラリと夜須斗やつばめ、惣一たちを一瞥する。

「ほら、とっとと走りに行け。
早いところ走り終わればクラスメイトに見られる時間も少なく済むだろう。」

「はい!」

歩夢はまた返事すると、更衣室を出て行った。
部室にシューズを取りに行き、そのまま体育館に行くのだろう。

「いやー、竹刀回避できて良かったねぇー」

つばめが歩夢の背中を見送りながらそう言うと、地田がため息をついて言う。

「毎回毎回ならまだしも、一度の忘れ物くらいで竹刀で叩くわけないだろう。
ましてやお前らならいざ知らず、宮倉の普段の真面目な授業態度を知ってるんだからな。」

「ムッカー!! ひどーい!!」

「うるさい。お前らも早く体育館に移動しろ。」

地田は言うだけ言うと、とっとと更衣室を出て行ってしまった。
地田が十分離れたであろう頃を見計らって、つばめが「イーッだ!」と頬を引っ張って舌を出している。

「まぁ、言ってることは正論だけどね・・・ 
俺らが忘れ物したとして、委員長と同じような印象は抱かれないでしょ。」

夜須斗がそう言ったのを聞きながら、でも・・・と洲矢が言う。

「委員長最近疲れてるのかな・・・ 珍しいね、忘れ物この前もしちゃったみたいだし。」

「この前も?」

洲矢の言葉を、不思議そうに仁絵が聞き返すと、うん・・・と洲矢が続ける。

「この前、風丘先生の手伝いで次の授業に使う教材2組に運んでたら、
委員長と2組の委員長の佐橋さんが話してて。」

「それで?」

「『ごめんね、昨日忘れちゃって。』って委員長が言ってたから。
それで、何かレポート用紙みたいなのを渡してて。」

「・・・相手の2組委員長は何て?」

「えーと、僕たちと同じ感じ。普通に受け取って、珍しいね、みたいなこと言ってたと思う・・・。
あんまりちゃんと聞いてなくて、僕も委員長が忘れ物なんて珍しいな、って思って覚えてただけだから・・・」

「そうか・・・ヤな感じだな・・・。」

「え?」

洲矢の言葉を聞いて、仁絵がボソッと呟く。
今度は洲矢が聞き返すが、仁絵はいや・・・と言葉を濁した。

「気のせいだ、どーせ。」

「ひーくん・・・?」

「おいー、仁絵、洲矢! 早く移動しねーとマジで罰周だぞ!」

「おー、行くぞ。洲矢。」

「あ、うんー」



「あー、今日もつっかれたー!! 体育からの部活とかやっぱ無理ゲー・・・」


部活を終えた惣一・夜須斗・つばめ・仁絵は、揃って教室に向かっていた。
今日は5人とも部活の日で、一人だけ文化部の洲矢と落ち合うために、教室で待ち合わせしているのだ。

「体育の時に無駄に跳んだり跳ねたりしてるからでしょ。」

ブーブー言う惣一に、夜須斗が呆れ顔で言う。

「マット運動なんだから跳んだり跳ねたりして当然だろ!」

「指定技にはハンドスプリングもバク転も入ってなかったじゃん。」

「何夜須斗~ 自分が出来ないからって羨ましいんでしょぉ~」

噛みついてくる惣一を流そうとする夜須斗に、自分も出来るつばめがここぞとばかりにからかう。
それを鬱陶しそうにする夜須斗の目に、教室にいる一人の人物の姿が映った。

「そんなわけない・・・あれ、委員長。」

「あ、ほんとだ~ 委員長ー! ってあれ? その手に持ってるの・・・」

「うわぁっ! び、びっくりした~ 惣一たちかぁー」

委員長、と呼んで大声で教室に飛び込んだつばめに、歩夢はあからさまに驚いた様子で、
手に持っていた物を何故か背中に隠した。
しかし、つばめは歩夢が隠す前にそれが何か目視出来たようで、首を傾げて歩夢に問う。

「体育館シューズ! 忘れたんじゃなかったの?」

「え? あ、あぁ・・・忘れたと思ったら、思い違いでやっぱり持ってきてて・・・」

アハハ、と笑う歩夢に、えーっとつばめが驚いた様子で言う。

「うっそぉ、走り損じゃん! もっとちゃんと確認すればよかったのに~」

「うーん、でも、あれより時間かけて探してたらどうせ遅刻だったし。
どっちにしろ罰周は免れなかったよ。」

歩夢はクスクスッと笑って、ありがとう、とつばめの頭を撫でる。

「うー、そぉ? じゃあ・・・ドンマイ! そーいう日もあるよっ!」

つばめの言葉に、歩夢はニコッと笑って、また「うん、ありがとう」と答える。

「それじゃあ、俺はもう帰るから。皆お疲れー」

「うん、お疲れー」
「おう!」
「おー」
「・・・」

教室を去る委員長と挨拶を交わす3人に反して、仁絵は黙ったまま歩夢を見つめていた。
そして、歩夢が見えなくなると、さっきまで歩夢が立っていた位置に自分が立ち、何か考え事をしているような仕草を見せる。

