なぜこの戦争が、史上最大級の事件なのか
直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者による、本邦初の本格的入門書
http://www.bk1.jp/product/02383080
ミツゴ評価 ☆☆☆☆+☆×0.5(☆4.5コ)
<書評>戦争から眺めた中世
佐藤賢一である
佐藤賢一といえば 、貴族に反乱を仕掛けた農民が、捕らえた貴族の娘を全裸にして納屋に縛り付け 無理矢理水を飲ませて、耐えられずに・・・まぁ「しちゃった」のを見て 真面目な農民が「ひゃひゃひゃ、貴族の娘がナンボのモンじゃい!ワシら農民と変わらないじゃないか」と発狂した小説を書いた お方である(赤目のジャック)
そんなお方が書いた 百年戦争の本である
さて、戦争とは ある意味では社会システム同士の戦いでもあるから、当然 戦争には互いの社会システムが反映される
本書の狙いはまさにソコである
つまり 百年戦争を通して中世英仏の社会システムの構造とその変容をまとめた構成となっている
中世、国家の価値は低かった
国家とは所詮 地域や有力者の集まりであった
だから ある地域の有力者が国王と利害が合わなくなれば当然のように 他国と同盟を結んだりした
思えばこの百年戦争も「イギリスVSフランス」という国家同士の戦争というよりも「(イギリス王家である)プランタジネット家VS(フランス王家である)ヴァロア家」の戦争、いや戦争というより 多くの貴族や有力者を巻き込んだ相続争いといった性格が極めて強かった
要するに 王家の私戦に貴族や有力者が乗っかかったり 巻き込まれたりしただけなんだ
この時代、どれだけ国家が弱かったかといえば、恒常税がなかったくらいだ
いや だから庶民が楽という話ではない、庶民は庶民で土地の領主や教会に絞られていた
要は国税がないだけの話であり、地方税がバリバリあった という話
では?国の予算は何処から?となると、貴族でもある王家のポケットマネーから出ていた
つまり 王家の領地からの税収で国の経費を賄っていた訳だ
コレは結構重要な話だ
当時の国力はダイレクトに人口=農業生産に比例する
広大な沃土をもつフランスのソレはイギリスの3、4倍だ
なら何故 ここまでフランスが負けていたのかといえば 実際に戦争をしていたのは フランス王家+その支持者 だけだからだ(有力貴族のブルゴーニュ公はイギリスと同盟)
要は フランスは国力を集中できなかった という話
ソレを解決したのが国税の導入だ
当時は 十字軍への参戦や王の身代金等は臨時に国税をかける事が許されていた
それを戦費調達の名目で「恒常的に」取り立てたわけだ
税収の増加は戦費の増加になり 軍事力の増加につながる
結果としてフランスは勝った訳だ
この戦争を通じ フランスは近代的な租税システムをつくり ソレが「フランスという国家」に繋がっていく
そう この戦争の意義とは 「近代国家の誕生」である
内容はウィキペディアにどうぞ
http://www.bk1.jp/product/02578386
ミツゴ評価 ☆☆☆☆☆
<書評>許容も79 慈悲も79 新刊も79
面白い 早く新刊出せや
さてA君とは何か?早い話記号である
貴方は将棋のコマに個性や人格があると思うか?
いや我々はただ 将棋のコマ、例えば歩なら1つ前に進んでくれればソレでいいと思うだろう
つまり A君とは 没個性的な存在であり、本書は小野寺ゴーシの自己実現ストーリーでもある
本書の特徴は圧倒的な知識量である
皆さんはフランソワ・カリエールは読んだ事はあるだろうか?外交の教科書的な本だ
あるいはトゥキディデスは?戦略論の起源だ
孫子はどうだろうか?これを読まずに軍事は語れないだろう
本書はそういうネタが満載である
また 本書は非常にざっくばらんである
何故 世界各国は留学生を受け入れるのか?
何も陰謀でも外国に甘いわけでもない
何の事はない 外国のエリート候補生とのコネクション作り、あわよくば自国のシンパに染め上げる為なんだ
例えば 竹中平蔵の経歴を見ればよくわかる
また 何故戦争はスマート化しているのだろうか
ソレは 焦土から利益は上がらないからだ
要は敵国の破壊を抑えて 征服後の収奪を容易にするためなんだ
ネットで「外国はムカつくから焼け野原にしてやれ」的に言う方はいるが、焼け野原になった国からどうやって経済的収奪を行うんだろうか?
そう 政策とはあくまで損得勘定でやっている、それを徹底した小説でもある
面白いから オススメである
911以後 世界の枠組みは変わってしまったのか? 民族問題は「正義と悪」の二元論では割り切れない。
民族地図から読み解けば、複雑な事件も全く新しい答えが見えてくる!
