貴方は何を求めて

私の解答を口に含む

湿らせる様に

乾いた唇を寄せて

乾涸びた喉に手を添える


罅割れた世界を

貴方は知らないだろう

見失う様に暗がりを抱いて

手探りで生きるには

悲しみを零し過ぎて


貴方が望む答えを

私は何一つ持っていない

例えその唇を添えても

干上げていく水の様に

失っていくばかりの

貴方の言葉は何時だってそう

真実を語る事はない


涙を零したのだって

もう遠ざかりくすんだ過去と

鮮やかに通り過ぎた

私のいない未来の事で

檻の中で語る理想は

私の手には届かないだろうね


罅割れた事に気付かないで

貴方は檻の中で愛を囁く

淀んで見えたその言葉を

私は手離しには喜べないから


見世物の檻を壊す様に

私は貴方を突き放す

どうやったって

同じ道には立てないのだから


俯き垂れ下がる

言葉の奥底を

選んでは吐き出す

夢の続きは

何時だって白濁だ


目蓋に貼りつく

粘ついた残像が

最初を殺して立ち尽くす

都合がいいのだ誰で

焼き付いた背中が

両目から零れていく


何処へ行くんだって

何処も無いだろうが

其れだって其れを

選んできたのは

何時だって君だろう


其れは嘘であるが

本当の事である筈の

真実ですらも

何時だって殺して

それでも声をあげて

其れを両手に差し出したのは

君以外の誰でもない様に

其処にしかないもので

黒く塗りつぶしていくんだろう


差し出した両手の上に乗せた

混濁していく本音と

そうやって掌から落とした

何時だって願った筈の建前で

傷付けていくのは

君じゃなくて僕だろう


君が望んだ世界が

終わりを告げるならば

僕が望んだ世界で

終わりを告げようか


嘘の言葉が焼き付く

脳裏に差し出す花束は

誰の手にも届かないだろうけど


選んだ其れが最善なら

貴方が笑う事を

僕が全部抱えてさ

恐ろしい事なんて

何一つもないんだろうって


悲しさを並べて

僕が知っている事も

貴方は何も見ないでおいて

声もあげずに泣いている

嫌いな世界を零しておいでよ


夢を選べないだなんて

そう言って綺麗に咲いた

胸元の花束だって

全部全部貴方の為に

手折られて殺された

全てに捧ぐ願いであるように


そうやって目を瞑ってないで

目を開いて見えた先を

夢だと笑う日がきたなら

きっとその頬を伝うものを

僕は心から愛せるだろうって


何も怖いものなんてないと

笑う貴方の腕の中で

それこそ笑っていてくれよ


例え夢でしかなくとも

咲き誇る虹彩の彩りを

貴方が知る世界で息衝く様に


泣いている僕の手を

静かに引いて歩く

君の心を覗く


その隙間を選んだ

絶望なんて何処へだって

囁いた愛を免罪符に

差し出した言葉を呑んだ


もういいんだろう、

そうは言い続けて

痛みを堪える様に

君は笑い続けるだろうか

別にいいんだよなんて

愛を指一つ辿って


倒れていく境界線

否定されていく世界と

僕の望んだ世界と

どちらにだって愛を

注いで生きるんだって


一つ粘つく様な夢を

誰かの掌に落として

昇る煙の先なぞって

その傷口を哀して

その心を愛した


触れていた僕の指を

君は隙間から笑って

絶望に膝を濡らしたって

もういいんだろうって

その愛を抱えてよ


もういいんだからさ


その背中を追いかけて

白く尾を引きながら

息を切らして走り切る


縺れそうな足を

必死に動かして

伸ばした手は

何時まで経っても

返されることなく


笑えないだろう、

そう言って笑って

何時の頃だったか

それを繰り返してた頃も

きっと愛おしいと感じて

正しく思い出として残した


君は知っていただろうか

正しく思い出になった

この記憶を前に

僕が泣いている事を


さようならすらもなかった

残酷なまでに美しいと

願った言葉は呑み込まれたまま

此処に残していったのは

君だけの秘密になるように


笑った君の背中に問いかけた

答えは何処にもないと

薄れた記憶と

すり減った思い出が

何時までも笑っている


呼吸を整える

並んだ背中を叩いて

また走っていく


きっと、愛おしいと。


そう思って