※Twitter企画に参加させていただき、書かせて頂きました。

 筆者はタートルズについて初心者にわかなので、

 解釈違い等ございましたら申し訳ございません。

 お許しくださいあせる

 

 

 

 

 

 

「お前たち。どうしてこうなったのか説明しなさい。」

 

「「「「・・・」」」」

 

俯いたり、居心地が悪そうに目を泳がせたりしながら並んで正座をしている亀の姿の4人組。

そして、彼らの前には、ネズミの姿をして胴着のような服をまとった人物が仁王立ちしている。

彼の・・・スプリンターの、手に握られているのは1部の新聞だった。

スプリンターが指さした記事の見出しにはこうある。

 

【真夜中のニューヨークに出現!! 亀人間4人組!!】

 

そして、その下にはそれぞれの武器を持って佇む4人の姿が写った写真まで入っている。

昨夜は曇っていて、ビル陰の暗がりでの出来事だったので顔ははっきり写っていないが、シルエットは武器も含めてバッチリ認識できる。

 

「レオナルド。ラファエロ。ドナテロ。ミケランジェロ。

わしはどうしてお前たちがこんな新聞の記事に載っているのかと聞いているのだが?」

 

「それは・・・」

「っ・・・」

「うぅ・・・」

「えーっと・・・」

 

スプリンターに睨まれ、4人・・・レオナルド、ラファエロ、ドナテロ、ミケランジェロは一様に口ごもってしまった。

 

 

 

レオナルド、ラファエロ、ドナテロ、ミケランジェロの4人は

動物を人間のような姿に変えるミュータンジェンの力によって変身した亀の4人組。

4人は「タートルズ」として、4人が暮らすニューヨークを、

そして世界を脅かす悪から守るため、日々戦っていた。

 

 

昨晩、タートルズは、地球征服を目論むエイリアン「クランゲ」の更なる情報を収集すべく、地上に出ていた。

クランゲの出没情報を何日もかけて秘密裏に収集し、昨晩が遂にその「クランゲの行動する日」だったのだ。

計画を練りに練り、クランゲの重大な秘密を手に入れるのだ、と4人とも意気込んで地上に出発していった。

 

が、その練りに練った計画は、些細なことで崩れ去った。

 

きっかけはラファエロとミケランジェロのいつもの喧嘩だった。

クランゲが現れるまでの張り込みの間、

例の如く短気なラファエロが苛立っているところに、

静かに張り込むのに飽きたミケランジェロが茶々を入れた。

そこからはもういつものパターン。

ラファエロが早々に爆発し、ミケランジェロと取っ組み合い。

はぁ、また始まった・・・と呆れ顔のドナテロがレオナルドの腕をつつき、しょうがないな、とため息をつきながらレオナルドが止めに入ろうとした時だった。

 

4人の耳に子供の声が飛び込んできた。

 

「亀が立ってる!! 喋ってる!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

4人が視線を投げた声の聞こえた先には、

こちらを指さす少年と、隣で驚愕の表情で携帯を構える少年の姉らしき少女。

 

ヤバい。

 

さっきまで四者四様バラバラだった4人は本能的に意見を一致させ、

少女の持った携帯をシャッターを押される前に彼女自身に怪我をさせないように払い落とすと、同時にその場から逃げ出した。

近づいてきた4人に兄妹2人は腰を抜かし、それ以上騒ぐことも追いかけてくることもなかった。

 

しかし、焦ったまま不用意に逃げ出した4人は、今度は逃げている最中にフラッシュが焚かれるのを感じた。

ビル陰で芸能人のスキャンダルスクープを狙っていた記者に撮られたのだ。

4人の頭の中にはまた同じ言葉が浮かんだ。

 

ヤバい。

 

ラファエロが慌てて記者を追いかけようとした。

写真を撮った記者は二足歩行する亀を目撃した恐ろしさか、

スクープの喜びか、一目散にその場を離れていく。

 

「待て! ラファ諦めろ!」

 

追いかけようとするラファエロをレオナルドは制止した。

今度は記者と追いかけっこをして、また別の人間に目撃されたらキリがない。

それに、先ほどの兄妹がいつ家族等相手に再び騒ぎ出すかも分からないので、この付近にとどまり続けるのはやはり危険だ。

そう判断したレオナルドは、3人にこう指示を出した。

 

「こうなったら仕方ない・・・。作戦は中止だ。地下に戻るぞ。」

 

この日の作戦は夜遅かったので、スプリンターには翌日朝一番で結果を報告することになっている。

その予定通り、地下に戻るとスプリンターは先に休んでいた。

 

あの記者が、見間違いだと判断して写真を掲載しませんように・・・。

 

4人はそれだけを祈って、ビクビクしながら眠りについたのだった。

 

 

 

