カリフォルニア 会議通訳・翻訳会社 EJ EXPERT代表のブログ ザ・トランスレーター

カリフォルニア 会議通訳・翻訳会社 EJ EXPERT代表のブログ ザ・トランスレーター

40歳過ぎて専業主婦からプロの同時通訳者と起業家に転身。会議通訳の仕事、翻訳や通訳スキルの習得、通訳翻訳会社の経営、独自のプロ養成コースなど、北カリフォルニアはシリコンバレーを中心に発信しています。

こんにちは、会議通訳者・

EJ EXPERT代表のブラッドリー純子です。


もう6月もすぐそこですね!相変わらずのペースで出張とリモート案件を繰り返し落ち着かない毎日ですが、6月は日本に一時帰国の予定です。


今回は東京でJAT(日本翻訳者協会)より年次総会のI-JET31に基調講演者としてご招待いただいています。


基調講演の通訳は何百回と経験しましたが、まさか自分が基調講演をするなどとは夢にも思わず...



カンファレンスは31回目という歴史ある協会で多くの同業者の方々の前でのプレゼンなのでとても恐縮しております。


でも私にしかお伝えできることもあると思うので全力で頑張ります!


カンファレンスのテーマは「On Stage or Backstage—翻訳通訳者の可視性」

講演内容はこちらで見れます。


今年に入ってからは特に通訳案件の質が変わってきたというか、私には大役と感じるお仕事をさせていただくようになったので


そう言った変化が今回のテーマとどう関係しているのか、どういった戦略が効果に繋がったのかもお伝えしたいと思っています。私自身のことだけではなく、メディアを有効活用し大活躍されている通訳者の事例も含めてお伝えしていきます。


さらに7月1日には東京でEJ EXPERT主催の会議通訳ワークショップ Master Class in Tokyo を開催します。



弊社の講師として現役会議通訳者として大活躍されている賀来華子先生と千葉絵里先生にも対面で指導していただける滅多とない機会です。


お申し込みが想定より多く、より大きめの会場に変更となりました。夜は銀座にて交流会も開きますのでぜひご参加ください。


詳細はウェブサイトからご覧ください。


皆様にお会いできるのを楽しみにしています✨




こんにちは、会議通訳者・EJ EXPERT代表のブラッドリー純子です。



パナマで開催され国際会議Our Ocean 2023

の後半記事です。

大臣・副大臣・大統領級のバイ会談(英語ではBilateral meetingと呼ばれる、2か国間の会談)は何度か経験したので今はそれほど緊張することはなく、比較的落ち着いて通訳できるようになったのが救いです。

 

初めての時はウン年前み国連本部で。当たり前ですが緊張と興奮で前の晩はほとんど眠れなかったことを覚えていますガーン

成長してないようで当時を思い出すとそれなりに色々と経験を重ねてきたのかも。

前置きはこのくらいにして内容に入っていきますね。


 

バイ会談での留意点 10

 

① 資料は来るしブリーフィングも入念に行われる(はず)

 

国を代表して会談やスピーチをするわけですから、発言内容はあらかじめ吟味されている場合が多いです。


秘書官などを通じて通訳者にも事前に原稿が紙かPDFファイルなどで渡されます。


ただ会談直前に原稿がくることもあります。


私の例ですが、今回は原稿を紙で提供されてすぐに原稿をそのまま読んで発言すると伝えられたので専門用語も多いし、


スピーディに読まれた時のためにあらかじめ翻訳しておいた方が良いと判断しました。


でも移動が多いし重いのでノートパソコンはホテルに置きっぱ。「とにかく時間がない!」状況だったので次の方法で対処しました。


もちろん1時間の会談で原稿を読んで発言する部分は逐次通訳を入れてもほんの10分程度。


あとのディスカッションは初見通訳ということになります。


 

1.スマホのメモ機能に音声で読み上げてテキスト入力(Googleの画像認識機能やスキャンアプリを使って文字にしてもOK)
 


2.DeepLのアプリを開いてコピペ→英語に翻訳

 


3.翻訳された英文を先ほどのメモ機能にコピペし対訳原稿を作成

 


4.会談やスピーチまでの休憩時間中に修正・変更作業

 


5.スマホで対訳原稿を読みながら必要に応じて修正しながら訳出

 


という方法で無事に乗り切りました!

