TRIANGLE -45ページ目
嘘を吐く事にも慣れた
呼吸を止める前に
唇を強く噛んで
霞む空と
遠ざかる雲に
通り過ぎる風の戯言
何も知らないでくれと
願う事は簡単で
祈りを手向けて
立ち竦む少年達の
両の手は赤く染まった
この手は救う為に
何を犠牲にしてきた?
この手は誰を救えた?
何時だって答えは出なくて
その癖に強く握る
引き金に指をかけて
祈る様に目蓋を閉じた
拡大する世界と
スコープ越しの理想に
静かに呼吸を止めて
一拍、願う事を止めた
硝煙が立ち込める空が
茜を少しだけ溶かして
乾いてしまったようで
涙一つ流れやしない
迷いも躊躇も
もう何処にもありやしないけど
喉に貼り付いた
春の行方は分からないまま
木漏れ日が網膜を焼く
かくして瞳は見えない
それだけの話なのです。
最後になるように
意味のない言葉を並べ
羅列の先に僕も並んで
右ならえ、左向いて
淡い色彩の奥で
誰も笑っちゃいないよ
知らないふりなんて
大人のふりは出来なくて
此処に居る理由は
僕の存在意義は
網膜を焼いてまで
春を待ち焦がれてる
立ち竦む街灯
枯れた電柱の陰で
誰にも見付からない様に
ただ荒廃した大地を見つめた
何も見えない灰色の空は
僕の存在を忘れてしまって
鉄の森は優しい訳もなく
降り注ぐ悲鳴は
優しさを削り取っていった
首にかけたゴーグルは
明瞭な視界を少しだけくすませて
何も守れないなら、いっそ。
両手を手離した罪さえも
忘れてしまえば簡単な話で
正しいだけじゃ生きていけない
優しいだけじゃ生きていけない
正義を振り翳すには
振り翳せるだけの力がなければ
何の意味も持たないのだと
そして正義を盾に突き付けられた
その銃口には何の正義もないのだと
気付いてしまえばそれまでの
落日の街灯は罅割れて
嗚呼、世界は今日も
不明瞭に美しい。
ただそれだけのことであれ、と
願う腕の中で
また一つ、正義を振り翳した
縺れた足跡を引き摺って
落っこちてきそうな太陽を睨む
嗚呼、今日も此処は旗取り合戦で
生と死を問いかけるには
余りに重く答えのない世界は
両手に有り余るほどの重圧に溺れて
生きていたいですか?
死に場所を求めるには
あまりに悲惨で
その割に合わない涙は
枯れてしまった様に何も出なくて
掠れた喉が吐き出した
音の意味なんてありやしないんだ
嘘だらけで偽物塗れの
望んだ笑みさえ見つけられない
灰色の滲んだ世界は
何時だって此処から逃げ出せずに
もしも叶うなら、「もしも」があるなら
こんな世界無くなってしまえばいい
足掻き続けた身体は
背中にスパイパーを引っ提げて
いっそ太陽なんて落ちてしまえ!
どうして望んだって
笑顔一つ願えやしない!
そんな下らない世界なら
ご丁寧に銃口をそちらに向けて
笑えない世界を一掃してやるのに!
許さない様に
春の温度に溺れて
窒息死してしまう
その前に吐き出した
呼吸は泡沫に変わる
呆けた様な目蓋に
麗らかな口付けを交わして
痛みは何処にもない様に
優しく弔いを手向けて
薄紅の懺悔を胸に刻む
大人になった瞬間に
それすらも忘れてしまって
罪は淡く溶けていく
罰は鮮やかに咲き誇る
なら意味は何処に残る?
理由は何処に還る?
未完成の世界で
何時までも其処に在る様
口にした生温い言葉さえ
嗚呼、春は漸く追い付いた
僕ばかりが追い越して
その背を追う事も
何時しか忘れてしまいそうで
負い目に感じた
感情論すらも語れずに
擦り切れた銃口は
まだ此処に在る様にと
鉄の塊を胸に落とす
繰り返す言葉は
もう何処にも届かない
春の気配は
緩やかに僕を殺していく
敷き詰めた色彩が
僕の網膜を焼いて
生きていく為に必要な
その事を忘れてしまった
僕の事を君は覚えていますか?
春に許されない僕は
此処に生きていたんだ
嗚呼、
僕は春に殺される。
まだ此処に在る世界は
僕の手を握ったまま。
深く沈んでいく
呼吸を止めて三秒、
詰まらせた喉の奥で
春が笑っている。
嗚呼、やはり。
何処までも春は美しかった。

