この腕を擦り抜ける


全ての声の審判


深淵の言葉に裁かれる


天を仰いだ虚ろを


映し出した碧眼


金糸から覗く世界は


誰が綺麗と呟いたのか


ノアの大洪水に流された


浄化されし大地の声が


私の耳に飽和する


ぐわり、と一度大きく反響


囁ける愛の言葉に


満ち足りる事はない




私は、接吻されし人


唄歌いの言葉はここまで


誰も入れぬ境地は


慈悲を持って貴方を包むだろう




それは、審判


それは、断罪


それは、愛憎




裁かれた彼の人へ


愛おしき人へ!


曖昧な佇まいと


不自然な笑顔を携えて


優しい振りして手を振って


見えなくなる頃に視線を殺す


笑えない冗談と


ふざける事も出来た


だけどそれをするには


余りにも知りすぎてしまったから


逃げ道を塞いどいて


言い訳振り翳して視線を逸らす


君は、言うけど。


迷っている心を


真っ直ぐ向かい合って


それで手に入るのは


本当に幸せなの?


僕はただ単純に


笑っていたいだけなのに


犠牲前提の考えと


引き換えに手に入る様な


そんな不純な幸せなら


見つけない方が幸せなのに


君が笑っているだけで


それで十分なんて


そんな強がりすらも


もう見逃してくれないなんて


僕の頭ん中でぐるぐる回る


塗り潰された未来予定図に


書き換えられた君の隣、


繰り返す様な虚言に


僕はきっと喜んでしまうんだ


君が呟くたびに

生まれてこなければ良かったと

そう思う様になった


弱い言葉だけを吐いて

泣きたくなる心を隠した

脆い防護壁は

余りにも悲しくて

憐れむ様に両手を重ねた

中途半端な優しさが

逆に苦しかった


「そうやっていつも、」


その先を続ければ

きっと何かを失う

失う覚悟も出来ない僕は

柔らかく絞め殺す

温かな腕を切望して

でも言えるわけがなくて、

君の腕を淡く払うしか出来なかった


生まれてこなければ、

出逢わなければ良かった

何も苦しくはなかったのに

辛くはなかったのに

じくじくと痛む

心に刺さる針だけが

嫌に現実を映していた


そうやっていつも、


君が手を下していく

僕の居場所を奪っていく


きみが、ぼくを。


不用意な優しさで、

僕を殺してくんだ


おわりました


この世界の中

息苦しくて

目が覚めた

空気は、

冷たいまま


マフラーに

首を埋める

ラブソングは

安売りされた

圧縮パック

鈍色のレコードに

上塗りされた

気付かない罠

寒い、と呟けば

苦笑いに続く

睫毛にかかる白雪と

誤魔化した喉の奥


瞬きのたびに

言い訳を繰り返す

通じないのは

アルファルトに転がす

小石みたいな価値観

繊維ごと丸めて

温度を分けてあげたら

君は私を見るかな

コートに隠した掌

爪で抉った本音

目蓋の奥に見えるのは

本当の言葉


君はまた分かったふり

いい加減飽きたよ、

知ったかぶりも

分かったふりも

気を遣って

また巡ってみたり

そんな単調な

世界の終わりに


息苦しさに

目が覚めた

あれは夢だったのかな

いいや、きっと本当だろう


あ、ちょうど

またせかいが。


バランスを崩して

天秤から落ちる

其処が成れの果て

私を食らう

精神世界の破滅


導いたのは

その右手の人差指

真白な肌色は

色を失って溶けていく

瞳が映したのは

最後の鐘の虚無

響いた振りして

その崖の淵で踊ってる


「気付いてるだろう?」


言葉を失えば

誰かに寄り掛かる

嘘を吐いてしまえば

気付かずに終わりを迎える

終焉の歌に

君は気付かないまま

傷口にキスを落とした


「知っているだろう?」


私が微笑んだ

その先に失くした

最初から望んでいない

結論ばかり先走って

目の前から転げ落ちていく

馬鹿みたいな物語より

愛おしいと君を食らう

愛憎のお伽噺のほうが

現実味を帯び始める


「君が歌うのは赦された愛の歌さ!」


誰にも揺らがない

天秤の上に残る

噤んだ愛を

蹴り落とした私の心は

君に赦された

断罪のアリア

その先に残されたのは

君の証だけだった