自らの仕事に関する 興味関心×能力×価値観 を把握する事がキャリア選択で極めて重要である、

ということを何度も強調してきた。

 しかし最近大学院でのキャリア開発に従事して、「能力」の正確な自己認知の難しさに

直面している。

 大学入試における能力はある程度標準化されている。(それでも複雑ではあるが)

しかし就業における【能力】とは何か?と考えた場合の基準が難しい、と感じている。

 その為 興味関心・能力・価値観をそれぞれ1シートでマインドマップのように図示化して、

自己認知しやすいツールを開発中である。

 自らの興味関心や価値観については、認知に至るプロセスであまり痛みを伴うプロセスはない。

 しかしながら 能力 に関する自己認知のプロセスにおいては、

デリケートなため講義でもカウンセリングでも難しさを感じている。

 その為とりわけ「能力」に関する自己認知のプロセスシートとでも呼ぶべきツールの開発に

注力しているが、大学院生の場合、自らの研究に対する自己効力感が高いだけに

客観的な能力の評価が難しい。

 とりわけ過去に価値の高かった、そして現在ではニーズの低い研究分野での【能力】

については大きなギャップが生じる。

 研究過程でのポータブルスキルに焦点を当てれば、多様な能力が見えてくるが、

大学院生は目の前の研究内容に注目しているため、汎用性の高いポータブルスキルを見落としがちである。

 その意味でも【能力】を自己認知できるプロセスシートの開発に

全力を注いでいきたい。


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昔スカウト面接に立ち会った時のことが思い出される。

面接企業A社は規模こそ大きくは無いが、売上高利益率が20%を超える高収益企業で、

候補者Cさんの面談にも社長と会長が立ち会った。

 候補者の能力・経験・年齢などを考慮すれば、ベストマッチングの企業・職種であった。

 2時間に及ぶ面接が終了し、候補者を外して、A社の会長・社長に結果を伺うと、

「ベストな人材だ!」という会心の反応。

 その後一流の料亭での会食もセッティングされ、スカウトとしての立場は

最高だった。

 料亭を出て、会長・社長と次回の会談の約束を終えて別れ、

候補者に「どう?」と切り出したところ、

「とても良い企業で、私にはもったいない位です。」との回答。

 (だろう!と思いつつ)「(この会社に) 決める!?」と尋ねると、

「しかしやはり、1次選考に合格したB社の選考が終わってから・・・」

との回答。(どうしても希望が諦めきれないようだ。)

 本人の自尊心を傷つけること無く、「でもこれだけの企業から、良い条件で誘われることは

まず無いよ。B社の選考はまだわからないですよね?」と聞くと

「その通りですが、やはりB社の選考後にお返事したいと思います。」との返事。

 出会ってからの期間が短く、ラポールが構築できていない中で、

ベストマッチングの企業に出会ってしまった事が、幸運でもあり、不運でもあった。

 結局彼の意向を尊重し、B社の選考を待つこととし、A社にも了解を頂いた。

 B社の選考はそれから3週間後に行われ、それからまもなく不合格の連絡が

彼に送られてきた。

 前回の面談から1ヶ月後、A社の会長の発言は一言「縁が無かったね」と。

有り難いお言葉だが、残念な言葉でもある。

 候補者Cさんはいずれの企業とも出会えず、それからの消息は不明だ。

 
 自らの能力を過信してはいけない。目の前にあるチャンスを逃してはいけない。

 そんなに多くのチャンスは来ない。

 あなたは「選ぶべき時を外す人ですか、それとも掴む人ですか?」


  新幹線の自由席で、乗り込んで最初に見つけた空席が、あなたが座るべき席なのです。

それ以上先に行っても、あなたの座るべきシートは残っていない、と考えて下さい。

 チャンスは最初に掴む。

 
 良い選択を!

 

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昨日博士後期課程の就活生との面談をしていて感じたことがある。

