◆苦しいスルガ銀行
今月5日に、スルガ銀行に対して、
金融庁は6ヶ月間の一部業務停止命令を出しました。
これにより、スルガ銀行は、
・収益不動産への新規貸出
・住宅ローンへの新規貸出
これらの貸出が完全にストップとなりました。
過去16年間で、地銀に対して、
業務停止命令が下ったのは”初”であり、
6ヶ月間の停止は過去最長の処分です。
(これまでの業務停止命令は都銀ばかり)
収益不動産への融資でしか
利益の出していないスルガ銀行にとっては、
収入の柱を折られるかととなりました。
預金残高も急激に減っており、
スルガ銀行はかなり苦しくなってくるのでは、
ないでしょうか。
◆不動産業者の相次ぐ廃業
そして、このスルガ銀行の融資ストップにより、
スルガ銀行ありきだった不動産業者が、
バタバタと店仕舞いを始めています。
六本木に事務所を構えていた水戸大家さんは、
自身のメルマガやブログで、
「融資が厳しい」「融資が厳しい」
と度々発信していました。
スルガ銀行だけでなく、
あたかも「融資全体が締まっている」かのように、
発信していました。
しかし、今年7月に、
「不動産投資の最前線 2018年」テーマで、
セミナーを開催しましたが、
会員の物件購入事例や融資事例を聞くと、
今年に入っても影響なく物件を買っている人もおり、
多少影響があるかな程度だという認識でした。
(融資審査が厳格化されているの確かですが)
スルガショックの影響により、
本当に融資は厳しくなっているのでしょうか?
10月10日に「全銀協の預金貸出速報」が出ていますので、
グラフ等で確認していってみたいと思います。
貸出残高が減っていれば、
融資が厳しくなっていると言えるからです。
◆貸出残高は減っているのか?(1)
まずは、全国銀行協会の発表している数値から、
確認してみたいと思います。
全銀協とは、
国内で活動する銀行、銀行持株会社および
各地の銀行協会を会員とする組織です。
余談ですが、今から20年ほど前、
大学生の頃に全銀協でアルバイトをしていました。
手形の振り分けという仕事だったのですが、
ものすごく楽な仕事で、
時給も高かった思い出があります。
さて、10月10日に発表された
「全銀協の預金貸出速報」の、
「銀行カードローン等・アパートローン残高」を読むと、
~ 報告書一部抜粋 ~
Ⅱ.貸出金の動向
全国銀行の貸出金は、期中 4 兆 9,131 億円、1.0%増(前年同期は期中 1,010
億円、0.02%増)となった。
各業態における 30 年度上半期中の主な動向は、次のとおりである。
2.地方銀行
地方銀行は、期中 2 兆 9,893 億円、1.5%増(前年同期は期中 3 兆 2,748
億円、1.7%増)となった。
3.地方銀行Ⅱ
地方銀行Ⅱは、期中 5,018 億円、1.0%増(前年同期は期中 6,596 億円、
1.3%増)となった。
~ ここまで ~
収益物件の融資を、
地方銀行から受けている人が多いかと思いますが、
・第一地銀 1.5%増
・第二地銀 1.0%増
と減るどころか、
増えていることが分かります。
グラフでみるとほぼ横ばい。
若干鈍化しているものの、
かぼちゃの馬車問題が発覚後も、
安定して増えていることが分かります。
(最初このグラフをみた時、
「おぉ~、ものすごく落ちてる」と思いましたが、
下落しているのは信託銀行でした)
◆貸出残高は減っているのか?(2)
続いて、日本銀行の公表している、
統計データからも確認していこうと思います。
日本銀行のデータでは、
アパートローンが含まれる
「個人による貸家業」の「設備資金新規貸出」
で見ていきます。
※法人で融資を受けている人も多いと思いますが、
今回は個人のみの抽出となります。
すると、2018年4月~6月の第1四半期は、
融資残高が減っているように見えますね。
四半期ごとのデータ推移なので、
少し分かりづらいため、
2018年4月~6月の第1四半期に絞って、
してみると・・・
たしかに、2016年を境に、
減少していっていることが分かります。
ただ、今回は個人のみの抽出ですので、
法人に融資をしないスルガ銀行の数字が、
如実にあらわれているとも言えます。
(多法人スキームなどは法人で、
バンバンを融資を受けますので)
また、2014年水準に戻っただけであり、
2009年~2012年よりも高く、
依然として融資は出ていると言えます。
◆まとめ
以上のことから、
「融資が厳しくなった」というのは、
あくまでも「融資審査が厳しくなった」だけであり、
「融資は依然として出ている」ということが分かります。
不動産業者がバンバン廃業しているのは、
スルガ銀行ありきだった業者や、
不正が判明して銀行を出禁になってしまった業者だと、
考えられます。
また、ふかしての融資は受けられなくなりましたが、
これは当然と言えば当然のことで、
「融資が厳しくなった」というよりは、
「あるべき姿に戻った」というのが、
正しいのではないでしょうか。
実際に、僕も先日ある金融機関さんと話しをしていましたが、
「これからも基準に合う案件であれば、どんどん融資したい」
と融資にはかなり積極的でした。
スルガスキームのような不正はお断りだけれど、
しっかりと収益や積算が出ている物件であれば、
今でも融資を受けることができるのです。
ですので、「融資が出ない」というのを盲信して、
不動産投資を簡単に諦めるのではなく、
自分の目で確認してみることをオススメします。
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