三つ子のキャットシットワンのブログ-03377103.JPG

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明治初年から第二次大戦終結まで、洋行しビジネスを開拓したサムライビジネスマン。
森村ブラザーズ、三井物産、三菱商事、日本郵船、横浜正金銀行、八幡製鉄、鐘紡、三菱造船、朝日新聞、毎日新聞など、「日の丸」を背負った大手企業の社員たちは異国で何を見、何をし、何を感じたのか。

ミツゴ評価 ☆☆☆☆☆

<書評>日本経済史の影の主役達

経済というものは概ね以下の様に発展する
1)農業→2)軽工業→3)重工業→4)サービス業
現在の先進諸国なら たいてい3)→4)へのシフト期間だろう
中国辺りなら 2)→3)だろうし、ベトナム辺りなら1)→2)だろうか?

戦前の日本のお話だ
戦前の日本は「生糸を売って軍艦を買う」という言葉があったように まさしく2)軽工業が中心的な国であった
それが変革を起こしたのが 第一次世界大戦であり、この頃から日本は鉄鋼や造船、あるいは化学産業へのテイクオフをなそうとしだす

矛盾した話だが 鉄を作るには鉄工所や各種インフラが必要であり そのためにはやはり鉄が必要だ
つまり重工業とは資本集約産業であり、その為には莫大な資本(生産設備)が必要である
そしてこれから重工業へテイクオフしようとする国には たいてい自前で設備を作る能力はない、結果輸入するしかない
だが 設備はタダではない、購入には外貨が必要であり それを獲得するには何か(この場合は繊維等)を輸出しなければならない

本書は そんな「貿易」に携わった商社マンやマスコミ人の記録である

商社、とは実はかなり幅が広い
例えば 日本がブラジルから石炭を輸入したいとする
まずいるのが船である、もちろん輸送船は動かなければならないので船員を集めたり 航路のマネジメントが必要だ
次に保険も必要だ、また港湾の労働者も必要になる
また鉱山自体も必要だ、鉱山にバイヤーを派遣したり 自前で開発しなければならなかったりする
石炭を使う商売(製造業)も必要だし、輸出しなければならないなら、輸出相手も必要だ
そして何より大切なのは「お金」だ
順調に海外に送金できなければ商売にならない、貿易はリスキーな訳だからその辺の保証や金融的な裏付けはどうしても必要になる

そう、この本は急速に成長する日本経済を貿易面で支えた男たちのドラマでもあるんだ

またこの本にはもう2つの顔がある

1つは「乗り物」の本である
戦前は大陸間の移動は早くて2週間(シベリア鉄道の欧州行き)はかかるし 船旅ならさらにかかる
だからこそ 移動、つまり客船ビジネスや輸送業務は1つのネタになる

もう1つは「洋行」つまり海外ライフである
本書はロンドンとベルリンが目立つ
特にベルリンでの生活は詳しく、日本食の話やユダヤ系従業員がいなくなる話等 ある
また第一次大戦中、物資統制の中 「日本酒は日本民族の生活には欠かせない」とイギリスへの持ち込みを認めさせた日本人商社マン等盛り沢山

本書を読めば 戦前の日本がいかに開かれていたのか、いかに前向きな国であったのかがよくわかる
しかも物凄く読みやすい
是非オススメである