学部時代も修士終了時も就活をしたことの無い彼は、

自分を何も知らない、ということである。

 国立大学の博士後期課程を2年半で早期終了した

極めて優秀な人材で、どこの企業にでも合格しそうな彼だが、

化学メーカーから電機メーカー、情報システム関連など

受験している企業は様々。

 技術系の方だが、話もできて人間的にも明るいとてもさわやかな方。でも

自分の事を全く理解していない。

 私以外のメンターの方が、「・・・(A)・・・」といえば「Aですね!」

別のメンターの方が「・・・(B)・・・」といえば、「Bですね!」

と答える印象。今までも同様であったという。

 大手電機メーカーの最終選考の様子を聞けば、どう考えても合格する内容を

自己認知の不足と企業リサーチの不足で、自らが破壊している印象すらある。

理論的飽和、という考え方がある。


 理論的飽和とは分析過程においてそれ以上新しい「カテゴリー」、「概念」、「次元」、「特性」、「出来事」が出てこなくなる状態

 と定義されている(Strauss and Corbin, 1998)。

 自己分析でも企業研究でも理論的飽和に到達すれば、その企業の合否が見えてくるはずである。

 闇雲に受験企業を増やしても、合格すればともかく、不合格を繰り返せば、自己効力感=自分への自信、

が損なわれて、やる気をなくしていく。


 自己分析も企業研究も、是非理論的飽和に到達する状況まで自分を追い込んで、

就活を進めて頂きたい。

 競争倍率は昨年度の1,28倍から今年は1,61倍に上昇した。
 
 まだ諦める必要は無い!


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先日ある芸能人が、就活学生が100社以上エントリーすることに対して、

「100社なんてそれは相手に失礼よ!」と発言した事が、ネットで大きな問題に

なったらしい。

 いわく「就活の苦労も知らない芸能人が勝手なことを言うな!」

 いわく「100社エントリーしても、報われない就活生の気持ちを考えろ!」

との理由からであった。

 一方最新号の「WEDGE」では、「就活」が日本をダメにする

と題して、今月号の紹介ページでは以下のような記載がある。

「学生が大量にエントリーしたところで、
企業の採用数は変わらない。
何十社と連続して落とされることで、
学生は社会に出る前に自信を喪失する。
企業も大量に落とす作業が必要となり、
選考そのものに時間をかけることができなくなる。」

 このブログで何度も指摘しているように、人間の行動を成功に導く鍵は

自己効力感である。「自分はやれば、できる!」という自分に対する自信である。

 それは、1、成功体験 や 2,成功者をイメージできる代理体験 及び

3,自分を成功に導くという言語的説得などで、自己効力感を高めることが出来る。

 そして逆に言えば、重なる失敗体験は、自己効力感を下げる傾向にある。

 以前マジカルナンバー7±2,というジョージ・ミラーの考え方を

このブログでも紹介したが、私も就活講義では、大学生の方に、

「出来れば7-8社、最高でも10社以内で内定を決める方が良い」という

お話をしている。

 「そんなばかな!10社で決まるならば苦労はしないよ。」と

おっしゃる方も多いと思う。しかし大学でのキャリア講義をした大学生や

企業で面接代行して合格している方々は、なべて面接・選考10社以内で

決めている方が圧倒的である。

 勿論今の時代ナビでのエントリーは、数十社に上るかも知れないが、

実際の訪問や面接となると、成功者の平均値は8-10社であると思う。
(ナビでの単なるエントリーは実質的な企業選択では無い。)

 実際のところ、何度も申し上げるが、面接で成功するための企業研究には

1社あたり数十時間を要する。(インフォーマルな情報収集のためのOB・OG訪問を含めて)

 そう考えれば、第1志望企業群として活動できる企業数はやはり10社以内が

上限である、と考える。

 面接ではネットに掲載されている情報はマストだが、それさえ答えられない学生が、

合格するはずも無い。

 インフォーマルな情報を充分に収集しても、必ず勝てるかどうかわからない。

ただこれは入社後のビジネスプロセスとリンクする。それが出来ない学生は

当然ふるい落とされる。

 「仮想的有能感」を持つ高校生でも、自らの偏差値が50であれば、

偏差値60の大学・学部には手が届かないことを理解している。

 しかし就職偏差値50の大学生は、就職偏差値65の大企業に平気で

エントリーする。(ウェブから無料で、クリックする行為を【エントリー】と呼ぶことが
大きな間違いの元である。)