http://www.bk1.jp/product/02722024
ミツゴ評価 ☆☆☆☆
<書評>民族問題の複雑さ
本書は題名通り民族問題について広く 適確にまとめてある
正直私のように深く狭く、のタイプの人間には書評は書きにくい訳でもあるんだが・・・・
何か書くか
民族問題とはたいてい 他の要素が強く絡む
例えば バルカン半島、旧ユーゴスラビア紛争では 豊かなスロヴェニアやクロアチアと貧しいセルビアとの対立があった
豊かさとは 地理的条件やその国の文化や風土に由来する事が多いので、それらを尊重すれば たいてい経済格差は開く
経済格差を縮めようとすれば 豊かな地域の自治権を脅かす形になりかねない
これは資源国に多く見られる構図でもある、資源の豊かな地域の民族とそうでない民族との対立やね(例えばビアフラ戦争やスーダン内戦、イラクのクルド問題にも北部のキルクーク油田が絡んでくる)
さて「豊かさは文化や風土を反映する」的な事を書いた
逆に言えば 経済的な成功を修めたいなら 民族固有の文化に変革を要求されたりもする
例えば アメリカやオーストラリアの先住民
伝統的な道具の狩猟採集や農業ではやはり生産は限られてくる、豊かになりたいなら都市や鉱山での生活をしなければならない事もある
当然 伝統的な生活は諦めなければならない
ならば、観光は?となる
観光となれば 「見たい人に合わせた」生活を強いられる事もしばしばある
例えば 先住民の人もTシャツを来て携帯電話を持ってたりするし、狩猟だって 伝統的な弓矢ではなく銃を使ったりもする
だが、ソレ見せて観光客がお金落としてくれるの?ていう話やね
伝統的な生活=近代的生活の否定 にしばしばなってくる
文化の保護と社会福祉、これは人権を尊重する先進諸国共通のジレンマとも言えるかもしれない
ちなみに学校教育にも地域言語(方言)の否定や国家への帰属意識の植え付けなんて側面は強い(興味があれば「最後の授業」について調べてみるのも一興、エルザス・ロードリンゲンはドイツ語圏だ)
だからといって「義務教育を廃止しろ」とはなかなか言えないでしょ?(だから「地域文化との両立」とかで苦労する訳だ)
また「民族」自体もしばしば政治性を帯びてくる、この辺が民族問題の複雑化と一般への理解不足の要因になっているだろうと思う
例えば 中華民国では五族協和(漢民族、モンゴル、チベット、満州、ウイグルは皆仲良く)という
だが 20世紀初頭の歴史地図を見れば明らかなように 5族の内漢民族以外は国境の民族(日本やロシア、イギリス)だったりする
要は 少数民族を手なづけて漢民族領域の防波堤にする目的だ(そもそも、これらの少数民族は清朝皇室に忠誠を誓っていたのであり、中華民国に忠誠を誓っていた訳でもない)
もちろん 日本の北海道の領有化にもそういう側面は強い、故に 対アイヌ政策にも当然反映されている
いや なんか重くなってきたな
最後にネタを
少し前 星条旗が中国製多数な事が問題 というか話題になった
で その中国 広東省でやたらカラフルな旗を作っていた工場が摘発された
その旗は中国で禁止されているチベット国旗だったのた!
なんのことはない 工場関係者は誰ひとりチベットの旗の事を知らなかった訳だ
では 締めくくりにこういう問題は難しい、という事で
http://www.bk1.jp/product/03377103
明治初年から第二次大戦終結まで、洋行しビジネスを開拓したサムライビジネスマン。
森村ブラザーズ、三井物産、三菱商事、日本郵船、横浜正金銀行、八幡製鉄、鐘紡、三菱造船、朝日新聞、毎日新聞など、「日の丸」を背負った大手企業の社員たちは異国で何を見、何をし、何を感じたのか。
ミツゴ評価 ☆☆☆☆☆
<書評>日本経済史の影の主役達
経済というものは概ね以下の様に発展する
1)農業→2)軽工業→3)重工業→4)サービス業
現在の先進諸国なら たいてい3)→4)へのシフト期間だろう
中国辺りなら 2)→3)だろうし、ベトナム辺りなら1)→2)だろうか?
戦前の日本のお話だ
戦前の日本は「生糸を売って軍艦を買う」という言葉があったように まさしく2)軽工業が中心的な国であった
それが変革を起こしたのが 第一次世界大戦であり、この頃から日本は鉄鋼や造船、あるいは化学産業へのテイクオフをなそうとしだす
矛盾した話だが 鉄を作るには鉄工所や各種インフラが必要であり そのためにはやはり鉄が必要だ
つまり重工業とは資本集約産業であり、その為には莫大な資本(生産設備)が必要である
そしてこれから重工業へテイクオフしようとする国には たいてい自前で設備を作る能力はない、結果輸入するしかない
だが 設備はタダではない、購入には外貨が必要であり それを獲得するには何か(この場合は繊維等)を輸出しなければならない
本書は そんな「貿易」に携わった商社マンやマスコミ人の記録である
商社、とは実はかなり幅が広い
例えば 日本がブラジルから石炭を輸入したいとする
まずいるのが船である、もちろん輸送船は動かなければならないので船員を集めたり 航路のマネジメントが必要だ
次に保険も必要だ、また港湾の労働者も必要になる
また鉱山自体も必要だ、鉱山にバイヤーを派遣したり 自前で開発しなければならなかったりする
石炭を使う商売(製造業)も必要だし、輸出しなければならないなら、輸出相手も必要だ
そして何より大切なのは「お金」だ
順調に海外に送金できなければ商売にならない、貿易はリスキーな訳だからその辺の保証や金融的な裏付けはどうしても必要になる
そう、この本は急速に成長する日本経済を貿易面で支えた男たちのドラマでもあるんだ
またこの本にはもう2つの顔がある
1つは「乗り物」の本である
戦前は大陸間の移動は早くて2週間(シベリア鉄道の欧州行き)はかかるし 船旅ならさらにかかる
だからこそ 移動、つまり客船ビジネスや輸送業務は1つのネタになる
もう1つは「洋行」つまり海外ライフである
本書はロンドンとベルリンが目立つ
特にベルリンでの生活は詳しく、日本食の話やユダヤ系従業員がいなくなる話等 ある
また第一次大戦中、物資統制の中 「日本酒は日本民族の生活には欠かせない」とイギリスへの持ち込みを認めさせた日本人商社マン等盛り沢山
本書を読めば 戦前の日本がいかに開かれていたのか、いかに前向きな国であったのかがよくわかる
しかも物凄く読みやすい
是非オススメである