 


②政府や国際機関の高官は通訳慣れしている

 

「通訳を使うのが初めて…」という方の通訳をするとテンポが合わないか、ひとり突っ走ってしまわれるケースも多いですよね。


でも外交の場で発言される方々の多くは、先ほど述べたように原稿通りに話すのかアドリブを入れるのかを前もって教えてくださいます。

 

また、通訳がしやすいように絶妙な長さで切りながら発言できる方が多い。

 

特に国連の高官は通訳が入るのが日常なので互いにベストな状態で仕事ができるように常に心得ていて、


通訳者のことも労ってくれるし、まさに「通訳を使うプロ」だなと感じました。


 

③センシティブな問題や訳語の取り扱いには要注意

 

外交的に配慮が必要な箇所については、事前に機密資料でシェアされたり、ブリーフィングの時点で訳出に気を付ける点などの説明があると思います。


ない場合は、必ずこちらから確認しておくこと。

 

通訳者の誤訳が外交問題に発展したり、というニュースが過去にあったりしました。


センシティブな発言や用語が出た場合は具体的にどう訳せばよいのかをクリアにしておくことをおすすめします。

 

④周りに合わせて忍者のように動く

 

国際会議ではメイン会場でのプレナリー講演に沿ってサイドイベントや会談が入ります。

 

今回も某国大統領との会談が終わったらすぐに別の会場に移動してスピーチを通訳したり、なかなかのハードスケジュールでした。

 

時間に遅れることは許されないので素早く移動しなければなりません。


大使館関係、ボディガードの人などを含めるとある程度のグループで移動することになるのですが、


皆さん慣れているのでとにかく動きが素早い。ボーッとしていると一人置いてけぼりを食います(笑)。

 

お手洗いは休憩の最後に必ず行っておく、動きやすいパンツスーツや走れるパンプスを着用する、大きくて重いノートパソコンなどは持って行かない、荷物は軽めにまとめるなど、


いつでも忍者のような動きができるよう心づもりをしておいてください。

 

 

日本にも走れるヒールが売られていますよね。私は通訳現場用にVIVAIAというD2Cブランドの走れるヒールを色違いで愛用しています。


インソールのクッションも厚く、長距離歩いても、長時間履いても足が痛くならないので気に入っています。


「国際会議では機密文書も資料として扱うと思いますが、持ち歩くバッグは配慮すべきですか?」という受講生からの質問がありました。


私はトート型のバッグを使っていますが、中に入れる資料はクリアファイルではなく、中身が見えないタイプのものを使っています。


バッグはたくさん入ってしかも軽いものがベター。



⑤周りを気にせず集中ゾーンに入れるように

 

TVの首脳会談などを見るとわかりますが、周りには多くの関係者やメディアがいます。

 

立っているスーツ姿の大人も多くいれば、発言内容を記録している人もいる、さらにカメラのシャッター音もする環境で通訳することになります。

緊張感もありますが、始まったらいつもの実力が発揮できるように。

それには、スタートしたら周りが見えなくなるくらいの集中レベルで通訳に没頭することが必要です。

トレーニングを重ねればどんな時でも集中ゾーンに入れるようになります。


睡眠や食事も大切。出張中はジャンクは避けてブッフェやレストランではタンパク質や野菜を取るようにしています。


エネルギーが切れないように小腹が空いたらつまめるように私は移動時にはドライプルーンやプロテインバーなどをバッグに入れています。



 カリフォルニアプルーンも美味しいですが、iHarb でまとめ買いしたフランス産が柔らかくジューシーで最近のお気に入り。


⑤通訳者としてのポジションや立ち回り方を理解する

 

企業のCEOの通訳をする時もそうですが、通訳者のポジショニングって微妙です。

 

通訳者は「黒子」であり、サポートスタッフの一員であることは間違いない。


でも会議や会談では主役の代弁者として大事な任務を担っているし、それだけに注目される立場でもあります。


経営者や政治家は、貫禄や自信が発言や仕草に現れます。


通訳者にも、発言する人のそういったクオリティまで意識して聞き手に渡す能力が求められると思います。

 

発言者の品格や雰囲気を損なわずに引き立てられるよう、服装や行動にも配慮する必要があるので完全な黒子に徹してしまうのはむしろマイナスだと考えます。

 

あと、遠慮し過ぎてグループに金魚のフンのように付いていってしまうと、


急に通訳が必要になった時に「通訳はどこ?」となってしまうので要人の斜め後ろくらいを歩く感じで移動するほうが効率的です。

 