が、その希望は見事に打ち砕かれた。

 

翌朝早く、スプリンターにたたき起こされ、そのまま4人並んで仲良く正座、問い詰められていたのが冒頭の場面。

 

唯一救いだったのは、撮られた新聞がニューヨーク界隈でしか発刊されていない三流ゴシップ紙だったことだろうか。

UFOだのUMAだのを事あるごとに騒ぎ立てているこの新聞なら、大半の人々はいつものことだと捨て置くだろう。

そもそも、この新聞をチェックしているニューヨーク市民なんてほんの一握りだ。

 

しかし、全国紙だろうとゴシップ紙だろうとニューヨークで手に入る全紙を毎朝細かくチェックしているスプリンターの目はすり抜けられなかった。

目ざとく見つけられ、誤魔化しようがない。

観念した4人を代表して、レオナルドが事の経緯を説明した。

スプリンターは4人の目を順番に見つめながら、静かにレオナルドの説明を聞いている。

レオナルドはまだしも、聞いているだけの3人は居たたまれなく、もぞもぞと動いたり目を泳がせたり忙しない。

 

「・・・と、いうわけで・・・写真を撮られました・・・」

 

「・・・当然、クランゲの情報は?」

 

「何も・・・得られませんでした・・・」

 

俯きがちにレオナルドが恐る恐るそう言って数秒後。

 

「お前たちは一体何をしに地上に行ったのだ! 馬鹿者!!」

 

スプリンターの雷が落ちた。

4人はヒッと息を呑む。

 

「忍者とは、忍ぶ者。人に存在を知られてはならん。

敵に向かうときは連携をとり、協力する。

どちらもこれまでに何度も、口が酸っぱくなるほど言い聞かせてきたはずだが?」

 

「はい、先生・・・」

「「「はい・・・」」」

 

しょぼんと返事をするレオナルドに続き、力なく返事する3人。

そんな4人の様子を見て、スプリンターは思案気な表情で、やがて口を開いた。

 

「ふむ・・・。お前たちには、ただ言葉で言って聞かせるだけでは足りぬようだ。

罰も兼ねて、文字通り体に教えを叩き込むこととしよう。」

 

「「「え・・・」」」

 

なにやら物騒な物言いに、レオナルド、ラファエロ、ドナテロがたじろぐ。嫌な予感がする。

しかし、1人素直で無邪気なミケランジェロは、思ったことを口にした。

 

「え? 罰って何? 何ですか? 

前みたいに外出禁止はやだなぁ。だって退屈で・・・」

 

「おいマイキー!」

 

素直すぎるミケランジェロに、慌ててレオナルドが止めに入る。

が、スプリンターはそれそのものは咎めず、ミケランジェロに問いかけた。

 

「・・・気になるかミケランジェロ。」

 

スプリンターの視線が自分一人に向けられて、

ようやく他の3人と同じく嫌な予感を察知したミケランジェロは、慌てて前言撤回しようとした。

 

「えっとー・・・さっきまで気になってたけどやっぱりへいk」

 

「・・・いいだろう。まずはお前からだ。こちらに来なさい。」

 

「いや、僕やっぱり・・・」

 

「来なさい!」

 

「はいぃっ」

 

ミケランジェロが慌ててスプリンターの側に行くと、ミケランジェロは手を取られ、

気付くと近くにあった普段腰掛け代わりになっている段差に押さえつけられる形になっていた。

 

「うわぁっ えっ何っ? 何っ?」

 

心許ない体勢にミケランジェロが首を動かして言うと、

スプリンターの厳しい声が頭上から降ってきた。

 

「何度言われても言いつけを守ろうとしない・・・子供のお前たちにぴったりの罰だ。」

 

バシィィンッ

 

「いったぁぁぃっ!!」

 

「「「!!!」」」

 

スプリンターの手が、段差に押さえつけられることでちょうど突き出したミケランジェロのお尻に振り下ろされた。

いくらネズミの体とはいえ、鍛え上げられたスプリンターの平手の痛みは相当なもので、

ミケランジェロは飛び上がって逃げようとする。

が、それが許されるはずもなく、ミケランジェロはがっしりと押さえ込まれてしまう。

 

「逃げるな。まだあと9回だ。」

 

「9回!? 無理無理無理、もう1回だってむりっ・・・」

 

「問答無用。」

 

バシィィィンッ バシィィィンッ

 

「ぎゃぁぁっ いたぁぁぃっ」

 

 

 

たった3回で泣き叫ぶミケランジェロを見て、

離れたところで正座している3人は顔を引きつらせた。

 

「い、痛そう・・・どうしよう、先生『お前たち』って言ったよねっ・・・!?

