忘れた頃の願いを取り出して


手折った祈りを咥えた


愛しています。と


何もない日々へ溶かした


水面に映る僕の姿は


いつからか薄くぼやけて


忘れてしまう日がくるだろう


僕の事も、君の事も、


何一つ思い出せなくなる日が


踏み躙る草花の道を


歩き続けてきた


遠ざかる日常は


きっと愛おしいと嘯いて、


思い出す様に両手を握る


瞬きする度に溶ける


眦に浮かべた一雫も


そう在る様に願い続けた


波紋に消えていく僕の姿は


忘れた頃に芽吹くだろうか


そうであればいい。


擦り抜けていく言葉が


愛を語り続ける事を


僕は願うだろうから。


なんで僕は生きているのか


嫌になって塞いだ耳を

通り抜ける様に君は笑う

何一つ持たない僕の

心を引き裂く様に

誰も彼も僕を見ないのに


一人の影が呑みこむ様に

君の影を越えていく

まるで知らない様に

君を、追い越していく


どうしたって届かない

君は笑うばかりで

僕の心を踏みつけて

祈る様に伸ばした腕は

掠りもしないで落ちた

暁の色の中で

君が泣いている事も

知っていたのに


知らない事を知ったとき

どうしようもなく

僕は君を望んだ

塞いだままの耳を

忘れてしまって


きっと僕は何も知らなかった

何も聞こうともしないで

ただそこで俯くばかりの

幼い子供の様に


どうして僕は生きているのか

答えなんて知らないし

僕は答えなんてどうでもいい

ただ泣く様に笑う君を

置いていきたくなかった


ただそれだけなのに。


僕って何?


正しい僕は


一体どこに在る?


こんな作り物


死ねばいいのに


間違いだらけ


継ぎはぎだらけ


意思も何もない


思考回路は潰して


憎む事も


忘れたまま


僕は誰?


選んだのは


僕だったか?


選択肢は


何時だって


正しくはないんだ


いっそ苦しんで


辛いまま


僕の指差す選択を


笑ってくれよ


世界の中で


僕独り苦しいなら


何も悲しくはないよ


正しい筈なんだ


そんな事を繰り返して


死んでしまう事も


恐れる事がなくなれば


きっと僕は


何より正しく


死んでしまうんだろうね


何も選ばなければ

きっと誰も傷付く事なく

その笑みを絶やす事なく

前を向く事が出来た


そう、それはきっと

君の様になりたくて

でも僕は君はなれなくて

ありきたりな言葉で

君の存在を塗り潰して


僕は君じゃなくて

君は僕じゃなくて

ただの一瞥さえも

意味を履き違えて

まるで、それじゃ、

なんの意味もないんだよ


誰も選ばなくても

結局絶望はすぐそこで

まるで底なし沼の様に

静かに其処で待っている

手を差し出す事も

声をかける事も

何一つ動く事もなく


ただ只管僕が消える事を

望んでは選んで、

憎む様に祈っているんだ


倒れ込んだ心の隙間を

君の言葉で固める様に

誰の為の願いなんだろう?

君が笑える未来の為に

君を失った僕の事を

きっと誰かが泣いてくれるなら


僕は何時だって戦える

何時までも戦えるんだ


焼き付いた光景

伸ばした両の手だって

遠くへ行ってしまったんだろう?


温いまま浸り続けて

目蓋は重たく張り付く

安いインクの上で

君がさよならと手を振る

指先でなぞる虚しさは

消えてしまうだろうか?


手を繋いで

離さないでいて

切らした息の先で

溶けてしまえたら


笑ってくれよ

泣き出したい程には

君と向き合えるだろうから


泣かないでくれよ

滲んだインクの端で

君が笑っている


膝を抱えたまま

離れていく両の手を想う

嗚呼、優しい風景は

何時しか忘れてしまうだろう


それでいいんだ、


それが、いいんだ。