「・・・ここ・・・なんで・・・」

「仁絵?」

そんな仁絵の様子に、夜須斗が不思議そうに声を掛けるが、仁絵はかまわずその位置からある物を見やった。
そして・・・

「っ!」

何かを見つけたようで、仁絵は躊躇いなくその中に手を突っ込んだ。
それに驚いたのは残りの3人だ。なぜなら・・・

「お、おい仁絵何してんだよ! それゴミ箱だぞ!?」

ギョッとして叫ぶ惣一も相手にせず、仁絵はある物を掴んでそれを制服のポケットに突っ込んだ。

「ちょっと、何してんの仁絵・・・」

突然の行動に引いたような反応でつばめが言うも、仁絵は「別に・・・。」としか言わない。

「いや、別にって! 今の行動してそりゃないだろ!」

惣一もそう言うが、仁絵はそれ以上何も言わなかった。
そんなところに

「ごめんー! 部活長引いちゃって・・・」

と洲矢がようやくやってきたのだが、洲矢は開口一番「え?」と驚いたような顔で言った。

「ひーくん・・・どうしてそんな怖い顔してるの?」

「あ・・・悪ぃ」

洲矢に不安そうな顔でそう指摘され、仁絵は慌てて謝る。が、険しい顔はあまり変わらない。

「さっきから何考えてんの。変だよ?」

夜須斗にも指摘されるが、仁絵はまた、いや・・・とはぐらかす。

「まだ確証ねーしな・・・」

「? 何・・・? 委員長に続いてお前までおかしくなったの?」

仁絵の様子に、夜須斗が眉根を寄せる。

「え? 委員長なんか変か? 忘れ物2連チャンなんて、厄日だっただけだろ?」

夜須斗の言葉に、惣一が不思議そうに言うと、それだけじゃなくて、と夜須斗が言う。

「いつもと変わらない風にしてるけど、何か覇気がないっていうか。
まぁ、それこそ確証がないただの感覚だけどね。」

しかし、その夜須斗の言葉に、仁絵が頷く。

「あぁ・・・。考えすぎで済めばいいけどな。」

「え?」
「ひーくん?」
「それって・・・」

「・・・何でもねーよ。帰るぞ。」

「あ、ちょっと待ってよ仁絵ー!」

スタスタと教室を出て行ってしまった仁絵をつばめが追いかけ、それに続いて3人も教室を出て行った。



「もーっ、言うだけ言ってなんなのーっ」

「ほんとだよ。意味深なこと言ってさ。」

4人がようやく仁絵に追いついたのは下駄箱。
つばめと夜須斗の抗議にも、仁絵は応じない。

「だから何でもねぇって・・・?・・・!」

取り合わずに靴を履いていた仁絵が、何かを見つけた。
そしてそれを拾い上げ、見た、その瞬間、仁絵は目を見開き、その表情を凍り付かせた。

「ど、どーしたの、ひーくん・・・」

洲矢に声を掛けられ、仁絵は咄嗟に手の中の物を握り込んだ。

「それ、何・・・? 紙・・・メモ・・・?」

クシャッと音が聞こえ、洲矢がそう言うと、仁絵が首を振った。

「・・・悪ぃ。1日だけ待ってくれ。・・・明日、説明する。」

「えぇ? 何それ。今じゃダメなのーっ?」
「そうだそうだ! 気になってしょーがねーだーろぉっ」

仁絵の言葉に抗議する二人に反して、洲矢は静かに「分かった。」と答えた。

「明日だね。約束。」

「あぁ。」

「うん。よし、ほらほら、惣一、つばめ、帰ろーっ」

「えー、何だよそれ洲矢ーっ」
「洲矢は気になんないのっ?」

洲矢に背中を押され、惣一とつばめが不服そうに振り返ると、洲矢は一日の我慢だよー、と言って、
更に二人を押して校門の方に歩いて行った。

3人の姿が遠くなっていくのを見て、じゃ、帰るか・・・と、仁絵と共に残された夜須斗も歩き出そうとした時だった。

「夜須斗。」

不意に仁絵に呼び止められた。

「何? 説明は明日なんでしょ?」

振り返ってそう言った夜須斗に、仁絵は尋ねた。

「・・・委員長の家、知ってるか?」

「え?」

※毎度のことではありますが、今回かなりご都合主義的展開の度合いがひどいです
あらかじめご了承の上ご覧くださると助かります・・・←




「委員長! 大変! 倉庫がっっ!!」

5組の女子が倉庫から飛び出してきて、歩夢に駆け寄る。
その表情は今にも泣きそうで、ただ事ではないのが伝わってくる。

「どうしたの? そんなに慌てて…」

歩夢の問いかけに、女子が震えながら答える。

「倉庫がメチャクチャで…垂れ幕破れてて…
それにお花がっ…お花がないの!!」

「えっ?」

女子の言葉に全体がざわめき出す。
倉庫には、新入生歓迎会のために各クラスが作った種々の物全てが入っている。
歩夢はそれを聞いて倉庫に駆け出し、中を見ると…

「これは…」

昨日は綺麗にクラスごと整頓されて置かれていた小道具や装飾が、床にまき散らすように荒らされている。
一番に目につくのは、真ん中から引きちぎるように破られた垂れ幕だ。

「うわっ やば…」
「ひでぇな…」

後を追ってきた原田や木坂も、その荒れように顔をしかめ、

「これは…どういうことだ?」

最後に、高藤の冷たい声が響き渡った。

静まりかえる倉庫。
そしてその沈黙を破ったのは、冷静な歩夢の声だった。

「…とにかく、被害状況を確認しよう。
一旦中の物を全部出して、並べてみよう。」

「うん!」
「ああ!」
「・・・」


こうして、各クラス委員長が先頭に立って、倉庫の中の物を出して倉庫前に並べていった。

全て並べ終わると、その結果はひどいものだった。

「被害無しのクラスは無し、ってとこだな…」

木坂がそう言って、ため息をつく。

「そうだね…1組から4組まで、大体2,3個は小道具壊されてる。
特にひどいのは、1組か… あと5組はこの垂れ幕…」

原田が破かれた垂れ幕を手に取ると、歩夢が静かに頷いた。

「うん…あと花が無くなってる、かな…」

「え?」

「他のクラスの小道具は壊されてて、うちのクラスも垂れ幕は破かれて、それはこの場に残ってたんだけど…
ペーパーフラワーだけは、アーチに付けたやつ以外は段ボールごとほとんどなくなってるんだ。」