次は僕たちの番・・・」

 

おろおろするドナテロに、ラファエロは若干いらついた様子で答える。

 

「分かってるよそんなの! あんな恥ずかしい格好・・・冗談じゃねぇっ・・・」

 

「でもマイキーを置いて逃げられないし、逃げたところでどうなるわけもないだろう。

おとなしく受けるしか・・・」

 

「ぅ・・・」

「そう・・・だよね・・・」

 

レオナルドに事実を突きつけられ、二人は肩を落とした。

が、言った本人のレオナルドも、あと十数分後にはやってくるだろう自分の番を思って盛大に肩を落とした。

 

 

 

・・・バチィィンッ バシィィィンッ

 

「やだっ・・・もうやだ先生無理ぃぃっ!!」

 

「情けないことを言うなミケランジェロ。

今回の直接的な原因はお前とラファエロのケンカだろう。

やってしまったことの罰はおとなしく受けるものだ。あと3回。」

 

バチィィィィンッ

 

「あああんっ!! 先生ごめんなさいもうしませんんんっっ」

 

バシィィンッ バッチィィンッ

 

「いたぁぁぁぁぃっ!!!(T^T)」

 

最後に飛び切り痛い3発をもらって、ようやくスプリンターはミケランジェロを解放した。

が、痛みでグスグス泣いているミケランジェロに、スプリンターは容赦ない。

 

「ミケランジェロ。早く列に戻って正座しなさい。ドナテロと交代だ。」

 

「ふぇぇ・・・お尻痛くて正座できないぃっ・・・」

 

お尻を押さえて駄々を捏ねるミケランジェロに、スプリンターはため息をついて言い放った。

 

「・・・ミケランジェロ。仕方ないな。最初からか?」

 

「ひっ!! 正座しますぅぅっ!!」

 

今のスプリンターならやりかねない。

焦ったミケランジェロは転がるように3人の元に戻り、元いた場所に正座した。

 

「ドナテロ。次はお前だ。」

 

「はい・・・」

 

怖ず怖ずとやってきたドナテロも、ミケランジェロと同じように段差に押さえつけられる。

 

「いくぞ。」

 

「っ・・・はい・・・」

 

バシィィンッ

 

「いぃぃっ!?」

 

バチィィンッ バシィィンッ・・・

 

「うぅっ・・・うぁぁぁっ!」

 

ミケランジェロほど暴れはしなくても、痛いのには変わりない。

ドナテロは打たれるたびにうめき声を上げ、時折足を跳ね上げて必死に耐えた。

 

「ドナテロ。前へ前へ行けとは言わぬ。

だが、レオナルドに任せきりではなく、自分で行動する意志を持つように。」

 

バシィィンッ

 

「うっくぅぅっ・・・はい、先生。ごめんなさい・・・」

 

ラファエロとミケランジェロの仲裁をレオナルドに任せっきりにしたことを見抜かれているのだろう。

 

「よし、最後だ。」

 

バチィィィィンッ

 

「うぁぁぁぁっ!!」

 

最後にとびきり痛い1発をもらい、ドナテロは解放された。

 

「次はラファエロ。来なさい。」

 

「っ・・・」

 

「おいラファ!」

 

呼ばれても動こうとしないラファエロを、レオナルドが肘でつつく。

しかし、それでもラファエロはよほどお仕置きが嫌なのか下を向いてその場で固まっている。

 

「・・・ラファエロ。素直に来られないなら回数を倍にするぞ。」

 

「!! 先生でも俺あんなっ・・・別の罰にっ・・・」

 

「全員同じ罰だ。例外は認めん。」

 

「ラファ早く行った方がいいよ、あんなの20回も無理だって!」

「ほんとほんと! お尻壊れちゃうよっ」

 

既に叩かれたドナテロとミケランジェロがありがたくないアドバイスを送ってくる。

どれだけ痛いのかは、見ていればなんとなく分かる。

それでも恥ずかしくて素直に行けないのだ。

 

「っ・・・」

 

まだ逡巡しているラファエロに、レオナルドが全く・・・と、息をついて声を掛けた。

 

「ラファ。観念して行けよ。皆見られてるんだ。恥ずかしさは皆同じ。

皆同じ罰なのに、このままだとお前だけ痛いのが増えて損だぞ?」

 

「っ・・・レオ・・・」

 

レオナルドの説得に、ようやくノロノロと立ち上がったラファエロは、スプリンターの元に歩み寄った。

やっとやってきたラファエロを、スプリンターは一瞥すると、一言。

 

「往生際が悪い。」

 

「っ・・・うわっ」

 

あっという間に前の二人と同じ体勢にされ、容赦ない平手がお見舞いされた。

 

バチィィィンッ

 

「ってぇぇぇっ!!」

 

1発目から強烈な一撃に、いくら筋肉バカでケンカ慣れしているラファエロでも悲鳴を上げて足をばたつかせた。

 

