熱放射の理論5:プランクの放射公式の応用 | NOTE

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備忘録

 前回導いたプランクの放射公式(4-15)

から、熱放射に関する重要な法則を導く。

 

 ステファン・ボルツマンの法則

 式(4-15)の振動数を0から∞まで積分することで、全ての振動数の放射のエネルギー密度が得られる。

ここで、

のように変数変換を行うと、

と書ける。この積分はゼータ関数の定義式

から、s=4の場合

を用いて、式(5-2)は

と書き直せる。ここで、ζ(4)の値はζ(2k)=?で求めた式(9)にk=2,ベルヌーイ数B4=-1/30を代入して

となる。Γ(4)の値はガンマ関数の定義

より、Γ(4)=3!となる。これらの値を用いると式(5-5)は

となる。温度Tの係数は全て定数であるため、それぞれ

π=3.142,k=1.381×10-23[J/K],c=2.998×108[m/s],h=6.626×10-34[J・s]を代入すると、この係数は7.578×10-16[J/m3K4]となる。式(5-8)から、放射のエネルギー密度が温度の4乗に比例し、その比例係数が7.578×10-16[J/m3K4]であることが得られた。これは、ステファン・ボルツマンの法則である。□

 

 ヴィーンの変位則

 プランクの放射公式(4-15)

から、振動数の関数であるエネルギー密度は

であるため、この式を振動数で微分して、0となる値を求めることで、振動数の最大値が得られる。よって、式(5-9)から

となり、この式をx≡hν/kTとして解くと

を得る。このxについて数値的に求めると、x≒2.821となる。先ほど置いたxの定義より、νについて求めると

となり、温度Tの係数は全て定数であるため、k=1.381×10-23[J/K],h=6.626×10-34[J・s]を代入すると、この係数は5.880×1010[/s・K]となる。式(5-12)から、放射の振動数の最大値が、温度に比例し、その比例定数が5.880×1010[/s・K]であることが得られた。これはヴィーンの変位則である。□

出典:量子力学Ⅰ 朝永振一郎著 P.1~ 第一章エネルギー量子の発見

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  正確な熱放射の関数として、プランクの放射公式を得たことで、ステファン・ボルツマンの法則と、ヴィーンの変位則の係数を具体的に求めることができた。新たな関係性は特に導いていないが、これによって様々な方向から重要な法則が確かめることができるようになった。

 熱放射の理論についてはこれで終わることにする。次回からは、順番が前後してしまったが、電磁波の性質についていくつか確認しておこうと思う。