「え…それ、いくつ…?」

恐る恐る問いかけてくる原田に、歩夢は困ったような曖昧な笑みで答える。

「えーと、散乱してたのが50個くらいあったから…に、250個…?」

「ええええええっ!?」
「なぁぁぁぁっ!?」

歩夢の言葉を聞いて、原田と木坂が声を上げる。
そして、今まで何とか黙って成り行きを見守っていた惣一たちも、
突きつけられたこの事実に我慢できずに飛び出した。

「やべぇじゃん、どうすんだよ委員長!」
「っていうかせっかく作ったのにぃぃっ」

「うん、そうだね…」

惣一とつばめに縋り付かれ、歩夢も困った表情を隠せない。

「ったく、誰だよこんなことした奴!!」

「確かに…」
「一体誰が…」

惣一が吠えた言葉に木坂と原田が首をひねり出すと、またあの冷たい声が響いた。

「全く、白々しいな。」

「…は?」

口を開いた高藤は、惣一の目の前に立って言い放った。

「お前が主犯の一人だろう、新堂惣一。」

「なっ…」

蔑んだ目で見られて、惣一は押さえられなかった。

「なんだとてめぇぇぇぇぇっ!!!」

「そ、惣一待って!!」

高藤の一方的な決めつけに、惣一が逆上して掴みかかりそうになるのを、
歩夢が慌てて押しとどめる。

「俺らが作った、俺らのクラスのが一番被害でけぇんだぞ!! 
何で俺が自分で作ったもん自分で壊さなきゃなんねーんだよ!!」

惣一のもっともな追求に、高藤は眉一つ動かさず答えた。

「確かに、普通に考えたらそうだな。
だが、お前の5組のクラスのものは『壊されてる』んじゃない。
ほとんどが『なくなってる』んだ。」

「そ、それが何だよ…」
「! ち、違うよ高藤くん!」

惣一はピンときていないが、
歩夢は高藤の言わんとしていることが分かったようで、必死に否定する。
そして高藤は惣一にも分かるようにはっきり言った。

「最初から花なんて『なかった』んだろう。」

「は…はぁ?」

「お前は月曜日、『終わりそうにない』と言った僕にムキになって突っかかってきたな。
『何が何でも水曜日までに完成させて、僕をギャフンと言わせる』だとか、下らないことも叫んでいた。」

「そ、それが何だよ!」

「しかし、蓋を開けてみれば終わらなかった。だから…」

高藤は改めて断罪するように強く言った。

「誤魔化すために他クラスの小道具諸共壊し、倉庫を荒らしたんだろう。
そうすれば、たとえ『最初からなかった』花でも、荒らした奴のせいにできる、と思ってな。」

「なっ…」

「僕にあれだけムキに言い返しておきながら、結局終わらなかったというのを、
お前のその無駄に高いプライドが許さなかった…そうだろう?
僕の1組の小道具が一番被害が大きいのも、そういうわけだからだ。」

「てめぇ…黙って聞いてればベラベラとっ…」

「そ、そうだよ! 私たち、ちゃんと最後まで作ったよ!」
「皆で最後まで残って、全部で500個!」

そうだ、そうだと5組が声を上げるが、高藤はフンと鼻で笑って切り捨てた。

「生憎、昨日最後まで残っていたのが5組だから、全て完成したのを5組以外の人間は誰も見ていない。
否定されたところで、それは身内の証言だ。」

「てめっ…」

「ありえないでしょ。そんなの。」

今まで黙って聞いていた夜須斗が歩を進めて口を開く。

「いくら期日までに完成しなかったのがクラスの恥でも、
いくらあの鬼メガネ教師の元うちのクラスが団結してるって言っても、
たとえ高藤が言った通りだったとして全員が全員黙ってるなんてそんな可能性、常識的に考えてあるわけがないじゃん。
本気で言ってるわけ? そんなバカみたいな話。」

しかし、この夜須斗の反論に、高藤はさもありなんと言った様子でとんでもないことを言い出す。

「お前たちは小学校時代から筋金入りの不良だからな。それに、柳宮寺もいる。
お前ならうってつけなんじゃないのか。」

「あ゛ぁ?」

突然名前を呼ばれ、仁絵が高藤を睨みつけるが、高藤は涼やかに言い放った。

「暴力で脅して、クラスメイトを押さえつけるのに。」

「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」

あまりの言いように仁絵よりもまず先に周囲が凍り付いた。
そんなことを言えば、次にどうなるか。
それを一番知っているのは彼ら仁絵のクラスメイトなのだ。

「てめぇ・・・もう一回言ってみろよ・・・」

仁絵がゆらりと徐に立ち上がり、低い声で高藤に問いかける。
クラスメイトが気が気でない視線を二人に送る中、
高藤自身は気にするそぶりも見せず再度口にしようとした。

「何度でも言ってやろう。お前がそのお得意の暴力でクラスメイトを脅し・・・」

高藤が話している間に仁絵が間合いを詰めて高藤に掴みかかろうとする。
が、それよりも前に高藤の声を遮る声があった。

「それはないよ。」

「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」

それは歩夢の声だった。叫ぶでもなく、落ち着いたその声は、だがよく響いた。
途端に体育館中の注目が歩夢に集まる。
仁絵もすんでの所で踏みとどまり、振り返って歩夢を見た。

「宮倉。先ほどから言っているだろう、お前のクラスの証言は正当性の証明が出来ない・・・」

「確かに、小道具や装飾が壊れている件については、そうかもしれない。
でも、今俺が『違う』って言ったのは惣一や仁絵についてのことだよ。」

「え?」
「!」
「・・・何だって?」

「確かに惣一も仁絵もケンカが強いし、ちょっと目立つところもあるから、
いわゆる『問題児』みたいな見方をされちゃうのは事実だよ。
でもね」

歩夢はまっすぐ高藤を見据えて言った。

「その力を使って、俺らクラスメイトを脅すなんて、そんなことは絶対しない。
人が一生懸命作った物を、つまらない理由でわざと壊すようなことも絶対にしない。
それは俺や、クラスメイト皆が一番よく分かってるよ。保証する。」