「暴れるな!」

 

バシィィンッ バシィィンッ

 

「ぎゃぁぁっ あぅぅっ」

 

ばたつかせた足を咎めるように、両足の付け根に一発ずつ。

なかなか素直に罰を受けられなかったお仕置きと言わんばかりに、

ラファエロに与えられる平手は厳しかった。

 

「ラファエロ。お前には幾度となく忍辱の精神を説いてきたはずだ。

いい加減にその短気を押さえる努力をしなさい。」

 

バチィィィンッ バシィィンッ

 

「んぎゃぁぁっ す、すみません先生っ」

 

「それからつまらぬ意地を張らないことだ。損するのはお前自身だ。」

 

バチィィンッ

 

「ひぃぃっ わかりましたぁっ」

 

「よし。最後だ。」

 

バチィィィィンッ

 

「いってぇぇぇぇっ!!」

 

最後の1発で、ラファエロは痛みに思わず段差から転がり落ちた。

 

「・・・戻りなさい、ラファエロ。最後はレオナルド。お前だ。」

 

「はい、先生。」

 

レオナルドは立ち上がると、這うように正座の位置に戻るラファエロと入れ違いにスプリンターの元に向かった。

そして、スプリンターに手を取られ、なされるがまま体勢をとる。

 

「レオナルド。記者を深追いしなかった判断は正しかったとわしも思う。よくやった。

しかし、そうなる前にもう少し早く対処すべきだったな。」

 

「はい、先生・・・。反省しています。」

 

「よし。皆と同じ10発だ。」

 

バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ

 

「ひっ!?・・・うぅっ・・・うぁぁっ」

 

レオナルドは、手をぎゅっと握り、足に力を入れて耐えた。

声は我慢できなくとも、抵抗したくなる手や足を全力で押さえ込んだ。

弟たちが見ている前で無様な格好は晒したくなかった。

 

「・・・最後だ。」

 

バチィィンッ

 

「いぃぃぃっ・・・」

 

最後まで耐えきったレオナルドは、息も絶え絶えに立ち上がる。

そんなレオナルドを見て、スプリンターは少し柔らかい声でレオナルドに説いた。

 

「レオナルド。リーダー的立場だからといって責任をお前に全て押しつけるつもりはない。

今回の失敗を全て背負い込む必要もない。

しかし、リーダーだからこそ出来ることもあるはずだ。考えておくように。」

 

「・・・はいっ 先生。」

 

「よろしい。戻りなさい。」

 

レオナルドが正座の列に戻ると、スプリンターは再び4人の前に立った。

 

「4人とも、反省は出来たか?」

 

「とってもしました!」

「はい、ほんとに!」

「もうすごく!」

「ちゃんと反省しました、俺たち、4人とも!」

 

「・・・・・・」

 

スプリンターは、無言で4人の顔を代わる代わる見つめると、少し経って。

 

「・・・いいだろう。」

 

その言葉に、4人は罰が終わったのだとホッと息をつく。

反省が足りない、等と言われて更なる罰を追加されたらたまったものではない。

4人が胸をなで下ろして立ち上がったときだった。

 

「それでは、午前中の稽古に移るぞ。

今日の稽古は・・・乱取りだ。」

 

「えっ・・・」

「乱取りって・・・」

「せ、先生・・・」

「ものすっごく嫌な予感・・・」

 

 

 

「ぎゃぁぁっ」

「ひぃぃぃっ」

「うわぁぁぁっ」

「先生ぃぃっ」

 

いつもなら頭やら肩やらいろいろなところを打たれるのに、今日に限ってはスプリンターが打ってくるのは1カ所だけ。

そしてそれは今そこだけは絶対に打たれたくない場所。

・・・そう、先ほど容赦なく打たれたまだ赤く腫れているお尻だった。

道具で打たれるのだから、先ほどの罰よりもよっぽどきついお仕置きだ。

 

「痛いのが嫌ならわしから1本取ることだな。ミケランジェロ。」

 

「そんなこと言われてもぉ~~いたぁぁぁぃっ」

 

「先生、稽古に移るって・・・ひゃぁぁんっ」

 

「乱取りは稽古だぞ。ドナテロ。」

 

「先生、マジで鬼・・・」

 

「ラファエロ。余計なことを考える余裕などあるのか?」

 

「んぎゃぁぁっ すみませぇぇんっ」

 

「先生っ 俺たち反省しましたからっ いたぁぁぁっ だからっ」

 

「「「「もう許してぇぇぇぇっ」」」」

 

午前中、罰と乱取りでたっぷり泣かされた4人。

これからしばらくは、4人はおとなしく真面目に鍛錬に、ミッションにと励んだとか。

「はーくんっ こーや! 早く早くっっ」

 

「もー、海保、そんなにはしゃいだら転ぶよー?」

 

「大丈夫大丈夫♪ 僕二人と違って甚平だしサンダルだしっ」

 

はしゃいで先急ぐ波江を苦笑しながら窘め、並んで歩く風丘と雲居。
その格好は、波江は甚平、風丘と雲居は浴衣だった。

 

「大体花火大会夜の8時からやろ? 