以前も記載したが、120名採用の大手食品会社へのES応募数は

5万通であった。わかりやすく言えば120名採用に、5万120名がES応募しても、

5万人はESで不合格となる。通過することは宝くじを当てることよりも確率が低い。

 1通あたり平均3時間以上必要となるESが、5万人分不合格となれば、

3時間×5万人 = 15万時間の浪費となる。


 
 将来の我が国を背負う若者の15万時間が無駄になり、それが数千社で

繰り広げられているとするならば、有意な若者の貴重な時間が

無駄に消えている計算となる。「WEDGE」では、下記のような見出しもある。

◎企業も学生も大学も〝衰弱〟するガラパゴス就活
◎ドワンゴ 川上量生会長インタビュー
「だから私は受験料徴収に踏み切った」

 ドワンゴの有料受験については、来年度は取りやめるように厚生労働省から

【指導】があったとのことである。

 しかし大学受験料が無料であるのか?無料で大学受験が出来る方法など聞いたことも無い。

 就業を目指す方は、スキル×モチベーション×マッチング の基本方程式の中でも

マッチングについて「仮想的有能感」を捨てて職業選択を行えば、自己効力感を

低減させること無く、自己にふさわしい道が見つかる。


 興味関心×能力×価値観 、というキャリア・アンカーに従い、自己認知力を高めて、

自己効力感を低減させない、就活を行って欲しい。
 

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先日合同説明会でお会いした理工学部建築科中退の方が企業面接にお越しになった。

 彼とは先日1時間以上 興味関心・能力・価値観 のディスカッションをしたので、

自らの就業方向をある程度明確にしてくれた。

 ただまだ21歳、そして中退という経歴と、なによりもその経歴における自己効力感の低下が、

スムースな面接進行を妨げてしまう。

 コンビニなどでの接客経験などは、ビジネス面接では役に立たない。

 東海地区はある意味で関東地区以上に求人倍率が高く、

基本的には企業は採用にウェルカムではあるが、ビジネスコミュニケーションが続かない。

 それでも企業側はウェルカムだったが、ご本人は「やれるかどうか自信が持てない。」
 
という判断だった。

 経験のない彼には、客観的にみて、良い企業・良い仕事だったが、

彼には 一歩が踏みだせないようだ。

 就活生の多くも身の丈以上の企業にエントリーし、

不合格を重ねる中で、自己効力感をどんどん下げていく。

 ブラック企業がよく取り上げられるが、ブラック学生にならないように

個人の能力=エンプロイアビリティーを高めていくことが、

重要である。

 

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先日の大学3年生向けの集中講座では、幾分プログラムを変更して、

「今知りたいことは?」「今教えてほしいことは何?」という視点で

講義を進めた。

 当初のプログラムと異なり、幾分講師としては、手ごたえが

掴みにくかった。満足してくれているかが、わかりにくかったが、

アンケートでは、

「一人一人に合わせてやることは、とても大変だったかと思いますが、
とても嬉しく、助かります。」

「実際に模擬面接をうけながら、その時々にすぐ質問ができるので、良かったです。」

「他の人のPRを聞けて、自己のPRを再考することができた。一人で考えるよりも
皆に聞くことも大事だと思った。」

「朝の発声練習は大変でしたが、自己PRも話し方や声のトーンで印象が変わることがわかりました。」

「頭で考えるだけでは身につかないので、今日のように理解・実践・定着が一日でできたので嬉しかったです。」

「今回参加の目的が、自信をつけることでした。今までぼんやりとしていたことが理解でき、自信がつきました。」

「実際に何度も練習できたので、本当に役立ちました。」

「本日は『就職とは何か?』という基本が理解できたので、とてもよかったです。」

「面接を実際にシュミレートで来たので、とてもよかったです。」

「『企業目線』が難しかったです。今まで生きてきた学生目線との違いがとても理解が難しいです。」

「自己分析が自己満足ではいけないことに気が付きました。」

「面接講義で、本当に多くの質問をしていただき、その場で答えることで、自信がつきました。」

 本当にうれしい回答に感激した。

 一人一人が、自己認知と企業・社会認知を高めて頂き、その先の世界認知や歴史認知を

深めていただき、社会参加の中で自己実現をしてくれれば、とても有難い。

 

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東京の女子大学で開催されているキャリア集中講義

「職業選択と自己実現」2日目は、大雪のため、本日4限目が延期となった。

 会場の大学は八王子市に位置し、朝からの大雪である。

 それでも会場には1時間前に入った私よりも、先に来ている学生がいた。

 嬉しい限りである。

 前日の自己認知・企業認知・社会認知の講義・演習から、

午前中は自己PRの完成を目指し、もうお一方の講師と共に

2グループに分かれて、個別指導を行った。

 時間の制約もあり、私としては幾分消化不良気味であったが、

終了後のアンケートでは、

「自分が今までわからなかった事を指導して頂き、とても助かりました。」

「他の人の自己PRを聞くことが出来て、自分のPR内容を客観的に考えることが出来た。」

「一人で書くより、みんなに聞くことも大切だと感じた。」

「自分についてもっと良く知っておく必要があると気がつくことが出来ました。」

「昨日も今日も実りの多い一日となりました。」

など嬉しい内容であった。

 今回は事前の講義内容から逸脱し、あえて状況に応じた

プログラムに切り替えているが、(講師はとても大変だが、)