「さすが委員長!!」
「委員長・・・」

歩夢の言葉に、惣一が感動の声を上げ、仁絵も驚きの眼差しを歩夢に向けている。
高藤は苦々しい顔をした。

「それから」

そして歩夢は続けて衝撃の一言を言った。

「小道具が壊れたり、装飾がなくなったりしたことについての責任の所在なら、おそらくそれは俺だよ。」

「・・・はぁっ!?」
「何言ってんの委員長!」

惣一とつばめが分かりやすく声を上げ、他のクラスメイトたちも驚きの表情。
追求をしていた高藤自身も一瞬眉を顰め、問いただした。

「どういう意味だ。」

「俺たちクラスは絶対ペーパーフラワー500個をはじめ全ての装飾を完成させた。それは誓って事実。
そして、最後に出来たそれらを倉庫にしまった、
その時に、他のクラスの作ってくれた小道具が壊れてた様子は・・・なかったよね?」

歩夢が5組に問いかけ、皆が頷く。

「ありがとう。つまり、ここまではまぁ高藤君が言うには『身内』の証言だけど、少なくとも複数人証明する人がいる。
だけど、その後・・・俺が倉庫の扉に鍵をかけたことについては、俺一人の作業だから誰も証明できない。
100%、絶対にかけたかと改めて問われれば、残念ながら俺も不安がないわけじゃない。」

「・・・だから責任は委員長にあるって? 馬鹿馬鹿しい、そんなの・・・」

夜須斗が話を遮ろうとすると、歩夢は人差し指をそっと自分の唇に置いて「シーッ」とジェスチャーし、夜須斗に目配せした。

「っ・・・」

それを見て察した夜須斗が黙ると、先ほどの冷ややかな態度に戻った高藤がしばらく黙ってから言った。

「・・・ふん、まぁ、とりあえずはそういうことにしたとして。それで」

高藤が、歩夢に詰め寄って尋ねる。

「壊れた小道具や足りない装飾はどうするつもりだ。」

「それについてだけど・・・」

歩夢の言葉を聞こうともしないで高藤が続ける。

「まさか自分に責任があるから自分が責任もって終わらせる、等と出来もしない大見得を切るつもりじゃないだろうな。
そんなくだらない自己犠牲を見せられても何の意味もありはしない、ということぐらい分かっているだろう?」

嫌みな高藤の物言いに歩夢が答えようと再度口を開いたが、
その前に勇ましい声が体育館に響いた。

「誰も委員長一人でやるなんて言ってねーだろ!!」
「そーだそーだ!」

進み出て口を開いたのは惣一だった。
つばめも相づちを打ち、それを合図に5組全員が寄ってくる。

「まー、クラス全体でやれば、今日の放課後この時間使えば何とかいけるでしょ。
リハはうちのクラス以外でやっといてもらって、俺らは明日のリハで何とか合わせるって感じで。」

そうまとめた夜須斗の言葉に、そうだそうだ、と賛成の声が上がり盛り上がる5組。

「何を勝手に・・・!」

それを高藤が睨み付けると、歩夢がまた進み出る。

「明日のリハーサル、特に集中してやって、絶対、本番ではとちらないようにするよ。だから・・・」

お願い、と歩夢が高藤に頭を下げた。
こんな奴に頭を下げなくても、と惣一が歩夢を起こそうとする。
そんな二人を見ながら、高藤は言った。

「別に僕に頭を下げろ等とは一言も言ってない。
大体、問題は足りていないお前のクラスの装飾もそうだが、
壊された他のクラスの小道具についてはどうするつもりだ。」

「それは・・・」

最もな高藤の追求に歩夢が口ごもると、今まで黙っていた4組委員長の木坂が口を開いた。

「そんなの、各クラスで直せばいいだろ。
壊されたのなんて5組の足りない装飾に比べれば全然少ないんだしよ。」

「そんな時間どこにあると・・・」

気楽に言う木坂に高藤が反論すると、更に気楽な様子で3組委員長の原田がさらっと言ってのけた。

「っていうかさー、俺予定表見て最初から思ってたんだけど今日のリハ要る?
どーせ明日全学年集まって5時間目から放課後使ってガッツリリハすんだからそん時ちゃんとすればいーじゃん。
だから今日は皆で壊れたやつとかちゃんと直すのに時間使おーよ、はい決定ー」

「原田、勝手に・・・」

「え? だって木坂も同意見だし、宮倉だって当然そうでしょ? 
だったらたとえ高藤と佐橋が反対しても多数決で決定じゃん。
まー、佐橋も反対しないでしょ?」

そう言って、原田は2組の委員長である女子の佐橋に話を振った。
突然振られた佐橋だが、動じた様子もなく答える。

「えぇ、まぁ、うちだって小道具直さなきゃいけないし・・・
そもそも1組が被害状況大きいんでしょ。今日は一律全クラス直す時間でいいんじゃない?」

「・・・仕方ない。」

佐橋にまで言われ、ようやく高藤が折れ、
今日は予定していた3年だけでのリハーサルではなく、装飾作り直し・小道具修理の時間になった。

各クラスが作業に分かれる中、歩夢が木坂と原田に礼を言う。

「ありがとう、二人が言い出してくれたから・・・」

すまなそうな顔をする歩夢に、木坂がニカッと笑って答える。

「ん? あー、気にすんなって、普通のこと言っただけだし。」
「いっつも宮倉に助けられてばっかだしねー たまには借り返しとかなきゃ(笑)」
「二人とも・・・ありがとう(ニコッ)」

「・・・チッ」

しかし、そうして笑い合う三人に向けて舌打ちをする人間がいることには、
三人をはじめこの場の誰も気づくことはなかったのだった。





こうしてリハ予定だった水曜放課後を丸々つぶし、
小道具は完全に修復され、装飾も足りない分作り直され無事500個揃った。(小道具修理にあぶれた他クラスが手伝ってくれたおかげもあり、むしろあっという間に完成した。)