まだ6時になるとこやで、こんな早よ行ってどないすんねん。
場所はいつものとこやからそんな場所取りせんですむやろし・・・」

 

雲居は腕時計を見てため息をつく。

 

「何言ってんの、屋台で遊ぶに決まってるじゃん!
食べたいものいっぱいあるしっ♪」

 

はしゃぐ波江に、雲居が「いつまで経ってもガキやなぁ」と言うと、

風丘がクスッと可笑しそうに笑う。

 

「高校くらいまでは光矢もはしゃいでたじゃない。」

 

「高校の話やろ! 今俺ら何歳や思てんねん、25やで?」

 

風丘の指摘に、雲居が恥ずかしそうに顔を赤らめて声を少し荒げる。

 

「もーっ、こーやの照れ屋さん♪」

 

「うっさい海保!」

 

こうして他愛もない会話をしながらわいわい神社の方まで向かっていくと、
3人は聞き慣れた声の主に話しかけられた。

 

「あいっかわらずぎゃんぎゃんうるせーな、光矢と海保は。」

 

「はぁ? なんや・・・と・・・って、勝輝やないか!!」

 

3人に声を掛けたのは少年課の刑事である須王だった。
 

しかし、彼の格好もいつものかったるそうに着崩されたスーツ姿ではなく、

この場の雰囲気に相応しい浴衣だった。

 

「珍しい、勝輝が浴衣姿なんて。」

 

「ほんまやなぁ、しかも・・・祭りにお一人様か?(笑)」

 

雲居に笑われ、須王はそんなわけあるか!と怒鳴る。

 

「仕事だよ、仕事。去年この祭りで天開中の馬鹿共中心に乱闘騒ぎがあったからな。
今年はちょいと警戒強めなんだよ。
で、いつものスーツだと目立つからってなんだかしらねーけど浴衣着ろってうるさくてよ・・・
俺が着たって、不良連中には顔知られてるから意味ねーっつの。」

 

動きにくいしめんどくせー、とぶつぶつ言う須王に、風丘は確かに・・・と苦笑する。
明るい茶髪で大柄、ただでさえ目立つ須王だから、

浴衣を着て溶け込もうとするのは無駄な努力だ。

 

「で、お前らは男3人で祭り見物かよ。」

 

彼女いるくせに物好きだねぇ、と須王に言われ、雲居がすかさず噛みつく。

 

「隔年や隔年! 去年はチアキと来たっちゅうねん!」

 

「へいへい、そーかいそーかい」

 

声でけぇよ、と須王は眉をひそめて適当な相づちを打つ。
そんな須王の浴衣の袖を、波江が引っ張った。

 

「ねぇねぇ、勝輝も一緒に回ろうよ! 

こんなところでじっとしてても、パトロールにならないよっ」

 

キラキラと目を輝かせる波江に、須王は波江のおでこを軽くピンッとはじいた。

 

「むーっ 痛いっ」

 

おでこを押さえてむくれる波江に、須王はわりぃな、と苦笑して言う。

 

「俺がここにいんのは一応意味があんの。配置決まってるからな。
俺が歩き回るとかえって警察が来てるって片っ端から知らせて歩いてるようなもんで・・・

まぁ、それが抑止効果になるって見方も出来っけど逆に・・・」

 

その時、須王が説明している背後を通った男女おり混ざった若者のグループが、

不穏な言葉を口にしているのが聞こえた。

 

「いやー、やばそうだったな、あれ!」

 

「ほんとほんと! 一触即発って感じでな! 
あのあと乱闘とかになんのかな・・・ちぇっ、マユコが怖いから行こう、なんて言うから・・・」

 

「だっ、だってー・・・」

 

「でもほんと、去年に引き続き乱闘起きたらマジでやばくない? また天開中だったし・・・」

 

「!」

 

天開中、という言葉に、須王が反応する。

 

「おい、お前ら、その話、詳しく聞かせろ。」

 

「えっ」

 

突然話しかけられ驚いた様子を見せた若者たちだが、
直後に須王がちゃんと警察手帳を見せたことで察したようで、

グループの内の1人の男子が話し出す。

 

「いや、別に俺ら通りかかっただけだから・・・ 
制服着た天開中の奴らと、同い年ぐらいの甚兵衛とか浴衣着た奴らが揉めてるの。」

 

