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辛容疑者、拉致で十数人の協力者網 在日朝鮮人中心に

辛光洙容疑者

 大阪市の中華料理店店員原敕晁(ただあき)さん(当時43)が80年に北朝鮮に拉致された事件で、主犯とされる元北朝鮮工作員の辛光洙(シングァンス)容疑者(76)=地村保志さん夫妻拉致容疑などで国際手配=が、日本国内で少なくとも十数人に上る協力者網をつくりあげていたことがわかった。警視庁公安部は中華料理店経営者(74)ら関係者からの聴取を進め、辛容疑者ら2元工作員を国際手配するとともに、協力者網の解明も進める方針だ。

 辛容疑者が韓国で受けた判決などによると、協力者の多くが日本で暮らす在日朝鮮人とされ、パチンコ店経営者や製造業者のほか、家宅捜索を受けた中華料理店経営者らも含まれていた。

 辛容疑者は工作員として73年に日本に初めて潜入した後、主に在日朝鮮人に接近し、母国にいる親族の身の安全をちらつかせるなどの手口で、次々と協力者などとして抱き込んでいき、逮捕された85年までに、少なくとも十数人に及ぶ協力者網を築いていたという。

 原さんの拉致にかかわったとされるのは辛容疑者を含めて、辛容疑者とともに国際手配される元工作員の男(78)、在日朝鮮大阪府商工会の会長(当時、故人)、同商工会理事長だった中華料理店経営者の4人。こうした人物も、協力者網に名を連ねていた。警視庁公安部では、この協力者網が、辛容疑者ら北朝鮮工作員による日本人拉致を支えていたとみている。

●「協力せねば息子に悪いことが…」

 原敕晁さん拉致事件で主犯とされる辛光洙容疑者は、複数の拉致容疑で国際手配される見通しとなった。警察当局は、辛容疑者ら北朝鮮工作員が秘密裏に拉致を繰り返すことができた背景に、在日朝鮮人の存在があったとみる。北朝鮮に渡った親族を「人質」に、その安全を盾に協力を強いる手法だった。

 関東地方の閑静な住宅街。在日朝鮮人の男性は「何も話すことはありません」とだけ話すと、足早に家の中に消えた。

 男性は東京・三鷹市役所の警備員だった久米裕さん(当時52)を77年に拉致した実行犯の1人とされる。

 男性の前に突然現れた北朝鮮の工作員は、北朝鮮で暮らす男性の妹の存在をちらつかせた。「妹のため」。選択の余地はなかった。

 辛容疑者ら北朝鮮の工作員がターゲットにしたのが在日朝鮮人社会だ。辛容疑者に対する韓国の判決文などは、その手口を詳細に浮かび上がらせる。

 60年代に進められた在日朝鮮人の帰国事業で、北朝鮮に親族が渡った在日朝鮮人がねらわれた。

 「協力しなければ息子の身の上によくないことが起こる」。73年に日本に潜入した辛容疑者は、大阪の在日朝鮮人女性を訪ね、そう脅した。辛容疑者は、北朝鮮に永住帰国した女性の息子の写真と手紙を持っていた。

 長野県の在日朝鮮人の男性も、北朝鮮にいる息子の手紙を見せられ、協力を強いられた。男性の別の息子を通じて、原さん拉致に加わった元工作員の男(78)とも知り合うなど、着々と協力者網を築いた。

 原さん拉致にかかわったとされる在日朝鮮大阪府商工会の会長(当時、故人)も、北朝鮮にいる2人の息子の写真を突きつけられ、原さんが働いていた中華料理店の経営者(74)に話を持ちかけた。会長は工作資金として辛容疑者に3千万円を提供するなど、経済的な支援も行ったとされる。

 辛容疑者は日本で一時期、同居していた在日朝鮮人女性とも協力者を通じて知り合った。原さんの拉致後、辛容疑者はこの女性にこう語ったという。

 「あなたと結婚するために(日本に)来たんじゃない。祖国統一のために韓国へ入らなければいけない。革命を起こすんだ」

asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社会面

欧州議会 拉致問題で公聴会

EU・ヨーロッパ連合の議会にあたるヨーロッパ議会は23日、拉致問題を含めた北朝鮮の人権問題をめぐって公聴会を開き、北朝鮮から脱出したいわゆる「脱北者」の女性らが、問題の解決に向けてEUの協力を求めました。

この公聴会は、ヨーロッパ議会の中道系の政党で作る会派が、北朝鮮の人権問題への関心を高めようと開いたもので、「脱北者」2人のほか、日本からも齋賀富美子人権担当大使が招かれました。この中で「脱北者」のリ・シンさんは、8年前に中国へ脱出する際人身売買組織に捕らえられ、家族が離れ離れになってしまったことを説明したあと、「北朝鮮の人権状況が一日も早く改善されることを祈っている」と涙ながらに訴えました。また齋賀大使は、北朝鮮による日本人の拉致問題を説明し、「北朝鮮政府は人権状況に対する国際社会の声に敏感になっている。拉致問題を解決するためにも、連帯して圧力をかけ続けることが大切だ」と述べ、EUをはじめ国際社会の協力を求めました。EUは、3年前まで北朝鮮と人権問題を協議してきましたが、現在は北朝鮮側が協議を拒んでいるだけに、ヨーロッパ議会では、北朝鮮の人権問題を重要な課題として取り組むよう加盟各国に働きかけることにしています。
NHKニュース

補助工作員の活動実態解明へ

大阪の原敕晁さんの拉致事件で、北朝鮮のシン・グァンス元工作員とともに関与の疑いが強まっている元工作員の男は、ほかの複数の日本人についても、身辺を調べたり韓国の軍事情報を収集したりしていたことがわかり、警視庁は、シン元工作員を影で支えていた補助工作員の活動実態を解明する方針です。
原敕晁さんの拉致事件で警視庁は、現在韓国にいる78歳の元工作員の男が、北朝鮮の元工作員シン・グァンス容疑者(76)とともにかかわっていた疑いが強まったとして、当時、原さんが勤めていた大阪の中国料理店や在日本朝鮮大阪府商工会などを23日、一斉に捜索しました。今後、拉致容疑で2人の逮捕状を請求し、国際手配する方針です。これまでの調べで元工作員の男は、昭和51年にシン元工作員の活動を影で支える補助工作員になり、ピョンヤンの招待所で工作員教育を受けました。その後大阪に戻った男は、原さんのほかにも「バンドウ」という日本人に接触したり、「ヤマモト」という人物の身辺を調べたりしていたということです。さらに、シン元工作員の指示を受けながら韓国国内にたびたび潜入し、空港の軍用ヘリコプターの配置や海岸線の警備状況など、軍事情報の収集もしていたということです。警視庁は、元工作員の身柄の引き渡しを韓国に求めるなどして、補助工作員の活動実態を解明する方針です。
NHKニュース