ゆっくりと

呼吸を繰り返して

深く、

深く。

その祈りを

蹂躙する様に


途切れた世界

遠くなるのは

忘れたい感情

消したかった貴方は

網膜に貼り付いて

溢れた涙すら

見えないふりをして


その目蓋の裏には

誰が待ってるというの?


此処に在る筈の

一つの言葉さえ死んで

落としてしまった意識に

貴方を重ねてみた


ひりひりと痛んでは

擦り切れた様な喉は

触れた空気に

何度も泣き出しそうなった

夢の様な場所で

静かに願いを呟いて


組み合わせた筈の

両の手は悲しく

届かない願いは

淋しげに

言葉を嚥下した


願いなら、祈りなら、

どうして褪せていってしまうの?


焼き付いた視界で

貴方が死んでいくなら

呼吸を繰り返した

その喉を食い千切って

静寂に身を躍らせるなら

貴方の罪でさえ

私の罰に変わるから


私は

此処にいましょう。


優しい声が

溶けていく様に

心の中で

君が笑ってる

雨は

とっくに止んでいた


立ち止って

手を伸ばす

開いたままの傘は

半透明にぼやけて

霞んだまま

「私を待っててね、」

そう零した言葉に

笑顔を繕って


君を閉じ込める為に

たくさんのモノを失って

空っぽにしてしまえば


きっと忘れてしまって

君と生きた僕の意味も

全部白くなって

それでもね、温かいから

嘘にならないんだよ

二人だけの言葉も

雨に流れる前に

抱き締めてしまえば

それでいいんだ、


曖昧に隠した

頬の色も

鉛色の空に

返してしまえば

茜に良く似た

二人だけの色彩で

君を愛するんだ


「私と一緒に居てよ、」


君が囁いた

その言葉の意味を

君に返す様に

掌を握り返して


忘れてしまえば

ぐしゃぐしゃに丸めて

棄ててしまったモノも

思い出さなくていい

傷付いてばかりの

僕には必要ないから


丁寧に感情に沿って

痛みを与える様に

君がくれたモノは

僕には苦しいだけで

「もう一回?」なんて

そんな優しさは

ただ辛く息苦しくて


もういいですよ、

言えない言葉は

棄ててしまって


呼吸音が遠ざかって

意識すらも置いてきた

僕の立ち位置も

隅っこに隠した感情も

蹴飛ばしてしまえば

誰だって見ないだろ?

そんなもんなんだって

分かってるんだ


忘れてしまえば、

思い出さなくていい

傷付けてばかりの僕も

見なくていいんだ


「もう一回、」


その言葉の先は

何があるというの?

皺だらけになった

棄ててしまったモノを

もう一度拾い上げて

広げたその中に

何があるの?


「もう一回。」


繰り返して、



忘れてしまった事も

もう一度笑う為に

貴方を置いてきた


それは幸せですか?

その色の中には

誰が眠っているのですか?

雨が滴って

足元を濡らしていく

アスファルトは色を失って

小さく綻んだ表情と

跳ねた水溜まりと心臓


貴方が幸せなら

きっと僕も幸せだ、


そう在る様に

静かに握りしめた

幼い二人の横顔

嫌だよ、って

呟いたままで


滲んだ世界を

迎える穏やかな朝に

曖昧な温度を抱えて

届かないはずだって

少しの痛みを携えて

貴方が笑わないから

僕は悲しくなって

花を手向けるんだ


解けた糸の先で

鮮やかなはずの色で

貴方が埋もれているから

また笑えるはずの

そんな未来を描いて

花束に沈んだ


貴方を迎えに行こうか。


握り潰した

空気を切り裂く音を

幽かに細めた

その双眸の裏で


どれだけ逃げれば

僕は重力に従って

空の果てに

終わりを見るなら

切り取って死んでいく

滲んだ茜と

放り出された

僕の居場所は

何処にもなくなった


白雨の世界で

貫いたその瞳で

力を込めた

嗄れた喉は

痛みを伴う鮮血、

開かない目蓋は

熱に浮かされた肌

固めた嘘は

剥がれていく


踏み出した足は

追い付けない空の色

雲間から覗く

蒼穹の声は

何時だって遠いまま


十字に切った

約束の朝

連ねた言葉の上で

誰が踊るというのか

従順な犬に

僕はなりたくないから


濁った世界が

網膜に張り付いて

火の海にさえ

飛び込めないまま

蹴飛ばした翼も

折り曲げた指先も


墜落していく


翼に理想を重ねて