次いで、もう1人の男子が先ほどマユコ、と呼ばれていた女子の肩を叩きながら言う。

 

「こいつが怖いから早く行こうって言うもんだからすぐ通り過ぎちゃったしな・・・

まだ乱闘にはなってなかったっぽいけど・・・」

 

「けど・・・なんだ?」

 

含みを持った言い方に、須王が続きを促すと、男子はいや、なんとなくだけど・・・と続ける。

 

「いや、別に俺らが通りかかったときって天開中とその相手の奴らが対峙してるだけなんだったけどさ。
それだけで天開中が劣勢ってのが伝わってくるっていうかなんていうか・・・」

 

ま、なんとなくなんだけど、と言った男子の言葉に、別の女子が乗っかってきた。

 

「あ、それ私も超分かる! 

それってさ、天開中の一人の子めっちゃ睨んでた金髪の女の子のせいじゃない?」

 

「あ、確かに確かに! 女子なのになんか殺気・・・っていうか不良オーラっていうか?

ビンビンに出てるのが俺らでも分かって、めっちゃすごかったよなぁ!」

 

「金髪の・・・女・・・?」

 

何か嫌な予感がして、でもその予感を振り払おうと須王が更に問いかけようと口を開いたが、
それと同時に最初に須王に説明を始めた男子から発せられた言葉が、
その予感の的中を須王のみならず須王の背後で聞き耳を立てていた他の3人にまで知らせてしまった。

 

「バッカお前ら、あいつ男だよ。男物の浴衣着てたろ?」

 

「え゛え゛!?」
「マジ!?」

 

「おいおいおい・・・」

 

予感通りの話の展開に、須王が頭を抱える。

そして、男子は須王の頭の痛さなど分かるはずもなく、とどめを刺す。

 

「まぁ、男じゃねぇみたいに綺麗な顔してたしな。

浴衣の形のこと知らなきゃ普通に女だったなー、あれは・・・」

 

「ねぇ、ちょっとそれって・・・」

 

今までおとなしく聞いていた波江がおそるおそる背後の2人を振り仰ぐ。

 

「いやー、まだ現場見てへんから・・・結論は・・・なぁ?」

 

雲居がもごもごと言いながら隣の風丘を見る。
その顔は・・・・・・。

 

「おい! それ見た場所どこだ!?」

 

「えっ・・・しゃ、射的の屋台の・・・前だけど・・・」

 

聞いた瞬間に、須王が走り出す。追って、3人も走り出した。

 

天開中と同年代で、女と見まごう程の美貌で、金髪。
それでいて不良を齧ってない人間にも分かるくらいの殺気やらオーラを出せる人間なんて、
いくら街で1番人が集まる祭りの場といったって、十中八九仁絵のことだ。
彼らの話によるとまだ乱闘になっていなかったとのこと。

今なら乱闘になる前、最悪でも乱闘序盤で止められる可能性が高い。
被害が酷くなればなるほど、少年課の仕事量も、相手方のダメージももちろん、

仁絵本人に返ってくるものも大きくなってしまう。

(タイミング悪ぃんだよあいつ・・・っ)

 

須王は背後を振り向かずに、射的の屋台まで駆けるのだった。

 

 

 

 

 

「何睨んでんだこの『女』!!!」

 

「あっ・・・」

 

仁絵と対峙した不良の言葉に、仁絵を追った洲矢が思わず立ち止まって怯む。

 

「誰が『女』だって・・・?」

 

「・・・え?・・・うぁっ」

 

次の瞬間、その不良は転ばされ、仁絵の足下に尻餅をつく。

それを認めた直後、今度は不良の後ろに控えていたうちの1人が飛びかかってくる。

 

「っにすんだてめぇぇぇぇっ」

 

仁絵はそれを見て、自分の付けていた簪を引き抜くと、

その簪を、向かってくる不良の鳩尾に突き立てた。

 

「ぐはっ!! うっぅぅ・・・」

 

「てめ・・・マジでぶっ殺すっ・・・うぁっ」

 

想像を絶する痛みに、潰れたような声しか出せずに悶絶する不良に目もくれず、
仁絵は再び立ち上がって掴みかかってくる最初の不良の足を払って早技で倒し、その上に乗り上げた。
そして、喉元に手にしていた簪を突きつける。

 

「ひっ・・・お、おいっ・・・」

 

さすがに焦った不良が逃げようと藻掻くが、うまく押さえつけられていて逃げ出せない。
仁絵はニヤリと恐ろしい笑みをたたえて吐き捨てた。

 

「男と女の浴衣の違いもわからねぇ馬鹿が・・・」

 

仁絵の手に持った簪が振り上げられる。そして。

 

「ガキ相手に粋がって偉そうにしてんじゃねぇよ!」

 