それが好評の原因なのかも知れない。

 八王子の雪はまだまだ降り続き、明日の開催が危ぶまれるが、

最善を尽くしたい。


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先日中途採用の合同説明会に参加した際、大学の建築科を中退した方と

お話をした。

 高校も建築科で、推薦で大学の建築科に入学したとのこと。

でも授業について行けずに、中退をされて、今はコンビニや書店でアルバイト中

とのことであった。

 数社会場のブース訪問して、私の担当企業にお越しになったが、

一言で言えば、好青年であった。

「もっと人を頼れば、良かったと思います。」

中退した当時を振り返って彼は語ってくれました。

「今振り返れば、そうだよね。でもその当時のあなたの決断としては、

当時の決断が100点だから、振り返る必要も後悔する必要も

全く無いよ。」とお伝えしました。

 人はあの頃こうすれば良かった!もっとこうすればうまくいった、などと

考えますが、それは後からの思考で、その時々ではやはり

ベストな選択をしているのです。ただ総合的には自らの知見が足りなくて

後で考えることもあるのです。

 彼とは1時間半以上 興味関心・能力・価値観 のディスカッションをして

自らの就業における価値観を明確にして、別れました。

 彼が自己認知力を高めて、仕事の中で自己実現を図ってくれれば

幸いです。

 

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今日から数日、東京の大学で就活講座の一環として、面接対策講座が始まる。

夏と冬の集中講座で、4年目に入る。

有料ではあるが、例年に無く受講予約者が多い、とのこと。

アベノミクスの影響で、大企業の採用数は増大しているが、全ての

就活生に恩恵が行き渡る状況では無い。

 新卒者の競争倍率は1,28倍ではあるが、それでも昨年3月の卒業者55万人の内、

約20%、11万人余りが、非正規労働者もしくは未内定者であった。

 今回の講座は時期的に大学側からの要請で、面接対策講座であるが、やはり

自己認知の作業が基礎になる。その上での企業理解や社会理解である。

 興味関心・能力・価値観という就業における自己認知がなされないままに、

就活に入っても、残念ながら自分が求めるゴールが見えずに、

敗戦を繰り返して、自己効力感を下げるだけである。

 2年生の冬から受講してくれている学生がいるが、本人曰く

「自分の本当の気持ちを理解することが難しい」という。

 変わりゆく思いの中でも、なんとか自分をとらえて、

自己実現の道を切り開いてあげたい。

 

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「今年の若者雇用率40%台が危ない。」

これは、10月7日韓国の東亜日報日本版の掲載記事である。


http://japanese.donga.com/srv/service.php3?bicode=020000&biid=2013100783678

その記事によれば、若者(15歳から29歳)の雇用率が今年、史上初めて

40%を下回る見通しである、と告げている。

又その理由として、最大の原因は、大卒者が大手企業のみに志願するという、

ミスマッチが最大の原因であると報じている。

韓国のエコノミストは、「若者の雇用率の減少は、大卒後も数年間仕事を探さず、

就職準備をしている韓国的状況から起因する問題である。」と報じている。


我が国における新卒の一斉採用は、国際的に見ても特別なシステムであり、

批判の対象になる場合もあるが、若年労働者の就業率という点でみれば、

極めて有意なシステムである。

 海外では卒業前に就職先が決まることは少なく、卒業後に就職活動を

始めるケースが多い。

 毎年問題になる、我が国の「青田買い」だが、実はすばらしいシステムであると
言わざるを得ない。

 ただミスマッチの問題は共通の課題である。

 昨年度の調査では、2010年3月期に卒業した大学および専門学校生のうち,

2年後の2012年3月に正規労働についている割合は50%を切っている。
(2012年3月20日日本経済新聞記事)

 就業率が高まっても、その後の離職率が極めて高いため、若年労働者の

就業率は、海外並に近づいている。

 東亜日報の記事では、「政府当局も解決策を見つけられずにいる。」という記載がある。

確かに難しい問題ではあるが、大学生のみならず、高校生や、中学生に対しても、

単に数学や物理を教えるのではなく、どのように生きるのか、

どのようなキャリアが自分には望ましいのかという、

テーマでの授業が正課として中核に据えられなければ、

この問題は解決しないと考えている。


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