⑥リレー通訳の練習をしておく

 

ガチの国際会議は英語をピボット言語に様々な言語で講演が行われます。

 

国連関係の会議では、英語が母語の登壇者はむしろ少数。


今回の会議のメイン言語は英語とスペイン語でした。パナマの大統領や環境大臣などはもちろん英語を話しますが、登壇する時はスペイン語です。

 

私たち他言語通訳者はスペイン語通訳者の英語を聞きながらそれぞれの言語に通訳していきます。


同時通訳の場合はソース言語のチャンネルをその都度切り替えるなど、通訳機材の操作方法が変わってきます。


本番で操作を間違えずに使いこなすには練習が必要です!


ちなみに自分がピボット役の場合(多言語の通訳者が自分の日英通訳を聞いて各言語に通訳する場合)は超責任重大です。


自分のミスが12言語の通訳のクオリティを左右します。これはプレッシャーも一際!


Zoomの通訳機能を使ってリレー練習をするとか、または弊社の会議通訳講座でもリモートのプラットフォームを用いてリレーを行っています。

 

⑦通訳者はどこに座るのが適切か

 

国際会議場ではバイ会談用に部屋がいくつも用意されていることが多いです。


その場合は円卓や椅子があらかじめ配置されているので通訳者は言われた場所に座ります。

 

今回は円卓はなかったのですが、席が指定されていない場合は、基本的には要人の斜め後ろに座ることが多いです。


あと、国際会議では誰と誰が会ったかが重要な意味を持ちます。なので記念写真は大切。

 

会談途中は構わないですが、最後の記念写真撮影では映り込まないようにサッと席を外すようにしましょう。


とは言え、しっかり私もしっかり映り込んでいる画像がサイトにアップされていました(汗)。

 

フランス首相府海洋担当長官とのバイ会談の様子(ウィスパリングをしているところ)
ウェブサイトより

 

⑧通訳デリバリーは一語一句チェックされている

 

要人の発言内容はもちろんですが、通訳者の訳は省庁や内閣府の職員の方々が一語一句チェックしています。


要人同士、どういうやり取りが行われたか記録を取るのも外交にかかわる彼らの重要な仕事。

 

べつに通訳者のクオリティを疑っているわけではないですし、重箱の隅をつついているわけでもないです。


通訳者というのはいつもまな板の上の鯉状態。常に通訳のデリバリーを誰かにチェックされている状態に慣れること。

 

事前準備をしっかりしていれば不安に感じることはないです。


自信を持って挑めばよいと思います!

 

⑨服装は基本スーツかジャケット着用

 

日本のビジネスシーンもカジュアル志向ですし、アフターコロナもあってビジネスシーンでは男性はノーネクタイ、女性もビジネスカジュアルで会議に出る方も少なくありません。


テックカンファレンスの同通ブースならお客様にも会うことが少ないのですし、周りはカジュアルなのでワンピースにカーディガン、セーターにパンツの服装でも特に問題ないと思います(但しあいだに商談通訳が入る場合は注意)。


外交の場ではどの国の政府も皆さんちゃんとネクタイ、女性もスーツかジャケットを着用しています。

 

服装は通訳案件ごとに悩みがちですが、私はカジュアルすぎて居心地が悪くなるより、


きちんとし過ぎたと感じるほうが気持ち的にラクです!

 

あとは男性が多いと向こうから「黒い軍団」が歩いてくるように見えてとても圧があるので敢えて明るい色を着用するようにしています。


かといってドピンクや信号のような原色は着ないし持ってないですが、仕事着やバッグや靴はコーディネートしやすいニュートラルな色味を購入するようにしています。



個人的には派手でない品の良いコーディネートを目指したいのですが、ファッションってなかなか難しいですね!


⑩パスポートの提示が求められる場合も

 

例えば国連本部はNYのマンハッタンにありますが、アメリカ国内ではなくすべての加盟国に属する国際的な領域という認識なのでパスポートがないと入れないですし、国際会議でも同様の場合が多いです。

 

今回もレジストレーションでIDバッジを受け取る際にパスポートの提示を求められました。

 

うっかりしていると通訳者だけ入れないということにもなり兼ねないので気を付けたいところです。


以上が「バイ会談の留意点10」でしたが、いかがでしたか?