振り下ろされた簪は、しかし喉元に突き立てられることはなく、その寸前でピタリと止められた。
だが、不良は恐怖からか「ヒッ・・・ヒィッ・・・」と蚊の鳴くような声を上げて気をやってしまっている。

 

「ダッサ。」

 

仁絵はそう呟くと、その不良の上から退き、立ち上がって少し乱れた浴衣を整えた。

 

「ちょっと。やりすぎだから。」

 

今の瞬間的で衝撃的な光景を見て天開中が呆気にとられている隙に、

夜須斗が駆け寄ってきて仁絵に苦言を呈した。
が、まだ仁絵は地雷を踏まれた怒りが完全に晴れないのか、不機嫌そうに

 

「別に。マジで刺すわけねーだろ。」

 

と言うだけだった。

 

「仁絵!」
「もーっ仁絵びっくりしたぁっ ちょっとスカッとしたけどねっ」

 

夜須斗に少し遅れて惣一やつばめが続けて寄ってくる。

すると、仁絵に伸された2人以外の天開中の不良たちはようやく我に返って騒ぎ出した。

 

「てめぇら・・・マジでただじゃおかないからな!」
「おう! きっちり報復させてもらう!!」

 

そーだそーだと今更盛り上がる天開中に、

まだ先ほどのケンカ熱が冷めやらない惣一が、いいぜ、と応える。

 

「ここは迷惑になるし、てめーらもそんなお荷物抱えてる。場所変えてやろうぜ。」

 

「おい惣一! 何馬鹿な・・・」

 

とんでもない惣一の答えに夜須斗が焦るが、お構いなしにつばめまで乗っかる。

 

「いいねいいね、僕もさんせーん!!」

 

「おい!!」

 

「いつでも相手になるぜ! なぁ、仁絵?」

 

話を振られ、仁絵は気怠そうに下ろした髪を纏め直しながら答えた。

 

「・・・別にいいけど。」

 

しかしその仁絵の返事に続いたのは、

持ちかけてきた惣一でも、ノリノリのつばめでも、お説教モードの夜須斗でもなかった。

 

「へぇ・・・いいんだ?」

 

「え・・・!!」

 

コンッ

 

振り返ってその声の主を認めた瞬間、仁絵は手に持っていた簪を取り落とし、

自分の中を占めていた怒りの感情が一気に恐怖に変わっていくのを感じた。

 

 

 

仁絵もまた、踏んではいけない地雷を踏んでしまったのだった。

こんばんは、白瀬ですニコニコ
 
さてさて、週末から頭にかけては、試験明けということもあり、
有給も1日頂いて地元から東京まで足を伸ばしてのんびりしてきました音譜
まぁ、目的はありましたが(笑)
今回はとりあえずその内の1つについて。
 
1つ目の目的は観劇ですビックリマーク(白瀬の趣味の1つは演劇鑑賞なのですニコニコ
今回は、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を観てきました音譜
 
ロミオは以前私が黒執事二次創作の話で熱く語った
数年来のファンの古川雄大さんキラキラ
いやー、相変わらずお美しい・・・ハート
セバスチャンやってる時の古川さんはドS悪魔感満載で
白瀬の好みドンピシャって感じでそれはそれはステキでしたが、
ロミオはそれとは全然違う方向性のキャラクターで、
それもそれでステキでしたラブラブ
キラキラ感と悲劇、が自分がイメージするロミオを体現する言葉なんですが、
古川さんは悲劇が似合う・・・ルドルフの時も思いましたが。
もちろん悲劇の場面だけでなく、
世界の王で踊りまくってる古川さんのキラキラ感もとてもステキキラキラ
 
そしてお相手ジュリエットは私が観た回は乃木坂46の生田さんでした
白瀬はアイドルあんまり詳しくないので名前知ってるくらいでしたが、
声が可愛い!! お嬢様っぽさがぴったり!! な印象でした。
私はミュージカル好きですが詳しくはないので、歌の評価とかは分かりませんが、
ジュリエット似合ってると思いました。
元々乃木坂って「美人」「お嬢様」って感じの子が多いですね。。
生田さん然り、生駒ちゃん然り、
白石さん然り、この前卒業で話題になった橋本さん然り・・・(これが限界 笑)
清楚系が売りなんでしたっけ。
とにかくジュリエットの個人的なイメージにはぴったりで可愛かったですラブラブ
 
ところでロミジュリって、初めて読んだときに「ん? ロミオ・・・ん?」って
子供ながらに思ってたんですが、
この小池演出の東宝ロミジュリ(歴代含め)観ると更に拍車がかかって
「ロミオ残念な子過ぎない・・・? 笑」と思うのは私だけでしょうか(笑)
というか、ロミオだけでなく主に男子組が軒並み・・・←
それでも最終的に壮大な悲劇に仕上がってる(気がする)のは
悲劇が似合う古川さんだからだと贔屓目ありきで白瀬は思ってますにひひ
 