そしてこの日の最後に3年生全員が集まり、
先生方に改めて報告したりするとまた面倒なことになる上歓迎会にケチがついてしまいかねないので、
今日のことはとりあえずこれで解決とし、少なくとも歓迎会を無事終えるまでは蒸し返さないということを全員の共通理解とした。

そして、この日の倉庫の戸締まりはクラス委員長5人全員が立ち会ってしっかり確認したのだった。



それからこの日以降は何事もなく、翌日は無事リハーサルを終え、本番も大成功を収めた。




こうして、一つのイベントを終え、各々再び平穏な日々に戻る・・・はずだったのだが。





新入生歓迎会が終わって数日後のある日の放課後。


最終下校も近く、5組の教室には歩夢一人だけが残っていた。
そんな歩夢に一人の影が近づき、話しかけた。

「お疲れ様ー(^∇^)」

「わっ・・・びっくりしました、風丘先生。」

背後から突然話しかけられ、歩夢は一瞬驚いた表情をしたが、
風丘と認めるといつもの朗らかな笑顔で応じた。

「ごめんごめん(笑) この前は新入生歓迎会お疲れ様。どう?最近。」

「え?」

唐突な質問に、歩夢が少し怪訝な顔をすると、
風丘は、別にそんな深い意味はないよ、と苦笑して応じる。

「歩夢くん、新入生歓迎会終わった後もまだよく残ってるから。最近どうかなって。」

風丘の言葉に、あぁ・・・と歩夢は納得して答える。

「歓迎会の準備が忙しくて、ちょっと勉強サボり気味だったので。」

「あー、そっかそっか。ふふっ、俺が言うのも何だけど真面目だねぇ」

「いえ、そんな・・・」

歩夢の謙遜の言葉を最後に、二人の間にしばし沈黙が流れる。
歩夢が所在なげに視線を漂わせたところ、

「ねぇ、歩夢くん。」

「あ・・・はい?」

今度は唐突に名前を呼ばれた。そして、風丘が歩夢に問いかける。

「俺に何か話したいことない?」

「・・・え?」

またもや突然の質問に、歩夢は一瞬逡巡した様子を見せてから、口を開いた。

「えーっと・・・歓迎会の反省点とかですか?」

「え? えーっと・・・うん、クスクスッ そうだねぇ、それもそうだけど。(苦笑)」

「?」

歩夢の答えを聞いて苦笑する風丘に、歩夢の頭の中には?がたくさん浮かぶ。
が、そんな歩夢の様子は気にもとめず、風丘は話を続ける。

「じゃあ歩夢くん、俺と一つ約束しよう。」

「約束・・・ですか?」

首を傾げる歩夢に、風丘は、うん、そう、と続ける。

「もし何か困ったことがあったり、自分一人じゃきつくなったりした時は、必ず俺に言うこと。」

「・・・どうしたんですか、先生、いきなり・・・」

不思議そうな歩夢に、風丘はいいからー、と言って、小指を差し出してくる。
そんな風丘を見て、歩夢は少し考えてから微笑んで答えた。

「ふふっ、分かりました。約束します。」

そう言って、差し出された風丘の小指に自分の小指を絡めた。
すると、風丘がその手を振って言った。

「はい、指切りげんまん。嘘ついたら・・・お仕置き、だね。」

最後に少し低い声で言われた物騒な言葉に、歩夢は苦笑する。

「くすっ、怖いですよ、先生(笑)」

「本気だよー?」

笑う歩夢に風丘がムッとして言うと、歩夢は大丈夫ですよ、と応じる。

「俺、委員長してて困ったりキツいって思ったりしたことないですもん。だから、大丈夫です。」

「うん・・・そっか。そうだね。」

朗らかにそう言う歩夢に、風丘もそう言って微笑んだ。

「はい。・・・じゃあ、もうすぐ最終下校なので俺もそろそろ帰ります。さようなら、先生。」

「うん、気をつけてー(^-^)/」

風丘に見送られ、最後まで穏やかな表情で歩夢は教室を後にした。

そして教室を出て下駄箱に向かう歩夢の表情は・・・
・・・眉間にしわの寄った、険しいものだった。





・・・平穏な日々は、まだまだ遠かったのである。


翌日の金曜日。

早速学活の時間がある日で、
5時間目、
歩夢たち5組は歩夢が昨晩家で決めた割り振りのもと、
ガイガイワヤワヤしながら各々担当の装飾を作っていた。

ちなみに学活の時間、やるべき活動が決まっている場合、
風丘は学級委員に要請された時以外は、
始めの5分くらいだけ教室内に留まり、
後は職員室や部屋に引っ込んでいることが多い。
今日もそういう日で、教室に風丘の姿は見えない。

「うー・・・飽きた。」

「惣一・・・(苦笑)」

惣一たち5人は、アーチやその他様々な装飾に使うペーパーフラワーの作成に振り分けられていた。

歩夢は班分けをする際等にはメンバーの交友関係も考慮していて、
大体5人はこういう作業はいつも同じ班に振り分けられていた。

この班は、くす玉製作班が完成し次第合流することになっているが、
まだ作業開始して間もないため、今ペーパーフラワーを作っているのは5人だけだ。
重ねたお花紙を蛇腹折りにする作業の途中で、はぁっと溜息をついて手にしていた紙の束を投げ出す惣一に、
隣で同じ作業をしていた洲矢が苦笑いする。