人のよって気づきは様々だと思いますが、民間の仕事とは雰囲気も要求されることも違うのでたまにこういった環境で通訳をすると私なんかは新鮮に感じます。


同業者や通訳勉強中の方々の何か参考になれば嬉しいですうずまき

 

こんにちは、会議通訳者・EJ EXPERT代表のブラッドリー純子です。

 

しばらくは在宅リモートで…と思っていたのですが今週も出張が入ってしまいこれで4週連続...。

 

現在はLPGAの同通案件でアリゾナ州にいます。

 

今月初め、4泊5日でパナマ共和国に滞在しました。

 

パナマを訪れるのは初めて。パナマ運河くらいしか知らず、夫側の遠い親戚にパナマ人が1人いるくらいです。

サクラメントからヒューストン経由で国際線でパナマまで。西海岸からだと飛行時間は合計7時間ほどかかります。

万が一遅延した場合を考えて1日早く現地入りしたのですが、リモート通訳案件も夜に2つ入っていたし、3時間の時差調整+事前準備をしたかったので昼間はジムに行き、夕食はルームサービスをお願いしました。

結局自由時間も少なかったのでほぼ会場との往復のみ。周辺を散歩してデリカで買い物したり、最終日の晩にレストランに行ったくらいです。

今回の出張は、アワオーシャン会合2023という国際会議で昨年はパラオ共和国で来年はギリシャが開催国です。

 

日本内閣府からの依頼で某大臣が出席されるため、日英通訳者として現地入りしました。


アワオーシャン会合は、米国大統領海洋分野担当特使であるジョン・ケリー元国務長官が発起人となり、以来多くの政府高官や非政府団体などが列席する会合となっています。

 

 

 

海洋問題を6つのテーマで話し合い、何かを採択するという場ではないのですが、各国それぞれが海を保護するためのコミットメントを発表する場。

 

通訳分野的には国連海洋会議やCOP会議と似ており、頻出用語も共通しています。

 

宿泊ホテルはダウンタウンにあるインターコンチネンタル。オーシャンビューにアップグレードしてくれたようです。

 

こういう政府系のイベントは各国の諸事情により、細かいアジェンダが直前まで決まらないことが多んですよね。

 

なので通訳準備にある程度まとまった時間が直前に取れるか、が受けるかどうかの決め手になると思います。

 

 

現地入りしてから資料がきたり、下調べすることもあるので別にリモート案件を入れる場合はミニマムにするほうが得策です(私は現地時間で晩スタートの指名案件のみ2件入れていました)。

 

パナマ国際会議場の外

 

今回、日本政府側の日英通訳者としてメイン会場でのプレナリー会議の同通、連続して行われる各国大臣や大統領のバイ会談(二か国会談のこと)、サイドイベントを担当しました。

 

 

私が行った事前準備をシェアしますね。

 

 

 

国際会議・バイ会談の事前準備


① 確定後は、時間を見つけては去年のパラオ共和国での会議を動画で流し聴き(2022年度の会合はYouTubeのフル動画あり


② 世界経済フォーラムのウェビナーで通訳した際に作成した単語リストの見直し


③ 日本政府から数日前に送られてきた資料で機内とホテルの部屋にて勉強


④ 現地入り後に出来上がってくる発言用の原稿を翻訳(会場での移動が多く荷物が重くなるのでPCではなくスマホアプリを使用)

 

⑤ バイ会談で通訳する要人のセッションを聞き逃した(または通訳しなかった)場合は、その日アップされる動画を見て内容を確認した

政府案件というのは民間企業と比べて通訳者としての押さえどころが違う部分もあるので

私の経験ベースの話ですが、これだけは知っておいた方が良いポイントを次回シェアできればと思います。普段は民間企業の通訳をすることがほとんどなので、外交の場での通訳業務が民間とどう違うのか自分なりの気づきをお伝えします。

 

 

今回改めて感じたのは、もちろん高度な通訳技術ありきですが、それ以外にも求められる要素が多いという事。

 

出動前のワンショット。パナマは真夏の蒸し暑さで春夏用のスーツでも外は暑かったし、すぐに髪もペシャンコに。


「国際会議や政府間のバイ会談なんてまだまだ先の話…」と油断している同業者には

「いやいや意外と回ってくる機会は多く、その時になってパニックになるパターン」が多いという事も可能性としてお伝えしておきます!

 



【後半】の記事でバイ会談の留意点10をお伝えしますねうずまき