まぁスパ好きとしてはとりあえずマーキューシオは完全キーだし、
ロミオも結構無鉄砲なんで
乳兄弟としてそれを止められなかったベンヴォーリオと
並んで一緒に叱られればいいと思いますが(笑)
 
さて、そんなわけで←
次回の観劇は2.5次元の予定!(ノラステ)
ところで、友達に今度の薄ミュ誘われてるんだけどどうしましょうね・・・あせる
薄ミュはその昔廣瀬さんが沖田やってた頃、
その沖田が主役の沖田篇をDVDで観たくらいなんだよなぁと悩み中です。。
年度明けたら四季が1本確定してるし、レミゼもたぶん観に行くし、
レディベスは死ぬ気でチケット取りに行くし、しばらく観劇充実しそうです音譜
 
最後に、全く話がかわって現在の状況ですが、
今月中にメガネ教師スパ手前までは確実にアップさせたい・・・!
目標達成のためにも・・・!
 
あと、Twitterで繋がっているスパ絵描きさんとの相互リクエスト企画で、
ニコロデオンタートルズの二次創作スパを執筆中(というか詳しくないので
まずは勉強中・・!)です。
発表の形を考え中ですが、これも今月中に出来ればなと思っています。
 
それではとりとめもなくいろいろ書きましたが、
これからもよろしくお願いしますニコニコ
皆様、お久しぶりです☆ミ
白瀬です!
 
結局週一更新できてないじゃないか、とお怒りの方、お呆れの方、
申し訳ございません(>o<)
 
本日、白瀬は職場の昇任試験を受けてきましたビックリマーク
そのテスト勉強で先週はバタバタしていて・・・あせる
いやー、社会人になっても試験に悩まされるとは・・・←
白瀬はお役所仕事なので、内容は主に法律とか公務員倫理とか、
全5科目を一日掛けてテスト受けてきました。。
法律とか経済とかが嫌いだから学生時代日本史・世界史という
端から見たら馬鹿みたいな科目選択をしていたのに・・・(T^T)
嫌いな科目ばかりなので勉強が進まず、
本気で風丘が欲しいと思いながら(笑)ダラダラ勉強を続け、
 
まぁ、なんとか試験は終わったので、結果は神のみぞ知るです(笑)
受かればお給料上がるビックリマーク
 
週末は東京で観劇して友達とオタク活動音譜
それを励みに今週もお仕事頑張りますDASH!
 
あ、そんなわけで試験終わって落ち着いたので
ちょいちょい続きも書いていきますね!!
 
ちょっぴりご無沙汰しました、白瀬ですあせる
 
今年から、今まで(私が個人的に)なぁなぁにしていた
皆様からのコメント・メッセージ等の扱いについて、明確化したいと思いますビックリマーク
 
これまで白瀬は、コメントやメッセージ等、頂いたらありがたく思いつつ
あまりコメ返しとかをしないでいました。
・・・というのも、ずぼら且つ波があるもので、ブログにぱったり訪れない時期に
コメント頂いた方にお返事せずに、気が乗った時の方だけお返事する・・・
という形になってしまいそうで、それではあまりに気まぐれすぎると思ったため、
誤字脱字やリンク不備のご指摘を頂いた時以外は、ありがたく頂いて
そのままにしていました。
 
ですがビックリマーク
「白瀬にコメント書いてもなんのレスポンスもないから意味がない」
なんて思われてやしないかと最近不安に思うこともあり(笑)
 
やはり、せっかくコメントや感想を頂いたからには、
お返事を書こうビックリマークと一念発起いたします。
 
ということで、今後頂いたコメントについては、
「基本的にお返事いたします」
 
アメブロのコメント機能を使ってコメントくださった方にはコメ返しで、
メッセージ機能を使って下さった方にはメッセージを返信いたします。
アメブロアカウントを持っていない方につきましては、
tsubameshirase☆yahoo.co.jp(☆を@に変えて下さい)まで、
メール頂ければお返事いたします。
内容は、拙作の感想でも、要望でも、リアルスパ話でも、オタ話でも、
日常の世間話でも、何でも可ですビックリマーク
お気軽にお話くださいニコニコ
 
ただし、リクエストは現在受け付けていないので、
参考までに教えて頂けるのは大変嬉しいですが、
リクエストとして必ず書くと確約はできません。
申し訳ございませんがご了承ください。
また、一方的・過激な誹謗中傷に対してはお返事いたしません。
 
返信時期については確実にお約束は出来ないのですが←
大体1週間以内を目安にしていただければと思います。
 
それでは、これからも白瀬をよろしくお願いいたします音譜