「まだ3つめでしょー? 
アーチの分だけでも200個、他の装飾に使うことも考えたら全部で500個はいるって委員長言ってたじゃない。
そんなんじゃ終わんないよ?」

しかし、そんな洲矢の忠告を聞いても惣一はうー・・・とうなり声をあげ、
洲矢の向かいのつばめも、とは言ってもさぁ・・・と続く。

「今のところ俺たち5人で500個って。委員長ムチャぶり過ぎない? 絶対終わるわけ・・・」

「どうせまた、放課後残されるんでしょ。」

つばめの指摘は、ハァと溜息つきながら花びらを作る夜須斗の言葉にかき消された。
その途端、惣一とつばめがブーイングの声をあげる。

「はぁ!?」
「ヤダよ、そんなのっっ」

「んなこと言ったって、1年生歓迎会までに取れる学活の時間はこの時間も入れて3時間。
それだけの時間でこれだけの量の装飾作るの終わらせるなんて絶対無理でしょ。
ね? 委員長。」

そう言って、夜須斗はちょうど自分の後ろを通った巡回中の歩夢に声を掛けた。

「え? あー・・・うん。(苦笑) ごめんね、ちょっとだけだから。」

事実なので否定できず苦笑いで頷き、お願い、と手を合わせる歩夢に、惣一とつばめが食ってかかる。

「何だよ、その放課後残るの前提なの!!」

「そーだそーだ!!」

詰め寄る2人に、歩夢が再度説得を試みる。

「まぁまぁ、全員残ってもらうのは始めの1時間だけだし、
それも今日と、来週の月曜日から本番前日の木曜日までの4回、一週間だけだから。
ねっ? お願いします。」

しかし歩夢のお願いも、その前のところで引っかかったつばめには届かなかった。

「えーっ、そんなに!? っていうか今日!? 今日の放課後早速なの!?」

つばめが駄々を捏ねるように抗議する。

「ヤダヤダ、せっかく明日から休みの花金なのにーっっ」

「花金って・・・お前はサラリーマンか。」

つばめの言葉に、地味に仁絵がつっこみを入れつつ、でもまぁ・・・と歩夢を見る。

「定められた授業後ってのが放課後の意味だからな。」

「ひ、ひーくん・・・(苦笑)」

「ねぇ。だから無理に拘束される謂われはないっちゃないよね。」

「だよな、だよな!」
「ほらっ 仁絵も夜須斗もそう言ってるんだよっ」

仁絵と夜須斗からの援護するかのような意見に、俄然勢いづく惣一とつばめで、歩夢が困り顔でもう一度言う。

「えー、こんなにお願いしてるのに?」

しかし、惣一とつばめは聞く耳を持たない。

「絶対残らねぇっ」
「授業じゃないしっっ 放課後残らなきゃいけないって校則なんてないしっ」

「うーん・・・そっかぁ・・・でもやってもらわないと困っちゃうしなぁ・・・」

夜須斗と仁絵は歩夢の対応を伺うように少し楽しげに見つめている。
そして洲矢をはじめ、他のクラスメイトたちもいつの間にか作業の手を止めて、行方を見守っている。
クラス全員の視線を受けて、しかし先ほどまで困り顔だった歩夢は、突然クスッと笑った。

「じゃあ、『あのこと』言っちゃうけどいいのかなぁー」

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

突然表情を変えた歩夢に、一同ポカンとする。
歩夢は惣一とつばめに向き直ってちょっと意地悪げに言った。

「惣一とつばめ。この前の週末、ゲームセンターで別の中学の生徒8人くらいと軽くケンカしてたでしょ?
俺、買い物帰りに一部始終見ちゃったんだよねー」

「なっ・・・!?」
「えっ!?」

歩夢の言葉に、2人はギョッとする。

「まぁ向こうにふっかけられて、なのに実力差は歴然で惣一たちが遊んであげてるみたいな感じだったし。
特に今になっても問題になってないみたいだから補導騒ぎにはならないと思うけど。
『校則で』生徒だけで立ち入り禁止が明示されてるゲームセンターでケンカしてたー、なんて、風丘先生に知れたらどうなるかな?」

「お、おいっ・・・」
「う、うそ・・・」

歩夢の言葉に顔面蒼白になる惣一とつばめだが、
その2人を取り残して歩夢は今度は夜須斗と仁絵の方に向き直る。

「夜須斗と仁絵は、最近しょっちゅう水池先生の授業でばっかり居眠りしてるよねー」

「ゲッ・・・」
「うわ・・・」

言われた瞬間、2人は顔をゆがめる。

「風丘先生や、見つけたらすぐ告げ口する仁科先生の授業は避けて水池先生の授業だけ。
水池先生気付いてないのかもしれないし、気付いてても風丘先生に言わないだけなのかもしれないけど。
いずれにせよ、先生選んで居眠りしてる、って風丘先生に言っちゃおうかなー」

歩夢の言葉に頭を抱える夜須斗と仁絵。
そしてそんな4人に歩夢はニッコリ笑顔で言った。

「俺が委員長してる5組の分担仕事に4人が協力的になってくれないなら、
俺も4人の平穏無事な学校生活に協力的になる必要ないよねっ
と言うわけで早速今日の放課後4人が帰った後に風丘先生に・・・」

「ま、待て委員長早まるな!!」
「の、残るよっ 残らさせていただきますっっ」
「さすが委員長・・・」
「選択肢ねぇな・・・」

一週間の放課後の自由を得る為には余りにも重すぎる対価に、4人はあっさり白旗を揚げた。
その様子を見て、フフッと洲矢が吹き出す。

「皆委員長には適わないねー」

4人が居残りを了承し、歩夢は心から嬉しそうに笑った。

「残ってくれるんだ! ありがとう!(ニッコリ)」

そして、おーと鮮やかな交渉術に感嘆の声をあげ、パチパチと拍手を送るクラスメイトに向かって言う。

「あ・・・皆も4人の協力を勝ち取るために、今俺が言ったことは内緒ね?」

歩夢のお願いに、クラスメイトたちは、
しょうがねぇな、サボられたら困るもんね、等と言いながら、快く了承してくれた。
惣一たちと1年生の時からクラスメイトをしていて、小学校からの知り合いも多い彼らは、付き合い方を十分分かっている。
問題児ではあっても、一度こう言えば何だかんだちゃんとやってくれることを皆知っているから、
変に先生に報告して怒らせる者もいない。

こうして、5組は一丸となって装飾作成に取り組み始めたのだった。





そして作業が段々波に乗り始めた翌週月曜の放課後。

5組にとある人物がふらっと訪れた。

「進捗はどうだい? 宮倉。」

「あ・・・高藤くん。どうしたの? 遙々5組まで。」

現れたのは、1組の学級委員長、高藤(たかふじ)だった。
歩夢の言う通り、3年の1組と5組は教室が最も離れていて、互いが廊下の両端の突き当たりに教室があるため、
滅多なことがない限り互いの教室の前を通ることすらない。

歩夢の問いかけに、高藤はツンと澄まして答える。

「僕は新入生歓迎会全体の指揮担当でもあるからな。
各クラスの作業の進捗状況を把握するのも仕事だ。
・・・で、宮倉。進捗はどうだい? もうさすがに1つくらい、作り終わっているだろう?」

高藤に再度問われ、歩夢は「あー・・・」と苦笑いして返す。

「ごめんね、皆で頑張って進めてはいるから、それぞれ完成には近づいてるんだけど・・・」

その歩夢の答えに、高藤はあからさまに溜息をついて眉間に皺を寄せる。

「まさかまだ何一つ出来上がっていないなんて。歓迎会はもう今週なんだけど?」

「うん、でも、それには絶対間に合わせるから・・・」

「全く、これまで一体何を・・・あぁ、そうか・・・」

ごめんごめん、と謝る歩夢に鋭い目線を投げかけていた高藤が、突如何かに思い至ったようにして口を開いた。

「宮倉のクラスにはハンデがあるからな。進捗が遅れるのも仕方ないか。」

「ハンデ?」

歩夢が何のこと?と首をかしげている横に、高藤の態度が気にくわなかったのか、惣一が進み出る。

「おい、さっきからお前! 他クラスの奴が偉そうに口出しやがって!
何だよハンデって、知ったような顔で!」

「何だよハンデって、だって・・・?」

惣一に詰め寄られて、怯むどころかフッと鼻で笑い、高藤は言い放った。

「張本人のお前がそれを言うのか。新堂惣一。」

「は・・・っ?」

突然自分の名を呼ばれ目を丸くする惣一に、高藤は畳みかける。

「新堂惣一、吉野夜須斗、太刀川つばめ、柳宮寺仁絵。・・・場合によっては佐土原洲矢もか。
5組が抱えるお荷物問題児ども。」

「はぁぁぁぁっ!?」
「てめっ・・・今なんつった!!」

「お荷物」と呼ばれ、つばめと惣一が即座に噛みつくが、高藤は止まらない。

「放課後に残ってはいるということは、どうせ宮倉がなだめすかして残らせているんだろう。
それは本来、宮倉が割くべき労力ではないはずだ。
問題児どもに手を焼く分、全体の進捗に目を配る時間が失われる。これがハンデ以外の何なんだ。」

「てめっ・・・ふざけっ・・・」

「まぁまぁ!!!」

今にも高藤に掴みかかりそうな惣一を押しとどめ、歩夢は柔和な態度を崩さず高藤に言う。

「5人とも、自分から残ってくれてるし、作業にも問題なく参加してくれてるよ?
全体の進捗が遅いのは、5人関係なく俺のペース管理が不十分だからだよ。
ごめんね、高藤君。間に合うように、これからピッチを上げるから。」

「だから今日はこれで許して」、と頭を下げる宮倉に、高藤はフンッと尊大な態度で言い放つ。

「1年から委員長をしていてこの程度の管理能力か。あだ名『委員長』が聞いて呆れるな。」

「はぁぁぁぁっ!? ちょっとキツネ目野郎! 何言ってくれてんのっ!?」

明らかな歩夢への個人攻撃に、今度はつばめが高藤に詰め寄ろうとする。

「つばめ、大丈夫だから!」

歩夢に押さえられながらも、つばめは高藤に吠える。

「大体、僕たちのクラスだけじゃないでしょ、終わってないの!
3組だって、4組だってまだやってたしっ・・・ 大体、お前のクラスはどうなんだよ!」

しかし、そのつばめの口撃も、高藤は微動だにせずに切り捨てる。

「他のクラスを見に行くような暇があるのか? 
そんなしょっちゅうフラフラされては、戦力外も良いところだな。」

「うっ・・・」

「それから僕のクラスについてだが。先ほど紹介用の小道具は全て完成し、今は台本を見ながら練習を進めているところだ。」

「なっ・・・」

「当然だろ」と言いたげな高藤に、つばめは悔しそうに唇を噛んで、何も言えなくなった。
そんなつばめを一瞥して、高藤は宮倉に向き直る。

「・・・そういうことだ、宮倉。くれぐれも、リハーサルを予定している今週水曜放課後までに・・・
まぁ、装飾はリハーサル自体には関係がないからな。全て完成等と無茶は言わない。
が、最低でも8割は完成させておいて欲しいものだね。」

まるで最初から間に合わないだろうと決めつけている物言いに
クラス全体がムッとし、惣一もつばめも再びぶち切れそうになっているが、
歩夢はそれでも表情を変えず、

「うん、ありがとう。頑張るよ。」

と笑顔で答えた。
その歩夢の態度が気に入らなかったのか、高藤はまた眉間に皺を寄せて、踵を返し1組の方へ戻っていった。

そんな高藤の姿を見送りながら、いつもよりトーンの低い、不機嫌さマックスな声で仁絵が夜須斗に問う。

「何だよあのキチガイ野郎。」

今にも拳を振り上げんばかりの殺気を纏った仁絵に、
夜須斗はうわぁ・・・と顔を引き攣らせながら答える。

「追っかけてって殴んないでよ?
・・・現1組学級委員長の高藤。
俺らが小4の時に俺らのいた小学校に転校してきた奴。
何かよく分かんないけど委員長へのあたりが異常なほどキツくてさ。
最近あんまり見てなかったけど、久々見るとほんと、頭おかしいよね。」

「あー、ヤダヤダ」と夜須斗が心底嫌そうに言うと、つばめと惣一も同調する。

「ほんっっっとやな奴!!」
「マジでぶん殴りてぇ・・・」
「・・・あぁ。」
「ひ、ひーくん・・・皆も・・・」

「「「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」」」」

高藤をきっかけにして、4人を中心に一気に教室の空気が悪くなってしまった。
そんな教室に、不意にパンパンと手を打つ音と、続いて歩夢の声が響き渡る。

「はいはい、落ち着いてー
惣一をはじめそこの4人。暴力は良くないよ?
高藤君見返したいなら、装飾を水曜までに完成させよう!」

「う・・・・・・あーーーーー!!」

「うわっ びっくりした!」
「ちょっと、突然大声止めてよね。」

歩夢の言葉を聞いて、突然叫んだ惣一に、隣にいたつばめと夜須斗からブーイングが上がる。
が、惣一は気にせず続けた。

「こーなったら、何が何でも水曜の放課後リハまでに全部完成させるぞ!
ぜってぇあのキツネ目野郎ギャフンと言わせてやる!!!」

「賛成賛成!」
「ま、それしか道はないか。」
「はぁ・・・しゃーねーな・・・」
「頑張ろっ」

意気込む惣一に、残る4人を筆頭にクラス全体が賛同する。
こうして、5組は更にペースを上げて装飾作りを再開したのだった。





そして、クラス全員で急ピッチで進めたのが功を奏し、
翌日火曜日の放課後には、作業は最終局面に到達していた。


くす玉班が昨日の後半から惣一たちペーパーフラワー班に合流したおかげで、
ペーパーフラワーも400個以上完成し、いくつもの段ボール箱に山盛りになっていた。

「…よっしゃ、垂れ幕完成!!!」

垂れ幕班から歓声があがり、周囲からも拍手があがる。

「お疲れ! 残るは輪飾りとペーパーフラワーだね。」

歩夢がそう確認すると、輪飾り班から声が上がる。

「輪飾りはもうちょいで終わるよー!」

「了解。そしたら後は皆でペーパーフラワーを手伝おう。」

そう言って、歩夢がペーパーフラワー用の紙を手に取る。

「おっ! ついに委員長も加勢かー!?」

それを見て惣一が茶化すように言うと、歩夢がにっこり答える。

「ラストスパート。やらせてばっかりじゃ悪いしね。」

「さっすが委員長♪」

歩夢の言葉につばめがそう言うのを聞いて、夜須斗がつっこむ。

「っていうかことあるごとにやらせてたじゃん、つばめは…」

つばめも残って頑張ってはいるのだが、どうにも集中力が続かず、
飽きると「これ一個作ってくれたらまたやるからぁ」とか何とか言って、ことあるごとに歩夢に作らせていたのだった。
歩夢は「しょうがないなぁ、一個だけね?」と作ってあげていた。

夜須斗のつっこみを聞いて、歩夢は苦笑しつつ言う。

「クスッ まぁまぁ。つばめも頑張ってくれたよ?」



そしてついに…


「で・・・できたぁぁぁぁっ!!」

最後のペーパーフラワーが完成し、つばめの歓声を皮切りに、クラス全体からも歓声が上がった。

「皆お疲れ様! すごいよ、本当に明日のリハまでに全部出来た!」

歩夢も嬉しそうに手を叩く。
頑張ろうとは言ったものの、正直完成は厳しいかなとも思っていたのだ。

ひとしきり皆で喜んだ後、歩夢がそれじゃ、と言う。

「出来たものはいつも通り体育館倉庫にしまって、今日は解散しよう。皆で手分けして運ぼっか。」

アーチに、くす玉に、垂れ幕に、輪飾り。ペーパーフラワーに至っては大きな段ボールに1箱50個で、アーチに着けたものを差し引いてもまだ6箱もある。
皆手に手に完成品を持って体育館倉庫に運び、最後に歩夢が鍵を掛け、5組は解散した。





そして、翌日水曜日の放課後。


リハーサルをするために、全クラスが体育館に集まっている。
再び高藤が宮倉に話しかけた。

「結局どうだったんだ? 装飾は。」

「うん、それがねっ」

イヤミっぽい高藤の物言いを気にもせず、歩夢が嬉しそうに答えようとした時だった。

「委員長! 大変! 倉庫がっっ!!」

体育館倉庫から飛び出してきたのは、リハーサルに使う諸々を取り出そうと倉庫に入った5組の女子の1人だった。


ご無沙汰しております、白瀬です

さてさて、春休み中全くこちらの更新をせぬまま
新社会人になろうとしている白瀬ですが←
さすがにそれはまずいと思い、何か活動を・・・ということで、
ようやく以前ツイッターでアンケートをとった際、
最も指示を得られた「土曜の夜」に都合がついたので、
ツイキャスをしようと思います(つ、続きも書いてますよ・・・?

「ツイキャス本放送 第4回」(引き続きタイトル募集中 笑)
放送日時:3月19日 土曜日 
       22:30~(翌日白瀬暇なので、終わりは特に決めません 笑
       声優さんとかアニメのトークは日付変わるくらいに主にしようかと
       思ってます)
URL : http://twitcasting.tv/tsubameshirase
閲覧パスワード:spa

今回は、前回テーマトークだったので、全編雑談でお送りしようかと思います
(ので、皆さんコメント・質問等で助けてください 笑)
あと、前回パソコンのスピーカーの関係でBGM系はほとんど拾えてなかったようなので、
別のパソコンでリベンジする予定です。
新居でネット環境を整えて初の放送なので、トラブルがないことを祈るばかりです←

ではでは、久々のツイキャス、お時間ある方、よろしければ
ちらっとでも聞きに来ていただけたら嬉しいです